インフルエンザと糖尿病。感染症と糖尿病。
こんばんは。

インフルエンザが、まだまだ発生しています。

京都府感染症情報センターによれば、2016年2月22日~2016年2月28日の期間で京都市は注意報ですが、京都府には警報が出ています。

今日の高雄病院駅前診療所の外来にも、

「先週インフルエンザに罹ったので外来予約の日に来院できませんでした。」

という患者さんが2人おられました。

うち、1名は糖尿人でしたが、HbA1cはコントロール良好であり、幸い軽くてすんだそうですが、新聞のインフルエンザの報道に「糖尿病患者は要注意」と、よく記載されています。

糖尿人がインフルエンザに感染した場合、非糖尿人よりも危険なのでしょうか?

実は「糖尿病患者は要注意」は、インフルエンザに限られたことではありません。

インフルエンザを含めたあらゆるウィルス感染も細菌感染も真菌感染も、全ての感染症において「糖尿病患者は要注意」なのです。

これは、正確には「血糖コントロールの悪い糖尿病患者は感染症に要注意」ということを意味します。

確かにコントロール不良の糖尿人は、感染症にかかりやすく悪化しやすいのです。

それでは血糖コントロールが悪いと、なぜ感染症に弱くなるのでしょう?

高血糖があると

1) 白血球の種類の中で好中球の機能が低下します。

2) 免疫反応が低下します。

3) 毛細血管の血流が悪くなります。
  血流が悪いと酸素や栄養が充分に行き渡りませんし白血球も感染部位に到達しにくくなります。

4) 糖尿病神経障害がある人では、尿路感染症や胆のう炎にかかりやすくなります。

5) 細菌やウィルスのなどの感染があると血糖値が普段より高くなるので悪循環となります。

これらが、重なり合って高血糖があると感染症に弱くなるのです。

例えば、身近な感染症で「おでき」とか皮膚にできることがあります。

白血球など免疫系の細胞がおできの中の細菌を退治にかけつけますが、血糖値が高いと毛細血管レベルで血流が悪くて末梢まで到達しにくくなります。血糖値が高いと白血球そのものの機能も低下しています。

また、最終的におできの傷がふさがって治るときに、血流が良ければどんどん肉が盛り上がって治りますが、血流が悪い糖尿病の人は、栄養分も酸素も不足して治りにくいのです。

糖尿病で血流が悪くなる最大の理由は、血糖値が高いことそのものです。

それでは、糖尿人には救いは無いのかというと、そんなことはありません。

血糖コントロールが良好な糖尿人においては、白血球など免疫細胞もしっかり働いてくれるし、血流も毛細血管にいたるまでスムースに保たれています。

従って、糖質制限食実践で正常の血糖値を保っていれば、感染症に対しても正常人と同様の力を発揮できます。

一方、糖尿病歴が長くて既に末梢の細小血管に動脈硬化など、回復不能の血流障害がある場合、その時点で血糖コントロールを良くすれば進行はとまります。

しかし過去の高血糖の記憶と言える動脈硬化そのものの改善は見込めませんので消えない借金として残ります。

読者の糖尿人の皆さん、血糖コントロールは早ければ早いほど、合併症予防に関して好ましいので、少しでも早く美味しく楽しく「糖質制限食」に取り組みましょう。



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖尿病と足のケア。コントロール良好糖尿人とコントロール 不良糖尿人。
こんにちは。

劇症1型糖尿人のちくてつさんから、糖尿人と足のケアについて、コメントいただきました。
いつも参考になるコメントをありがとうございます。

糖質制限食実践後の尿酸高値に関しては、私の経験では、ほとんどの人において、「摂取エネルギー不足」でしたので、ちくてつさんも、そこだけご注意いただけば幸いです。

発症して、半年ちょっとなのに、糖尿病足病変に興味をもたれ、足のケアを心がけておられるのは、素晴らしいです。
備えあれば憂いなしですね。

一方、ちくてつさんは、2014年11月に劇症1型糖尿病を発症。
11月一杯は入院し、12月はじめに退院。
12月9日の診察時、血液検査の結果は、HbA1cが7.0%。

2015年1月20日の診察で、HbA1cが5.7%。

その後も、空腹時血糖値、食後血糖医、HbA1c全てコントロール良好を保っておられると思いますので、ちくてつさんに関しては、糖尿病足病変を含めて、合併症発症の心配はないと思いますよ。従って足のケアも、今のところ何もしなくても大丈夫と思います。

私・江部康二は、2002年6月に糖尿病発覚ですが、2015年6月まで13年間、スーパー糖質制限食で、血糖、HbA1c・・・全てコントロール良好なので、勿論糖尿病合併症なしです。

つまり、血糖コントロール良好の糖尿人は普通人と何ら変わらないので、足のケアも必要ないと思いますし、私も何にもしていません。

一方、コントロールに問題がある糖尿人は、足のケア、大事と思います。

バーンスタイン医師は、12才で1型糖尿病を発症され、内因性インスリはゼロです。

発症以後ずっとインスリン注射をしておられますが、30才代でタンパク尿が出現して、糖尿病腎症第3期となりました。

35才、糖尿病腎症の第3期となった頃、SMBGで血糖自己測定をしながら食事療法を研究し、朝6g、昼12g、夕12gの、徹底した糖質制限食を開始されました。

その後、蛋白尿が出現する段階の糖尿病腎症第3期から、糖質制限食で回復されタンパク尿が消失しました。

45才で医学部に入学、49才で医師になり、糖尿病を徹底的に研究。

以後、多数の糖尿病患者を診察され、糖尿病合併症もなく、現役医師として活動されています。

バーンスタイン医師は、68年間インスリン治療を継続され、なおかつ一旦合併症がでたのに糖質制限食で改善され、その後ずっと合併症なしです。

35才からスーパー糖質制限食を開始されて、糖尿病腎症第3期から回復され、2015年、80才現在、合併症なしでお元気です。

ブログ読者の糖尿人の皆さん、お互いに、スーパー糖質制限食実践で、合併症とは無縁の健康ライフをおくりましょうね。

江部康二



【15/06/19 ちくてつです

足のケアの話ですが・・・

すみません、テーマが外れているかもしれませんが、良かったら、耳を傾けていただきたいと投稿しました。

「バーンスタイン先生の糖尿病の解決」で、たくさんのヒントを得た私ですが、「これはー、大事かも」と思って、1か月実践してきた方法があります。

足のケアです。

大学病院に月イチ、外来診察に行きます。
インスリンポンプ人は義務だそうです。

主治医はやさしい人で、私が問うことに完璧に応えてくれますが、その他のことはほとんど言いません。
「順調ですよ」とか、「尿酸値が高いですから気をつけて」くらいです。

ちなみに、私の尿酸値は数値10を超えて、主治医は「いつ痛風が出てもおかしくありません。
親指がおかしくなったら、すぐ電話してください」と2か月前に言いました。
でも、私は「痛風は出ない」と確信しています。
その理由はまたの機会に。

いまは足のケアです。

大学病院の掲示板に、糖尿病合併症患者の悲惨な足が写真で掲載されていました。
皆さん、ごらんになったことがありますか?

糖尿病の方、ぜひ、ごらんになってください。 糖質制限の意欲が2倍、3倍になるでしょう。

バーンスタイン先生の本に、足のケアの方法が書いてありました。
大学病院の掲示板で、合併症の足を見て驚いたので、早速始めました。

もっとも簡単な方法からです。
つねに靴下をはく。
簡単ですね。

つぎが、天然のオイルをつかったマッサージ。
バーンスタイン先生は、バージンオイルをすすめておられます。
それで始めました。

その直後、非常に優秀な科学者の友人にこの話をしましたら、  「それなら、抗酸化力が抜群のグレープシードオイルがいいですよ」と教わりました。

すぐに実践しました。
とてもいい感じでした。

この頃、68歳の女性にこの話を伝えました。

「グレープシードオイルは、私、使っています。今日からやってみます」と言いました。

そして、今日、2015年6月19日、彼女から報告がありました。

「ほんとうにありがとうございます。うれしいです。  じつは、教えていただいたころ、足に問題があったのです。
靴ずれでタコができて、それが悪化して、痛くなっていました。
どうしようか、迷っていたのです。
そこへグレープシードオイルの話です。
塗ってマッサージを始めて数日で、痛みが消えました。
3週間くらいのいま、タコが柔らかくなっています。
グレープシードオイル、本当に良いです」

