妊娠糖尿病、糖質制限で元気な赤ちゃん。糖尿病発症予防は?
【16/05/14 あかね

糖質制限食と糖尿病進行

江部先生
はじめまして、アメリカ在住39歳女性です。

2人目の妊娠中に妊娠糖尿病にかかりましたが、先生のブログとご著書を参考にさせていただき、糖質制限で妊娠をのりきり、超健康な赤ちゃんを産むことができました。

さて、産後3ヶ月が経ちますが、まだ食後高血糖が続いているため、糖質制限を続けており(薬は飲んでいません)、血糖値は完璧にコントロールしています。先日、こちらの糖尿病専門医に今後の治療方針について相談したところ、健康上、糖質制限を続けるのには問題ない、ただし、糖質制限食は、短期的に食後高血糖を上げるのを防げるが、将来的に糖尿病になるのを防ぐわけではない。糖尿病進行の予防方法は運動だけだ。だからそんなに一生懸命炭水化物をカットしなくていいよ、との説明でした。

江部先生のブログで、糖質制限によって膵臓をやすませてあげれるから糖尿病への進行も防げるという説明を何度か見かけたため、今後も糖質制限を頑張れば糖尿病は予防でき、さらにはもしかしたら正常人に戻れるのではないかと思っていたところ、かなりショックを受けました。

いくら糖質制限をしても、膵臓がインスリンをつくることを辞めてしまうことはあるのでしょうか?

(ちなみに私は160センチ、49キロです。妊娠前よりも2〰3キロ痩せています。授乳中だからか、糖質制限のおかげか、いくらお腹いっぱい食べてもここ1か月この体重を維持しています。また、産後2ヶ月での75gグルコースチャレンジテストでは、空腹時78、1時間122、2時間142で、2時間値が境界型でした。)

お忙しいところ本当に恐縮ですが、ご意見お聞かせいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。】


こんにちは。
アメリカ在住のあかねさんから、妊娠糖尿病を糖質制限食で乗り切り、元気な赤ちゃんを出産という嬉しいコメントを頂きました。

あかねさん、拙著のご購入、ありがとうございます。

結論ですが、境界型からの糖尿病発症は、糖質制限食で予防できる可能性が高いです。

理論的には、食後180mg/dlを超える血糖値があると膵臓のβ細胞が障害されます。

それを毎日繰り返していると、β細胞のインスリン分泌能が低下して糖尿病を発症します。

日本人では、食後高血糖が数年間続いて、糖尿病発症というパターンが一番多いです。

糖質制限食なら、食後高血糖が生じないのでβ細胞が障害されることがありません。

従って、境界型から糖尿病を発症するのを予防できる可能性が高いのです。

研究論文もあります。

新潟労災病院消化器内科部長、前川智先生が、

『糖質制限食が境界型糖尿病において、血糖コントロール及び2型糖尿病への進行を予防するのに有効である。』

という内容の英文論文を書いておられます。(☆)

前川先生のご研究は、一日の糖質摂取量が120gの緩やかな糖質制限食です。

なお、逆に言えば、糖質を普通に食べて食後高血糖を生じている場合は、境界型から将来の糖尿病発症を予防することは困難と言えます。


江部康二



(☆)
Diabetes Metab Syndr Obes. 2014; 7: 195–201.
Retrospective study on the efficacy of a low-carbohydrate diet for impaired glucose tolerance
Satoshi Maekawa,1 Tetsuya Kawahara,2 Ryosuke Nomura,1 Takayuki Murase,1 Yasuyoshi Ann,1 Masayuki Oeholm,1 and Masaru Harada3

「耐糖能異常に対する低炭水化物食の効果に関する後ろ向き研究」

要約

背景
近年では、耐糖能障害(IGT)を有する人の数は世界中で着実に増加している。糖尿病の予防は、公衆衛生、医療、経済学の観点から重要であることは明らかである。近年、低炭水化物食(LCD)は、体重​​減少及び血糖コントロール​​に有用であることが報告されたが、LCDのIGTへの効果についての情報は存在しない。私たちは、IGTに対するLCDに焦点を当てた7日間の院内教育プログラムを計画した。

方法
被験者は2007年4月から2012年3月までに登録され、12カ月間追跡したIGTの72人の患者(LCD群が36、対照群が36)であった。我々は、LCD群と対照群を後ろ向き調査により比較した。

結果
LCD群の69.4%において、血糖値は12ヶ月で正常化し、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において2時間の血漿グルコースレベルは、33mg/dl減少した。また、糖尿病の発生率は、12ヶ月目に対照群よりLCD群において有意に低かった(0%対13.9%、P = 0.02)。LCD群は12ヶ月後に、HbA1c、空腹時血糖値、HOMA-R、体重、血清トリグリセリド(TG)の有意な減少を示した。一方HDLコレステロール値は有意な増加を示した。

結論
LCDは、IGTを有する患者において、血糖値を正常化し、2型糖尿病への進行を予防するのに有効である。


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
妊娠糖尿病。75gOGTT検査で気分不良、何故?。妊娠糖尿病の基礎知識。
【16/05/08 たか

75gブドウ糖負荷試験で1時間後と2時間後の血糖値が低くないのに低血糖症の症状がでました。

いつもブログで勉強させていただいています。

妊娠24週で糖尿病の検査を受けました。
妊娠初期の検診では尿糖を測定していたようなのですが、11週目以降は尿検査がなかったので今まで糖が出ていたのかは分かりません。

50gのブドウ糖入りジュースを飲んで、1時間後の血糖値が 147.6 mg/dL でした。
この際、基準値の140をオーバーしているとのことで、3日後に再試験になりました。

再試験の日は前日夜から何も食べないように指示されており、約16時間ほど食事をしていない状態で75g経口ブドウ糖負荷試験のような検査を行いました。
採血は、空腹時、ブドウ糖75g摂取1時間後、2時間後の3回でした。

ブドウ糖75g摂取後50分後から突然空腹感とめまいに襲われ(妊娠前に職場の普通の健康診断などでも前日夜から絶食状態でしたが、今までこういったことはありませんでした)、おかしいなと思っていたら55分で冷たい脂汗をかき始め、待合室で座っているのもつらくなり、ソファに横になろうとしましたが治らず、周りの人には迷惑をかけてしまいましたが受付の方が看護士さんを連れてきて下さるまで床に両膝をついて椅子にもたれかかってうつぶせになっていました(それが一番楽でした)

その後ベッドに寝かせてもらった状態で1時間後の採血を行いました。

看護士さんが3人ついてくれて様子を見たりお医者様に何か確認してくれていて、少し1時間をオーバーしていたかもしれません。
横になっている間に吐き気と眩暈が少しおさまり、汗も少し引いて楽になりました。

さらに5分ほどで脂汗が完全に引き、眩暈も治まったので待合室に戻りましたが、座っているのと寝ているのでは大分違ったらしく、待合室にいる間は少しつらかったです。

吐いた場合には試験中断と言われましたが、30分経過後に甘い胃液が少し口の中まで戻ったもののすぐ飲み込んで吐くことはなかったので、そのまま2時間後の採血を行いました。

結果は、2時間後の血糖値が基準を超えているので妊娠糖尿病と診断されました。


空腹時血糖 : 66.6 mg/dL
75g 1時間後 : 176.4 mg/dL
75g 2時間後 : 183.6 mg/dL


1時間後の血糖値も180近くあるのに、ブドウ糖摂取後50分~の低血糖症のような症状がどうして出たのか分かりません。

今までは毎年職場の健康診断で空腹時血糖を測るだけでしたので、HbA1cなどは分かりません。
空腹時血糖は、学生時代から15年くらい毎年65~68の範囲内でした。

ただ、この記事とコバタケさんのコメントへの先生の返信を拝見し、私は食後高血糖とグルコースミニスパイクに伴うインスリン過剰分泌の両方があるのではないか?と素人ながらに思いました。

長くなってしまいましたが、今回の試験で急に体調が悪くなったことが不可解で、自分でも測定器を購入して食後の血糖値を調べてみたいと思っています。

私のような場合、どのようなタイミングでどう測っていけばよいのか、またどのくらいの数値が正常の目安になるのか教えていただけないでしょうか。

また、低血糖の症状も出たため、インスリン注射は危険でしょうか。

もともと慎重158cm体重47kgで子供のころから食べても太れず、栄養士さん(産婦人科や今回の糖尿病検査とは別の病院です)から、健康な人なら痩せていても糖質制限で適正体重まで増える可能性もあるが、あなたは消化吸収力が弱くこれ以上痩せると危険だから制限しない方が良い、と言われていて、高雄病院の十か条に近い食事内容を指導されていました。
また果物や根菜も食べるように言われていました。
ですが、糖質制限食に切り替えた方がよいようにも感じています。

よろしければアドバイスをいただけると幸いです。】



こんばんは。

たか さんから、妊娠糖尿病と診断された時の75gOGTT検査で気分不良になった事に関してコメント・質問を頂きました。

たか さん、まずは一番大切なアドバイスです。

糖質制限食で、インスリンなしで、妊娠・出産・産後の血糖コントロールは簡単にできます。

従ってインスリン注射は必要ありません。

空腹時血糖 : 66.6 mg/dL
75g 1時間後 : 176.4 mg/dL
75g 2時間後 : 183.6 mg/dL


1gの糖質が2時間値のピークで、1.56mg血糖値を上げています。

これなら、1回の食事の糖質量が、40gくらいの緩やかな糖質制限食でOKと思います。

妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も

朝食前血糖値70~100mg/dl
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c6.2%未満、NGSP値


です。

緩やかな糖質制限でも、充分目標を達成できます。

勿論つらくなければ、スーパー糖質制限食でも構いません。


「今回の試験で急に体調が悪くなったことが不可解」

空きっ腹に、液体のブドウ糖を75g摂取というのは、結構、身体にとって過酷な検査です。

1時間値で血糖上昇が、109.8mgもあります。
1時間で60mg以上の上昇幅や下降幅があると、ぼーとしたり、眠たくなったり、動悸がしたり、冷や汗がでたりします。
低血糖だけではなくて、血糖の変動幅でも同様の症状が起こるのです。

人類は狩猟・採集時代の700万年間は、血糖の変動幅は、せいぜい10~20mgくらいです。

これに比べて今回の液体の糖質(ブドウ糖)75g摂取して、血糖値が1時間で100mg以上も上昇することが、人体にとって、いかに異常な事態かわかりますね。


☆☆☆


以下は、妊娠糖尿病において、知っておいて欲しい知識ですので、参考にして頂けば幸いです。

以下の太字は、日本糖尿病・妊娠学会のサイトから転載です。
『<妊娠糖尿病からの糖尿病発症率>
http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/
●産後の注意点
Q妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが本当に必要なのですか?

A 最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。また最近のメタアナリシスでは、妊娠糖尿病の妊婦さんは耐糖能が正常の妊婦さんに比べて、将来糖尿病になる確率は7.43倍であると報告されています。

 また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。

 したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月』



<出産後の糖質制限食>
『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013
220ページから転載
GDM(妊娠糖尿病)母体の耐糖能の再評価
1)妊娠糖尿病母体の耐糖能は分娩後6~12週の間に75gOGTTを行い再評価する。
2)分娩後耐糖能が正常化しても、妊娠糖尿病既往女性は
  将来の糖尿病発症リスク群であり、長期にわたる追跡管理が必要である』


最近のガイドラインでも妊娠糖尿病の母体は、糖尿病発症リスク群で、長期にわたる管理が必要とされていますので、
糖質制限食を実践されたほうがいいと思います。

糖質制限食のモットーは、美味しく楽しく末長くですので、緩くてもいいのでお奨めです。

最近は、糖質制限食OKの、スイーツやチョコ、パン、パンケーキ、ピザ、パスタ、お好み焼きなどいろいろ発売されていますので、つらい我慢はなしで糖質制限食が可能です。

私自身は糖尿病なので、1回の食事の糖質量が10~20g以下の摂取です。

緩やかな糖質制限は1回の食事の糖質量が30~40gの摂取です。

境界型ですので、緩やかな糖質制限食でも将来の糖尿病発症が予防できると思います。

糖質制限食は人類本来の食事であり人類の健康食なので、全身の血流・代謝がよくなり、自然治癒力も向上します。


<妊娠糖尿病の診断基準>
妊娠糖尿病 gestational diabetes mellitus (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
①空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
②1時間値 ≧180mg/dl   (10.0mmol/l)
③2時間値 ≧153mg/dl   (8.5mmol/l)


上記が妊娠糖尿病の診断基準です。

妊婦において、現実に重要なのは、血糖コントロールです。


<妊娠糖尿病の血糖コントロール目標>

血糖の厳重な管理が最も大切です。

食前100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満を目標に管理します。

糖質摂取のグラム数を考慮することで、この目標はクリアできると思います。

A)
妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も
<妊娠中の血糖値コントロール目標>糖尿病治療ガイド(2014-2015)によれば
朝食前血糖値70~100mg/dl
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c6.2%未満、NGSP値、
です。

B)
さらに、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013、223ページによれば
「HbA1cが、鉄欠乏状態の影響を受け、血糖コントロール状態を反映しいない」
ため、GA(グリコアルブミン)15.8%未満が目標としています。
また食後1時間値140mg/dl未満が目標として好ましいとされています。


<母子ともに健康であるためには糖質制限食>

1)食前100mg/dl未満
2)食後2時間120mg/dl未満
3)食後1時間値140mg/dl未満
4)GA(グリコアルブミン)15.8%未満

血糖自己測定器で、1)2)3)をクリアする程度の糖質摂取量を目指しましょう。
そうすれば、自然に4)はクリアできます。


<血糖自己測定器の精度>

一応、±20%の誤差が、簡易血糖自己測定器にはあるとされています。

しかし、時に変な値がでることがあっても、病院の検査とそれほど大きな違いはないと思います。

血糖自己測定器のデータは毛細血管血なので、病院のデータ(静脈血)より数mg~10mgくらい高くでることが多いようです。


江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食と妊娠糖尿病について
【15/10/20 妊娠糖尿病について

失礼します。
先生のブログで、妊娠糖尿病になると将来真性の糖尿病となる割合は15%~60%という記事を拝見したのですが、中には妊娠中に糖尿病と診断されても中には産後普通の人と同じような食事をしていても一生発症しない方もいるのでしょうか?
また、それは稀ですか・・?
妊娠糖尿病だと将来の糖尿病は約束されたようなものなのでしょうか?
(普通の食事の場合)
好きなものを食べるのをためらい、ストレスを抱えながらこの先生きていくのでしょうか。。

私は今32週の妊婦です。BMI18.5です。
糖尿病と診断されていないのですが食後の血糖値が気になって仕方がなく、指先で測る簡易測定器を購入しました。
毎食測っているのではないのですが、空腹時85前後、ご飯100グラム+おかずで1時間後が110位。
120グラム+おかずの場合で1時間値が135前後。
150グラム+おかずだと1時間値170前後です。←このとき2時間値でも145であまり下がっていませんでした。
普段120グラムで食事しているのですが健常な婦さんは150グラムのご飯を取ってもここまで血糖値は上がらないと思います。
もう自分は妊娠糖尿病と思ってしまっています。

75グラム負荷検査を受けていないのですが本当に妊娠糖尿なのかどうか、婦人科できちんと負荷試験を受けてみるべきなのでしょうか?
うちの地域では50グラム試験はありませんでした。
自分で測定器買わなかったら血糖値に気づいていなかったと思います。

毎日そのことばかり考えています。

もうひとつ、病院と指先の血糖値はどちらを目安に信じればよいのでしょうか?
病院の数値がただしいのでしょうか?
お忙しいと存じますが、よろしくお願いします。】


こんにちは。
妊娠糖尿病についてコメント・質問を頂きました。

<妊娠糖尿病からの糖尿病発症率>
以下、日本糖尿病・妊娠学会のサイトから転載です。

http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/
●産後の注意点
Q妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが本当に必要なのですか?

A 最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。また最近のメタアナリシスでは、妊娠糖尿病の妊婦さんは耐糖能が正常の妊婦さんに比べて、将来糖尿病になる確率は7.43倍であると報告されています。

 また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。

 したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月



<出産後の糖質制限食>
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013
220ページ
GDM(妊娠糖尿病)母体の耐糖能の再評価
1)妊娠糖尿病母体の耐糖能は分娩後6~12週の間に75gOGTTを行い再評価する。
2)分娩後耐糖能が正常化しても、妊娠糖尿病既往女性は
  将来の糖尿病発症リスク群であり、長期にわたる追跡管理が必要である


最近のガイドラインでも妊娠糖尿病の母体は、糖尿病発症リスク群で、長期にわたる管理が必要とされていますので、糖質制限食を実践されたほうがいいと思います。

糖質制限食のモットーは、美味しく楽しく末長くですので、緩くてもいいのでお奨めです。

最近は、糖質制限食OKの、スイーツやチョコ、パン、パンケーキ、ピザ、パスタ、お好み焼きなどいろいろ発売されていますので、つらい我慢はなしで糖質制限食が可能です。

私自身は糖尿病なので、1回の食事の糖質量が10~20g以下の摂取です。

緩やかな糖質制限は1回の食事の糖質量が30~40gの摂取です。

『ご飯150グラムで、2時間値で145mg』なら、境界型ですので、緩やかな糖質制限食でも将来の糖尿病発症が予防できると思います。

糖質制限食は人類本来の食事であり人類の健康食なので、全身の血流・代謝がよくなり、自然治癒力も向上します。


<妊娠糖尿病の診断基準>
妊娠糖尿病 gestational diabetes mellitus (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
①空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
②1時間値 ≧180mg/dl   (10.0mmol/l)
③2時間値 ≧153mg/dl   (8.5mmol/l)


上記が妊娠糖尿病の診断基準です。

もう32週ですから、75g経口ブドウ糖負荷試験はどちらでもいいと思います。
妊婦において、現実に重要なのは、血糖コントロールです。


<妊娠糖尿病の血糖コントロール目標>

血糖の厳重な管理が最も大切です。

食前100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満を目標に管理します。

糖質摂取のグラム数を考慮することで、この目標はクリアできると思います。

A)
妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も
<妊娠中の血糖値コントロール目標>糖尿病治療ガイド(2014-2015)によれば
朝食前血糖値70~100mg/dl
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c6.2%未満、NGSP値、
です。

B)
さらに、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013、223ページによれば
「HbA1cが、鉄欠乏状態の影響を受け、血糖コントロール状態を反映しいない」
ため、GA(グリコアルブミン)15.8%未満が目標としています。
また食後1時間値140mg/dl未満が目標として好ましいとされています。


<母子ともに健康であるためには糖質制限食>

1)食前100mg/dl未満
2)食後2時間120mg/dl未満
3)食後1時間値140mg/dl未満
4)GA(グリコアルブミン)15.8%未満

血糖自己測定器で、1)2)3)をクリアする程度の糖質摂取量を目指しましょう。
そうすれば、自然に4)はクリアできます。


<血糖自己測定器の精度>

一応、±20%の誤差が、簡易血糖自己測定器にはあるとされています。

しかし、時に変な値がでることがあっても、病院の検査とそれほど大きな違いはないと思います。

血糖自己測定器のデータは毛細血管血なので、病院のデータ(静脈血)より数mg~10mgくらい高くでることが多いようです。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
妊娠糖尿病とウテメリンと糖質制限食。高血糖の副作用は?
おはようございます。

妊娠糖尿病とウテメリンと糖質制限食について、27週妊婦 さんから、コメント・質問を頂きました。

ウテメリンの高血糖の副作用の可能性については、産科医の宗田先生からご回答を頂きました。

宗田先生、いつもありがとうございます。

産科医の専門的アドバイスなので、信頼度が高いです。

27週妊婦さん、糖質制限食ならウテメリンを内服しても、血糖値上昇の心配はないということで、良かったです。


江部康二



【15/06/21

27週妊婦
ウテメリンと血糖値上昇

先生、突然のメッセージすみません。
3人目妊娠中で27w2dです。

6月19日に妊婦検診があり、子宮けいかんの長さが26.4mmと短く張りも少しあることから、張り止めのウテメリンを処方されました。

私は2人目の妊娠中に妊娠糖尿病になり、総合病院にてインスリン使用で39w4dで3280グラムで出産しました。
約一年半前の出産です。

その後、境界型になってしまったため色々調べて糖質制限を知り今日まで続けています。

今回の産院は前回とは別の所で、総合病院ではありません。

ウテメリンは血糖値を上げるとネットで調べたのですが、張りがある場合は服用しなければならないのでしょうか。

せっかく糖質制限しているのに、ウテメリンで上がってしまったら悔しいです。

それとも、やはり張り止めを優先してインスリンを打った方がいいのでしょうか?

突然のメッセージで本当に失礼かと思ったのですが、自分ではウテメリンと血糖値との関係が分からず、先生のご意見を聞けたらありがたいと思いメッセージしました。

ちなみに、11w4dで75グラムの血糖値検査をしたときは、大丈夫でした。
30wでまた血糖値の検査をする予定です。

中期後期には血糖値が上がりやすいとのことなので、できればこのまま糖質制限は続けていきたいと思っています。
長々すみません。

先生、多忙のこととは思いますが、御返事いただけると嬉しいです。】



15/06/21 
ドクター江部
Re: ウテメリンと血糖値上昇
27週妊婦 さん

私は産婦人科医ではないので、明確な回答は困難です。

製薬会社のウテメリンの添付文書をみると、副作用に高血糖が確かにあります。

これは必ず高血糖が生じるということではなく、まれに高血糖を生じうるということです。

スーパー糖質制限食なら、ウテメリンを内服しても、インスリンなしで乗り切れる可能性が高いと思います。

ウテメリンの必要性に関しては、産婦人科の主治医とよくご相談ください。


【15/06/21

27週妊婦
ありがとうございました
先生、お忙しい中さっそくの返事に感謝します!

ありがとうございます!

産婦人科の先生にもウテメリン使用の不安を相談してみようと思います。

それまではスーパー糖質制限で頑張っていきたいと思います。】



【15/06/22

宗田
ウテメリンについて

産科医です。27週妊婦さんの質問にお答えします。

ウテメリンで血糖値が上がることがあるという報告はあるのでしょうが、当院で糖質制限をすすめている中で、ウテメリンで上昇して困るようなケースはありません。
安心して内服してください。

基本的にウテメリンは16週以降で使う流産早産予防の薬です。
この時期は耐糖能が下がります。
ですから2回目の糖負荷試験を行って、妊娠糖尿病を診断します。

ところが日本中どこの産科でも糖質は50%以上取るような指導をしていますからウテメリンのせいか、この時期のせいかどちらが原因で耐糖能が下がるのかは判定困難です。

私たちのような糖質制限をしている産科では、血糖コントロールで困ったことは1型でも2型糖尿病でも妊娠糖尿病でもありません。

ウテメリンは子宮筋などの収縮をおさえます。
もともとはぜんそくや呼吸器の疾患の薬が改良されたものだと聞いています。
これは心筋や呼吸筋などにも影響して動悸などの副作用を起こします。
自律神経などに影響与えることなどが血糖値にも影響しているようです。

ただ普通早産予防で入院した場合はウテメリン点滴を長期持続使います。
この際の補液は5%ブドウ糖液を使います。
これでも血糖値を押し上げています。
絶対安静のストレス、高糖質食事と補液などもあって血糖コントロールができなくなると思います。

糖質制限では、何も起こりません。安心して続けてください。】


【15/06/22
27週妊婦
宗田先生ありがとうございました
宗田先生、詳しいことを教えてくださりありがとうございました!

ずっと血糖値への影響が気になってモヤモヤしてウテメリン飲めずにいたのですが、スッキリしました。
安心して糖質制限を続けながら今日から服用始めたいと思います(^^)

本当にお忙しい中で、このように時間をさいて返事をくださったことに、感謝いたします!
ありがとうございました!】




テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
宗田哲男先生からも、ケトン体安全宣言です。
こんにちは。

宗田マタニティクリニックの宗田哲男先生からも「ケトン体は安全です!」とのコメントを頂きました。

宗田先生、ありがとうございます。

宗田先生は、年間約700の分娩を手がける第一線の産婦人科医師です。

妊娠糖尿病に関しても2010年から糖質制限食でコントロールしておられます。

妊婦に糖質制限食を導入された結果、安産となり、帝王切開率が約1/3に減少したそうです。

年間分娩数約1300の永井クリニックの永井泰先生と共に、第1回目の
母子栄養懇話会
http://www.nagai-cl.com/srv_nut_blog.asp?blog_eiyou=1164

を開催されました。
素晴らしいことです。

妊娠糖尿病の患者さんに対し、安易に「糖質摂取+インスリン」を押しつける旧来の常識を覆すには、宗田先生や永井先生のような産婦人科医師が増えていくことが必要です。

母子栄養懇話会がそのきっかけになればいいですね。


【15/06/03 宗田

ケトン体は安全です!

まなさん、ケトン体が危険なものなら人類はつわりを切り抜けられなかったでしょう。

今や糖尿病医は、ケトン体に対する正しい知識が求められていますが、ほとんど無理です。ケトン体は怖いということで患者さんを脅かすだけで実際考えたことがないのです。

でも、生まれたばかりの赤ちゃんはみんなケトン人間です。もともとケトン体で栄養されているからです。

糖尿病専門医に、脅かされたら、鶏の卵は、何をエネルギーにしているのか質問してみてください。生物はほとんどみな、卵の時代を通過します。でもそこにはブドウ糖は、ありません。

ケトン体を理解できるかどうかがこれからの医者の試される時です。

でもまだ卵は1日1個だと言っている医師もいることでしょう。

考えない医師が多すぎますが、実はよく考える妊婦さんは増え続けています。

まなさんは間違っていませんから頑張ってください。】


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット