妊娠・出産と糖尿病、糖質制限食

こんばんは。

錦織選手とうとう負けてしまいましたね。残念だけど、ここまでよく戦いました。
華のある観客を魅了する、絵になるテニスで、全米オープンベスト16進出、立派なものです。
これからの錦織選手に、おおいに期待したいと思います。(^_^)

さて今回は、ショコラさんから妊娠と糖尿病糖質制限食について、コメント・質問をいただきました。

『これからさらに勉強させていただきます!
はじめまして。
糖尿病関係の調べものをしていて先生のサイトにたどり着きました。

現在私は糖尿病と診断されまして、2型と境界を行ったりきたりの状況のようです。
先週検診がありましてその時点では

HbA1c 5.5
食後2時間血糖値 112

でした。実は7月にHbA1cが5.9に上昇しておりまして、いつもは検診が3か月に1回なのですが、今月は臨時ということになってしまいました(話がそれました)
ちなみに投薬もインスリンも今のところ何もしておらず、基本的に食事制限と運動療法のみでコントロールしております。

私が糖尿病と発覚しましたのは、4年前の秋です。
調子が悪いので採血して検査しましょうということで、そこでたまたま高血糖がわかりました。
その時体重107kg(女性です)
その時まだ30歳すぎで、年齢も若いだけに、かなりの衝撃と目の前真っ暗という経験をいたしました。
それからダイエットをしまして、現在は57kgです。
ちなみに2年前に出産もいたしました。

妊娠する時はHbA1c 5.3付近で落ち着いている時で、妊娠中もインスリンなしで過ごすことができましたが・・・

ダイエット、妊娠と通しまして、私が実践しておりましたのが、江部先生が提唱されている糖質制限食だったのです。
ダイエット時はカロリー中心になってたのですが、妊娠中に食後血糖のコントロールが非常に難しく、どうしたものかと頭を悩ませておりました。
毎食後記録しないといけないのですが・・・
主食を食べるとどうも血糖値の下がりが遅く・・・
3時間ぐらい後であれば通常なのですが、2時間となるとかなり高い数値が出てしまいます。
産婦人科の主治医が厳しく、非常にナーバスであったので、血糖の管理は私のかなりのストレスになっていました。

あれこれ食べて考えているうちに、原因はやっぱり主食ではないかと私は自分なりの結論に至りまして・・・
主食を食べない or 制限するを 実践しておりました。
このおかげで、無事妊娠・出産を乗り切れたわけですが。。。
これはあくまで自分が勝手にやっていたことなので、もちろん主治医の先生には言っていたわけではありませんし、病院の栄養指導も受けてはいましたが、参考程度でした(笑)
しかしながら・・・
私が実践していたことが、江部先生によりはっきりと研究されていることを知り、とてもうれしくなって、コメントを書いております。

私は京都在住で(南部)、診察もしていただきたい!と思っております。
これから本も購入させていただきまして、さらに勉強させていただき、私の足らない部分も補いたいと思います。

糖尿病というのは、生涯ずーっと一緒に過ごさないといけないものですから、それといかにうまく付き合うかというのが、私の最大のテーマです。
なったことを悔やむより・・・
なってしまったのだから、その後をどう過ごすか。。。
それが大切ですよね。

これから、どんどん勉強させていただきますので、よろしくお願いします。
乱文失礼します。

2008/08/23(土) 03:44:29 | URL | ショコラ』



ショコラさん。コメントありがとうございます。

「産婦人科の主治医が厳しく、非常にナーバスであったので、血糖の管理は私のかなりのストレスになっていました。
あれこれ食べて考えているうちに、原因はやっぱり主食ではないかと私は自分なりの結論に至りまして・・・
主食を食べない or 制限するを 実践しておりました。」


妊娠中の血糖値は、正常レベルに保たないといろいろ弊害があります。産婦人科の先生には、きっちり指導して頂いてとても良かったと思いますよ。 (^_^)

まず妊娠許可の条件として、HbA1c 6%以下が設定されています。
妊娠中は、HbA1c 5.8%以下が目標です。

血糖値の目安としては
妊娠前
食前血糖100mg/dL 以下、食後2時間血糖120mg/dL 以下、
妊娠中
食前血糖100mg/dL 以下、食後2時間血糖100mg/dL 以下、

これってかなり厳しい数値目標ですよね。 

糖尿病のコントロールが悪いままで妊娠したら、約4%の頻度で奇形が発生します。そして、高血糖に由来する奇形の発生は、妊娠7週までに規定されることが明らかになっていますので、これくらい厳しいコントロールが要求されるのだと思います。

それにしてもショコラさん、自力で糖質制限食にたどりつくとは、素晴らしい発想ですね。(^ 0 ^)
血糖自己測定器を持っておられたのでしょうか?

ともあれイヌイットは、数千年来、スーパー 糖質制限食で生活して、妊娠・出産・育児もしているわけですが、何ら問題はありませんね。

また、人類400万年の歴史において、農耕以前の399万年は、糖質制限食による妊娠・出産・育児・生活が普通に行われてきました。

このことを思えば、人類の代謝に適した本来の食生活が、糖質制限食ですので、妊娠・出産に関しても心配無用ですね。ヾ(^▽^)

ショコラさんも、安心して美味しく楽しく糖質制限食を続けて下さいね。

京都在住で(南部)ということであれば、診察ご希望の場合は高雄病院京都駅前診療所が便利かと思います。

高雄病院京都駅前診療所(075−352−5050 )
京都市下京区七条通り烏丸東入ル(50M)北側 ネオフィス 七条烏丸4F
烏丸七条交差点を東へ20m、バス停の真ん前です。
七条通り北側に面しています。


江部康二
テーマ: 糖尿病 -  ジャンル: ヘルス・ダイエット
by ドクター江部  at 21:28 |  妊娠糖尿病 |  comment (6)  |  trackback (0)  |  page top ↑

妊娠糖尿病

こんばんは。

糖尿病と妊娠のことを7.2ブログに書きましたが、もう少し整理しておきます。

今まで糖尿病でなかったのに、妊娠した後初めて糖尿病になる場合があります。これが「妊娠糖尿病」で、妊婦の約3%くらいにみられます。

肥満、糖尿病の家族歴、高齢、などが妊娠糖尿病のリスクとなります。もともとの糖尿病患者が妊娠することを「糖尿病合併妊娠」といい、二つはわけて分類されています。

妊娠すると、胎盤が形成され「母体・胎盤・胎児」がひとつのユニットとなります。この時、健常な胎児を発育・成長させるために胎盤や母体がヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)、成長ホルモン、グルカゴン、カテコラミン、糖質コルチコイドなどのホルモンを分泌し、それらによりインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなること)がでてきます。

これらのホルモンは、妊娠の進行とともに増加しますから、特に妊娠中期以後にインスリン抵抗性が増加して、血糖値が上昇しやすくなります。

正常の妊婦は、インスリン抵抗性が増強する時期には、インスリンを多く分泌して血糖値が上昇しないように対処します。しかし、必要なだけのインスリンを分泌することができない体質の妊婦は、血糖値が上昇し妊娠糖尿病を発症します。

妊娠糖尿病は、通常は妊娠期間が終わったら、糖尿病の症状は消失します。しかし、約2%は出産後も糖尿病が続きます。

現在では妊娠糖尿病は「妊娠中に発症もしくは初めて発見された耐糖能低下をいう」と定義されています。

このため、お産が終わって、6〜12週間後に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行って、正常型、境界型、糖尿病型に分類します。

なお日本では、若い女性の2型糖尿病が少し増えています。従って、可能性として、「糖尿病や境界型が既にあったのに検査していなくて見過ごされていて、たまたま妊娠して検査したら糖尿病が発見された。」というパターンがあり得ます。

この場合は、「妊娠糖尿病」ではなくて「糖尿病合併妊娠」の見逃しになります。高血糖に由来する奇形の発生は、妊娠7週までに規定されることが明らかになっていますので、妊娠機会のある女性は、糖尿病や境界型の有無を調べておくのがお奨めですね。☆(u_u)☆

江部康二
テーマ: 糖尿病 -  ジャンル: ヘルス・ダイエット
by ドクター江部  at 19:57 |  妊娠糖尿病 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

糖尿病予備軍と妊娠

こんにちは。今日は病院の健康診断の日です。

朝から、心電図、採血、検尿、胸部レントゲン、聴力検査…、を終えて、高雄病院の理事長室の窓から池の鯉を眺めながらブログを書いています。書き終わったら給食の糖質制限食を食べにいきます。

さて今回は、ベビさんから糖尿病予備軍と妊娠についてコメント・質問いただきました。

糖尿病予備軍と妊娠
はじめまして。
江部先生のブログ、参考にさせていただいています。

ひとつ質問させてください。
31歳・女性です。

糖尿病予備軍でも妊娠を希望する場合、血糖コントロールは糖尿病の人と同じくらい厳しくしなければいけないのでしょうか。

実は、3年ほど前に糖尿病予備軍と言われました。
ちょうど体調を崩した時に健康診断に行ったら、尿糖が出ていたので75gのブドウ糖検査をし、
空腹時:78
1時間値:204
2時間値:152
という結果になり糖尿病境界型ですね、将来糖尿病になりますと宣告されました。
150cmで40kgなので、やせ気味だと思います。
言われた時は、やせているのに糖尿病?とかなりショックでした・・・
今までの生活を考えれば、運動不足に加え、甘いものは好きではないのですが、食べる時はどか食いしてしまっていた自分を反省したり、父も2型糖尿病をわずらっているため、遺伝も原因のひとつなのかなと思って自分を納得させています。

それからは甘いものを控えたりする程度だったのですが、最近もうそろそろ子どもが欲しいと思うようになりました。

そこで、最近糖質制限食を実践しつつ、自己測定器を購入して測定してみました。 (アバウトですがおおよその平均値です)

好き勝手に食べた時:
空腹時:70〜80前後
1時間値:190前後
2時間値:150前後

糖質制限食
空腹時:70〜80前後
1時間値:140〜150前後
2時間値:120前後

これに加えて、散歩をするなど 毎日少しでも体を動かす努力しています。

血糖コントロールをしないままに妊娠すると、胎児の奇形発生や早産の危険が増えたり、妊娠中毒など恐ろしいことになると書いてあり、不安で仕方ありません。 糖尿病予備軍と妊娠について教えていただけますでしょうか。

お忙しい中、申し訳ないと思うのですが どうぞ、お時間のある時に教えていただければ幸いです。
2008/06/20(金) 19:07:43 | URL | ベビ』


ベビさん。コメントありがとうございます。

妊娠すると、胎盤が形成され「母体・胎盤・胎児」がひとつのユニットとなります。この時、健常な胎児を発育・成長させるために胎盤がホルモンを分泌し、それがインスリンの効きを弱め、インスリン抵抗性がでてきます。そのため糖尿病が悪化しやすくなるのです。

例えば、一般的に妊娠中のインスリン必要量は、1型糖尿病妊婦で妊娠前の約1.7倍、インスリン注射中の2型糖尿病妊婦で約2倍に増加するそうです。

しかし、コントロールが良い糖尿病患者さんなら、妊娠しても問題はありません。

妊娠許可の条件として

HbA1c6%以下が設定されています。

妊娠中は

HbA1c5.8%以下が目標です。

血糖値の目安としては

妊娠前
食前血糖100mg/dL 以下、食後2時間血糖120mg/dL 以下、
妊娠中
食前血糖100mg/dL 以下、食後2時間血糖100mg/dL 以下、

これってかなり厳しい数値目標ですね。(=_=;) 

糖尿病のコントロールが悪いままで妊娠したら、約4%の頻度で奇形が発生します。そして、高血糖に由来する奇形の発生は、妊娠7週までに規定されることが明らかになっています。

ベビさんのデータ
好き勝手に食べた時:
空腹時:70〜80前後
1時間値:190前後
2時間値:150前後

糖質制限食
空腹時:70〜80前後
1時間値:140〜150前後
2時間値:120前後

SMBG(自己血糖測定)の場合、病院の器械よりやや高めに出ますので、ベビさんの糖質制限食のデータならほぼ目標クリアですね。(^_^)
境界型でも糖尿病でも目標を達成していれば胎児の奇形などの心配もいりません。

それでは次に、糖質制限食による妊娠・出産は前例があるのでしょうか?

糖質制限食と妊娠に関する最近のデータは、さすがにないのですが、イヌイットは数千年来、スーパー 糖質制限食で生活して、妊娠・出産・育児もしているわけですが、何ら問題はありません。

さらに、人類400万年の歴史において、農耕以前の399万年は糖質制限食による妊娠・出産・育児・生活が普通に行われてきました。このことを思えば人類の代謝に適した本来の食生活が糖質制限食ですので心配無用と思われます。

最後になりましたが、糖尿病あるいは糖尿病予備軍の女性の妊娠・出産は、計画的に行うことが必要です。

上述の数値目標をクリアして、産婦人科医とよく相談しながら健康な妊娠・出産をめざしてくださいね。o(^-^o)(o^-^)o

**
2008.3.28のブログ「妊娠と糖質制限食とケトン体」もご参照ください。

江部康二
テーマ: 糖尿病 -  ジャンル: ヘルス・ダイエット
by ドクター江部  at 12:08 |  妊娠糖尿病 |  comment (10)  |  trackback (0)  |  page top ↑
プロフィール

ドクター江部

Author:ドクター江部
江部康二です。京都の高雄病院で勤務しています。漢方やアトピー治療でご存知の方もおられるかと思いますが、最近、自分が糖尿病だということが発覚し、糖尿病の新しい食事療法『糖質制限食』に力を入れてます。これからも宜しくお願いしますね。

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