2017年03月16日 (木)
【17/03/15 ケトン体質
HOMA-βについて
いつもブログ拝見しています。
糖質制限で血液検査良好で嬉しい限りです。ありがとうございます。
今日はHOMA-βについて教えていただきたいのですが、3ヶ月前の検査にて空腹時インスリン2.0空腹時血糖値74でした。空腹時インスリン2.0は基準値を下回る数値で、HOMA-βも65となり基準値オーバーです。
今回の検査結果では空腹時インスリン5.1空腹時血糖値74で、空腹時インスリンは正常値内、HOMA-βは166でかなりのオーバーです。
空腹時血糖値が74だとして、HOMA-βが基準値内となる為には、空腹時インスリンが1.3〜1.8で基準値2.2〜を下回らなければならないと思います。空腹時インスリンが基準値となると、HOMA-βは基準値オーバーです。
結局空腹時インスリンは高い方がいいのか低い方がいいのかよくわかりません。その辺りを教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。 】
こんにちは。
ケトン体質さんから、
HOMA-β、空腹時インスリン、空腹時血糖値について
コメント・質問を頂きました。
3ヶ月前の検査
空腹時インスリン:2.0μU/ml(基準値未満)
空腹時血糖値:74mg/dl
HOMA-β:65
HOMA-R:0.37
今回の検査
空腹時インスリン:5.1μU/ml(基準値内)
空腹時血糖値:74mg/dl
HOMA-β:166
HOMA-R:0.93
まず、インスリンの基準値ですが、検査機関によりいろいろあります。
ケトン体質さんの検査機関では、基準値は<3~15 μU/mL>でしょうか。
これは、糖質を普通に食べている人のインスリンの基準値です。
スーパー糖質制限食実践中の人の基準値は、もう少し低い可能性があります。
すなわち、狩猟・採集時代で穀物摂取がなく糖質制限食だった頃の人類のインスリンの基準値は、現代の基準値より低かった可能性が高いのです。
3ヶ月前のデータですが、インスリン基礎分泌がやや低めですが、早朝空腹時血糖は正常なのでうまく折り合いがついていて、好ましいです。
基礎分泌インスリンが低くて、早朝空腹時血糖が正常なのは、インスリンの効きが良いということであり、とても好ましいことです。
さてインスリンには、24時間少量持続的に出ている基礎分泌と、糖質を摂取したときに大量にでる追加分泌があります。
一般に、空腹時のIRI(インスリン)は、基礎分泌とインスリン抵抗性の評価に用います。
追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。
この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。
その後、膵臓のベータ細胞は、摂取された糖質に対して第2相反応と呼ばれる持続するインスリン分泌を行います。
糖尿人の場合は、第1相が欠落・不足していたり、第2相も、不足・遷延したりすることが結構あるようです。
HOMA-βは、空腹時血糖値と空腹時インスリン値で計算するのですが、75g経口ブドウ糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関することがわかっています。
HOMA-βが正常ということは、インスリン追加分泌の第2相は正常にでていることになります。
罹病期間の長い糖尿人では、HOMA-βが基準値を下回ることが多いです。
インスリン抵抗性があって、HOMA-βが基準値を超えるのは問題ですが、インスリン抵抗性がないなら問題はないと思います。
すなわちケトン体質さんのパターンなら大丈夫です。
通常は、インスリン抵抗性があるとき、インスリンが多く出るようになります。
インスリン抵抗性はHOMA-Rで計算しますが、空腹時のIRI(インスリン)が上限近い、あるいはそれ以上あればそれだけでもインスリン抵抗性がある可能性が高いです。
私は、最近は、農耕以前(穀物摂取なし)の人類の早朝空腹時のインスリン値は、1.5~6.0μU/mlくらいが基準値ではなかったかと考えています。
つまり、空腹時IRI:10μU/mlなどは、現代の基準値(3~15μU/ml)内ですが、すでに肥満などによるインスリン抵抗性があるのではないかと思うのです。
ケトン体質さんの場合は、3ヶ月前も今回も比較的、少量のインスリンで空腹時血糖値は74mg/dlと極めて良好なので大変好ましいと思います。
ただ、インンスリンがないと、人は死亡します。
基礎分泌のインスリンは生命維持に絶対に必要なのです。
実際、1921年にインスリンが合成されるまでは、1型糖尿病で内因性インスリンゼロの場合は平均余命は半年程度でした。
一方、インスリンは肥満ホルモンであり、過剰分泌では発癌性があり、アルツハイマー病のリスクともなり、老化のリスクでもあります。
つまり、インスリンというホルモンは人体に絶対に必要なのですが、血糖コントロールができている限りにおいて、その分泌が少なければ少ないほど身体には優しいのです。
言い換えれば、インスリン分泌が少なくてすむ食生活を心がけていれば、肥満、癌、アルツハイマー病、老化、動脈硬化などのリスクは減少するのです。
インスリン分泌が必要最低限で少なくてすむ食生活が『スーパー糖質制限食』なのです。
江部康二
☆インスリン分泌指標
HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時の検査であるが経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、
よく相関する。
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60
30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下。
インスリン使用中の患者には使えない。
☆☆
インスリン抵抗性指標
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
HOMA-βについて
いつもブログ拝見しています。
糖質制限で血液検査良好で嬉しい限りです。ありがとうございます。