バーンスタイン先生の本には、「足のタコは削ったりしては絶対にダメ」と書いてあります。下肢切断につながるような重大リスクが生じるのです。 本を読んで確認してください。
 
糖尿人の足のケア、ほんとうに大事なことですが、あまり情報公開されていないようです。

でも、グレープシードオイルのマッサージでかなり改善されると思います。

糖質制限食&グレープシードオイルのマッサージ、皆さんがお試しになることを、私は希望します。】



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
血糖変動が冠動脈プラークの不安定性に影響。心筋梗塞のリスク。
【15/05/29 福助

血糖変動が冠動脈プラークの不安定性に影響

江部先生

これはスタチン使用に限定される問題とは限らないと思うのですが、 高血糖→低血糖の悪影響を示すエビデンスがまた一つ増えたようです。

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血糖変動が冠動脈プラークの不安定性に影響 2015年5月29日 

コレステロール低下薬を服用している冠動脈疾患(CAD)患者では、血糖値の日内変動が冠動脈プラークの不安定性に影響する可能性が、神戸大学大学院医学研究科の黒田優氏らの研究で指摘された。「JACC: Cardiovascular Interventions」5月号に掲載された論文。

研究では、冠動脈インターベンション術(PCI)のため同大病院に紹介されてきたCAD患者のうち、スタチン服用下でLDLコレステロール120mg/dL未満、あるいはスタチン非服用下で同100 mg/dL未満の連続70例(うち糖尿病患者40例)を対象として、計165個の病変性状を評価。血糖値の日内変動が冠動脈プラークの性状に及ぼす影響を検討した。

その結果、プラークに占めるネクロティックコアの割合(%NC)は平均血糖変動幅(MAGE)に有意に相関することが分かった(r=0.490、P<0.001)。MAGEは%NCに最も強く影響する因子であり(係数β=0.080、P<0.001)、破綻しやすいthin-cap fibroatheromaの存在を示す唯一の独立した予測因子にもなっていた(オッズ比=1.037、95%信頼区間:1.010~1.065、P=0.007)。

黒田氏らはこの結果について、「血糖値の日内変動は、スタチン治療中のCAD患者における冠動脈プラークの不安定性に影響を及ぼすと考えられた。CAD患者に広くスタチンが投与されている現代においては、血糖変動の早期検出とコントロールの根拠についてさらなる研究が必要だ」と述べている。

記事原文 [2015年5月19日 HealthDayNews http://www.physiciansbriefing.com/Article.asp?AID=699510]
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こんばんは。

福助さんから「血糖変動が冠動脈プラークの不安定性に影響」という興味深い論文についてコメントいただきました。
ありがとうございます。

心筋梗塞などにつながっていく破綻しやすいプラークのことを、ネクロティックコアと呼びます。

つまりネクロティックコアが多いほど、心筋梗塞のリスクは高まるわけです。

そして、プラークに占めるネクロティックコアの割合(%NC)は、平均血糖変動幅(MAGE)に有意に相関することがわかったとのことです。

MAGEというのは平均血糖変動幅の指標であり、高値であるほど平均血糖変動幅の増大があることとなります。

結論としては、平均血糖変動幅増大があるほどネクロティックコアの割合が増えて、心筋梗塞のリスクが高まるということです。

そして、平均血糖変動幅増大を引き起こすのは、三大栄養素のうち、糖質だけです。

福助さんがご指摘のように、スタチンの使用の有無に関わらず、平均血糖変動幅増大はネクロティックコアの割合を増やし、心筋梗塞のリスクを高めると言えます。

糖質制限食なら平均血糖変動幅増大を予防できて、心筋梗塞のリスクを減らすことが可能です。

またまた糖質制限食には、大きな追い風が吹いたようです。


江部康二


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
心リハ患者への糖質制限食、減量・血糖改善効果あり。
おはようございます。

第20回日本心臓リハビリテーション学会学術集会のシンポジウム
「心臓リハビリテーションと栄養:適度な運動と栄養のバランスを問う」

において、

『心リハ患者への糖質制限食実践で、体力・精神指標の悪化なく減量・血糖改善効果あり』

という研究結果を、北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学教授の沖田孝一氏が報告しました。

糖質制限食において、また追い風となる素晴らしい研究報告です。

心筋梗塞、狭心症、心臓手術後などの患者さんは、心臓の働きが低下しています。

低下した体力を安全なやり方で回復させ、精神面でも自信をつける必要があります。

心臓リハビリテーションとは、食事療法、禁煙など生活指導、運動療法、カウンセリングなどを実践することにより、心臓病の患者さんが、快適で質の良い生活を取り戻すための総合プログラムです。

今回、沖田氏は、肥満や糖尿病を有する心リハ患者(12例)を糖質制限食群(6例)と総カロリー制限食群(6例)に分け、両食事療法の開始前と1カ月間継続後における各指標の変化を検討しました。

その結果、体重、BMI、ウエスト周囲長(腹囲)は糖質制限食群で有意に低下しましたが、総カロリー制限食群ではいずれも有意な変化は見られませんでした。

HbA1cは、糖質制限食群でのみ有意に低下しました。

大腿筋厚、膝伸展筋力、持久力といった筋力と体力の指標も、不安、うつ、認知機能といった精神活動の各指標も両群とも有意な変化は認められませんでした。

一部の医師が懸念するような、糖質制限食で筋力低下とか精神活動レベルが低下するといったことはなく、糖質制限食で安全に減量でき、血糖改善効果があったわけです。

総カロリー制限群では、減量も血糖も有意な改善なしなので、明らかに糖質制限食が総カロリー制限食より優位です。

血中脂質を調べたところ、中性脂肪は両群で低下、HDLコレステロールは両群ともほぼ不変でした。

しかし、総コレステロールとLDLコレステロールは、総カロリー制限食群では不変だったのに対して、糖質制限食群ではむしろ上昇傾向が認められました。

LDLコレステロールに関してですが、1ヶ月の経過ですので、糖質制限食で上昇することはあると思います。

特に、もともと菜食を中心にした食事パターンの人は、食材に含まれるコレステロールが少ないので、肝臓のコレステロール生産能力が高くなっています。

普通の食事の人で、肝臓でつくるコレステロールが7~8割で、食材からのコレステロールは2~3割です。

菜食中心の場合は、食材からのコレステロールが少ないので、肝臓で9割くらい作っている可能性があります。

このような人が、糖質制限食を実践すると「亢進した肝臓のコレステロール生産+増加した食材からのコレステロール」となるので、当分の間は、総コレステロールとLDLコレステロールが高値となります。

例えば、LDLが140mg/dlくらいだった人が、250mg~300mgくらいになることもあります。

半年、1年、2年・・・数年で、肝臓が調整して落ち着くことがほとんどです。

脂肪摂取に関して制限した逆の方向からのRCT研究論文ですが、米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において、

「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」

というのがあります。

結局肝臓が調整するので、脂肪制限食(コレステロール制限食)も脂肪(コレステロール)普通にありの食事も、8年間経つと血清コレステロール値には有意差なしということです。

5万人で8年間で、JAMAですので、信頼度が高い論文です。

脂肪制限群は20%です。

対照群は米国女性の普通摂取なので30数%と思います。

*Journal of American Medical Association(JAMA)誌
 2006年2月8日号の疾患ごとにまとめられた3本の論文で報告です。
*Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer?
  Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer?
  Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease?
  : The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial?
JAMA ,295(6):629-642.  643-654. 655-666.




江部康二



☆☆☆

以下、MT Pro サイトから、一部転載
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1407/1407087.html

[2014年7月31日]
心リハ患者への糖質制限食の影響は?
体力・精神指標の悪化なく減量・血糖改善効果

 肥満や糖尿病治療における低糖質食(糖質制限食)の是非が議論されている。肥満や糖尿病を有する心臓リハビリテーション(以下,心リハ)患者にはどう影響するのか-。心リハ患者に1カ月間,糖質制限食を続けてもらったところ,体重,BMIやHbA1cが有意に改善し,体力や精神面の指標には有意な変化が見られなかったという研究成果が明らかにされた。第20回日本心臓リハビリテーション学会学術集会(7月19~20日,会長=京都大学病院臨床研究総合センターEBM推進部特定教授・上嶋健治氏)のシンポジウム「心臓リハビリテーションと栄養:適度な運動と栄養のバランスを問う」で,北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学教授の沖田孝一氏が報告したもの。

糖質制限食群では体重,BMI,腹囲が有意に減少

 糖質制限食は,低脂質食よりも速やかかつ顕著な体重減少効果をもたらすことが,海外のランダム化比較試験などで報告されている。わが国では,NIPPON DATA 80において,糖質摂取量の少ない群ほど心血管死のリスクが低いことが示されている(関連記事)。

 糖尿病患者への糖質制限については,日本糖尿病学会が昨年(2013年)3月,炭水化物のみを極端に制限することはエビデンスが不足しており,現時点では勧められないとする声明を出した(関連記事)。しかし,糖質制限食の有効性を支持する声は今も少なくない。沖田氏もその1人だ。

 同氏は,糖質制限食による減量のメカニズムを次のように説明した。炭水化物などの糖質摂取量を制限すると,血糖値が上がらない。このため,インスリン分泌がほとんど起こらない。したがって,臓器や筋肉にブドウ糖が貯蔵されず,エネルギー源が枯渇する。すると,ブドウ糖の代わりに脂肪がエネルギー源として使われ,減量につながる。

 ただし,インスリンは筋力を増加させる方向に働く強力な蛋白同化ホルモンでもある。心リハ患者が低糖質食を取っていると,トレーニング効果が十分得られないのではないかとの疑問が湧く。また,ブドウ糖は脳活動のエネルギー源であるため,糖質制限食が精神活動を低下させることがないかという危惧も生じる。

 そこで同氏らは,肥満や糖尿病を有する心リハ患者(12例)を糖質制限食群(6例),総カロリー制限食群(6例)に分け,両食事療法の開始前と1カ月間継続後における各指標の変化を検討した。

 その結果,体重,BMI,ウエスト周囲長(腹囲)は糖質制限食群で有意に低下したが,総カロリー制限食群ではいずれも有意な変化は見られなかった(図1)。HbA1cは,糖質制限食群でのみ有意に低下した。ケトン体は糖質制限食群で有意に上昇した。大腿筋厚,膝伸展筋力,持久力は両群とも有意な変化が見られなかった。不安,うつ,認知機能の各指標も両群とも有意な変化は認められなかった。


症例によってはLDL-C上昇も

 一方,血中脂質の各指標を調べたところ,トリグリセライドは両群で低下,HDLコレステロールは両群ともほぼ不変だった。しかし,総コレステロール(TC),LDLコレステロール(LDL-C)は総カロリー制限食群では不変だったのに対して,糖質制限食群ではむしろ上昇傾向が認められた(図2)。
症例ごとの変化を見ると,一部の患者でTC,LDL-Cが著明に上昇していた。

 1カ月間の糖質制限食で有意な減量が得られ,体力面,精神面の指標を悪化させなかったことから,同氏は「糖質制限食は,肥満や糖尿病を伴う心リハ患者に考慮すべき食事療法の1つになる」と指摘した。ただし「患者によっては血清脂質が悪化する可能性がある」とし,その背景因子やメカニズムについて今後検討していく考えを示した。

(医学ライター・高橋 義彦)





☆☆☆


新刊のご案内です。



『炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません』
生活習慣病を予防&改善する糖質制限食31のポイント
江部康二著 東洋経済新報社
2014年8月1日(金)から発売中

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
脂肪肝と糖質制限食。2014年4月。
こんばんは

今日は、脂肪肝のお話です。

脂肪肝(しぼうかん)とは、文字通り肝臓に脂肪が蓄積した状態です。
近年、30代~40代を中心に増加傾向にあります。

脂肪肝は

1)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)
  a)単純脂肪肝 肥満などによるもの
  b)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic SteatoHepatitis)
2)アルコール性脂肪肝 飲酒によるもの

3)妊娠に伴うもの  急性妊娠性脂肪肝(AFLP)
  AFLP:Acute Fatty Liver of Pregnancy

などにわけられます。

NAFLD(nonalcoholic fatty liver disease、非アルコール性脂肪肝疾患)は、アルコールを原因としない脂肪肝です。

NAFLDの8割から9割は炎症や線維化を伴わない「単純性脂肪肝」です。

多くは肥満が関係します。単純脂肪肝の予後は良好です。

非アルコール性の脂肪肝はかつては、放置してもさしたることはないと言われていましたが、近年、上述の「NASH」が認識されるようになり、様相が一変しました。

非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis)を略してNASHです。

NASHは、肝炎から肝硬変や肝臓癌に進展することもあり、結構こわいのです。NAFLDの1割くらいが、NASHです。

単純性脂肪肝からNASHへ進行することもあります。

肝臓に脂肪が蓄積→脂肪肝→非アルコール性脂肪性肝炎→肝硬変→肝癌

B型ウィルスやC型ウィルスや飲酒以外に、NASHからも肝癌になり得るので、ゆめゆめ油断は禁物なのです。

脂肪肝の根本要因は、脂質ではなく糖質です。

①糖質を摂取すると血糖値が上昇します。
②血糖値が上昇すると追加分泌のインスリンが大量に分泌されます。
③追加分泌インスリンにより、筋肉細胞の糖輸送体が内部から細胞表面に移動します。
④筋肉細胞の糖輸送体(Glut4)により血液中のブドウ糖は細胞内に取り込まれます。
⑤まずエネルギー源として利用し、次いでグリコーゲンとして筋肉中に蓄えます。
⑥筋肉細胞に取り込まれずに、血液中で余ったブドウ糖は全て中性脂肪に変わり、
 脂肪細胞や肝臓に蓄えられます。

このように、追加分泌のインスリンが大量・頻回に出ることが、脂肪肝や肥満の根本要因であり、インスリンが肥満ホルモンと言われる所以です。

血糖値を上昇させるのは、3大栄養素「糖質・脂質・タンパク質」のうち、糖質だけです。

脂質・タンパク質は血糖値を上昇させません。

追加分泌インスリンが大量に必要となるのは、糖質摂取時だけです。
タンパク質は、ごく少量の追加分泌インスリンを分泌させます。
脂質は、追加分泌インスリンを分泌させません。

脂肪肝も内臓脂肪肥満もメタボリック・シンドロームも、糖質の頻回・過剰摂取によるインスリンの頻回・過剰分泌が根本要因と思います。

内臓脂肪肥満やメタボになれば、インスリン抵抗性も出現してきて、血糖値を正常に保つために基礎分泌インスリンの量も増加します。

このようにして、インスリン追加分泌も基礎分泌も過剰になり、ますます、脂肪肝や内臓脂肪肥満やメタボリック・シンドロームは進行して悪循環に陥ります。

上述の如く人体の生理・栄養・代謝面から理論的に考えてみると、

<糖質→食後血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成→脂肪肝・肥満>

ということが明確に理解できます。

つまり、糖質を普通に食べていたら、少々のカロリー制限をしても、脂肪肝が改善することは極めて困難なのです。

一方、糖質制限食実践で、例えば肉・魚・豆腐などを摂取すれば、当然高脂質・高タンパク食となりますが、この間常に脂肪が分解されエネルギー源として使われています。

つまり、糖質制限食を食べている最中にも同時に中性脂肪が分解されて脂肪酸やケトン体になり、骨格筋・心筋・内臓でエネルギー源として利用されているのです。

この「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」が日常的に利用されているのが、人類本来の姿であり、農耕前の700万年間はずっとそうでした。

糖質制限食で脂肪が分解されていた人が、糖質を摂取して血糖値が上昇すると、

「糖質制限食→中性脂肪分解→脂肪酸・ケトン体→骨格筋・心筋・内臓のエネルギー源」

というパターンが

「糖質摂取→血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成」

というパターンに変化し、脂肪肝・肥満につながるわけです。

私自身、2002年の糖尿病発覚の時点で、メタボリックシンドロームの基準を満たしていました。

<身長167cm 体重66kg 高血圧140~180/90~110 腹囲86cm>

スーパー糖質制限食実践半年で10kg減量して56kg。

血圧は140~180/90~110 → 120~130/70~80。

メタボリックシンドロームの基準が全て正常になりました。

内臓脂肪CT126cm2 → 70cm2 (正常は100未満)

となりました。

腹部エコーでも脂肪肝は改善しました。

私だけでなく多くの脂肪肝の患者さんがスーパー糖質制限食で速やかに改善しています。

ブログ読者の脂肪肝の皆さん、安心して魚も肉も卵も野菜もしっかり食べて、美味しく楽しくスーパー糖質制限食で、脂肪肝改善を目指して下さいね。

なお、急性妊娠性脂肪肝(AFLP)はまれな疾患(6000~7000妊娠に1例ていど)ですが、重篤となることもあり注意が必要です。

AFLPは理論的には糖質制限食で予防できると思います。


江部康二


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