マラソンと糖質制限食。
【17/02/17 eat and run

マラソンランナーです

江部先生

先生の著書「人類最強の糖質制限論」拝読させていただきました。現在糖質制限食を開始して40日ほど経過し、体重が4キロ減りました。北海道の田舎で医師をしております。

ダイエット目的で自己流3食主食抜き、小麦、糖抜きの食事をしておりましたが、先生のスーパー糖質制限にかなり近いものだったので安堵いたしました。

ところで、ダイエットの目的は少しでもマラソンタイムを短くしたいためだったのですが、これまでランナーは走る前に糖質を大量に摂取し、走っている最中も捕食するのがベストとされていました。

ケトジェニックな生活となってからは、走る前にはプロテインやココナッツオイルの摂取がよろしいのでしょうか。それとも不要でしょうか。

また、途中での捕食やスポーツドリンクの摂取(水と電解質だけでいい?)はいかがでしょうか。蓄えた体脂肪だけで対応するのがよいのかどうかご教示いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。】



おはようございます。

医師でありマラソンランナーである eat and run さんからマラソンのときの食事について、コメント・質問を頂きました。

結論からいうと、マラソン前も最中もスーパー糖質制限食でOKです。

米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。

『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』

という内容です。

普段から

(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人

いずれの群もエリートランナーです。

研究施設に2泊3日で滞在、最大酸素摂取量、体組成、筋生検など実施、その後トレッドミルで走った後、直後と2時間後に筋生検を実施です。

(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。

一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。

つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという結論です。


江部康二


ケトン適合したウルトラ持久力ランナーの代謝特性について

要約

背景

多くの成功したウルトラ持久力アスリートが、高炭水化物から低炭水化物食に切り替えた、しかし彼らは代謝適合の度合いを決定するために前もって研究はされてはいない。

方法

20人のエリートウルトラマラソンランナーとアイアンマン距離のトライアスリートが、代謝反応を決定するために最大強度の運動テストと180分間の64% VO2maxのサブ最大強度のトレッドミル運動を実行した。

1グループは従来の常に高炭水化物食(HC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25),
もう1つのグループは、低炭水化物食(LC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70),

で、平均20ヶ月(9~36ヶ月の範囲)実践した。

結果

ピークの脂肪酸化はLCグループ((1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000))が2~3倍高く、VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000)もより高かった。

サブ最高強度の運動中で平均脂肪酸化は、LCグループ(1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000)で、脂肪のが大きな貢献(88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000)に対応して59%高かった。

燃料使用量における、LCとHCの著明な相違にも関わらず、休息中の筋肉中のグリコーゲンと180分間ランニング (−64% from pre-exercise) 後のグリコーゲンレベルの低下と120分の回復(−36% from pre-exercise)において有意差はなかった。.

結論

HC(高糖質)食を実践している高度に訓練されたウルトラ持久力アスリートと比較して、長期のケトン適合食は著明に脂肪酸化の比率が高かった。

一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満パターンは運動中も3時間のランニング後も同様であった。




METABOLISM CLINICAL AND EXPERIMENTAL 65 (2016) 100 – 110

Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners

ABSTRACT

Background.
Many successful ultra-endurance athletes have switched from a highcarbohydrate
to a low-carbohydrate diet, but they have not previously been studied to
determine the extent of metabolic adaptations.

Methods.
Twenty elite ultra-marathoners and ironman distance triathletes performed a
maximal graded exercise test and a 180 min submaximal run at 64% VO2max on a treadmill
to determine metabolic responses.
One group habitually consumed a traditional highcarbohydrate
(HC: n = 10, %carbohydrate:protein:fat = 59:14:25) diet, and the other a lowcarbohydrate
(LC; n = 10, 10:19:70) diet for an average of 20 months (range 9 to 36 months).

Results.
Peak fat oxidation was 2.3-fold higher in the LC group (1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000) and it occurred at a higher percentage of VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000).
Mean fat oxidation during submaximal exercise was 59% higher in the LC
group (1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000) corresponding to a greater relative
contribution of fat (88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000). Despite these marked differences in fuel
use between LC and HC athletes, there were no significant differences in resting muscle
glycogen and the level of depletion after 180 min of running (−64% from pre-exercise) and
120 min of recovery (−36% from pre-exercise).