今日はHOMA-βについて教えていただきたいのですが、3ヶ月前の検査にて空腹時インスリン2.0空腹時血糖値74でした。空腹時インスリン2.0は基準値を下回る数値で、HOMA-βも65となり基準値オーバーです。
今回の検査結果では空腹時インスリン5.1空腹時血糖値74で、空腹時インスリンは正常値内、HOMA-βは166でかなりのオーバーです。
空腹時血糖値が74だとして、HOMA-βが基準値内となる為には、空腹時インスリンが1.3〜1.8で基準値2.2〜を下回らなければならないと思います。空腹時インスリンが基準値となると、HOMA-βは基準値オーバーです。
結局空腹時インスリンは高い方がいいのか低い方がいいのかよくわかりません。その辺りを教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。 】
こんにちは。
ケトン体質さんから、
HOMA-β、空腹時インスリン、空腹時血糖値について
コメント・質問を頂きました。
3ヶ月前の検査
空腹時インスリン:2.0μU/ml(基準値未満)
空腹時血糖値:74mg/dl
HOMA-β:65
HOMA-R:0.37
今回の検査
空腹時インスリン:5.1μU/ml(基準値内)
空腹時血糖値:74mg/dl
HOMA-β:166
HOMA-R:0.93
まず、インスリンの基準値ですが、検査機関によりいろいろあります。
ケトン体質さんの検査機関では、基準値は<3~15 μU/mL>でしょうか。
これは、糖質を普通に食べている人のインスリンの基準値です。
スーパー糖質制限食実践中の人の基準値は、もう少し低い可能性があります。
すなわち、狩猟・採集時代で穀物摂取がなく糖質制限食だった頃の人類のインスリンの基準値は、現代の基準値より低かった可能性が高いのです。
3ヶ月前のデータですが、インスリン基礎分泌がやや低めですが、早朝空腹時血糖は正常なのでうまく折り合いがついていて、好ましいです。
基礎分泌インスリンが低くて、早朝空腹時血糖が正常なのは、インスリンの効きが良いということであり、とても好ましいことです。
さてインスリンには、24時間少量持続的に出ている基礎分泌と、糖質を摂取したときに大量にでる追加分泌があります。
一般に、空腹時のIRI(インスリン)は、基礎分泌とインスリン抵抗性の評価に用います。
追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。
この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。
その後、膵臓のベータ細胞は、摂取された糖質に対して第2相反応と呼ばれる持続するインスリン分泌を行います。
糖尿人の場合は、第1相が欠落・不足していたり、第2相も、不足・遷延したりすることが結構あるようです。
HOMA-βは、空腹時血糖値と空腹時インスリン値で計算するのですが、75g経口ブドウ糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関することがわかっています。
HOMA-βが正常ということは、インスリン追加分泌の第2相は正常にでていることになります。
罹病期間の長い糖尿人では、HOMA-βが基準値を下回ることが多いです。
インスリン抵抗性があって、HOMA-βが基準値を超えるのは問題ですが、インスリン抵抗性がないなら問題はないと思います。
すなわちケトン体質さんのパターンなら大丈夫です。
通常は、インスリン抵抗性があるとき、インスリンが多く出るようになります。
インスリン抵抗性はHOMA-Rで計算しますが、空腹時のIRI(インスリン)が上限近い、あるいはそれ以上あればそれだけでもインスリン抵抗性がある可能性が高いです。
私は、最近は、農耕以前(穀物摂取なし)の人類の早朝空腹時のインスリン値は、1.5~6.0μU/mlくらいが基準値ではなかったかと考えています。
つまり、空腹時IRI:10μU/mlなどは、現代の基準値(3~15μU/ml)内ですが、すでに肥満などによるインスリン抵抗性があるのではないかと思うのです。
ケトン体質さんの場合は、3ヶ月前も今回も比較的、少量のインスリンで空腹時血糖値は74mg/dlと極めて良好なので大変好ましいと思います。
ただ、インンスリンがないと、人は死亡します。
基礎分泌のインスリンは生命維持に絶対に必要なのです。
実際、1921年にインスリンが合成されるまでは、1型糖尿病で内因性インスリンゼロの場合は平均余命は半年程度でした。
一方、インスリンは肥満ホルモンであり、過剰分泌では発癌性があり、アルツハイマー病のリスクともなり、老化のリスクでもあります。
つまり、インスリンというホルモンは人体に絶対に必要なのですが、血糖コントロールができている限りにおいて、その分泌が少なければ少ないほど身体には優しいのです。
言い換えれば、インスリン分泌が少なくてすむ食生活を心がけていれば、肥満、癌、アルツハイマー病、老化、動脈硬化などのリスクは減少するのです。
インスリン分泌が必要最低限で少なくてすむ食生活が『スーパー糖質制限食』なのです。
江部康二
☆インスリン分泌指標
HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時の検査であるが経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、
よく相関する。
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60
30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下。
インスリン使用中の患者には使えない。
☆☆
インスリン抵抗性指標
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
2016年06月26日 (日)
こんばんは。
膵β細胞からのインスリン分泌と糖尿病の病態進展との関係は、過去いろいろ研究されてきました。
それで諸説あるのですが、「糖尿病を発症した時点で、膵臓のβ細胞量は35%残存で65%が失われている」というのが剖検研究からの仮説です。
同様に剖検による研究では、IGT(食後高血糖境界型・予備軍)の段階で、耐糖能正常の状態に対して、β細胞量は50%減少していることが報告されました。
つまり、糖尿病発症前の段階から、インスリン分泌の低下がすでに認められたわけです。
また他の多くの研究から、
「血糖値上昇と膵β細胞の機能低下が相関すること」
「2型糖尿病の発症以降は、インスリン感受性が維持されていても膵β細胞機能は徐々に低下すること」
が報告されています。
要するに、膵β細胞機能は糖尿病発症前の段階からとっくに低下していて、疾患進行とともにさらに悪化すると考えられています。
つまり現状では2型糖尿病は、進行性の不治の病とされています。
これでは、糖尿人はまるでお先真っ暗ではないですか(;△;)
しかしこれは、従来の薬物療法(SU剤やインスリン注射など)と、従来のカロリー制限食(高糖質食)を実践した場合のお話です。
結局、従来の治療法では「食後高血糖」が防げないので、膵β細胞が進行性に障害され続けて、インスリン分泌能が徐々に低下していったものと考えられます。
それならば、スーパー糖質制限食実践で食後高血糖を正常にコントロールすれば、膵β細胞の進行性の障害は予防できると考えられます。
IGT(食後高血糖境界型・予備軍)の段階で、正常に比し50%のβ細胞量しかない可能性があると、述べました。
糖尿病発症の段階ならもっと減っています。
ただ、剖検の結果は兎も角としてβ細胞は段階的には「壊れている細胞」、「疲弊している細胞」、「元気な細胞」の3種類のβ細胞があると思います。
壊れている細胞はもう元には戻りませんが、疲弊しているβ細胞はスーパー糖質制限食で、追加分泌インスリンの必要がほとんどなければ休養できて回復します。
スーパー糖質制限食で、食後高血糖はリアルタイムに改善します。軽症の糖尿人なら空腹時血糖値もそれに伴い速やかに改善します。
一方「糖毒」(*)状態のやや重い病態の糖尿人もおられます。
こちらもスーパー糖質制限食で、「糖毒」の悪循環が解除されれば、血糖コントロールも良好となります。
そして、美味しく楽しくスーパー糖質制限食実践を続けていけば、食後高血糖もなく、β細胞の新たな障害もなく、健康な人生をまっとうすることができます。
(*)糖毒
① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→筋肉細胞レベルでのインスリン抵抗性増大
高血糖があると①と②が体内で生じます。
インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。
≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
江部康二
膵β細胞からのインスリン分泌と糖尿病の病態進展との関係は、過去いろいろ研究されてきました。
それで諸説あるのですが、「糖尿病を発症した時点で、膵臓のβ細胞量は35%残存で65%が失われている」というのが剖検研究からの仮説です。
同様に剖検による研究では、IGT(食後高血糖境界型・予備軍)の段階で、耐糖能正常の状態に対して、β細胞量は50%減少していることが報告されました。
つまり、糖尿病発症前の段階から、インスリン分泌の低下がすでに認められたわけです。
また他の多くの研究から、
「血糖値上昇と膵β細胞の機能低下が相関すること」
「2型糖尿病の発症以降は、インスリン感受性が維持されていても膵β細胞機能は徐々に低下すること」
が報告されています。
要するに、膵β細胞機能は糖尿病発症前の段階からとっくに低下していて、疾患進行とともにさらに悪化すると考えられています。
つまり現状では2型糖尿病は、進行性の不治の病とされています。
これでは、糖尿人はまるでお先真っ暗ではないですか(;△;)
しかしこれは、従来の薬物療法(SU剤やインスリン注射など)と、従来のカロリー制限食(高糖質食)を実践した場合のお話です。
結局、従来の治療法では「食後高血糖」が防げないので、膵β細胞が進行性に障害され続けて、インスリン分泌能が徐々に低下していったものと考えられます。
それならば、スーパー糖質制限食実践で食後高血糖を正常にコントロールすれば、膵β細胞の進行性の障害は予防できると考えられます。
IGT(食後高血糖境界型・予備軍)の段階で、正常に比し50%のβ細胞量しかない可能性があると、述べました。
糖尿病発症の段階ならもっと減っています。
ただ、剖検の結果は兎も角としてβ細胞は段階的には「壊れている細胞」、「疲弊している細胞」、「元気な細胞」の3種類のβ細胞があると思います。
壊れている細胞はもう元には戻りませんが、疲弊しているβ細胞はスーパー糖質制限食で、追加分泌インスリンの必要がほとんどなければ休養できて回復します。
スーパー糖質制限食で、食後高血糖はリアルタイムに改善します。軽症の糖尿人なら空腹時血糖値もそれに伴い速やかに改善します。
一方「糖毒」(*)状態のやや重い病態の糖尿人もおられます。
こちらもスーパー糖質制限食で、「糖毒」の悪循環が解除されれば、血糖コントロールも良好となります。
そして、美味しく楽しくスーパー糖質制限食実践を続けていけば、食後高血糖もなく、β細胞の新たな障害もなく、健康な人生をまっとうすることができます。
(*)糖毒
① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→筋肉細胞レベルでのインスリン抵抗性増大
高血糖があると①と②が体内で生じます。
インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。
≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
江部康二
2016年06月20日 (月)
1)
基礎分泌インスリンは、ヒトの生命維持に必要不可欠です。
2)
スーパー糖質制限食でも、基礎分泌の2~3倍レベルのインスリンは分泌されますし、 追加分泌インスリンも必要不可欠です。
3)
インスリン注射で、1型糖尿病患者の命が助かるようになり、近年、寿命が延びてきました。
4)
過剰なインスリンは、酸化ストレスとなり、がん、老化、動脈硬化、糖尿病合併症、アルツハイマー病などのリスクとなります。
こんばんは。
今回はインスリンの功罪について考察してみます。
インスリンには、24時間継続して少量出続けている基礎分泌と、糖質を摂取して血糖値が上昇したときに出る追加分泌の2種類があります。
タンパク質摂取でも少量のインスリンが追加分泌されますが、脂質摂取では、インスリンは追加分泌されません。
これでまず解るのは、食物を摂取していないときでも、人体の代謝には、少量のインスリンが必須ということですね。
このインスリンの基礎分泌がなくなったら、人体の代謝全体が崩壊していきます。
つまり、基礎分泌のインスリンがないと、全身の高度な代謝失調が生じ、生命の危険があります。
例えば「運動をしたらインスリン非依存的に血糖値がさがる」といっても、インスリン基礎分泌が確保されているのが前提のお話です。
もし、基礎インスリンが不足している状態で運動すれば、運動で血糖値はかえって上昇します。
また、肝臓で行っている糖新生も、基礎インスリンが分泌されていなければ制御不能となり、空腹時血糖値が300mg/dl~400mg/dl、或いはこれ以上にもなります。
また、糖質を食べて血糖値が上昇したとき、追加分泌のインスリンがでなければ、高血糖が持続します。
高血糖の持続は糖毒といわれ、膵臓のβ細胞を傷害し、インスリン抵抗性を悪化させます。
さてブドウ糖が、細胞膜を通過するためには、特別な膜輸送タンパク質が必要です。
それが糖輸送体(GLUT)であり、現在GLUT1~GLUT14まで確認されています。
GLUT1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で常に細胞の表面にあり、血流さえあれば即血糖を取り込めます。
これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なのがGLUT4で、基礎分泌のインスリンレベルだと、通常は細胞内部に沈んでいます。
GLUT1~GLUT14の中で、インスリンに依存しているのはGLUT4だけで特殊です。
筋肉細胞と脂肪細胞にあるGLUT-4は、インスリン追加分泌がないと細胞内に沈んでいるのでブドウ糖を取り込めません。
インスリンが追加分泌されるとGLUT-4は細胞表面に移動して血糖を取り込むのです。
このようにインスリンは、生命の維持に必須の重要なホルモンであることが確認できました。
また近年、1型糖尿病患者の寿命は延びています。
以下、糖尿病ネットワークから一部抜粋。
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/024725.php
1975年に米国で行われた調査では1型糖尿病患者の寿命は、健康人に比べて27年短いとされていました。
スコットランドのダンディー大学が2万4,691人の1型糖尿病患者を対象に行った調査では、20代前半の糖尿病患者の予想される平均余命は、健康な人に比べ男性で11.1年、女性で12.9年短いという結果になりました(2015年1月報告)。
このようにインスリンの使用法や種類が改善されたことで、1型糖尿病患者の寿命はかなり改善されてきています。
インスリン注射が、おおいに役に立っているわけです。
一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。
ロッテルダム研究によれば、インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。
Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」
インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べてガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。
2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」
Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258
このようにインスリンの弊害を見てみると、インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましいことがわかります。
別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、インスリンの頻回・過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
スーパー糖質制限食を実践すれば、インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、様々な生活習慣病の予防が期待できます。
ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。
インスリンは糖質代謝の調整が主作用ですが、それ以外にも下記のごとくいろいろな働きがあります。
☆☆☆インスリンの作用
インスリンは、グリコーゲン合成・タンパク質合成・脂肪合成など、栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込む。
インスリンが作用するのは、主として、筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪組織、肝臓である。
A)糖質代謝
*ブドウ糖の筋肉細胞・脂肪細胞内への取り込みを促進させる。
*グリコーゲン合成を促進させる。
*グリコーゲン分解を抑制する。
*肝臓の糖新生を抑制し、ブドウ糖の血中放出を抑制する。
B)タンパク質代謝
*骨格筋に作用してタンパク質合成を促進させる。
*骨格筋に作用してタンパク質の異化を抑制する。
C)脂質代謝
*脂肪の合成を促進する。
*脂肪の分解を抑制する。
江部康二
基礎分泌インスリンは、ヒトの生命維持に必要不可欠です。
2)
スーパー糖質制限食でも、基礎分泌の2~3倍レベルのインスリンは分泌されますし、 追加分泌インスリンも必要不可欠です。
3)
インスリン注射で、1型糖尿病患者の命が助かるようになり、近年、寿命が延びてきました。
4)
過剰なインスリンは、酸化ストレスとなり、がん、老化、動脈硬化、糖尿病合併症、アルツハイマー病などのリスクとなります。
こんばんは。
今回はインスリンの功罪について考察してみます。
インスリンには、24時間継続して少量出続けている基礎分泌と、糖質を摂取して血糖値が上昇したときに出る追加分泌の2種類があります。
タンパク質摂取でも少量のインスリンが追加分泌されますが、脂質摂取では、インスリンは追加分泌されません。
これでまず解るのは、食物を摂取していないときでも、人体の代謝には、少量のインスリンが必須ということですね。
このインスリンの基礎分泌がなくなったら、人体の代謝全体が崩壊していきます。
つまり、基礎分泌のインスリンがないと、全身の高度な代謝失調が生じ、生命の危険があります。
例えば「運動をしたらインスリン非依存的に血糖値がさがる」といっても、インスリン基礎分泌が確保されているのが前提のお話です。
もし、基礎インスリンが不足している状態で運動すれば、運動で血糖値はかえって上昇します。
また、肝臓で行っている糖新生も、基礎インスリンが分泌されていなければ制御不能となり、空腹時血糖値が300mg/dl~400mg/dl、或いはこれ以上にもなります。
また、糖質を食べて血糖値が上昇したとき、追加分泌のインスリンがでなければ、高血糖が持続します。
高血糖の持続は糖毒といわれ、膵臓のβ細胞を傷害し、インスリン抵抗性を悪化させます。
さてブドウ糖が、細胞膜を通過するためには、特別な膜輸送タンパク質が必要です。
それが糖輸送体(GLUT)であり、現在GLUT1~GLUT14まで確認されています。
GLUT1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で常に細胞の表面にあり、血流さえあれば即血糖を取り込めます。
これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なのがGLUT4で、基礎分泌のインスリンレベルだと、通常は細胞内部に沈んでいます。
GLUT1~GLUT14の中で、インスリンに依存しているのはGLUT4だけで特殊です。
筋肉細胞と脂肪細胞にあるGLUT-4は、インスリン追加分泌がないと細胞内に沈んでいるのでブドウ糖を取り込めません。
インスリンが追加分泌されるとGLUT-4は細胞表面に移動して血糖を取り込むのです。
このようにインスリンは、生命の維持に必須の重要なホルモンであることが確認できました。
また近年、1型糖尿病患者の寿命は延びています。
以下、糖尿病ネットワークから一部抜粋。
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/024725.php
1975年に米国で行われた調査では1型糖尿病患者の寿命は、健康人に比べて27年短いとされていました。
スコットランドのダンディー大学が2万4,691人の1型糖尿病患者を対象に行った調査では、20代前半の糖尿病患者の予想される平均余命は、健康な人に比べ男性で11.1年、女性で12.9年短いという結果になりました(2015年1月報告)。
このようにインスリンの使用法や種類が改善されたことで、1型糖尿病患者の寿命はかなり改善されてきています。
インスリン注射が、おおいに役に立っているわけです。
一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。
ロッテルダム研究によれば、インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。
Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」
インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べてガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。
2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」
Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258
このようにインスリンの弊害を見てみると、インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましいことがわかります。
別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、インスリンの頻回・過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
スーパー糖質制限食を実践すれば、インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、様々な生活習慣病の予防が期待できます。
ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。
インスリンは糖質代謝の調整が主作用ですが、それ以外にも下記のごとくいろいろな働きがあります。
☆☆☆インスリンの作用
インスリンは、グリコーゲン合成・タンパク質合成・脂肪合成など、栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込む。
インスリンが作用するのは、主として、筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪組織、肝臓である。
A)糖質代謝
*ブドウ糖の筋肉細胞・脂肪細胞内への取り込みを促進させる。
*グリコーゲン合成を促進させる。
*グリコーゲン分解を抑制する。
*肝臓の糖新生を抑制し、ブドウ糖の血中放出を抑制する。
B)タンパク質代謝
*骨格筋に作用してタンパク質合成を促進させる。
*骨格筋に作用してタンパク質の異化を抑制する。
C)脂質代謝
*脂肪の合成を促進する。
*脂肪の分解を抑制する。
江部康二
2016年05月01日 (日)
おはようございます。
狩猟・採集時代(糖質制限食時代)のご先祖の早朝空腹時インスリン(基礎分泌)の基準値は、いったいどのくらいだったのでしょう?
現代人の早朝空腹時インスリンの基準値ですが、検査機関にもよりますが、一般的には
基準値: 2~10 μU/mL
基準値: 3~15 μU/mL
基準値:1.84~12.2μIU/mL (SRLという最大の検査機関)
となっています。
しかし私は、インスリン抵抗性がほとんどない正常人においては、早朝空腹時インスリンの基準値は、『0.5~4.0・・・せいぜい5~6μIU/mLまで』くらいではないかと考えています。
例えば、早朝空腹時インスリン値が1.0μIU/mLくらいで、血糖値は70~80mg/dl程度の人が時々いますが、これは正常人と思います。
逆に例え基準値内でも、早朝空腹時インスリン値が8~10μIU/mLもあるのは、インスリン抵抗性がある人と思われます。
現行の基準値は、普通に糖質を毎日食べている人のデータです。
狩猟・採集時代(糖質制限食時代)のご先祖の早朝空腹時インスリンの基準値は、恐らく『0.5~4.0IU/mL』くらいと思われます。
糖質摂取が少なくインスリン抵抗性もないご先祖なら、最低限の基礎分泌インスリンしか必要なかったはずです。
インスリンは、人体に絶対に必要な重要なホルモンです。
一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。
このようにインスリンの弊害を見てみると、インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましいことがわかります。
別の言い方をすれば、農耕開始後の糖質の過剰摂取が、インスリンの過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
スーパー糖質制限食を実践すれば、インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、様々な生活習慣病の予防が期待できます。
スーパー糖質制限食実践で、早朝空腹時インスリンが現行の基準値を下回っても、早朝空腹時血糖コントロールが良好なら、まったく問題はありません。
血糖コントロールする上で、インスリン抵抗性がほとんどないので基礎分泌インスリンも必要最低限で済んでいるということです。
HbA1cだけでなくグリコアルブミン(GA)も良好ならば、食後血糖値のコントロールも良好であり、β細胞の追加分泌インスリン産生がしっかり働いている証拠です。
ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。
江部康二
☆☆☆
【16/04/28 ゆみ
再度検査致しました。
いつもブログ拝読しております。
昨年12月29日のブログで検査値についてのコメントを頂いた看護師のゆみと申します。その節は詳しく解説して頂き、ありがとうございました。
糖質制限をスーパーに近づける努力をしており、再検査してきました。
食前血糖値86 →82
HbA1c 6.0→5.7 →5.6
インスリン 2.8→1.4 →0.8
グリコアルブミン15.6→17.1 →14.9
HOMAβ21.9 →15.1
グリコアルブミンは改善してきていますが、インスリン分泌能が更に低下してしまい、ショックを受けております。
糖質制限をしても私のインスリン分泌能はこのまま急激に低下し、そのうちインスリン注射になってしまうのでは、ととても心配です。
糖質制限を継続しても分泌能は改善されないのでしょうか?】
ゆみさん。
IRI:0.8で空腹時血糖値:82mgというのは、とても好ましいデータです。
インスリン抵抗性がほとんどないので少量のインスリンで事足りるということです。
狩猟・採集時代のご先祖のデータに近いと思われます。
GAも基準値内に改善していて、血糖コントロールが極めて良好ということを示しています。
インスリンは、人体に絶対に必要なホルモンですが、血糖コントロールができているなら、低ければ低いほど好ましいのです。
狩猟・採集時代(糖質制限食時代)のインスリンの基準値は「0.5~4.0」くらいだったのではないかと、私は考えています。
詳しくは興味深いので、記事にしたいと思います。
【16/04/29 看護師ゆみです。
お忙しい中コメント頂きましてありがとうございます。
少ないインスリン量で血糖値82は良好、との事で安心を致しました。
が…分泌能はどんどん低下しています。30パーセント以下は顕著な低下と過去に記されてらっしゃいます。
どんどん低下しておりますが、抵抗性がないためインスリン注射は必要ないけれど分泌能自体は本来治療対象という事でしょうか?
糖質制限を始めたから低下したのか、体質として自然の流れで低下したのか、と少し不思議に思います。】
看護師ゆみ さん
HOMA-βは、あくまでも、糖質をたっぷり食べている人の計算式です。
分泌能の低下と考えることはないと思います。
分泌する必要性がないので、少量で折り合いがついているわけです。
少量のインスリンで血糖コントロールができているので理想的と言えます。
インスリンが多く分泌されると、老化、ガン、動脈硬化、高血圧、肥満、アルツハイマー病・・・などのリスクとなります。
繰り返しますが、狩猟・採集時代のご先祖は、ゆみさんくらいのインスリン分泌量で折り合いがついていたと思います。
狩猟・採集時代(糖質制限食時代)のご先祖の早朝空腹時インスリン(基礎分泌)の基準値は、いったいどのくらいだったのでしょう?
現代人の早朝空腹時インスリンの基準値ですが、検査機関にもよりますが、一般的には
基準値: 2~10 μU/mL
基準値: 3~15 μU/mL
基準値:1.84~12.2μIU/mL (SRLという最大の検査機関)
となっています。
しかし私は、インスリン抵抗性がほとんどない正常人においては、早朝空腹時インスリンの基準値は、『0.5~4.0・・・せいぜい5~6μIU/mLまで』くらいではないかと考えています。
例えば、早朝空腹時インスリン値が1.0μIU/mLくらいで、血糖値は70~80mg/dl程度の人が時々いますが、これは正常人と思います。
逆に例え基準値内でも、早朝空腹時インスリン値が8~10μIU/mLもあるのは、インスリン抵抗性がある人と思われます。
現行の基準値は、普通に糖質を毎日食べている人のデータです。
狩猟・採集時代(糖質制限食時代)のご先祖の早朝空腹時インスリンの基準値は、恐らく『0.5~4.0IU/mL』くらいと思われます。
糖質摂取が少なくインスリン抵抗性もないご先祖なら、最低限の基礎分泌インスリンしか必要なかったはずです。
インスリンは、人体に絶対に必要な重要なホルモンです。
一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。
このようにインスリンの弊害を見てみると、インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましいことがわかります。
別の言い方をすれば、農耕開始後の糖質の過剰摂取が、インスリンの過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
スーパー糖質制限食を実践すれば、インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、様々な生活習慣病の予防が期待できます。
スーパー糖質制限食実践で、早朝空腹時インスリンが現行の基準値を下回っても、早朝空腹時血糖コントロールが良好なら、まったく問題はありません。
血糖コントロールする上で、インスリン抵抗性がほとんどないので基礎分泌インスリンも必要最低限で済んでいるということです。
HbA1cだけでなくグリコアルブミン(GA)も良好ならば、食後血糖値のコントロールも良好であり、β細胞の追加分泌インスリン産生がしっかり働いている証拠です。
ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。
江部康二
☆☆☆
【16/04/28 ゆみ
再度検査致しました。
いつもブログ拝読しております。
昨年12月29日のブログで検査値についてのコメントを頂いた看護師のゆみと申します。その節は詳しく解説して頂き、ありがとうございました。
糖質制限をスーパーに近づける努力をしており、再検査してきました。
食前血糖値86 →82
HbA1c 6.0→5.7 →5.6
インスリン 2.8→1.4 →0.8
グリコアルブミン15.6→17.1 →14.9
HOMAβ21.9 →15.1
グリコアルブミンは改善してきていますが、インスリン分泌能が更に低下してしまい、ショックを受けております。
糖質制限をしても私のインスリン分泌能はこのまま急激に低下し、そのうちインスリン注射になってしまうのでは、ととても心配です。
糖質制限を継続しても分泌能は改善されないのでしょうか?】
ゆみさん。
IRI:0.8で空腹時血糖値:82mgというのは、とても好ましいデータです。
インスリン抵抗性がほとんどないので少量のインスリンで事足りるということです。
狩猟・採集時代のご先祖のデータに近いと思われます。
GAも基準値内に改善していて、血糖コントロールが極めて良好ということを示しています。
インスリンは、人体に絶対に必要なホルモンですが、血糖コントロールができているなら、低ければ低いほど好ましいのです。
狩猟・採集時代(糖質制限食時代)のインスリンの基準値は「0.5~4.0」くらいだったのではないかと、私は考えています。
詳しくは興味深いので、記事にしたいと思います。
【16/04/29 看護師ゆみです。
お忙しい中コメント頂きましてありがとうございます。
少ないインスリン量で血糖値82は良好、との事で安心を致しました。
が…分泌能はどんどん低下しています。30パーセント以下は顕著な低下と過去に記されてらっしゃいます。
どんどん低下しておりますが、抵抗性がないためインスリン注射は必要ないけれど分泌能自体は本来治療対象という事でしょうか?
糖質制限を始めたから低下したのか、体質として自然の流れで低下したのか、と少し不思議に思います。】
看護師ゆみ さん
HOMA-βは、あくまでも、糖質をたっぷり食べている人の計算式です。
分泌能の低下と考えることはないと思います。
分泌する必要性がないので、少量で折り合いがついているわけです。
少量のインスリンで血糖コントロールができているので理想的と言えます。
インスリンが多く分泌されると、老化、ガン、動脈硬化、高血圧、肥満、アルツハイマー病・・・などのリスクとなります。
繰り返しますが、狩猟・採集時代のご先祖は、ゆみさんくらいのインスリン分泌量で折り合いがついていたと思います。
2015年09月06日 (日)
【15/09/05 きむらき
糖負荷血糖測定しました。
江部先生
いつもプログを拝見し、夫婦でスタンダードの糖質制限をしております。(約3か月ですが…)二人とも体重が減少してきており効果を実感しております。
今後のために10月の関東での講演会に二人で参加し勉強することとしました。
話は変わりますが、今回、先生のアドバイスを受け3日間糖質を摂取し負荷試験をうけてきました。
本日結果が出ました。
空腹時 110 IRI 4.9
1時間 241 183.8
2時間 127 64.2
HbA1c(NGSP) 5.6
でした。お医者様からは年一回の検査を受けるように言われただけですが、空腹時と1時間が高いと思うのですが、どうなのでしょうか。
《「もし75g経口ブドウ糖負荷試験をするということなら、
「長期に糖質摂取が少ないと、インスリン分泌能が低下し、負荷後血糖が高値となるため検査実施前の3日間は炭水化物を150g以上含む食事をとることが必要」
でよいと思います。》
先生もおっしゃっていましたが、今後は糖負荷血糖検査はやらずに、糖質制限を続けていこうと思います。
糖質制限は、万病予防のためになると、がんの専門医もプログで言っていました。
これからも先生、皆様の意見を参考に自分なりに続けていこうと思います。
ありがとうございました。】
こんにちは。
きむらきさんから、75g経口ブドウ糖負荷試験の結果について、コメント頂きました。
きむらきさん。
糖質制限食東京講演会へのご参加、ありがとうございます。
おかげさまで、満員御礼でキャンセル待ちの状況です。
75g経口ブドウ糖負荷試験の結果
血糖値 IRI
空腹時 110 4.9
1時間 241 183.8
2時間 127 64.2
HbA1c(NGSP) 5.6%
空腹時血糖値が110mg/dl未満が正常型なので、ぎりぎりですが境界型です。
負荷後2時間血糖値は127mg/dlと正常型ですが、負荷後1時間血糖値が241mg/dlと180mg/dlを超えているので、将来糖尿病になりやすく、注意が必要です。
追加分泌インスリンが、1時間:183.8、2時間:64.2 と比較的多めに出ているので、機能性低血糖になりやすいタイプです。
糖質を多く摂取すると、機能性低血糖のリスクとなります。
糖質制限食を実践されれば、機能性低血糖の症状は出ませんし、将来の糖尿病発症も予防できるし、血流・代謝も良くなり、健康増進なので、一石三鳥以上ですね。(^^)
仰る通り、今後、75g経口ブドウ糖負荷試験は、必要ないと思います。
美味しく楽しく末長く、糖質制限食をお続けくださいね。
江部康二
糖負荷血糖測定しました。
江部先生
いつもプログを拝見し、夫婦でスタンダードの糖質制限をしております。(約3か月ですが…)二人とも体重が減少してきており効果を実感しております。
今後のために10月の関東での講演会に二人で参加し勉強することとしました。
話は変わりますが、今回、先生のアドバイスを受け3日間糖質を摂取し負荷試験をうけてきました。
本日結果が出ました。
空腹時 110 IRI 4.9
1時間 241 183.8
2時間 127 64.2
HbA1c(NGSP) 5.6
でした。お医者様からは年一回の検査を受けるように言われただけですが、空腹時と1時間が高いと思うのですが、どうなのでしょうか。
《「もし75g経口ブドウ糖負荷試験をするということなら、
「長期に糖質摂取が少ないと、インスリン分泌能が低下し、負荷後血糖が高値となるため検査実施前の3日間は炭水化物を150g以上含む食事をとることが必要」
でよいと思います。》
先生もおっしゃっていましたが、今後は糖負荷血糖検査はやらずに、糖質制限を続けていこうと思います。
糖質制限は、万病予防のためになると、がんの専門医もプログで言っていました。
これからも先生、皆様の意見を参考に自分なりに続けていこうと思います。
ありがとうございました。】
こんにちは。
きむらきさんから、75g経口ブドウ糖負荷試験の結果について、コメント頂きました。
きむらきさん。
糖質制限食東京講演会へのご参加、ありがとうございます。
おかげさまで、満員御礼でキャンセル待ちの状況です。
75g経口ブドウ糖負荷試験の結果
血糖値 IRI
空腹時 110 4.9
1時間 241 183.8
2時間 127 64.2
HbA1c(NGSP) 5.6%
空腹時血糖値が110mg/dl未満が正常型なので、ぎりぎりですが境界型です。
負荷後2時間血糖値は127mg/dlと正常型ですが、負荷後1時間血糖値が241mg/dlと180mg/dlを超えているので、将来糖尿病になりやすく、注意が必要です。
追加分泌インスリンが、1時間:183.8、2時間:64.2 と比較的多めに出ているので、機能性低血糖になりやすいタイプです。
糖質を多く摂取すると、機能性低血糖のリスクとなります。
糖質制限食を実践されれば、機能性低血糖の症状は出ませんし、将来の糖尿病発症も予防できるし、血流・代謝も良くなり、健康増進なので、一石三鳥以上ですね。(^^)
仰る通り、今後、75g経口ブドウ糖負荷試験は、必要ないと思います。
美味しく楽しく末長く、糖質制限食をお続けくださいね。
江部康二