2008年11月05日 (水)
おはようございます。
今朝は、とても寒いです。ジョギングなどにはぴったりの季節到来でしょうか。
さて、運動と血糖値について、私も勉強中で本ブログで少しずつ書いてきましたが、今回もdeosさんから、「午前中空腹時の運動で血糖値がかえって上昇する」というコメントをいただきました。
『08/10/28 deos
糖新生
はじめて書込みさせていただきます。
先生のブログと本を参考に糖質制限にトライ中の、54歳、2型組、糖尿人9年生のdeosと申します。既にプチ糖質制限を自主的に開始しておりましたが、先週の診察でやっと主治医と栄養指導の方に、実際のデータを示すことで糖質管理にて治療に取り込む事(前は反対していましたが)説得できて大手を振って実践できそうです。
今年の3月まで、まったく自分で管理することに興味なく、ただただ経口薬が増えるまま気儘に生活してきた事もあり、空腹時180台、A1c 8.5迄行ってしまいました。メタボ元年に改めて見直してみると、1次予選(胴囲85cm↑)は軽くクリア、2次予選全3種目入賞していることに気がつき、一念発起生活改善に取り組み、毎朝1時間の速歩ウォーキング(約6.5km)と1500kcalの食事制限で、今年の9月迄に-16kgの減量<BMIをやっと30%を切ったぐらいで、欧米水準の肥満からは脱出しましたが、まだまだです(-ωー;)>、メタボ3種目はすべて特保基準内に収まる処まで来ました。 次の目標は、できればSU剤から脱して、なるべくβ細胞を鞭打たず生き残ったβさんとできるだけ末永いつきあいをしたいと思い、調べている内に先生にブログにたどり着くことが出来ました。(先生のブログを見て、新たに食後血糖140以内も目標として追加しました)
ベイスン、メルビン、アクトス(30mg1錠→15g1錠)、オイグルコン2.5mg3錠→アマリール1mg2錠)と状態改善するに従って処方を減らして貰ってますが、SU剤を減らした途端、それまで空腹時75~90位、A1C5.2~5.7と安定していたのに、空腹時120台となってしまい、プチ糖質制限を10月初旬から始めて見たところ、即効で75~110位にコントロールできるようになりました。ところが最近、前夜の食後2時間血糖値より朝が高くなっている、運動後の空腹時血糖値が何も食べていないにも係わらず上がると言う現象が起きております。多分「糖新生」が起きているのかと思いますが、糖質制限をした場合通常な過程なのでしょうか? 主治医は経験やデータがないので判断できないとの事で、お忙しい中大変恐縮ですが質問をさせて頂きました。
前夜 寝起 運動後
110 ー 120
109 88 108
84 91 ー
212 72 107 ※前日60%糖質摂食データ採集日
食後2時間122mgBG/C-ペプチド3.0、空腹時HOMA-R 0.6と一応インシュリン分泌/抵抗性はそこそこの様です。
運動により糖新生で血糖値が10も30も上がるものなのでしょうか? 少し、空腹での運動は抑えた方が良いのでしょうか?
肝臓にはグリコーゲンが10時間分ぐらい貯蓄されており、朝にこれが朝食までぐらいは多少残ってグリコースを分泌していると思っていましたが、糖尿人は貯蔵量が少ないのでしょうか?
この糖新生の段階を得て、ケトンを利用できる体質に変化していくのでしょうか?
多くの質問となってしまいましたが、よろしくおねがいします。』
deosさん。コメント、本のご購入ありがとうございます。また、プチ糖質制限食の実践で血糖値の改善良かったです。 (^_^)
Susumuさん、退屈無想庵さんの体験と同様のデータですね。お三方から、同様のコメントをいただいたので、午前中の運動で、血糖値がかえって上昇する糖尿人が、そこそこおられるということがわかりました。
1型糖尿人に限らず、2型糖尿人でも暁現象を呈す場合が結構あるようですね。バーンスタイン医師のご指摘通りで、とても参考になります。以下、食事摂取時と空腹時の血糖値、糖新生について考えてみます。
<糖質を摂取する食事の場合>
正常人では、食事摂取時は、消化管から吸収された糖質の約50%を肝臓が取り込みます。残りの肝臓を通り抜けたブドウ糖は、大循環にまわり血糖となります。
糖尿人では「肝臓のグリコーゲン分解と糖新生」が摂食時にも抑制されにくいので、食後高血糖となります。また糖尿人は、肝臓のブドウ糖取り込みも低下しているので、この面でも食後高血糖を起こしやすいのです。
食物吸収が一段落したあとしばらくは、肝臓のグリコーゲン分解が、血液中のブドウ糖の主要供給源となります。食後数時間が経過すると、筋肉やほとんどの体組織でエネルギー源として脂質を利用するようになります。そして、日中でも血中への主要なブドウ糖供給源は、肝臓でのグリコーゲン分解から糖新生に置き換わります。
また、糖新生は、夜間絶食時の重要なブドウ糖供給源であり、減少した肝貯蔵グリコーゲンの主要な補給源となります。
<糖質制限食の場合>
摂食時にも、糖質がほとんど含まれていませんので、肝の糖新生が行われています。そして摂食時にも、筋肉や体細胞などほとんどの体組織で、脂質がエネルギー源(脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム)として利用されています。
空腹時にも勿論糖新生は行われていて、脂質もしっかりエネルギー源として利用されます。糖新生は肝や筋の貯蔵グリコーゲンの補給源となります。
糖質制限食の場合は、摂食時も空腹時も一日中、脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムがほとんどの体組織で積極的に利用されていて、糖新生も行われているわけです。このことが、糖質制限食で肥満が改善する主要な理由ですね。
糖質制限食を続けていると、ケトン体が効率よく体組織で利用されるようになるので、血中ケトン体が標準値より高値でも尿中にはでなくなります。
例えばスーパー糖質制限食実践中の江部康二のある日の血中ケトン体は939μmol/mlで基準値(26~122)より大幅に高値ですが、尿中ケトン体はでていません。インスリン作用が保たれていてスーパー糖質制限食を実践している場合、血中ケトン体の正常値は300~2000μmol/mlていどになります。
これは農耕以前の人類の日常的なエネルギーシステムでも同様だったと考えられます。
<暁現象と血糖値>
インスリン基礎分泌が不足してくると、夜間の肝の糖新生を制御できずに、早朝空腹時血糖値が高値となります。
また、就寝時より起床時の血糖値の方が、高値となることがあります。就寝後8~10時間で、血糖値が上昇する暁現象です。deosさんの場合も暁現象と思われます。
肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるため肝臓の糖新生が高まり、起床時に就寝時より血糖値が高くなるのです。
deosさんも午前中の運動で血糖値が上昇する場合、やはり暁現象が関与している可能性がありますね。
2型糖尿人でも、暁現象がない場合は、午前中の空腹時運動でも血糖値は下がると思います。
暁現象があっても、午後の運動なら肝臓によるインスリンの不活化は少なく血糖値は下がると思います。
**インスリン
人体で唯一血糖値を下げるホルモン。膵臓のβ細胞でつくられ分泌される。24時間少量持続的にでている基礎分泌のインスリンと、血糖値が上昇したときにその10~20倍の量がでる追加分泌がある。追加分泌には第一相と第二相がある。インスリンが追加分泌されると、筋肉細胞が血糖を取り込むが、余った血糖が中性脂肪に変わるので、インスリンは別名肥満ホルモンと呼ばれる。
江部康二
今朝は、とても寒いです。ジョギングなどにはぴったりの季節到来でしょうか。
さて、運動と血糖値について、私も勉強中で本ブログで少しずつ書いてきましたが、今回もdeosさんから、「午前中空腹時の運動で血糖値がかえって上昇する」というコメントをいただきました。
『08/10/28 deos
糖新生
はじめて書込みさせていただきます。
先生のブログと本を参考に糖質制限にトライ中の、54歳、2型組、糖尿人9年生のdeosと申します。既にプチ糖質制限を自主的に開始しておりましたが、先週の診察でやっと主治医と栄養指導の方に、実際のデータを示すことで糖質管理にて治療に取り込む事(前は反対していましたが)説得できて大手を振って実践できそうです。
今年の3月まで、まったく自分で管理することに興味なく、ただただ経口薬が増えるまま気儘に生活してきた事もあり、空腹時180台、A1c 8.5迄行ってしまいました。メタボ元年に改めて見直してみると、1次予選(胴囲85cm↑)は軽くクリア、2次予選全3種目入賞していることに気がつき、一念発起生活改善に取り組み、毎朝1時間の速歩ウォーキング(約6.5km)と1500kcalの食事制限で、今年の9月迄に-16kgの減量<BMIをやっと30%を切ったぐらいで、欧米水準の肥満からは脱出しましたが、まだまだです(-ωー;)>、メタボ3種目はすべて特保基準内に収まる処まで来ました。 次の目標は、できればSU剤から脱して、なるべくβ細胞を鞭打たず生き残ったβさんとできるだけ末永いつきあいをしたいと思い、調べている内に先生にブログにたどり着くことが出来ました。(先生のブログを見て、新たに食後血糖140以内も目標として追加しました)
ベイスン、メルビン、アクトス(30mg1錠→15g1錠)、オイグルコン2.5mg3錠→アマリール1mg2錠)と状態改善するに従って処方を減らして貰ってますが、SU剤を減らした途端、それまで空腹時75~90位、A1C5.2~5.7と安定していたのに、空腹時120台となってしまい、プチ糖質制限を10月初旬から始めて見たところ、即効で75~110位にコントロールできるようになりました。ところが最近、前夜の食後2時間血糖値より朝が高くなっている、運動後の空腹時血糖値が何も食べていないにも係わらず上がると言う現象が起きております。多分「糖新生」が起きているのかと思いますが、糖質制限をした場合通常な過程なのでしょうか? 主治医は経験やデータがないので判断できないとの事で、お忙しい中大変恐縮ですが質問をさせて頂きました。
前夜 寝起 運動後
110 ー 120
109 88 108
84 91 ー
212 72 107 ※前日60%糖質摂食データ採集日
食後2時間122mgBG/C-ペプチド3.0、空腹時HOMA-R 0.6と一応インシュリン分泌/抵抗性はそこそこの様です。
運動により糖新生で血糖値が10も30も上がるものなのでしょうか? 少し、空腹での運動は抑えた方が良いのでしょうか?
肝臓にはグリコーゲンが10時間分ぐらい貯蓄されており、朝にこれが朝食までぐらいは多少残ってグリコースを分泌していると思っていましたが、糖尿人は貯蔵量が少ないのでしょうか?
この糖新生の段階を得て、ケトンを利用できる体質に変化していくのでしょうか?
多くの質問となってしまいましたが、よろしくおねがいします。』
deosさん。コメント、本のご購入ありがとうございます。また、プチ糖質制限食の実践で血糖値の改善良かったです。 (^_^)
Susumuさん、退屈無想庵さんの体験と同様のデータですね。お三方から、同様のコメントをいただいたので、午前中の運動で、血糖値がかえって上昇する糖尿人が、そこそこおられるということがわかりました。
1型糖尿人に限らず、2型糖尿人でも暁現象を呈す場合が結構あるようですね。バーンスタイン医師のご指摘通りで、とても参考になります。以下、食事摂取時と空腹時の血糖値、糖新生について考えてみます。
<糖質を摂取する食事の場合>
正常人では、食事摂取時は、消化管から吸収された糖質の約50%を肝臓が取り込みます。残りの肝臓を通り抜けたブドウ糖は、大循環にまわり血糖となります。
糖尿人では「肝臓のグリコーゲン分解と糖新生」が摂食時にも抑制されにくいので、食後高血糖となります。また糖尿人は、肝臓のブドウ糖取り込みも低下しているので、この面でも食後高血糖を起こしやすいのです。
食物吸収が一段落したあとしばらくは、肝臓のグリコーゲン分解が、血液中のブドウ糖の主要供給源となります。食後数時間が経過すると、筋肉やほとんどの体組織でエネルギー源として脂質を利用するようになります。そして、日中でも血中への主要なブドウ糖供給源は、肝臓でのグリコーゲン分解から糖新生に置き換わります。
また、糖新生は、夜間絶食時の重要なブドウ糖供給源であり、減少した肝貯蔵グリコーゲンの主要な補給源となります。
<糖質制限食の場合>
摂食時にも、糖質がほとんど含まれていませんので、肝の糖新生が行われています。そして摂食時にも、筋肉や体細胞などほとんどの体組織で、脂質がエネルギー源(脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム)として利用されています。
空腹時にも勿論糖新生は行われていて、脂質もしっかりエネルギー源として利用されます。糖新生は肝や筋の貯蔵グリコーゲンの補給源となります。
糖質制限食の場合は、摂食時も空腹時も一日中、脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムがほとんどの体組織で積極的に利用されていて、糖新生も行われているわけです。このことが、糖質制限食で肥満が改善する主要な理由ですね。
糖質制限食を続けていると、ケトン体が効率よく体組織で利用されるようになるので、血中ケトン体が標準値より高値でも尿中にはでなくなります。
例えばスーパー糖質制限食実践中の江部康二のある日の血中ケトン体は939μmol/mlで基準値(26~122)より大幅に高値ですが、尿中ケトン体はでていません。インスリン作用が保たれていてスーパー糖質制限食を実践している場合、血中ケトン体の正常値は300~2000μmol/mlていどになります。
これは農耕以前の人類の日常的なエネルギーシステムでも同様だったと考えられます。
<暁現象と血糖値>
インスリン基礎分泌が不足してくると、夜間の肝の糖新生を制御できずに、早朝空腹時血糖値が高値となります。
また、就寝時より起床時の血糖値の方が、高値となることがあります。就寝後8~10時間で、血糖値が上昇する暁現象です。deosさんの場合も暁現象と思われます。
肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるため肝臓の糖新生が高まり、起床時に就寝時より血糖値が高くなるのです。
deosさんも午前中の運動で血糖値が上昇する場合、やはり暁現象が関与している可能性がありますね。
2型糖尿人でも、暁現象がない場合は、午前中の空腹時運動でも血糖値は下がると思います。
暁現象があっても、午後の運動なら肝臓によるインスリンの不活化は少なく血糖値は下がると思います。
**インスリン
人体で唯一血糖値を下げるホルモン。膵臓のβ細胞でつくられ分泌される。24時間少量持続的にでている基礎分泌のインスリンと、血糖値が上昇したときにその10~20倍の量がでる追加分泌がある。追加分泌には第一相と第二相がある。インスリンが追加分泌されると、筋肉細胞が血糖を取り込むが、余った血糖が中性脂肪に変わるので、インスリンは別名肥満ホルモンと呼ばれる。
江部康二
2008年11月04日 (火)
こんにちは。今日も、運動と血糖値のお話です。私も現在進行形で勉強中です。
今回は、退屈夢想庵さんから、「運動したらかえって血糖値が上昇する」というコメントをいただきました。
『走った後になぜ血糖値があがるのでしょうか
江部先生のブログはいつも拝見させていただいております。前回は尿素窒素やカリウムの上昇にお答えいただきありがとうございました。
さて、以前から不思議に感じていたのですが、食後30分に30分間運動をすると血糖値が下がるということを聞いております。これはこれで正しいと思うのですが、私の場合、毎週一回のジョギングが趣味で約10kmを1時間ほどかけて走っています。ところが、走った後は必ず血糖値が上昇しています。たとえば
ジョギング前91
ジョギング後120
ある日は
ジョギング後134
とか139といった具合に
必ず上昇しているのです。最近は糖質制限食のおかげで食前の血糖値は110以下をキープできているのに不思議です。
運動して血糖値が上昇するということはこれで普通なのでしょうか。それともなにか別の理由があってこうなるのでしょうか。それとも10kmのジョギングが体に負担になっているのでしょうか。お忙しいところすいませんが、一般論としてでも教えていただければありがたいのですが。よろしく、お願いいたします。
by 退屈無想庵 2008/10/26 22:31 URL』
退屈無想庵さん。コメントありがとうございます。
「食後30分に30分運動をすると血糖値が下がる」
インスリン作用が確保されて、糖代謝が良好に維持されている糖尿人では確かにその通りですが、個人差が結構大きいですし、運動の種類にもよります。歩行ぐらいが丁度よいようですが、10kmを1時間のジョギングでもよいと思います。
退屈無想庵さんの場合、糖質制限食により、血糖コントロール良好ですから、普通は運動で血糖値は下がるはずですね。
ある程度の強度の運動だと、アドレナリンや副腎皮質ホルモンなどの血糖値を上昇させるホルモンが分泌されます。
正常人だと、血糖値が上昇すればリアルタイムにインスリンが分泌されて血糖値をもとに戻しますが、糖尿人ではこれが出遅れます。従って、数分間の強度の強い運動だと、血糖値が上昇する可能性があります。
しかし、ジョギング1時間はほどよい強度と持続時間なので、退屈無想庵さんの場合は当てはまりません。
可能性としてあるのは、やはり就寝後8~10時間で、血糖値が上昇する暁現象です。
肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるため、肝臓の糖新生が高まり、起床時に就寝時より血糖値が高くなることがあります。
バーンスタイン医師によれば、「1型糖尿病の数人の患者で朝運動するときには追加の即効性インスリンを注射する必要があるが、午後の運動では必要ない。」そうです。
1型糖尿人の数人が「午前中に運動したら、糖新生が高まって、インスリン注射を追加しないと高血糖になる」という事実があったということですね。2型糖尿人でも、暁現象のある人は結構あります。
退屈夢想庵さんの場合も、もし午前中の運動なら、あくまでも私見の仮説ですが、暁現象による血糖値上昇の可能性があります。
空腹時に運動をすれば、糖新生が亢進して血糖値を上昇させますが、この時正常人なら適度のインスリンが分泌されてただちに調整します。しかし、2型糖尿人でも暁現象がある場合は、インスリン分泌が不足して血糖値が上昇することがありえます。
退屈夢想庵さんも午後のジョギングなら、血糖値が下がるかもしれませんね。
江部康二
今回は、退屈夢想庵さんから、「運動したらかえって血糖値が上昇する」というコメントをいただきました。
『走った後になぜ血糖値があがるのでしょうか
江部先生のブログはいつも拝見させていただいております。前回は尿素窒素やカリウムの上昇にお答えいただきありがとうございました。
さて、以前から不思議に感じていたのですが、食後30分に30分間運動をすると血糖値が下がるということを聞いております。これはこれで正しいと思うのですが、私の場合、毎週一回のジョギングが趣味で約10kmを1時間ほどかけて走っています。ところが、走った後は必ず血糖値が上昇しています。たとえば
ジョギング前91
ジョギング後120
ある日は
ジョギング後134
とか139といった具合に
必ず上昇しているのです。最近は糖質制限食のおかげで食前の血糖値は110以下をキープできているのに不思議です。
運動して血糖値が上昇するということはこれで普通なのでしょうか。それともなにか別の理由があってこうなるのでしょうか。それとも10kmのジョギングが体に負担になっているのでしょうか。お忙しいところすいませんが、一般論としてでも教えていただければありがたいのですが。よろしく、お願いいたします。
by 退屈無想庵 2008/10/26 22:31 URL』
退屈無想庵さん。コメントありがとうございます。
「食後30分に30分運動をすると血糖値が下がる」
インスリン作用が確保されて、糖代謝が良好に維持されている糖尿人では確かにその通りですが、個人差が結構大きいですし、運動の種類にもよります。歩行ぐらいが丁度よいようですが、10kmを1時間のジョギングでもよいと思います。
退屈無想庵さんの場合、糖質制限食により、血糖コントロール良好ですから、普通は運動で血糖値は下がるはずですね。
ある程度の強度の運動だと、アドレナリンや副腎皮質ホルモンなどの血糖値を上昇させるホルモンが分泌されます。
正常人だと、血糖値が上昇すればリアルタイムにインスリンが分泌されて血糖値をもとに戻しますが、糖尿人ではこれが出遅れます。従って、数分間の強度の強い運動だと、血糖値が上昇する可能性があります。
しかし、ジョギング1時間はほどよい強度と持続時間なので、退屈無想庵さんの場合は当てはまりません。
可能性としてあるのは、やはり就寝後8~10時間で、血糖値が上昇する暁現象です。
肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるため、肝臓の糖新生が高まり、起床時に就寝時より血糖値が高くなることがあります。
バーンスタイン医師によれば、「1型糖尿病の数人の患者で朝運動するときには追加の即効性インスリンを注射する必要があるが、午後の運動では必要ない。」そうです。
1型糖尿人の数人が「午前中に運動したら、糖新生が高まって、インスリン注射を追加しないと高血糖になる」という事実があったということですね。2型糖尿人でも、暁現象のある人は結構あります。
退屈夢想庵さんの場合も、もし午前中の運動なら、あくまでも私見の仮説ですが、暁現象による血糖値上昇の可能性があります。
空腹時に運動をすれば、糖新生が亢進して血糖値を上昇させますが、この時正常人なら適度のインスリンが分泌されてただちに調整します。しかし、2型糖尿人でも暁現象がある場合は、インスリン分泌が不足して血糖値が上昇することがありえます。
退屈夢想庵さんも午後のジョギングなら、血糖値が下がるかもしれませんね。
江部康二
2008年11月03日 (月)
こんにちは。
昨日は、テニスクラブ主催のボーリング大会があったので参加しました。成績はボチボチでした。(-_-;)
私の学生時代に大ボーリングブームがあり、当時はよくいきましたね。マイ・ボールは持ってなかったけど、マイ・シューズぐらいは購入しましたから、それなりにはまっていたのでしょう。
さて今回は、早朝空腹時血糖値と運動に関して、Susumuさんからコメント・質問をいただきました。
『ご質問
初めてお便りいたします。 Susumuと申します。
約10年ぐらい前に糖尿病と診断され、今までは食事制限と運動療法と薬で治療を続けてきました。始めのうちは、血糖のコントロールも比較的良好で、HbA1Cの値は7台を保てていました。その内、うつ病になったこともあり、糖尿病に対する治療意欲が低下して、血糖コントロールが悪化し、とうとう9月の診察の時にはHbA1Cが8.9にまで上昇してしまいました。
HbA1Cのあまりの悪さに、一念発起いたしまして、再び糖尿病に対する治療意欲を取り戻しました。丁度その頃、先生のブログを通じて糖質制限食を知りました。先生のご本も読ませていただき、早速糖質制限食を実行してみました。
その結果は、驚くべきものでした。それまで、僕は主食として、低GIの小麦ふすまシリアルを食べていたのですが、それでも食後2時間の血糖値が200を切ることはありませんでした。それが、主食を食べない糖質制限食に替えたところ、その日から、食後2時間の血糖値が160ぐらいまで下がったのです。それ以来約1ヶ月近く糖質制限食を実行しておりますが、食後2時間の血糖値が200を越えることは全くなくなりました。
先生に教えていただきたいことがあります。僕は1日に数回血糖値を測定して、血糖値の変化を調べています。それによると、僕の場合、朝5~6時ぐらいに測定する早朝時空腹血糖値は、90~110程度で安定しているようです。でも、不思議なことに、朝食抜きの生活を送っているにもかかわらず、午前中にかけて血糖値が140ぐらいまで増加するのです。
もっと不思議なことに、この午前中の血糖が高い状態を解消しようと思って、早朝5時ぐらいや、仕事前(9時ぐらい)などに30分程度のウォーキングをしてみたのですが、血糖値が140から下がらないのです。つまり、午前中はウォーキングが効かないのです。ところが、お昼休み(12時~1時)にウォーキングをすると、血糖値が140→120程度まで下がります。
そこで先生にご質問なのですが、
①早朝空腹時血糖値が正常レベルなのに、朝食を摂らないにもかかわらず、午前中にかけて血糖値が増加する原因は何と考えられますか?
②なぜ、午前中の高血糖状態(~140)にはウォーキングが効果が無い原因はなんと考えられますか?
以上2点、お暇なときで結構ですので、教えていただければ幸いです。
by Susumu 2008/10/22 13:54』
Susumuさん。コメントありがとうございます。
「①早朝空腹時血糖値が正常レベルなのに、朝食を摂らないにもかかわらず、午前中にかけて血糖値が増加する原因は何と考えられますか?」
空腹時には、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生が、血糖の供給源となります。グリコーゲン分解に関しては、糖尿人と正常人との間に差はないとされています。一方、糖新生は、糖尿人においては、増加することが多いです。
正常人においては、血液中のインスリンが5μU/ml以上あれば、糖新生は急激に低下します。しかし、2型糖尿病においては、正常人の2倍以上のインスリンが必要とされることが多いのです。
Susumuさんの場合も、何らかの理由で午前中に肝臓の糖新生が高まり、食事摂取していないのに血糖値が上昇したと考えられます。
バーンスタイン医師によれば、糖尿人においては、就寝後8~10時間に血糖値が上昇することがあり、暁現象というそうです。この場合就寝時より起床時の血糖値が高値となります。
朝に血糖値が上昇するまでの時間と増加量には、個人差があります。1型糖尿人のバーンスタイン医師は、充分量の持続型インスリン3単位を就寝前に注射しているにもかかわらず、起床時の血糖値が10~100mg/dlほど就寝時より高値となるそうです。
暁現象の機序は、完全に解明されているわけではありませんが、肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるとういう説があります。そのため、肝臓の糖新生が高まります。インスリンが、外部から注射したものであれ、内部でつくったものであれ同様です。
早朝空腹時ですからインスリンを打っていない人では、基礎分泌のインスリンが循環している時間帯ですね。正常人はこのとき、インスリンを産生して調整しますが、糖尿人はそれが不足するので暁現象が発生します。
「②なぜ、午前中の高血糖状態(~140)にはウォーキングが効果が無い原因はなんと考えられますか?」
運動の効果も、個人差が非常に大きいです。Aさんは、食事開始後30分の運動で、60mg血糖値が下がるのにBさんは、数mgというくらいの差があります。
しかし、 Susumuさんの場合、お昼休み(12時~1時)にウォーキングをすると、血糖値が140→120程度まで下がるのですから、午前中下がらないのは不思議ですね。
運動による筋収縮により、筋肉細胞の中にある糖輸送体(Glut4)が細胞表面に移動して血糖を取り込みますが、これは追加分泌のインスリンとは無関係です。
しかし、基礎分泌のインスリンは最低限必要ですので、やはり暁現象が関係しているのかもしれませんが、断定はできません。すいません。
運動と血糖値もなかなか一筋縄ではいかないようで難しいです。(∵)?
江部康二
【講演会・講座のお知らせ】
☆☆講座「糖尿病は必ず良くなる!~糖質制限食のすすめ」京都
朝日カルチャーセンター京都 http://www.asahi-culture.co.jp/www/kyoto-c.html
075-231-9693
2008年11月18日(火)13:00~14:30
☆☆糖質制限食講演会・福岡
日時 2008年11月23日(日) 14:00~15:45
会場 福岡交通センター 8階大ホール 福岡市博多区博多駅中央街2-1
会費 1500円
お問い合わせは、京都高雄倶楽部
TEL 075-873-2170
FAX 075-873-2270
E-mail takaoclub@ktk-kyoto.jp
営業時間は、8:45から17:00(くらい)お休みは土・日・祝です。
☆☆ 糖質制限食講演会・東京・中野
日時:2008年11月30日(日)9:30~11:40
会場:なかのZERO 視聴覚ホール(東京・中野)
会費:1500円
申し込みは、糖質制限食ネット・リボーン 曽我部ゆかり
(T/F)03−3388−5428
(e-mail) reborn@big.or.jp
☆☆講座「糖尿病・メタボはこう予防する!~糖質制限食のすすめ」京都
朝日カルチャーセンター京都 http://www.asahi-culture.co.jp/www/kyoto-c.html
075-231-9693
2009年2月17日(火)13:00~14:30
【糖質制限食コントロール・教育入院のご案内】
お問い合わせは高雄病院 http://takao-hospital.jp/
住所:京都市右京区梅ヶ畑畑町3
電話:075-871-0245
ベットが空くまでお待ち頂くこともありますがご了承下さい。
【糖質制限食外来治療のご案内・予約制】
高雄病院 電話:075-871-0245
京都市右京区梅ヶ畑畑町3
高雄病院京都駅前診療所 電話:075-352-5050
京都市下京区七条通り烏丸東入ル(50M)北側 ネオフィス 七条烏丸4F
江部診療所 電話:075-712-8133
京都市左京区下鴨高木町6 アトリエ・フォー 2F
昨日は、テニスクラブ主催のボーリング大会があったので参加しました。成績はボチボチでした。(-_-;)
私の学生時代に大ボーリングブームがあり、当時はよくいきましたね。マイ・ボールは持ってなかったけど、マイ・シューズぐらいは購入しましたから、それなりにはまっていたのでしょう。
さて今回は、早朝空腹時血糖値と運動に関して、Susumuさんからコメント・質問をいただきました。
『ご質問
初めてお便りいたします。 Susumuと申します。
約10年ぐらい前に糖尿病と診断され、今までは食事制限と運動療法と薬で治療を続けてきました。始めのうちは、血糖のコントロールも比較的良好で、HbA1Cの値は7台を保てていました。その内、うつ病になったこともあり、糖尿病に対する治療意欲が低下して、血糖コントロールが悪化し、とうとう9月の診察の時にはHbA1Cが8.9にまで上昇してしまいました。
HbA1Cのあまりの悪さに、一念発起いたしまして、再び糖尿病に対する治療意欲を取り戻しました。丁度その頃、先生のブログを通じて糖質制限食を知りました。先生のご本も読ませていただき、早速糖質制限食を実行してみました。
その結果は、驚くべきものでした。それまで、僕は主食として、低GIの小麦ふすまシリアルを食べていたのですが、それでも食後2時間の血糖値が200を切ることはありませんでした。それが、主食を食べない糖質制限食に替えたところ、その日から、食後2時間の血糖値が160ぐらいまで下がったのです。それ以来約1ヶ月近く糖質制限食を実行しておりますが、食後2時間の血糖値が200を越えることは全くなくなりました。
先生に教えていただきたいことがあります。僕は1日に数回血糖値を測定して、血糖値の変化を調べています。それによると、僕の場合、朝5~6時ぐらいに測定する早朝時空腹血糖値は、90~110程度で安定しているようです。でも、不思議なことに、朝食抜きの生活を送っているにもかかわらず、午前中にかけて血糖値が140ぐらいまで増加するのです。
もっと不思議なことに、この午前中の血糖が高い状態を解消しようと思って、早朝5時ぐらいや、仕事前(9時ぐらい)などに30分程度のウォーキングをしてみたのですが、血糖値が140から下がらないのです。つまり、午前中はウォーキングが効かないのです。ところが、お昼休み(12時~1時)にウォーキングをすると、血糖値が140→120程度まで下がります。
そこで先生にご質問なのですが、
①早朝空腹時血糖値が正常レベルなのに、朝食を摂らないにもかかわらず、午前中にかけて血糖値が増加する原因は何と考えられますか?
②なぜ、午前中の高血糖状態(~140)にはウォーキングが効果が無い原因はなんと考えられますか?
以上2点、お暇なときで結構ですので、教えていただければ幸いです。
by Susumu 2008/10/22 13:54』
Susumuさん。コメントありがとうございます。
「①早朝空腹時血糖値が正常レベルなのに、朝食を摂らないにもかかわらず、午前中にかけて血糖値が増加する原因は何と考えられますか?」
空腹時には、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生が、血糖の供給源となります。グリコーゲン分解に関しては、糖尿人と正常人との間に差はないとされています。一方、糖新生は、糖尿人においては、増加することが多いです。
正常人においては、血液中のインスリンが5μU/ml以上あれば、糖新生は急激に低下します。しかし、2型糖尿病においては、正常人の2倍以上のインスリンが必要とされることが多いのです。
Susumuさんの場合も、何らかの理由で午前中に肝臓の糖新生が高まり、食事摂取していないのに血糖値が上昇したと考えられます。
バーンスタイン医師によれば、糖尿人においては、就寝後8~10時間に血糖値が上昇することがあり、暁現象というそうです。この場合就寝時より起床時の血糖値が高値となります。
朝に血糖値が上昇するまでの時間と増加量には、個人差があります。1型糖尿人のバーンスタイン医師は、充分量の持続型インスリン3単位を就寝前に注射しているにもかかわらず、起床時の血糖値が10~100mg/dlほど就寝時より高値となるそうです。
暁現象の機序は、完全に解明されているわけではありませんが、肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるとういう説があります。そのため、肝臓の糖新生が高まります。インスリンが、外部から注射したものであれ、内部でつくったものであれ同様です。
早朝空腹時ですからインスリンを打っていない人では、基礎分泌のインスリンが循環している時間帯ですね。正常人はこのとき、インスリンを産生して調整しますが、糖尿人はそれが不足するので暁現象が発生します。
「②なぜ、午前中の高血糖状態(~140)にはウォーキングが効果が無い原因はなんと考えられますか?」
運動の効果も、個人差が非常に大きいです。Aさんは、食事開始後30分の運動で、60mg血糖値が下がるのにBさんは、数mgというくらいの差があります。
しかし、 Susumuさんの場合、お昼休み(12時~1時)にウォーキングをすると、血糖値が140→120程度まで下がるのですから、午前中下がらないのは不思議ですね。
運動による筋収縮により、筋肉細胞の中にある糖輸送体(Glut4)が細胞表面に移動して血糖を取り込みますが、これは追加分泌のインスリンとは無関係です。
しかし、基礎分泌のインスリンは最低限必要ですので、やはり暁現象が関係しているのかもしれませんが、断定はできません。すいません。
運動と血糖値もなかなか一筋縄ではいかないようで難しいです。(∵)?
江部康二
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