Conclusion.
Compared to highly trained ultra-endurance athletes consuming an HC diet,
long-term keto-adaptation results in extraordinarily high rates of fat oxidation, whereas
muscle glycogen utilization and repletion patterns during and after a 3 hour run are similar


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
逸ノ城関が、糖質制限食で減量成功、さらに肉体改造中。
【16/11/04 精神科医師A

逸ノ城

逸ノ城、入院で25キロ減量成功「いい感じです」

http://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/1733453.html

炭水化物を抜いて、酒や菓子、ジュースも口にしない。スリムな姿に】


こんにちは。

精神科医師Aさんから、とても嬉しい情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。

大相撲の逸ノ城関が、糖質制限食で減量成功して、さらに肉体改造中です。

秋場所で、全勝で初優勝を飾った豪栄道関に続いて、2人目の糖質制限関取ですね。

腰椎椎間板ヘルニアで、秋場所を全休した逸ノ城関ですが、約25日の入院で手術をせずに治療して、212kgから200kgまで減ったそうです。

退院後も、炭水化物を抜いて、酒や菓子、ジュースも口にしないことで、187kgまで減って、さらに減量中です。

腰痛も改善して、動きもよくなり、九州場所にも出場するそうです。

糖質制限食なら、筋肉のダメージも少なく、怪我をしにくいし、筋肉の回復も早いと思われます。

逸ノ城関の活躍を期待したいと思います。

江部康二


☆☆☆
以下
日刊スポーツのサイトから一部引用

http://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/1733453.html

逸ノ城、入院で25キロ減量成功「いい感じです」
[2016年11月4日

 腰椎椎間板ヘルニアで大相撲秋場所を全休した西前頭13枚目の逸ノ城(23=湊)が3日、25キロの減量と九州場所(13日初日、福岡国際センター)の出場を明言した。過酷な入院生活と退院後の食生活の改善で、けが前に212キロあった体重は、ジャージー姿で量っても187キロに。2年ぶりに200キロの大台を切るどころか、快進撃が続いた入門1年目のような姿に大変身。九州場所について、福岡県古賀市の部屋で「もちろん出ます」と言い切った。

 腰に激痛が走ったのは8月26日の平塚市巡業2日目だった。左半身がしびれ、真っすぐに歩けない。週明けに入院したが、ベッドで上半身を起こすこともできない。痛みが引かず、眠れない。食事どころではなかった。パンやラム肉をかじる程度。病院食はおかみさんの真さんに譲る。手術を避けて治療した約25日の入院で200キロまで減った。

 そこで軽い体と、普通に歩ける喜びを知った。退院後は「やせます」と、初めて周囲に宣言した。炭水化物を抜いて、酒や菓子、ジュースも口にしない。“スリム”な姿に、1日の力士会では玉鷲から「新弟子が来た! 初めまして」とからかわれたほど。「九州ではラーメンも食べていない。8Lだったサイズが6Lになりました。動きも結構、いい感じですよ。歩いているときが楽です。軽い感じがします」と笑った。

 「もうちょっとやせたい」という肉体は改造中。関取との稽古はこれからで、もちろん不安はある。ただ「相撲を取れるのはうれしい。秋場所は病院で、みんないいなと思って見ていました」。モンゴルの怪物と呼ばれた当時の姿が、戻りつつある。【今村健人】


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
錦織圭選手の元管理栄養士さん、知識不足です。
おはようございます。

間違いだらけの女性自身の記事が、ネットに掲載されました。

この錦織圭の元管理栄養士さん、知識不足です。

「糖質制限食」に対して、根拠のない批判を展開されてますので反論します。

細野恵美さんの本「一流アスリートの食事」も購入して読みました。

まず、びっくりしたのは、24ページに

「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源なのだ。」

と明言してあることでした。

脳が、ケトン体という脂肪酸の分解物をいくらでも利用できることは、いまや素人でも知っている常識です。

こんなこともご存知ない栄養士がまだ日本に存在したことが、ある意味衝撃的です。

そして、こんな知識不足の栄養士が本を書いて間違った知識を広めることは、極めて有害です。

ハーパー生理学、ガイトン臨床生理学といった有名な医学の教科書に、脳はケトン体をエネルギー源として利用すると記載してあるので、欧米では医師も栄養士もナースも患者も共通知識として知っています。

錦織選手が毎年、怪我に苦しむのは、糖質過剰摂取の所為と思われます。

ジョコビッチ選手(夜は糖質制限食)と比較すると、錦織選手の怪我の多さは際立っています。

錦織選手、細野恵美栄養士のような知識不足の人を信用することなく、せめてジョコビッチ選手の食事を参考にして欲しいと思います。

それで怪我が減ると思います。

研究論文においても、糖質制限食(ケトン食)の方が、筋肉のダメージも少なくて回復も早いのです。


1)
もともと錦織選手は糖質制限食をしていないと思います。
日清食品がスポンサーなので、糖質制限はできないです。

2)
「糖質制限ダイエットがはやったことですっかり悪者になってしまいましたが、そもそも糖質は大切なエネルギー源なのです。人間の3大栄養素は糖質・タンパク質・脂質です。1日の適正量は『糖質50~60%、タンパク質15%、脂質25%』なんです。糖質が不足すると脳にエネルギーが行き渡らず、頭が働かなくなります。集中力が続かず、仕事も手につかなくなるのです」

無根拠です。

国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、理論的には必須糖質はゼロです。

糖質を摂取しなくても、肝臓や腎臓が糖新生によりブドウ糖を作りますので、そもそも低血糖にはならず、血糖値は確保されます。
これを糖新生といいます。

細野恵美栄養士、糖新生のこともご存じないようです。

なお必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラルは必要です。

糖質制限食でもビタミンCは野菜から摂取するので、その分の糖質は摂ることになります。

3)
「体が重く、だるく、慢性的に疲れている状態になります。気分も不安定になり、ずっとイライラしているなんていうことも……。一時的に体重は落ちますが、生活にハリがなくなり、幸福感も感じにくくなります。さらにもっと悪いことに、糖質制限をやめれば、以前に増して太ってしまいがちなんです」

「糖質制限をすると急激にエネルギー源が断たれるので、女性ホルモンのバランスが乱れ、月経が止まることがあります。月経の乱れは女性の体に深刻な影響をもたらしますし、更年期に糖質制限をすると症状を悪化させる一因になります」

これは、そのまま「カロリー制限食」にあてはまります。

糖質制限食なら、食後の眠気はなくなり、血糖値の上下動がないので心理的にも安定して減量できて、一日中、活力が満ちています。

4)
『実は記者(34)も、糖質制限ダイエットの経験がある。「ごはんは太る」と思い込み、炭水化物を完全に遮断。朝食は豆腐とワカメにポン酢をかけたもの、昼食はフルーツとゆで卵とヨーグルト、夕食は抜きという食生活を3カ月ほど続けた結果、体重は15キロ減。みるみるヤセて舞い上がっていたが、月経は3カ月止まっていた。』

これも、同様に、ご本人は糖質制限しているつもりでも実態は『極端なカロリー制限』です。

極端なカロリー制限により、生理が止まったと考えられます。

5)
「糖質はほかの栄養素よりも早く体を動かすエネルギー源となります。糖質を摂取しなければ、自分の筋肉を分解してエネルギー源にしてしまいます。筋量が落ちれば代謝が悪くなり、さらに脂肪をため込みやすくなっていくのです。加齢にともなって筋力は低下しますし、一度落ちた筋肉を取り戻すのは時間がかかります。閉経後の糖質制限はかなり危険といえます」

2016/10/6(木)の本ブログ記事
「糖質制限食は持久力アスリートにおいて、不利にはならない。」
にも書いたように、一流ランナーにおいても糖質制限食はOKです。

人類は、空腹時や睡眠時は、「脂肪酸-ケトン体」をエネルギー源としています。

「ブドウ糖-グリコーゲン」は運動時と糖質を摂取したときの一時的なエネルギー源です。

体重50kgで体脂肪率20%として備蓄は、脂肪は10kgで90000キロカロリーです。

糖質はグリコーゲンが250gとして備蓄は、1000kcalです。

どちらがメインのエネルギー源であるかは明白ですね。

6)
「高齢者の筋力低下はそのまま健康寿命の短縮にもつながる。老後を元気に過ごしたければ、糖質制限はNGだ。」

糖質制限食なら、高たんぱく食になるので、血清アルブミンが確保できて筋力低下になりません。

高齢者はしっかり、肉や魚など動物性たんぱく質を食べることが、血清アルブミンの確保と筋力確保につながります。

糖質を摂取しても血清アルブミンは増えません。

高糖質食こそが、筋力低下の原因となります。

103歳で現役医師の日野原重明先生は、糖質制限食ですし、週に2回はビーフステーキを食べておられます。


江部康二


☆☆☆

以下「女性自身」の記事から抜粋。
http://news.livedoor.com/article/detail/12109592/

【錦織圭の元管理栄養士が語る「なぜ“糖質制限”は危険なのか」

2016年10月6日 6時0分 女性自身

「糖質制限ダイエットは、たしかに短期間で体重が落ち、一時的にはヤセます。目に見えて効果が出るので、ヤセた実感も満足度も高い。さらに面倒なカロリー計算が不要で、炭水化物を抜くだけとカンタンなのも飛びつきやすい理由です。でも実はさまざまな弊害があり、危険なんです」

そう緊急提言をするのは、森永製菓のウイダートレーニングラボで管理栄養士を務める細野恵美さん。’05~’10年、千葉ロッテマリーンズの栄養管理を担当後、錦織圭選手、浅田真央選手など一流アスリートの管理栄養士を歴任。現在は高梨沙羅選手ほか7人のアスリートを担当している。

錦織選手も、以前は糖質制限を取り入れていた結果、スタミナ不足に悩まされていた。’12年から細野さんが担当となったことで適切に糖質を取り入れ、世界ランキングは25位から5位までアップした。浅田選手、高梨選手も糖質メシによってスタミナと身体バランスをキープすることに成功している。

「糖質制限ダイエットがはやったことですっかり悪者になってしまいましたが、そもそも糖質は大切なエネルギー源なのです。人間の3大栄養素は糖質・タンパク質・脂質です。1日の適正量は『糖質50~60%、タンパク質15%、脂質25%』なんです。糖質が不足すると脳にエネルギーが行き渡らず、頭が働かなくなります。集中力が続かず、仕事も手につかなくなるのです」

糖質が足りないと脳がガス欠状態になり、正常な生活を送れなくなる。

「体が重く、だるく、慢性的に疲れている状態になります。気分も不安定になり、ずっとイライラしているなんていうことも……。一時的に体重は落ちますが、生活にハリがなくなり、幸福感も感じにくくなります。さらにもっと悪いことに、糖質制限をやめれば、以前に増して太ってしまいがちなんです」

実は記者(34)も、糖質制限ダイエットの経験がある。「ごはんは太る」と思い込み、炭水化物を完全に遮断。朝食は豆腐とワカメにポン酢をかけたもの、昼食はフルーツとゆで卵とヨーグルト、夕食は抜きという食生活を3カ月ほど続けた結果、体重は15キロ減。みるみるヤセて舞い上がっていたが、月経は3カ月止まっていた。

「糖質制限をすると急激にエネルギー源が断たれるので、女性ホルモンのバランスが乱れ、月経が止まることがあります。月経の乱れは女性の体に深刻な影響をもたらしますし、更年期に糖質制限をすると症状を悪化させる一因になります」

細野さんが女性アスリートの栄養管理をする際には、体脂肪率15%を目安にしている。15%を下回ると、月経が乱れやすいからだ。

閉経後の女性はさらに注意が必要だ。閉経後は代謝が落ち、コレステロールをためやすくなる。つまり脂肪を蓄積しやすい体質になるが、安直に糖質制限をすると、体が不足したエネルギーを筋肉から使うようになる。

「糖質はほかの栄養素よりも早く体を動かすエネルギー源となります。糖質を摂取しなければ、自分の筋肉を分解してエネルギー源にしてしまいます。筋量が落ちれば代謝が悪くなり、さらに脂肪をため込みやすくなっていくのです。加齢にともなって筋力は低下しますし、一度落ちた筋肉を取り戻すのは時間がかかります。閉経後の糖質制限はかなり危険といえます」

高齢者の筋力低下はそのまま健康寿命の短縮にもつながる。老後を元気に過ごしたければ、糖質制限はNGだ。】


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食は持久力アスリートにおいて、不利にはならない。
こんにちは。

米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。

『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』

という内容です。

普段から

(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人

いずれの群もエリートランナーです。

(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。

一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。

つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという結論です。


江部康二


ケトン適合したウルトラ持久力ランナーの代謝特性について

要約

背景

多くの成功したウルトラ持久力アスリートが、高炭水化物から低炭水化物食に切り替えた、しかし彼らは代謝適合の度合いを決定するために前もって研究はされてはいない。

方法

20人のエリートウルトラマラソンランナーとアイアンマン距離のトライアスリートが、代謝反応を決定するために最大強度の運動テストと180分間の64% VO2maxのサブ最大強度のトレッドミル運動を実行した。

1グループは従来の常に高炭水化物食(HC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25),
もう1つのグループは、低炭水化物食(LC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70),

で、平均20ヶ月(9~36ヶ月の範囲)実践した。

結果

ピークの脂肪酸化はLCグループ((1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000))が2~3倍高く、VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000)もより高かった。

サブ最高強度の運動中で平均脂肪酸化は、LCグループ(1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000)で、脂肪のが大きな貢献(88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000)に対応して59%高かった。

燃料使用量における、LCとHCの著明な相違にも関わらず、休息中の筋肉中のグリコーゲンと180分間ランニング (−64% from pre-exercise) 後のグリコーゲンレベルの低下と120分の回復(−36% from pre-exercise)において有意差はなかった。.

結論

HC(高糖質)食を実践している高度に訓練されたウルトラ持久力アスリートと比較して、長期のケトン適合食は著明に脂肪酸化の比率が高かった。

一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満パターンは運動中も3時間のランニング後も同様であった。




METABOLISM CLINICAL AND EXPERIMENTAL 65 (2016) 100 – 110

Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners

ABSTRACT

Background.
Many successful ultra-endurance athletes have switched from a highcarbohydrate
to a low-carbohydrate diet, but they have not previously been studied to
determine the extent of metabolic adaptations.

Methods.
Twenty elite ultra-marathoners and ironman distance triathletes performed a
maximal graded exercise test and a 180 min submaximal run at 64% VO2max on a treadmill
to determine metabolic responses.
One group habitually consumed a traditional highcarbohydrate
(HC: n = 10, %carbohydrate:protein:fat = 59:14:25) diet, and the other a lowcarbohydrate
(LC; n = 10, 10:19:70) diet for an average of 20 months (range 9 to 36 months).

Results.
Peak fat oxidation was 2.3-fold higher in the LC group (1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000) and it occurred at a higher percentage of VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000).
Mean fat oxidation during submaximal exercise was 59% higher in the LC
group (1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000) corresponding to a greater relative
contribution of fat (88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000). Despite these marked differences in fuel
use between LC and HC athletes, there were no significant differences in resting muscle
glycogen and the level of depletion after 180 min of running (−64% from pre-exercise) and
120 min of recovery (−36% from pre-exercise).

Conclusion.
Compared to highly trained ultra-endurance athletes consuming an HC diet,
long-term keto-adaptation results in extraordinarily high rates of fat oxidation, whereas
muscle glycogen utilization and repletion patterns during and after a 3 hour run are similar


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
運動と筋肉と血糖取り込み
こんばんは。

筋力トレーニングやウオーキング、運動と筋肉と血糖取り込みについて検討してみます。

最高強度の運動の時は、即エネルギ-源が必要なので、筋肉細胞はまず自前で貯蔵していたATPやクレアチニンリン酸の生み出すATPを使います。

そのあとは、グリコーゲン分解と解糖からのATP供給が5秒で最大となり、20秒くらい持続します。

これらは、ほとんど全て嫌気的エネルギーで、無酸素運動で供給速度が速いです。

高負荷の筋力トレーニングであれば最高強度の運動であり、脂肪酸はエネルギー源としてほとんど使われないので、筋肉中のグリコーゲン消費量は多くなり、数回繰り返せば一旦枯渇するくらいまで減少すると考えられます。

これに対して、低負荷のトレーニングの場合は、「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム(好気的システム)」も結構利用されるので、筋肉中のグリコーゲン消費量は少ないと考えられます。

勿論低負荷のトレーニングでは、グリコーゲン-ブドウ糖システム(好気的システム)もあるていど利用されると思います。

高負荷の筋力トレーニング後に糖質を摂取すれば、枯渇した筋肉中のグリコーゲンを補充するためにドンドン血糖が取り込まれます。

「糖尿病は薬なしで治せる」の著者・渡邊昌先生は、食事開始後30分で30分運動すれば、運動後も血糖は吸収され続けると記載しておられますが、個人差があると思います。

糖尿病専門医ガイドブック(2006年)の98ページに、

「肥満2型糖尿病患者で、低強度運動30分実施後、2時間にわたってインスリン感受性が改善した」

という報告が記載されています。

しかし、運動終了後30分で再び血糖値が上昇する人もあると思います。

やはり個人差があるし、同一人物でもその日によりパターンが異なることもあるようです。

30分のウオーキングの場合、筋肉の主たるエネルギー源は脂肪酸-ケトン体システムなので、筋肉中のグリコーゲンはあまり減少しません。

歩行中は筋肉の収縮により、Glut4が筋肉細胞表面にでてくるので血糖を取り込みますが、それがどのくらい持続するのかですね?

筋収縮によりGlut4が筋肉細胞表面に出ているのは、新潟医療福祉大学の川中健太郎先生によれば、運動終了後2~3時間持続とのことです。

先生の論文に引用してある文献によれば「ラットに2時間の水泳運動を負荷したあと、運動終了3時間後でも、一定量のインスリン刺激に対してよりたくさんのGlut4が細胞膜表面にトランスロケーションできる」そうです。

つまり一旦、2~3時間で細胞内に戻ったGlut4ですが、その後もしばらくはトランスロケーションしやすくなっているのですね。

高負荷トレーニングでも明らかなように、運動後の筋肉の糖取り込みの持続にはグリコーゲンの減少程度もかなり関係していると思います。

しかし運動と血糖値、まだまだよくわかっていないところも多く、これからの課題です。


江部康二


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット