2015年10月21日 (水)
【15/10/20 妊娠糖尿病について
失礼します。
先生のブログで、妊娠糖尿病になると将来真性の糖尿病となる割合は15%~60%という記事を拝見したのですが、中には妊娠中に糖尿病と診断されても中には産後普通の人と同じような食事をしていても一生発症しない方もいるのでしょうか?
また、それは稀ですか・・?
妊娠糖尿病だと将来の糖尿病は約束されたようなものなのでしょうか?
(普通の食事の場合)
好きなものを食べるのをためらい、ストレスを抱えながらこの先生きていくのでしょうか。。
私は今32週の妊婦です。BMI18.5です。
糖尿病と診断されていないのですが食後の血糖値が気になって仕方がなく、指先で測る簡易測定器を購入しました。
毎食測っているのではないのですが、空腹時85前後、ご飯100グラム+おかずで1時間後が110位。
120グラム+おかずの場合で1時間値が135前後。
150グラム+おかずだと1時間値170前後です。←このとき2時間値でも145であまり下がっていませんでした。
普段120グラムで食事しているのですが健常な婦さんは150グラムのご飯を取ってもここまで血糖値は上がらないと思います。
もう自分は妊娠糖尿病と思ってしまっています。
75グラム負荷検査を受けていないのですが本当に妊娠糖尿なのかどうか、婦人科できちんと負荷試験を受けてみるべきなのでしょうか?
うちの地域では50グラム試験はありませんでした。
自分で測定器買わなかったら血糖値に気づいていなかったと思います。
毎日そのことばかり考えています。
もうひとつ、病院と指先の血糖値はどちらを目安に信じればよいのでしょうか?
病院の数値がただしいのでしょうか?
お忙しいと存じますが、よろしくお願いします。】
こんにちは。
妊娠糖尿病についてコメント・質問を頂きました。
<妊娠糖尿病からの糖尿病発症率>
以下、日本糖尿病・妊娠学会のサイトから転載です。
http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/
●産後の注意点
Q妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが本当に必要なのですか?
A 最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。また最近のメタアナリシスでは、妊娠糖尿病の妊婦さんは耐糖能が正常の妊婦さんに比べて、将来糖尿病になる確率は7.43倍であると報告されています。
また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。
したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月
<出産後の糖質制限食>
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013
220ページ
GDM(妊娠糖尿病)母体の耐糖能の再評価
1)妊娠糖尿病母体の耐糖能は分娩後6~12週の間に75gOGTTを行い再評価する。
2)分娩後耐糖能が正常化しても、妊娠糖尿病既往女性は
将来の糖尿病発症リスク群であり、長期にわたる追跡管理が必要である
最近のガイドラインでも妊娠糖尿病の母体は、糖尿病発症リスク群で、長期にわたる管理が必要とされていますので、糖質制限食を実践されたほうがいいと思います。
糖質制限食のモットーは、美味しく楽しく末長くですので、緩くてもいいのでお奨めです。
最近は、糖質制限食OKの、スイーツやチョコ、パン、パンケーキ、ピザ、パスタ、お好み焼きなどいろいろ発売されていますので、つらい我慢はなしで糖質制限食が可能です。
私自身は糖尿病なので、1回の食事の糖質量が10~20g以下の摂取です。
緩やかな糖質制限は1回の食事の糖質量が30~40gの摂取です。
『ご飯150グラムで、2時間値で145mg』なら、境界型ですので、緩やかな糖質制限食でも将来の糖尿病発症が予防できると思います。
糖質制限食は人類本来の食事であり人類の健康食なので、全身の血流・代謝がよくなり、自然治癒力も向上します。
<妊娠糖尿病の診断基準>
妊娠糖尿病 gestational diabetes mellitus (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
①空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
②1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
③2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
上記が妊娠糖尿病の診断基準です。
もう32週ですから、75g経口ブドウ糖負荷試験はどちらでもいいと思います。
妊婦において、現実に重要なのは、血糖コントロールです。
<妊娠糖尿病の血糖コントロール目標>
血糖の厳重な管理が最も大切です。
食前100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満を目標に管理します。
糖質摂取のグラム数を考慮することで、この目標はクリアできると思います。
A)
妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も
<妊娠中の血糖値コントロール目標>糖尿病治療ガイド(2014-2015)によれば
朝食前血糖値70~100mg/dl
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c6.2%未満、NGSP値、
です。
B)
さらに、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013、223ページによれば
「HbA1cが、鉄欠乏状態の影響を受け、血糖コントロール状態を反映しいない」
ため、GA(グリコアルブミン)15.8%未満が目標としています。
また食後1時間値140mg/dl未満が目標として好ましいとされています。
<母子ともに健康であるためには糖質制限食>
1)食前100mg/dl未満
2)食後2時間120mg/dl未満
3)食後1時間値140mg/dl未満
4)GA(グリコアルブミン)15.8%未満
血糖自己測定器で、1)2)3)をクリアする程度の糖質摂取量を目指しましょう。
そうすれば、自然に4)はクリアできます。
<血糖自己測定器の精度>
一応、±20%の誤差が、簡易血糖自己測定器にはあるとされています。
しかし、時に変な値がでることがあっても、病院の検査とそれほど大きな違いはないと思います。
血糖自己測定器のデータは毛細血管血なので、病院のデータ(静脈血)より数mg~10mgくらい高くでることが多いようです。
江部康二
失礼します。
先生のブログで、妊娠糖尿病になると将来真性の糖尿病となる割合は15%~60%という記事を拝見したのですが、中には妊娠中に糖尿病と診断されても中には産後普通の人と同じような食事をしていても一生発症しない方もいるのでしょうか?
また、それは稀ですか・・?
妊娠糖尿病だと将来の糖尿病は約束されたようなものなのでしょうか?
(普通の食事の場合)
好きなものを食べるのをためらい、ストレスを抱えながらこの先生きていくのでしょうか。。
私は今32週の妊婦です。BMI18.5です。
糖尿病と診断されていないのですが食後の血糖値が気になって仕方がなく、指先で測る簡易測定器を購入しました。
毎食測っているのではないのですが、空腹時85前後、ご飯100グラム+おかずで1時間後が110位。
120グラム+おかずの場合で1時間値が135前後。
150グラム+おかずだと1時間値170前後です。←このとき2時間値でも145であまり下がっていませんでした。
普段120グラムで食事しているのですが健常な婦さんは150グラムのご飯を取ってもここまで血糖値は上がらないと思います。
もう自分は妊娠糖尿病と思ってしまっています。
75グラム負荷検査を受けていないのですが本当に妊娠糖尿なのかどうか、婦人科できちんと負荷試験を受けてみるべきなのでしょうか?
うちの地域では50グラム試験はありませんでした。
自分で測定器買わなかったら血糖値に気づいていなかったと思います。
毎日そのことばかり考えています。
もうひとつ、病院と指先の血糖値はどちらを目安に信じればよいのでしょうか?
病院の数値がただしいのでしょうか?
お忙しいと存じますが、よろしくお願いします。】
こんにちは。
妊娠糖尿病についてコメント・質問を頂きました。
<妊娠糖尿病からの糖尿病発症率>
以下、日本糖尿病・妊娠学会のサイトから転載です。
http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/
●産後の注意点
Q妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが本当に必要なのですか?
A 最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。また最近のメタアナリシスでは、妊娠糖尿病の妊婦さんは耐糖能が正常の妊婦さんに比べて、将来糖尿病になる確率は7.43倍であると報告されています。
また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。
したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月
<出産後の糖質制限食>
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013
220ページ
GDM(妊娠糖尿病)母体の耐糖能の再評価
1)妊娠糖尿病母体の耐糖能は分娩後6~12週の間に75gOGTTを行い再評価する。
2)分娩後耐糖能が正常化しても、妊娠糖尿病既往女性は
将来の糖尿病発症リスク群であり、長期にわたる追跡管理が必要である
最近のガイドラインでも妊娠糖尿病の母体は、糖尿病発症リスク群で、長期にわたる管理が必要とされていますので、糖質制限食を実践されたほうがいいと思います。
糖質制限食のモットーは、美味しく楽しく末長くですので、緩くてもいいのでお奨めです。
最近は、糖質制限食OKの、スイーツやチョコ、パン、パンケーキ、ピザ、パスタ、お好み焼きなどいろいろ発売されていますので、つらい我慢はなしで糖質制限食が可能です。
私自身は糖尿病なので、1回の食事の糖質量が10~20g以下の摂取です。
緩やかな糖質制限は1回の食事の糖質量が30~40gの摂取です。
『ご飯150グラムで、2時間値で145mg』なら、境界型ですので、緩やかな糖質制限食でも将来の糖尿病発症が予防できると思います。
糖質制限食は人類本来の食事であり人類の健康食なので、全身の血流・代謝がよくなり、自然治癒力も向上します。
<妊娠糖尿病の診断基準>
妊娠糖尿病 gestational diabetes mellitus (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
①空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
②1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
③2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
上記が妊娠糖尿病の診断基準です。
もう32週ですから、75g経口ブドウ糖負荷試験はどちらでもいいと思います。
妊婦において、現実に重要なのは、血糖コントロールです。
<妊娠糖尿病の血糖コントロール目標>
血糖の厳重な管理が最も大切です。
食前100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満を目標に管理します。
糖質摂取のグラム数を考慮することで、この目標はクリアできると思います。
A)
妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も
<妊娠中の血糖値コントロール目標>糖尿病治療ガイド(2014-2015)によれば
朝食前血糖値70~100mg/dl
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c6.2%未満、NGSP値、
です。
B)
さらに、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013、223ページによれば
「HbA1cが、鉄欠乏状態の影響を受け、血糖コントロール状態を反映しいない」
ため、GA(グリコアルブミン)15.8%未満が目標としています。
また食後1時間値140mg/dl未満が目標として好ましいとされています。
<母子ともに健康であるためには糖質制限食>
1)食前100mg/dl未満
2)食後2時間120mg/dl未満
3)食後1時間値140mg/dl未満
4)GA(グリコアルブミン)15.8%未満
血糖自己測定器で、1)2)3)をクリアする程度の糖質摂取量を目指しましょう。
そうすれば、自然に4)はクリアできます。
<血糖自己測定器の精度>
一応、±20%の誤差が、簡易血糖自己測定器にはあるとされています。
しかし、時に変な値がでることがあっても、病院の検査とそれほど大きな違いはないと思います。
血糖自己測定器のデータは毛細血管血なので、病院のデータ(静脈血)より数mg~10mgくらい高くでることが多いようです。
江部康二
2015年06月23日 (火)
おはようございます。
妊娠糖尿病とウテメリンと糖質制限食について、27週妊婦 さんから、コメント・質問を頂きました。
ウテメリンの高血糖の副作用の可能性については、産科医の宗田先生からご回答を頂きました。
宗田先生、いつもありがとうございます。
産科医の専門的アドバイスなので、信頼度が高いです。
27週妊婦さん、糖質制限食ならウテメリンを内服しても、血糖値上昇の心配はないということで、良かったです。
江部康二
【15/06/21
27週妊婦
ウテメリンと血糖値上昇
先生、突然のメッセージすみません。
3人目妊娠中で27w2dです。
6月19日に妊婦検診があり、子宮けいかんの長さが26.4mmと短く張りも少しあることから、張り止めのウテメリンを処方されました。
私は2人目の妊娠中に妊娠糖尿病になり、総合病院にてインスリン使用で39w4dで3280グラムで出産しました。
約一年半前の出産です。
その後、境界型になってしまったため色々調べて糖質制限を知り今日まで続けています。
今回の産院は前回とは別の所で、総合病院ではありません。
ウテメリンは血糖値を上げるとネットで調べたのですが、張りがある場合は服用しなければならないのでしょうか。
せっかく糖質制限しているのに、ウテメリンで上がってしまったら悔しいです。
それとも、やはり張り止めを優先してインスリンを打った方がいいのでしょうか?
突然のメッセージで本当に失礼かと思ったのですが、自分ではウテメリンと血糖値との関係が分からず、先生のご意見を聞けたらありがたいと思いメッセージしました。
ちなみに、11w4dで75グラムの血糖値検査をしたときは、大丈夫でした。
30wでまた血糖値の検査をする予定です。
中期後期には血糖値が上がりやすいとのことなので、できればこのまま糖質制限は続けていきたいと思っています。
長々すみません。
先生、多忙のこととは思いますが、御返事いただけると嬉しいです。】
15/06/21
ドクター江部
Re: ウテメリンと血糖値上昇
27週妊婦 さん
私は産婦人科医ではないので、明確な回答は困難です。
製薬会社のウテメリンの添付文書をみると、副作用に高血糖が確かにあります。
これは必ず高血糖が生じるということではなく、まれに高血糖を生じうるということです。
スーパー糖質制限食なら、ウテメリンを内服しても、インスリンなしで乗り切れる可能性が高いと思います。
ウテメリンの必要性に関しては、産婦人科の主治医とよくご相談ください。
【15/06/21
27週妊婦
ありがとうございました
先生、お忙しい中さっそくの返事に感謝します!
ありがとうございます!
産婦人科の先生にもウテメリン使用の不安を相談してみようと思います。
それまではスーパー糖質制限で頑張っていきたいと思います。】
【15/06/22
宗田
ウテメリンについて
産科医です。27週妊婦さんの質問にお答えします。
ウテメリンで血糖値が上がることがあるという報告はあるのでしょうが、当院で糖質制限をすすめている中で、ウテメリンで上昇して困るようなケースはありません。
安心して内服してください。
基本的にウテメリンは16週以降で使う流産早産予防の薬です。
この時期は耐糖能が下がります。
ですから2回目の糖負荷試験を行って、妊娠糖尿病を診断します。
ところが日本中どこの産科でも糖質は50%以上取るような指導をしていますからウテメリンのせいか、この時期のせいかどちらが原因で耐糖能が下がるのかは判定困難です。
私たちのような糖質制限をしている産科では、血糖コントロールで困ったことは1型でも2型糖尿病でも妊娠糖尿病でもありません。
ウテメリンは子宮筋などの収縮をおさえます。
もともとはぜんそくや呼吸器の疾患の薬が改良されたものだと聞いています。
これは心筋や呼吸筋などにも影響して動悸などの副作用を起こします。
自律神経などに影響与えることなどが血糖値にも影響しているようです。
ただ普通早産予防で入院した場合はウテメリン点滴を長期持続使います。
この際の補液は5%ブドウ糖液を使います。
これでも血糖値を押し上げています。
絶対安静のストレス、高糖質食事と補液などもあって血糖コントロールができなくなると思います。
糖質制限では、何も起こりません。安心して続けてください。】
【15/06/22
27週妊婦
宗田先生ありがとうございました
宗田先生、詳しいことを教えてくださりありがとうございました!
ずっと血糖値への影響が気になってモヤモヤしてウテメリン飲めずにいたのですが、スッキリしました。
安心して糖質制限を続けながら今日から服用始めたいと思います(^^)
本当にお忙しい中で、このように時間をさいて返事をくださったことに、感謝いたします!
ありがとうございました!】
妊娠糖尿病とウテメリンと糖質制限食について、27週妊婦 さんから、コメント・質問を頂きました。
ウテメリンの高血糖の副作用の可能性については、産科医の宗田先生からご回答を頂きました。
宗田先生、いつもありがとうございます。
産科医の専門的アドバイスなので、信頼度が高いです。
27週妊婦さん、糖質制限食ならウテメリンを内服しても、血糖値上昇の心配はないということで、良かったです。
江部康二
【15/06/21
27週妊婦
ウテメリンと血糖値上昇
先生、突然のメッセージすみません。
3人目妊娠中で27w2dです。
6月19日に妊婦検診があり、子宮けいかんの長さが26.4mmと短く張りも少しあることから、張り止めのウテメリンを処方されました。
私は2人目の妊娠中に妊娠糖尿病になり、総合病院にてインスリン使用で39w4dで3280グラムで出産しました。
約一年半前の出産です。
その後、境界型になってしまったため色々調べて糖質制限を知り今日まで続けています。
今回の産院は前回とは別の所で、総合病院ではありません。
ウテメリンは血糖値を上げるとネットで調べたのですが、張りがある場合は服用しなければならないのでしょうか。
せっかく糖質制限しているのに、ウテメリンで上がってしまったら悔しいです。
それとも、やはり張り止めを優先してインスリンを打った方がいいのでしょうか?
突然のメッセージで本当に失礼かと思ったのですが、自分ではウテメリンと血糖値との関係が分からず、先生のご意見を聞けたらありがたいと思いメッセージしました。
ちなみに、11w4dで75グラムの血糖値検査をしたときは、大丈夫でした。
30wでまた血糖値の検査をする予定です。
中期後期には血糖値が上がりやすいとのことなので、できればこのまま糖質制限は続けていきたいと思っています。
長々すみません。
先生、多忙のこととは思いますが、御返事いただけると嬉しいです。】
15/06/21
ドクター江部
Re: ウテメリンと血糖値上昇
27週妊婦 さん
私は産婦人科医ではないので、明確な回答は困難です。
製薬会社のウテメリンの添付文書をみると、副作用に高血糖が確かにあります。
これは必ず高血糖が生じるということではなく、まれに高血糖を生じうるということです。
スーパー糖質制限食なら、ウテメリンを内服しても、インスリンなしで乗り切れる可能性が高いと思います。
ウテメリンの必要性に関しては、産婦人科の主治医とよくご相談ください。
【15/06/21
27週妊婦
ありがとうございました
先生、お忙しい中さっそくの返事に感謝します!
ありがとうございます!
産婦人科の先生にもウテメリン使用の不安を相談してみようと思います。
それまではスーパー糖質制限で頑張っていきたいと思います。】
【15/06/22
宗田
ウテメリンについて
産科医です。27週妊婦さんの質問にお答えします。
ウテメリンで血糖値が上がることがあるという報告はあるのでしょうが、当院で糖質制限をすすめている中で、ウテメリンで上昇して困るようなケースはありません。
安心して内服してください。
基本的にウテメリンは16週以降で使う流産早産予防の薬です。
この時期は耐糖能が下がります。
ですから2回目の糖負荷試験を行って、妊娠糖尿病を診断します。
ところが日本中どこの産科でも糖質は50%以上取るような指導をしていますからウテメリンのせいか、この時期のせいかどちらが原因で耐糖能が下がるのかは判定困難です。
私たちのような糖質制限をしている産科では、血糖コントロールで困ったことは1型でも2型糖尿病でも妊娠糖尿病でもありません。
ウテメリンは子宮筋などの収縮をおさえます。
もともとはぜんそくや呼吸器の疾患の薬が改良されたものだと聞いています。
これは心筋や呼吸筋などにも影響して動悸などの副作用を起こします。
自律神経などに影響与えることなどが血糖値にも影響しているようです。
ただ普通早産予防で入院した場合はウテメリン点滴を長期持続使います。
この際の補液は5%ブドウ糖液を使います。
これでも血糖値を押し上げています。
絶対安静のストレス、高糖質食事と補液などもあって血糖コントロールができなくなると思います。
糖質制限では、何も起こりません。安心して続けてください。】
【15/06/22
27週妊婦
宗田先生ありがとうございました
宗田先生、詳しいことを教えてくださりありがとうございました!
ずっと血糖値への影響が気になってモヤモヤしてウテメリン飲めずにいたのですが、スッキリしました。
安心して糖質制限を続けながら今日から服用始めたいと思います(^^)
本当にお忙しい中で、このように時間をさいて返事をくださったことに、感謝いたします!
ありがとうございました!】
2015年06月03日 (水)
こんにちは。
宗田マタニティクリニックの宗田哲男先生からも「ケトン体は安全です!」とのコメントを頂きました。
宗田先生、ありがとうございます。
宗田先生は、年間約700の分娩を手がける第一線の産婦人科医師です。
妊娠糖尿病に関しても2010年から糖質制限食でコントロールしておられます。
妊婦に糖質制限食を導入された結果、安産となり、帝王切開率が約1/3に減少したそうです。
年間分娩数約1300の永井クリニックの永井泰先生と共に、第1回目の
母子栄養懇話会
http://www.nagai-cl.com/srv_nut_blog.asp?blog_eiyou=1164
を開催されました。
素晴らしいことです。
妊娠糖尿病の患者さんに対し、安易に「糖質摂取+インスリン」を押しつける旧来の常識を覆すには、宗田先生や永井先生のような産婦人科医師が増えていくことが必要です。
母子栄養懇話会がそのきっかけになればいいですね。
【15/06/03 宗田
ケトン体は安全です!
まなさん、ケトン体が危険なものなら人類はつわりを切り抜けられなかったでしょう。
今や糖尿病医は、ケトン体に対する正しい知識が求められていますが、ほとんど無理です。ケトン体は怖いということで患者さんを脅かすだけで実際考えたことがないのです。
でも、生まれたばかりの赤ちゃんはみんなケトン人間です。もともとケトン体で栄養されているからです。
糖尿病専門医に、脅かされたら、鶏の卵は、何をエネルギーにしているのか質問してみてください。生物はほとんどみな、卵の時代を通過します。でもそこにはブドウ糖は、ありません。
ケトン体を理解できるかどうかがこれからの医者の試される時です。
でもまだ卵は1日1個だと言っている医師もいることでしょう。
考えない医師が多すぎますが、実はよく考える妊婦さんは増え続けています。
まなさんは間違っていませんから頑張ってください。】
宗田マタニティクリニックの宗田哲男先生からも「ケトン体は安全です!」とのコメントを頂きました。
宗田先生、ありがとうございます。
宗田先生は、年間約700の分娩を手がける第一線の産婦人科医師です。
妊娠糖尿病に関しても2010年から糖質制限食でコントロールしておられます。
妊婦に糖質制限食を導入された結果、安産となり、帝王切開率が約1/3に減少したそうです。
年間分娩数約1300の永井クリニックの永井泰先生と共に、第1回目の
母子栄養懇話会
http://www.nagai-cl.com/srv_nut_blog.asp?blog_eiyou=1164
を開催されました。
素晴らしいことです。
妊娠糖尿病の患者さんに対し、安易に「糖質摂取+インスリン」を押しつける旧来の常識を覆すには、宗田先生や永井先生のような産婦人科医師が増えていくことが必要です。
母子栄養懇話会がそのきっかけになればいいですね。
【15/06/03 宗田
ケトン体は安全です!
まなさん、ケトン体が危険なものなら人類はつわりを切り抜けられなかったでしょう。
今や糖尿病医は、ケトン体に対する正しい知識が求められていますが、ほとんど無理です。ケトン体は怖いということで患者さんを脅かすだけで実際考えたことがないのです。
でも、生まれたばかりの赤ちゃんはみんなケトン人間です。もともとケトン体で栄養されているからです。
糖尿病専門医に、脅かされたら、鶏の卵は、何をエネルギーにしているのか質問してみてください。生物はほとんどみな、卵の時代を通過します。でもそこにはブドウ糖は、ありません。
ケトン体を理解できるかどうかがこれからの医者の試される時です。
でもまだ卵は1日1個だと言っている医師もいることでしょう。
考えない医師が多すぎますが、実はよく考える妊婦さんは増え続けています。
まなさんは間違っていませんから頑張ってください。】
2015年06月02日 (火)
【15/06/01 まな
妊娠糖尿病
こんばんは☆
妊娠4ヶ月で妊娠糖尿病と分かり色々勉強しスーパー糖質制限をしています。
糖尿病内科の先生にはケトン体のことを指摘され涙しました。自分なりに調べて調べてケトン体は大丈夫なんだと言い聞かせています。でも病院にいくたびに不安で赤ちゃんに影響でたらどうしようと不安です。糖質制限で血糖値は落ち着いてるのでインスリンではなく糖質制限で進めていきたいです。赤ちゃんは元気に産まれてもケトン体のせいで成長していくにすれ影響下したらどうしようと怖くなります。宗田マタニティクリニックに通院したいけれど大阪なので通えないし、、、江部先生を信じて安心して産んで良いんですよね?ケトン体て言葉がもう恐怖でしかないです。。】
まな さん
インスリン作用が保たれている時のケトン体が基準値より高値でも生理的なもので、なんの心配もないです。
胎盤のケトン体の基準値は成人の20~30倍です。
新生児の血中ケトン体濃度も成人の3~4倍です。
胎児や新生児はケトン体を重要なエネルギー源として利用しているのです。
成人のβヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)の血中濃度基準値は
85μmol/L以下です。
胎盤60検体の平均値は2235.0μmol/Lです。
臍帯血60検体のは平均値は779.2μmol/Lです。
生後4日目の新生児312例の平均値は240.4μmol/Lです。
つまり、胎盤や胎児や新生児のケトン体の基準値は成人の数倍~30倍ということで、それが当たり前なので、危険でも何でもないです。
宗田先生と永井先生のおかげで、ケトン体の安全性が証明されたわけです。
あとは、医師が、ケトン体に対する、上記の最新の知識を知っているか否かの差です。
2015年第18回日本病態栄養学会。宗田先生らの発表。60検体。
*胎盤組織液の平均βヒドロキシ酪酸値は2235.0μmol/L、臍帯血は平均779.2μmol/L
2014年第17回日本病態栄養学会。宗田先生らの発表。
*胎児の胎盤(絨毛間液)の平均βヒドロキシ酪酸値、平均1730μmol/L(58検体)
*新生児の血中平均βヒドロキシ酪酸値は、 平均240.4μmol/L(312例、生後4日)
◎成人の現行の基準値は、 βヒドロキシ酪酸値は85 μmol/L以下。
☆☆☆
以下は
2015年1月13日(火)の本ブログ記事です。
宗田先生ポスター発表。ケトン体は安全。日本病態栄養学会。
こんにちは。
第18回日本病態栄養学会年次学術集会において、2015年1月10日(土)宗田先生がポスター発表されました。
私も共同発表者の一人です。
宗田哲男先生は、2014年の病態栄養学会年次学術集会で、普通に糖質を食べている女性における人工流産児の絨毛のβヒドロキシ酪酸値を、58検体測定され、平均1730μmol/Lで、通常の基準値(βヒドロキシ酪酸85μmol/l以下)に比し、はるかに高値であることを報告されました。
58検体全てが成人の基準値よりはるかに高値(20~30倍)でしたので、胎児のケトン体の基準値は成人よりかなり高値であると言えます。
これは世界で初めての報告であり、極めて貴重なデータです。(^-^)v(^-^)v
6週から18週までの胎児の絨毛間液のケトン体値がこれほど高値であることは、胎児の脳を始めとした組織の主たるエネルギー源はケトン体である可能性を示唆しており、このことはそのままケトン体の本質的安全性を証明するものです。
勿論58検体全例で、酸性血症(アシドーシス)ありませんでした。
今回は、耐糖能正常妊婦60名において、分娩時に胎盤組織液と臍帯血のβヒドロキシ酪酸値を測定です。
その結果、胎盤組織内のβヒドロキシ酪酸値は、平均2235.0μmol/Lであり、臍帯βヒドロキシ酪酸値は、平均779.2μmol/Lで、胎盤内が有意に高値でした。
胎盤組織内のβヒドロキシ酪酸値は、いわゆる基準値(85μmol/L以下)に対して20~30倍の高値でした。
胎盤でエネルギー源であるβヒドロキシ酪酸を産生して、胎児に供給しているということです。
前回は、妊娠初期の段階での絨毛間液の測定で、今回は分娩時の測定です。
これにより、妊娠初期から分娩時まで、胎盤のβヒドロキシ酪酸値は、一貫して成人の基準値の20~30倍という高値が当たり前ということが判明しました。
妊娠初期から分娩時まで、胎盤のβヒドロキシ酪酸高値は当たり前のことであり、再び安全性は確立されました。
胎盤組織内の血糖値は75~80mg/dlで、全ての妊婦で臍帯血の血糖値と比べて有意差なしですから、胎児は、ブドウ糖よりもβヒドロキシ酪酸などケトン体を主たるエネルギー源としているので、胎盤でせっせと生産していると考えられます。
つまり、胎児においてはケトン体高値は当たり前のことであり、危険であるどころか、主たるエネルギー源である可能性が極めて高いのです。
母体のケトン体が高値だと、出生児が2才時点で知能テストで低下がみられたというRizzo Tらの論文がよく引用されます。(*)
Rizzo Tらの論文は、βヒドロキシ酪酸値は100から180μmol/Lでの比較です。
正常分娩の胎盤のβヒドロキシ酪酸値は、平均2235.0μmol/L、臍帯血臍帯βヒドロキシ酪酸値は、平均779.2μmol/Lですので、Rizzo Tらの論文の、βヒドロキシ酪酸値「100から180μmol/L」というのが、いかに無意味であるかは一目瞭然です。
Rizzo Tらの論文は、結局、飢餓や血糖コントロール不良からの結果として、βヒドロキシ酪酸値が180μmol/Lと軽度高値になった母体のグループをチェックしたものと思われます。
(*)Rizzo T, Metzger BE, Burns WJ, Burns KC: Correlations between antepartum
maternal metabolism and child intelligence. N Engl J Med 325: 911-16, 1991.
江部康二
☆☆☆
以下宗田先生ポスター発表の抜粋。
第18回日本病態栄養学会年次学術集会。
ポスター22 小児栄養・母子栄養
第1日目 1月10 日(土) 18:00~18:56 イベントホール
P-169 胎児、新生児-胎盤系の高ケトン血症の研究(糖質制限食による妊娠管理第3報)
宗田マタニティクリニック 宗田 哲男、他
<目的>
糖質制限食では、βヒドロキシ酪酸値(以降ケトン体という)が上昇する。
これを危険なこととする考えがある一方、近年ケトン体は小児の重症てんかんの治療や活性酸素を無害化すること、アルツハイマー病の治療や予防、がん治療などにも使われて、積極的に脳の保護的エネルギー源になるという知見が増えている。
2013年、2014年と我々は、臍帯血、胎児、新生児には、高濃度のケトン体が存在することを発表した。
今回は初めて、胎盤組織内のケトン体を測定することができ、そこにさらに高濃度のケトン体があることを発見した。
これをもとに胎児、新生児、胎盤系のケトン体について検討した。
<方法>
60名の耐糖能が正常の妊婦の分娩時の胎盤と臍帯血のケトン体値(βヒドロキシ酪酸値)を検討。
<成績>
1)胎盤組織内のβヒドロキシ酪酸値は、平均2235.0μmol/Lであり
臍帯βヒドロキシ酪酸値は、平均779.2μmol/Lで、胎盤内が有意に高値であった。
胎盤組織内のβヒドロキシ酪酸値は、いわゆる基準値85μmol/Lに対して
20~30倍の高値であった。
2)胎盤組織内の血糖値は75~80mg/dlで、全ての妊婦で臍帯血の血糖値と比べて有意差なし。
<考察>
1)
ケトン体値は胎盤組織で極めて高く、血糖値は、臍帯と胎盤組織で差はない。
これは妊娠中の胎児の栄養代謝が脂肪酸に依存していることを示す。
自然流産の場合でも絨毛のケトン体は高値であって、これは絨毛でケトン体が産生されていることを示唆する。
2)
卵生動物、例えば両生類、鳥類などの卵には糖質はなく、脂肪とタンパク質で胎仔となる。
哺乳類はこれらの進化を受け継いで受精卵が着床し卵黄嚢造血を行う間巨大有核赤血球が存在する。
これは糖質がない状態で代謝が可能であることを示す。
3)
酸素の十分にない環境でも、ケトン体は効率的にエネルギーを生み、脳神経にも好影響を与える。
我々はこの時期の絨毛が、ケトン体2000μmol/Lになることを、2014年発表した。
妊娠初期から分娩まで胎児は高ケトン体環境下にある。
4)
RizzoTは、ケトン体高値が知能指数を低下させると述べたが(1991年)
そのケトン体値は100から180μmol/Lでの比較である。
ところが、
①つわりの妊婦でもケトン体は3000μmol/Lを超える。
②胎盤には、ケトン体が、常に2000μmol/Lは存在。
③新生児の4日-30日目のケトン体は240μmol/Lである。
RizzotTのいう知能低下は、ケトン体には無関係と考える。
5)
糖質制限食ではケトン体が上昇するが、胎児の体内環境を考えるとそもそもケトン体は上記のように高値であるので、危険なものではない。
胎児は脂肪酸-ケトン体をエネルギー源としていると考える。
6)
電極法ケトン体測定器は、臍帯血、胎盤組織液などでも酵素サイクリング法などのラボデータときわめて高い相関を示し、これらのケトン体の迅速な検査に利用できることがわかった。
<結論>
1)
妊娠中の胎児は母体からのブドウ糖を主なエネルギー源としていると言われてきたが、初期から全妊娠期間を通じて脂肪酸-ケトン体を中心にした栄養に依存していることが推測される。
2)
糖質制限食によるケトン体上昇は、脂肪酸代謝の結果であって、飢えの結果でもなく、危険なものでもない。
催奇形性や知能低下の影響因子とは考えにくい。
3)
胎児の影響環境は、ヒトの本来の栄養が、今ほど糖質依存ではなかった可能性を示している。
4)
ヒトの栄養代謝には、糖質制限食は、合理的なものであり、とくに、妊娠時は、妊娠糖尿病にも糖尿病合併妊娠に管理にも効果的で、安全であると考える。
妊娠糖尿病
こんばんは☆
妊娠4ヶ月で妊娠糖尿病と分かり色々勉強しスーパー糖質制限をしています。
糖尿病内科の先生にはケトン体のことを指摘され涙しました。自分なりに調べて調べてケトン体は大丈夫なんだと言い聞かせています。でも病院にいくたびに不安で赤ちゃんに影響でたらどうしようと不安です。糖質制限で血糖値は落ち着いてるのでインスリンではなく糖質制限で進めていきたいです。赤ちゃんは元気に産まれてもケトン体のせいで成長していくにすれ影響下したらどうしようと怖くなります。宗田マタニティクリニックに通院したいけれど大阪なので通えないし、、、江部先生を信じて安心して産んで良いんですよね?ケトン体て言葉がもう恐怖でしかないです。。】
まな さん
インスリン作用が保たれている時のケトン体が基準値より高値でも生理的なもので、なんの心配もないです。
胎盤のケトン体の基準値は成人の20~30倍です。
新生児の血中ケトン体濃度も成人の3~4倍です。
胎児や新生児はケトン体を重要なエネルギー源として利用しているのです。
成人のβヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)の血中濃度基準値は
85μmol/L以下です。
胎盤60検体の平均値は2235.0μmol/Lです。
臍帯血60検体のは平均値は779.2μmol/Lです。
生後4日目の新生児312例の平均値は240.4μmol/Lです。
つまり、胎盤や胎児や新生児のケトン体の基準値は成人の数倍~30倍ということで、それが当たり前なので、危険でも何でもないです。
宗田先生と永井先生のおかげで、ケトン体の安全性が証明されたわけです。
あとは、医師が、ケトン体に対する、上記の最新の知識を知っているか否かの差です。
2015年第18回日本病態栄養学会。宗田先生らの発表。60検体。
*胎盤組織液の平均βヒドロキシ酪酸値は2235.0μmol/L、臍帯血は平均779.2μmol/L
2014年第17回日本病態栄養学会。宗田先生らの発表。
*胎児の胎盤(絨毛間液)の平均βヒドロキシ酪酸値、平均1730μmol/L(58検体)
*新生児の血中平均βヒドロキシ酪酸値は、 平均240.4μmol/L(312例、生後4日)
◎成人の現行の基準値は、 βヒドロキシ酪酸値は85 μmol/L以下。
☆☆☆
以下は
2015年1月13日(火)の本ブログ記事です。
宗田先生ポスター発表。ケトン体は安全。日本病態栄養学会。
こんにちは。
第18回日本病態栄養学会年次学術集会において、2015年1月10日(土)宗田先生がポスター発表されました。
私も共同発表者の一人です。
宗田哲男先生は、2014年の病態栄養学会年次学術集会で、普通に糖質を食べている女性における人工流産児の絨毛のβヒドロキシ酪酸値を、58検体測定され、平均1730μmol/Lで、通常の基準値(βヒドロキシ酪酸85μmol/l以下)に比し、はるかに高値であることを報告されました。
58検体全てが成人の基準値よりはるかに高値(20~30倍)でしたので、胎児のケトン体の基準値は成人よりかなり高値であると言えます。
これは世界で初めての報告であり、極めて貴重なデータです。(^-^)v(^-^)v
6週から18週までの胎児の絨毛間液のケトン体値がこれほど高値であることは、胎児の脳を始めとした組織の主たるエネルギー源はケトン体である可能性を示唆しており、このことはそのままケトン体の本質的安全性を証明するものです。
勿論58検体全例で、酸性血症(アシドーシス)ありませんでした。
今回は、耐糖能正常妊婦60名において、分娩時に胎盤組織液と臍帯血のβヒドロキシ酪酸値を測定です。
その結果、胎盤組織内のβヒドロキシ酪酸値は、平均2235.0μmol/Lであり、臍帯βヒドロキシ酪酸値は、平均779.2μmol/Lで、胎盤内が有意に高値でした。
胎盤組織内のβヒドロキシ酪酸値は、いわゆる基準値(85μmol/L以下)に対して20~30倍の高値でした。
胎盤でエネルギー源であるβヒドロキシ酪酸を産生して、胎児に供給しているということです。
前回は、妊娠初期の段階での絨毛間液の測定で、今回は分娩時の測定です。
これにより、妊娠初期から分娩時まで、胎盤のβヒドロキシ酪酸値は、一貫して成人の基準値の20~30倍という高値が当たり前ということが判明しました。
妊娠初期から分娩時まで、胎盤のβヒドロキシ酪酸高値は当たり前のことであり、再び安全性は確立されました。
胎盤組織内の血糖値は75~80mg/dlで、全ての妊婦で臍帯血の血糖値と比べて有意差なしですから、胎児は、ブドウ糖よりもβヒドロキシ酪酸などケトン体を主たるエネルギー源としているので、胎盤でせっせと生産していると考えられます。
つまり、胎児においてはケトン体高値は当たり前のことであり、危険であるどころか、主たるエネルギー源である可能性が極めて高いのです。
母体のケトン体が高値だと、出生児が2才時点で知能テストで低下がみられたというRizzo Tらの論文がよく引用されます。(*)
Rizzo Tらの論文は、βヒドロキシ酪酸値は100から180μmol/Lでの比較です。
正常分娩の胎盤のβヒドロキシ酪酸値は、平均2235.0μmol/L、臍帯血臍帯βヒドロキシ酪酸値は、平均779.2μmol/Lですので、Rizzo Tらの論文の、βヒドロキシ酪酸値「100から180μmol/L」というのが、いかに無意味であるかは一目瞭然です。
Rizzo Tらの論文は、結局、飢餓や血糖コントロール不良からの結果として、βヒドロキシ酪酸値が180μmol/Lと軽度高値になった母体のグループをチェックしたものと思われます。
(*)Rizzo T, Metzger BE, Burns WJ, Burns KC: Correlations between antepartum
maternal metabolism and child intelligence. N Engl J Med 325: 911-16, 1991.
江部康二
☆☆☆
以下宗田先生ポスター発表の抜粋。
第18回日本病態栄養学会年次学術集会。
ポスター22 小児栄養・母子栄養
第1日目 1月10 日(土) 18:00~18:56 イベントホール
P-169 胎児、新生児-胎盤系の高ケトン血症の研究(糖質制限食による妊娠管理第3報)
宗田マタニティクリニック 宗田 哲男、他
<目的>
糖質制限食では、βヒドロキシ酪酸値(以降ケトン体という)が上昇する。
これを危険なこととする考えがある一方、近年ケトン体は小児の重症てんかんの治療や活性酸素を無害化すること、アルツハイマー病の治療や予防、がん治療などにも使われて、積極的に脳の保護的エネルギー源になるという知見が増えている。
2013年、2014年と我々は、臍帯血、胎児、新生児には、高濃度のケトン体が存在することを発表した。
今回は初めて、胎盤組織内のケトン体を測定することができ、そこにさらに高濃度のケトン体があることを発見した。
これをもとに胎児、新生児、胎盤系のケトン体について検討した。
<方法>
60名の耐糖能が正常の妊婦の分娩時の胎盤と臍帯血のケトン体値(βヒドロキシ酪酸値)を検討。
<成績>
1)胎盤組織内のβヒドロキシ酪酸値は、平均2235.0μmol/Lであり
臍帯βヒドロキシ酪酸値は、平均779.2μmol/Lで、胎盤内が有意に高値であった。
胎盤組織内のβヒドロキシ酪酸値は、いわゆる基準値85μmol/Lに対して
20~30倍の高値であった。
2)胎盤組織内の血糖値は75~80mg/dlで、全ての妊婦で臍帯血の血糖値と比べて有意差なし。
<考察>
1)
ケトン体値は胎盤組織で極めて高く、血糖値は、臍帯と胎盤組織で差はない。
これは妊娠中の胎児の栄養代謝が脂肪酸に依存していることを示す。
自然流産の場合でも絨毛のケトン体は高値であって、これは絨毛でケトン体が産生されていることを示唆する。
2)
卵生動物、例えば両生類、鳥類などの卵には糖質はなく、脂肪とタンパク質で胎仔となる。
哺乳類はこれらの進化を受け継いで受精卵が着床し卵黄嚢造血を行う間巨大有核赤血球が存在する。
これは糖質がない状態で代謝が可能であることを示す。
3)
酸素の十分にない環境でも、ケトン体は効率的にエネルギーを生み、脳神経にも好影響を与える。
我々はこの時期の絨毛が、ケトン体2000μmol/Lになることを、2014年発表した。
妊娠初期から分娩まで胎児は高ケトン体環境下にある。
4)
RizzoTは、ケトン体高値が知能指数を低下させると述べたが(1991年)
そのケトン体値は100から180μmol/Lでの比較である。
ところが、
①つわりの妊婦でもケトン体は3000μmol/Lを超える。
②胎盤には、ケトン体が、常に2000μmol/Lは存在。
③新生児の4日-30日目のケトン体は240μmol/Lである。
RizzotTのいう知能低下は、ケトン体には無関係と考える。
5)
糖質制限食ではケトン体が上昇するが、胎児の体内環境を考えるとそもそもケトン体は上記のように高値であるので、危険なものではない。
胎児は脂肪酸-ケトン体をエネルギー源としていると考える。
6)
電極法ケトン体測定器は、臍帯血、胎盤組織液などでも酵素サイクリング法などのラボデータときわめて高い相関を示し、これらのケトン体の迅速な検査に利用できることがわかった。
<結論>
1)
妊娠中の胎児は母体からのブドウ糖を主なエネルギー源としていると言われてきたが、初期から全妊娠期間を通じて脂肪酸-ケトン体を中心にした栄養に依存していることが推測される。
2)
糖質制限食によるケトン体上昇は、脂肪酸代謝の結果であって、飢えの結果でもなく、危険なものでもない。
催奇形性や知能低下の影響因子とは考えにくい。
3)
胎児の影響環境は、ヒトの本来の栄養が、今ほど糖質依存ではなかった可能性を示している。
4)
ヒトの栄養代謝には、糖質制限食は、合理的なものであり、とくに、妊娠時は、妊娠糖尿病にも糖尿病合併妊娠に管理にも効果的で、安全であると考える。
2015年02月07日 (土)
【15/02/06 ふくまま
インスリンと糖質制限
初めまして。いつも勉強させていただいています。
妊娠前から食後高血糖が軽くあったので糖質制限をしていました。
妊娠をして今5ヶ月ですが妊娠糖尿病になり、インスリンを打ち始めました。
病院では炭水化物をしっかり取る食事管理を指導されています。
まだ2単位のインスリンなのですが指導通りの炭水化物を取ると2時間値が基準値を超えてしまうため、炭水化物少量と低糖質なチーズやお肉を食事指導の内容よりはるかに多く食べています。
ですがインスリンを打っていてチーズやナッツやお肉などを多く食べると脂肪などを蓄積しやすいので良くないと読みました。
でもお腹と精神面を満たすため、食べたいのです。
インスリンを打ちながら糖質制限食(プラス炭水化物)を続けても健康面そして胎児に悪影響はないでしょうか?
よろしくお願い致します。】
ふくまま さん
インスリンをたくさん打って、糖質をたくさん摂取すると肥満します。
スーパー糖質制限食なら、妊娠糖尿病でも、インスリンなしで血糖コントロール、体重コントロールは容易です。
ふくままさんは、少量でも炭水化物を食べたいのなら、少量のインスリンですむ今のやり方でOKです。
普通に糖質を大量に摂取して、大量のインスリンを打つという日本糖尿病学会のやり方は、「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」「空腹時低血糖」を生じやすく母子ともに、とても良くないのです。
また妊婦も多くのインスリン注射と多くの糖質摂取で肥満にもなりやすいです。
「インスリンを打ちながら糖質制限食(プラス炭水化物)を続けても健康面そして胎児に悪影響はないでしょうか? 」
わずか2単位と最小量のインスリンなので、OKです。
今後も、2~4単位くらいのインスリンですむ程度の、糖質量にとどめておけば、母子ともに健康で体重コントロールも大丈夫と思いますよ。
江部康二
宗田先生からアドバイスをいただきました。
宗田先生、ありがとうございます。
15/02/07 宗田 哲男
インスリンと糖質制限
ふくままさん、糖質制限食で妊娠糖尿病を管理している産科医です。5か月で妊娠糖尿病であるならこれから後半はもっと耐糖能が下がってきます。今はインスリンは2単位ですがだんだん増えていきます。妊娠糖尿病は、インスリンは出ているのに効かなくなる病態なのです。ですから糖質量を抑えてきたあなたのやり方は正しいと思いますが、ほとんどの産科医も内科医も糖質は取らなければならないと信じています。ですからどんどん糖質を取らせてインスリンが増えて肥満にもなります。またインスリンは効かなくなるのでコントロールが難しくなります。胎児を肥満にしたくないはずが逆になって行きます。今炭水化物を増やさなければこのインスリン単位数でも大丈夫ですし、やめることも可能でしょう。ただインスリン量が増えるようなら糖質制限は、低血糖を起こすこともあるので注意が必要です。チーズ、ナッツ、お肉ならいくら食べてもそれほど太りませんし、心配はいりません。具体的なことでお困りだったらメールでも相談してください。
インスリンと糖質制限
初めまして。いつも勉強させていただいています。
妊娠前から食後高血糖が軽くあったので糖質制限をしていました。
妊娠をして今5ヶ月ですが妊娠糖尿病になり、インスリンを打ち始めました。
病院では炭水化物をしっかり取る食事管理を指導されています。
まだ2単位のインスリンなのですが指導通りの炭水化物を取ると2時間値が基準値を超えてしまうため、炭水化物少量と低糖質なチーズやお肉を食事指導の内容よりはるかに多く食べています。
ですがインスリンを打っていてチーズやナッツやお肉などを多く食べると脂肪などを蓄積しやすいので良くないと読みました。
でもお腹と精神面を満たすため、食べたいのです。
インスリンを打ちながら糖質制限食(プラス炭水化物)を続けても健康面そして胎児に悪影響はないでしょうか?
よろしくお願い致します。】
ふくまま さん
インスリンをたくさん打って、糖質をたくさん摂取すると肥満します。
スーパー糖質制限食なら、妊娠糖尿病でも、インスリンなしで血糖コントロール、体重コントロールは容易です。
ふくままさんは、少量でも炭水化物を食べたいのなら、少量のインスリンですむ今のやり方でOKです。
普通に糖質を大量に摂取して、大量のインスリンを打つという日本糖尿病学会のやり方は、「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」「空腹時低血糖」を生じやすく母子ともに、とても良くないのです。
また妊婦も多くのインスリン注射と多くの糖質摂取で肥満にもなりやすいです。
「インスリンを打ちながら糖質制限食(プラス炭水化物)を続けても健康面そして胎児に悪影響はないでしょうか? 」
わずか2単位と最小量のインスリンなので、OKです。
今後も、2~4単位くらいのインスリンですむ程度の、糖質量にとどめておけば、母子ともに健康で体重コントロールも大丈夫と思いますよ。
江部康二
宗田先生からアドバイスをいただきました。
宗田先生、ありがとうございます。
15/02/07 宗田 哲男
インスリンと糖質制限
ふくままさん、糖質制限食で妊娠糖尿病を管理している産科医です。5か月で妊娠糖尿病であるならこれから後半はもっと耐糖能が下がってきます。今はインスリンは2単位ですがだんだん増えていきます。妊娠糖尿病は、インスリンは出ているのに効かなくなる病態なのです。ですから糖質量を抑えてきたあなたのやり方は正しいと思いますが、ほとんどの産科医も内科医も糖質は取らなければならないと信じています。ですからどんどん糖質を取らせてインスリンが増えて肥満にもなります。またインスリンは効かなくなるのでコントロールが難しくなります。胎児を肥満にしたくないはずが逆になって行きます。今炭水化物を増やさなければこのインスリン単位数でも大丈夫ですし、やめることも可能でしょう。ただインスリン量が増えるようなら糖質制限は、低血糖を起こすこともあるので注意が必要です。チーズ、ナッツ、お肉ならいくら食べてもそれほど太りませんし、心配はいりません。具体的なことでお困りだったらメールでも相談してください。