2011年02月12日 (土)
こんばんは。
akira さんとモン吉 さんから、糖質制限食で耐糖能改善という、嬉しいコメントをいただきました。
【11/02/10 akira
糖負荷試験
糖質制限食前後での糖負荷試験(75gOGTT)
江部先生、毎日のブログ更新ご苦労様です。健康機器メーカーで計測機器を開発している者です。長期間の糖質制限食をした前後での糖負荷試験(75gOGTT)結果が話題になっておりましたので、若干古いデータにはなりますが私のデータを提供します。なお、糖負荷試験の前日(夜食)に糖分を摂らないと血糖が高くなる現象を理由として、糖質を摂らないと耐能が悪くなるという主張はあまりにもナンセンスですので、まじめに議論する必要はありません。研究レベルで糖負荷試験に与える食事の影響を調査するのであれば血糖だけではなく、インスリンの動態も同時測定して個々人の糖代謝の確認が最低限必要です。臨床現場での食事負荷試験の繰り返し再現性は決して良いものではなく、前日の食事のコントロール、負荷試験中3時間の身体活動の制限をきちんとコントロールしないと正確なデータは得られません。以下、2004年と2005年のデータです。
2004年1月 54歳男性 体重63.9kg 体脂肪率21.0% BMI 26.5
HbA1C 5.1 インスリン分泌指数0.77 HOMA-IR 3.2 ∑IRI(2時間)519
(実データ)
時間 0 30 60 90 120 180 (分)
血糖 95 162 207 200 165 67
インスリン 14 65 104 156 180 14
尿糖 3 247 446 8
データからは典型的なIGT(耐糖能異常)で、インスリン分泌低下型ではなくインスリン抵抗性による境界型です。しかし空腹時血糖とHbA1Cは正常ですから通常検査では耐糖能異常は検出されませんでした。食後尿糖検査で異常が見つかりましたので、1年間自己流の糖質制限食(朝食はオレンジジュース→牛乳、クロワッサン2個→果物少々)(昼食・夜食は主食の量のみ半減)(間食、清涼飲料水→お茶、お菓子類は禁忌)(アルコールはなし)をしました。残念ながら、この時点では江部先生の糖質制限食を存じ上げませんでした。
2005年3月 55歳男性 体重60.3kg 体脂肪率16.3% BMI 25.1
HbA1C 4.8 インスリン分泌指数0.85 HOMA-IR 2.1 ∑IRI(2時間)273
(実データ)
時間 0 30 60 90 120 180 (分)
血糖 95 128 181 162 102 99
インスリン 9 37 88 87 51 26
尿糖 5 68 404 10
結果、体重3.6kg減、体脂肪率5.7%減、血糖値の判定では正常型、HOMA-IRはやや高値、∑IRIも正常範囲ではあるもののやや高値、尿糖は高値ということでインスリン抵抗性は残っていますので無罪放免ではありませんが確実に改善はされています。ただ、体重は2ヶ月間で減量した後はほぼ横ばいでした。
前日夕食時の糖質制限が影響していたとしても、2004年に比べれば明らかに改善されているのですから、ネガティブデータにはなり得ませんね。
私の場合は、インスリン抵抗性が原因の耐糖能異常ですから減量によるインスリン抵抗性の改善が血糖にもインスリンにも表れています。特に2004年には2時間後でもインスリンの過剰分泌があり、3時間後の低血糖を引き起こしていましたが、2005年では血糖とインスリンの変化は同期しており3時間後の低血糖も認められません。糖質制限食の効果と思います。
一方、インスリン分泌低下型の方でも、糖質制限食によって耐糖能が悪化する理由は無いと思いますが、減量に対する効果はインスリン抵抗性の方とはやや異なるかもしれません。
インスリン抵抗性の方は、食後のインスリン分泌量が多いために体脂肪が蓄積しやすく、糖質制限によってインスリン分泌量が低下することでの減量効果が期待できます。しかしインスリン分泌低下型の方は、食後のインスリン分泌が不足していますので体脂肪の蓄積も起こりません。糖質を制限しても、血糖値の上昇は防げますが減量の効果はあまり期待できないと思われます。また、インクレチンが本当にすい臓の機能を回復してくれるのであればインスリン分泌低下型の方には正に夢の薬になりますが、インスリン抵抗性の方には何よりも糖質制限食が第一選択でしょう。
糖負荷試験では血糖とインスリンの同時測定が望まれますが、インスリン検査はオプションですので一般臨床ではまず費用面から不可能でしょう。便宜的には、糖尿病初期で痩せ型の患者さんは遺伝(インスリン分泌低下)、肥満型の患者さんはインスリン抵抗性と考えて良いのではないかと思いますが、エビデンスはありませんのでここだけの話です。
長々と失礼しました。
先生の一層のご活躍のほど祈念しております。】
akiraさん。
コメントありがとうざいます。
糖負荷試験の前日(夜食)に糖分を摂らないと血糖が高くなる現象を理由として、糖質を摂らないと耐糖能が悪化するとの議論もありましたが、1食だけ糖質を摂らない(食事を抜く)だけで耐糖能が悪くなるという主張はあまりにもナンセンスですので、まじめに議論する必要はありません。」
私もそう思います。
「臨床現場での食事負荷試験の繰り返し再現性は決して良いものではなく、前日の食事のコントロール、負荷試験中3時間の身体活動の制限をきちんとコントロールしないと正確なデータは得られません。」
その通りですね。
従いまして、1回のブドウ糖負荷試験が前回より血糖値が上昇していたとしても、いろんなバイアスがありますので、それをもって単純に耐糖能悪化とは言えないですね。
2004年1月のOGTTは、2時間値が165mg/dlで追加分泌インスリンは180も分泌されているので、
かなりのインスリン抵抗性ですね。診断基準では、境界型の食後高血糖タイプです。
糖質制限食後の2005年3月のOGTTは、2時間値が102mg/dlで追加分泌インスリンは51と改善です。
インスリン抵抗性も随分改善です。診断基準では正常型に改善しています。→糖質制限食で耐糖能改善です。
1年2ヶ月糖質制限食を続けてのOGTTの改善は、意味があると思います。
【11/02/10 モン吉
耐糖能について
江部先生こんばんは
昨日のブログに耐糖能について書かれいましたが 私は糖質制限食を始めてもうすぐ4年になりますが とても良くなっています。この4年間をふり返ってみました。
平成19年3月7日 食後1時間血糖値:389 HbA1c:10.7
すぐに先生の糖質制限食を知りスーパーを始める。
平成19年10月12日 HbA1c:5.9
6.0をきったので、少しゆるめの糖質制限で3食ともご飯を お茶碗に1/4(40g)食べるようになりました。
毎食納豆を食べるのでやはりご飯はかかせません。 これ位だと食後1時間の血糖値は170位でした。
その後A1cは横ばいか少しずつ下がる。
平成20年10月24日 この日は試しにご飯をお茶碗一杯食べて 検査に臨みました。
食後1時間血糖値:227 HbA1c:5.5
やはりご飯一杯を食べると200越えになるんだと実感しました。
でも毎食ご飯40gは続けていました。
その後の毎月のA1cは5.4~5.5でずっと安定。
毎月検査の食後1時間血糖値も150位で前より低くなる。
平成21年11月6日 この日はご飯をお茶碗半分位食べました。
食後1時間血糖値:162 HbA1c:5.4
平成22年9月3日 この日は試しにご飯をお茶碗一杯食べました。
食後1時間血糖値:151 HbA1c:5.0
以前はお茶碗一杯食べると200越えだったので驚きました。
その後は、ご飯40g食べると以前150位だった食後血糖値が
110~120位になる。
平成23年1月7日 ご飯半分(80g)、納豆1パック、味噌汁 卵焼き、ハム2枚、青汁+オリーブオイルさじ1杯食べての検査 食後1時間血糖値:115 HbA1c:5.1
肝臓やその他の数値も正常。
尿中アルブミン(クレアチニン補正値)も8.2ですからじん臓も正常。
少し緩めの糖質制限ですが、4年間糖質制限を続けてきて 私の場合はすい臓のβ細胞がとても回復したのを実感し、長く続けて耐糖能が低下という事は有りません。ちなみに体重は13キロ減です。
セレブ病(糖尿病)の状態は10人10色で、皆さんそれぞれ すい臓の状態も疲弊しているのか、又細胞が減少している場合 その程度によっても状況は変りますので、色々試してみて ご自身に一番合った方法やペースを見つけ出すしかないと 感じます。】
モン吉さん。
コメントありがとうございます。
「平成19年3月7日 食後1時間血糖値:389 HbA1c:10.7
すぐに先生の糖質制限食を知りスーパーを始める。
平成19年10月12日 HbA1c:5.9
平成20年10月24日
この日は試しにご飯をお茶碗一杯食べて検査に臨みました。
食後1時間血糖値:227 HbA1c:5.5 」
糖質制限食実践1年半で、HbA1cは10.7→5.5%と劇的改善をキープですが、ご飯を1膳普通に食べたら、1時間後227mgですか。。。
炊いたご飯1膳に50gくらいの糖質が含まれています。2時間値はもっと低いかもしれませんが、この時点では
1gの糖質がキッチリ、ピークは3mg近く血糖値を上げているのでしょうね。
「平成22年9月3日 この日は試しにご飯をお茶碗一杯食べました。 食後1時間血糖値:151 HbA1c:5.0 」
糖質制限食実践2年半で、ご飯を1膳普通に食べても、1時間後血糖値が151mgですか。。。
これは明らかに良くなってます。1gの糖質が、1mgくらいしか血糖値を上昇させていませんね。
結局、2年半の糖質制限食実践で、耐糖能の著明な改善が得られています。
通常「糖尿病は治らない。」と言われていますが、このデータなら、糖尿病型→正常型になったわけで、治ったというのは言い過ぎとしてもそれに近い状態です。
糖質制限食で血糖コントロール良好となり、糖毒が解除され、なおかつ膵臓のβ細胞はしっかり休養できて正常に近く回復したということですね。
モン吉さん、おめでとうございます。
akiraさん、モン吉さん、
お二人とも、これからも美味しく楽しく末長く糖質制限食をお続け下さいね。
江部康二
akira さんとモン吉 さんから、糖質制限食で耐糖能改善という、嬉しいコメントをいただきました。
【11/02/10 akira
糖負荷試験
糖質制限食前後での糖負荷試験(75gOGTT)
江部先生、毎日のブログ更新ご苦労様です。健康機器メーカーで計測機器を開発している者です。長期間の糖質制限食をした前後での糖負荷試験(75gOGTT)結果が話題になっておりましたので、若干古いデータにはなりますが私のデータを提供します。なお、糖負荷試験の前日(夜食)に糖分を摂らないと血糖が高くなる現象を理由として、糖質を摂らないと耐能が悪くなるという主張はあまりにもナンセンスですので、まじめに議論する必要はありません。研究レベルで糖負荷試験に与える食事の影響を調査するのであれば血糖だけではなく、インスリンの動態も同時測定して個々人の糖代謝の確認が最低限必要です。臨床現場での食事負荷試験の繰り返し再現性は決して良いものではなく、前日の食事のコントロール、負荷試験中3時間の身体活動の制限をきちんとコントロールしないと正確なデータは得られません。以下、2004年と2005年のデータです。
2004年1月 54歳男性 体重63.9kg 体脂肪率21.0% BMI 26.5
HbA1C 5.1 インスリン分泌指数0.77 HOMA-IR 3.2 ∑IRI(2時間)519
(実データ)
時間 0 30 60 90 120 180 (分)
血糖 95 162 207 200 165 67
インスリン 14 65 104 156 180 14
尿糖 3 247 446 8
データからは典型的なIGT(耐糖能異常)で、インスリン分泌低下型ではなくインスリン抵抗性による境界型です。しかし空腹時血糖とHbA1Cは正常ですから通常検査では耐糖能異常は検出されませんでした。食後尿糖検査で異常が見つかりましたので、1年間自己流の糖質制限食(朝食はオレンジジュース→牛乳、クロワッサン2個→果物少々)(昼食・夜食は主食の量のみ半減)(間食、清涼飲料水→お茶、お菓子類は禁忌)(アルコールはなし)をしました。残念ながら、この時点では江部先生の糖質制限食を存じ上げませんでした。
2005年3月 55歳男性 体重60.3kg 体脂肪率16.3% BMI 25.1
HbA1C 4.8 インスリン分泌指数0.85 HOMA-IR 2.1 ∑IRI(2時間)273
(実データ)
時間 0 30 60 90 120 180 (分)
血糖 95 128 181 162 102 99
インスリン 9 37 88 87 51 26
尿糖 5 68 404 10
結果、体重3.6kg減、体脂肪率5.7%減、血糖値の判定では正常型、HOMA-IRはやや高値、∑IRIも正常範囲ではあるもののやや高値、尿糖は高値ということでインスリン抵抗性は残っていますので無罪放免ではありませんが確実に改善はされています。ただ、体重は2ヶ月間で減量した後はほぼ横ばいでした。
前日夕食時の糖質制限が影響していたとしても、2004年に比べれば明らかに改善されているのですから、ネガティブデータにはなり得ませんね。
私の場合は、インスリン抵抗性が原因の耐糖能異常ですから減量によるインスリン抵抗性の改善が血糖にもインスリンにも表れています。特に2004年には2時間後でもインスリンの過剰分泌があり、3時間後の低血糖を引き起こしていましたが、2005年では血糖とインスリンの変化は同期しており3時間後の低血糖も認められません。糖質制限食の効果と思います。
一方、インスリン分泌低下型の方でも、糖質制限食によって耐糖能が悪化する理由は無いと思いますが、減量に対する効果はインスリン抵抗性の方とはやや異なるかもしれません。
インスリン抵抗性の方は、食後のインスリン分泌量が多いために体脂肪が蓄積しやすく、糖質制限によってインスリン分泌量が低下することでの減量効果が期待できます。しかしインスリン分泌低下型の方は、食後のインスリン分泌が不足していますので体脂肪の蓄積も起こりません。糖質を制限しても、血糖値の上昇は防げますが減量の効果はあまり期待できないと思われます。また、インクレチンが本当にすい臓の機能を回復してくれるのであればインスリン分泌低下型の方には正に夢の薬になりますが、インスリン抵抗性の方には何よりも糖質制限食が第一選択でしょう。
糖負荷試験では血糖とインスリンの同時測定が望まれますが、インスリン検査はオプションですので一般臨床ではまず費用面から不可能でしょう。便宜的には、糖尿病初期で痩せ型の患者さんは遺伝(インスリン分泌低下)、肥満型の患者さんはインスリン抵抗性と考えて良いのではないかと思いますが、エビデンスはありませんのでここだけの話です。
長々と失礼しました。
先生の一層のご活躍のほど祈念しております。】
akiraさん。
コメントありがとうざいます。
糖負荷試験の前日(夜食)に糖分を摂らないと血糖が高くなる現象を理由として、糖質を摂らないと耐糖能が悪化するとの議論もありましたが、1食だけ糖質を摂らない(食事を抜く)だけで耐糖能が悪くなるという主張はあまりにもナンセンスですので、まじめに議論する必要はありません。」
私もそう思います。
「臨床現場での食事負荷試験の繰り返し再現性は決して良いものではなく、前日の食事のコントロール、負荷試験中3時間の身体活動の制限をきちんとコントロールしないと正確なデータは得られません。」
その通りですね。
従いまして、1回のブドウ糖負荷試験が前回より血糖値が上昇していたとしても、いろんなバイアスがありますので、それをもって単純に耐糖能悪化とは言えないですね。
2004年1月のOGTTは、2時間値が165mg/dlで追加分泌インスリンは180も分泌されているので、
かなりのインスリン抵抗性ですね。診断基準では、境界型の食後高血糖タイプです。
糖質制限食後の2005年3月のOGTTは、2時間値が102mg/dlで追加分泌インスリンは51と改善です。
インスリン抵抗性も随分改善です。診断基準では正常型に改善しています。→糖質制限食で耐糖能改善です。
1年2ヶ月糖質制限食を続けてのOGTTの改善は、意味があると思います。
【11/02/10 モン吉
耐糖能について
江部先生こんばんは
昨日のブログに耐糖能について書かれいましたが 私は糖質制限食を始めてもうすぐ4年になりますが とても良くなっています。この4年間をふり返ってみました。
平成19年3月7日 食後1時間血糖値:389 HbA1c:10.7
すぐに先生の糖質制限食を知りスーパーを始める。
平成19年10月12日 HbA1c:5.9
6.0をきったので、少しゆるめの糖質制限で3食ともご飯を お茶碗に1/4(40g)食べるようになりました。
毎食納豆を食べるのでやはりご飯はかかせません。 これ位だと食後1時間の血糖値は170位でした。
その後A1cは横ばいか少しずつ下がる。
平成20年10月24日 この日は試しにご飯をお茶碗一杯食べて 検査に臨みました。
食後1時間血糖値:227 HbA1c:5.5
やはりご飯一杯を食べると200越えになるんだと実感しました。
でも毎食ご飯40gは続けていました。
その後の毎月のA1cは5.4~5.5でずっと安定。
毎月検査の食後1時間血糖値も150位で前より低くなる。
平成21年11月6日 この日はご飯をお茶碗半分位食べました。
食後1時間血糖値:162 HbA1c:5.4
平成22年9月3日 この日は試しにご飯をお茶碗一杯食べました。
食後1時間血糖値:151 HbA1c:5.0
以前はお茶碗一杯食べると200越えだったので驚きました。
その後は、ご飯40g食べると以前150位だった食後血糖値が
110~120位になる。
平成23年1月7日 ご飯半分(80g)、納豆1パック、味噌汁 卵焼き、ハム2枚、青汁+オリーブオイルさじ1杯食べての検査 食後1時間血糖値:115 HbA1c:5.1
肝臓やその他の数値も正常。
尿中アルブミン(クレアチニン補正値)も8.2ですからじん臓も正常。
少し緩めの糖質制限ですが、4年間糖質制限を続けてきて 私の場合はすい臓のβ細胞がとても回復したのを実感し、長く続けて耐糖能が低下という事は有りません。ちなみに体重は13キロ減です。
セレブ病(糖尿病)の状態は10人10色で、皆さんそれぞれ すい臓の状態も疲弊しているのか、又細胞が減少している場合 その程度によっても状況は変りますので、色々試してみて ご自身に一番合った方法やペースを見つけ出すしかないと 感じます。】
モン吉さん。
コメントありがとうございます。
「平成19年3月7日 食後1時間血糖値:389 HbA1c:10.7
すぐに先生の糖質制限食を知りスーパーを始める。
平成19年10月12日 HbA1c:5.9
平成20年10月24日
この日は試しにご飯をお茶碗一杯食べて検査に臨みました。
食後1時間血糖値:227 HbA1c:5.5 」
糖質制限食実践1年半で、HbA1cは10.7→5.5%と劇的改善をキープですが、ご飯を1膳普通に食べたら、1時間後227mgですか。。。
炊いたご飯1膳に50gくらいの糖質が含まれています。2時間値はもっと低いかもしれませんが、この時点では
1gの糖質がキッチリ、ピークは3mg近く血糖値を上げているのでしょうね。
「平成22年9月3日 この日は試しにご飯をお茶碗一杯食べました。 食後1時間血糖値:151 HbA1c:5.0 」
糖質制限食実践2年半で、ご飯を1膳普通に食べても、1時間後血糖値が151mgですか。。。
これは明らかに良くなってます。1gの糖質が、1mgくらいしか血糖値を上昇させていませんね。
結局、2年半の糖質制限食実践で、耐糖能の著明な改善が得られています。
通常「糖尿病は治らない。」と言われていますが、このデータなら、糖尿病型→正常型になったわけで、治ったというのは言い過ぎとしてもそれに近い状態です。
糖質制限食で血糖コントロール良好となり、糖毒が解除され、なおかつ膵臓のβ細胞はしっかり休養できて正常に近く回復したということですね。
モン吉さん、おめでとうございます。
akiraさん、モン吉さん、
お二人とも、これからも美味しく楽しく末長く糖質制限食をお続け下さいね。
江部康二
2011年02月09日 (水)
こんにちは。
昨日の本ブログのアクセス数が、初めて10000件を超えました。
自分でもびっくりです。
さて今回は、chika さんから、糖質制限食で耐糖能低下?というコメント・質問をいただきました。
結論からいうと、糖質制限食を実践して耐糖能が低下することはないと思います。
【11/02/06 chika
No title
先日http://www.diabetes-cafe.com/largetable/modules/popnupblog/index.php?postid=351のような記事を読みました。
実際知り合いが糖質制限を続けてその後ブドウ糖負荷試験を受けた際前回よりも数値が悪化してびっくりしたそうです。その方はいま現在も境界型です。
半信半疑でまわりに聞いてみると糖質制限を開始後にブドウ糖負荷試験を受けたひとはいないです。(すでに糖尿病と診断されている人が多いせいか)なのでいまひとつわかりません。
このように境界型のひとが次のブドウ糖負荷に挑むとき、糖質制限をしているとこのような結果がでることってあるのでしょうか。
炭水化物に対する感受性が強くなってこのようなことが引き起こされるのでしょうか。
不思議に思って投稿させていただきました。】
chika さん。
「糖質制限食を行うと耐糖能が低下する」という説を最初に唱えたのは、ヒムスワースです。
「健康人に糖質の少ない食事を1週間与えて糖負荷試験を行った。高糖質食を与えたときには耐糖能は正常であったのに、低糖質食によって糖尿病と判定されるほどに耐糖能が悪化した。」
というのが、ヒムスワースが1935年に発表した論文の結論です。(*)
一方、 1960年、ウィルカーソン(Wilkerson)らが、複数の受刑者を被験者として低糖質食が耐糖能に与える影響を再検討して、糖質の摂取量を1日50グラムに制限しても、耐糖能には大きな影響を及ぼさないという報告を行いました。
この報告がNew England Journal of Medicineという影響力の大きな医学誌に掲載されました。(**)
New England Journal of Medicineのような、権威ある医学雑誌においては、まず論文が受理されるまでに、担当編集委員による厳しい審査があります。この第一関門だけでも大変な狭き門です。
また、受理されたとしても、論文として掲載されるまでには、さらに厳密な審査が行われます。
複数の専門家(レフリー)によって、論文の内容に間違いがないか、研究方法に問題はないかなどが徹底的に審査されます。
いったん受理されても、レフリーにより掲載不可になることもあるし、大改訂後掲載可というような判定もあります。
この非常に厳しい第二関門を通過して、初めて医学雑誌に論文として掲載されるわけです。
つまり、一流の医学雑誌に掲載された論文には、当該の一流の複数の専門家のお墨付き・保証があるわけです。
(従って製薬メーカーなどの利権が絡まない論文は、信用していいと思います。)
ですから、単なる学会報告で論文になってない研究と、一流医学雑誌に論文が掲載された研究では、信頼度にかなりの差があるわけです。
このように学問的には、ウィルカーソンらによる「糖質制限しても耐糖能は低下しない。」という一定のエビデンスがあるといえます。
「実際知り合いが糖質制限を続けてその後ブドウ糖負荷試験を受けた際前回よりも数値が悪化してびっくりしたそうです。その方はいま現在も境界型です。」
75gブドウ糖負荷試験を行うとして、同一人物でも体調やストレスなどにより、数値には変化があってもおかしくありません。
つまり、糖質制限食に関係なく、OGTTの数値が多少上がったり下がったりすることは不思議ではありません。
そのため、研究では1人のデータではなく、20人とか30人とかの数を集めて精度を高めるようにデザインすることが必要となります。
一方、2型糖尿病の診断基準をしっかり満たした人が、1年間のスーパー糖質制限食実践で血糖値もHbA1cも正常値となり、試しに白ご飯を一人前摂取しても、血糖は140mg/dlを超えなくなった例もあります。
これは、スーパー糖質制限食で膵臓が休養できて、β細胞が回復して耐糖能も改善したと考えられます。
また本ブログの読者の方々で、糖質制限食で耐糖能改善されたかたは多数おられます。
2008-10-29のブログ「糖質制限食と耐糖能改善」などもご参照いただけば幸いです。
http://www.diabetes-cafe.com/largetable/modules/popnupblog/index.php?postid=351
のサイトの管理者はお医者さんと思います。ニュートラルなよいサイトですね。
今回は糖質制限食に批判的なご意見のようですが、2011年2月7日と8日の本ブログ
「週間東洋経済が糖尿病特集・糖質制限食には批判的?」
「週間東洋経済が糖尿病特集・糖質制限食には批判的? 続き」
を見ていただけば、糖質制限食をより深くご理解いただけると思います。
江部康二
(*)
Himsworth HP. The dietetic factor determining the glucose tolerance and sensitivity to insulin of healthy men. Clin Sci 2, 67-94, 1935.
(**)
Wilkerson HLC, Hyman C, Kaufman M, McCuistion AC, Francis JO. Diagnostic evaluation of oral glucose tolerance tests in nondiabetic subjects after various levels of carbohydrate intake. N Engl J Med 262, 1047-1053, 1960.
昨日の本ブログのアクセス数が、初めて10000件を超えました。
自分でもびっくりです。
さて今回は、chika さんから、糖質制限食で耐糖能低下?というコメント・質問をいただきました。
結論からいうと、糖質制限食を実践して耐糖能が低下することはないと思います。
【11/02/06 chika
No title
先日http://www.diabetes-cafe.com/largetable/modules/popnupblog/index.php?postid=351のような記事を読みました。
実際知り合いが糖質制限を続けてその後ブドウ糖負荷試験を受けた際前回よりも数値が悪化してびっくりしたそうです。その方はいま現在も境界型です。
半信半疑でまわりに聞いてみると糖質制限を開始後にブドウ糖負荷試験を受けたひとはいないです。(すでに糖尿病と診断されている人が多いせいか)なのでいまひとつわかりません。
このように境界型のひとが次のブドウ糖負荷に挑むとき、糖質制限をしているとこのような結果がでることってあるのでしょうか。
炭水化物に対する感受性が強くなってこのようなことが引き起こされるのでしょうか。
不思議に思って投稿させていただきました。】
chika さん。
「糖質制限食を行うと耐糖能が低下する」という説を最初に唱えたのは、ヒムスワースです。
「健康人に糖質の少ない食事を1週間与えて糖負荷試験を行った。高糖質食を与えたときには耐糖能は正常であったのに、低糖質食によって糖尿病と判定されるほどに耐糖能が悪化した。」
というのが、ヒムスワースが1935年に発表した論文の結論です。(*)
一方、 1960年、ウィルカーソン(Wilkerson)らが、複数の受刑者を被験者として低糖質食が耐糖能に与える影響を再検討して、糖質の摂取量を1日50グラムに制限しても、耐糖能には大きな影響を及ぼさないという報告を行いました。
この報告がNew England Journal of Medicineという影響力の大きな医学誌に掲載されました。(**)
New England Journal of Medicineのような、権威ある医学雑誌においては、まず論文が受理されるまでに、担当編集委員による厳しい審査があります。この第一関門だけでも大変な狭き門です。
また、受理されたとしても、論文として掲載されるまでには、さらに厳密な審査が行われます。
複数の専門家(レフリー)によって、論文の内容に間違いがないか、研究方法に問題はないかなどが徹底的に審査されます。
いったん受理されても、レフリーにより掲載不可になることもあるし、大改訂後掲載可というような判定もあります。
この非常に厳しい第二関門を通過して、初めて医学雑誌に論文として掲載されるわけです。
つまり、一流の医学雑誌に掲載された論文には、当該の一流の複数の専門家のお墨付き・保証があるわけです。
(従って製薬メーカーなどの利権が絡まない論文は、信用していいと思います。)
ですから、単なる学会報告で論文になってない研究と、一流医学雑誌に論文が掲載された研究では、信頼度にかなりの差があるわけです。
このように学問的には、ウィルカーソンらによる「糖質制限しても耐糖能は低下しない。」という一定のエビデンスがあるといえます。
「実際知り合いが糖質制限を続けてその後ブドウ糖負荷試験を受けた際前回よりも数値が悪化してびっくりしたそうです。その方はいま現在も境界型です。」
75gブドウ糖負荷試験を行うとして、同一人物でも体調やストレスなどにより、数値には変化があってもおかしくありません。
つまり、糖質制限食に関係なく、OGTTの数値が多少上がったり下がったりすることは不思議ではありません。
そのため、研究では1人のデータではなく、20人とか30人とかの数を集めて精度を高めるようにデザインすることが必要となります。
一方、2型糖尿病の診断基準をしっかり満たした人が、1年間のスーパー糖質制限食実践で血糖値もHbA1cも正常値となり、試しに白ご飯を一人前摂取しても、血糖は140mg/dlを超えなくなった例もあります。
これは、スーパー糖質制限食で膵臓が休養できて、β細胞が回復して耐糖能も改善したと考えられます。
また本ブログの読者の方々で、糖質制限食で耐糖能改善されたかたは多数おられます。
2008-10-29のブログ「糖質制限食と耐糖能改善」などもご参照いただけば幸いです。
http://www.diabetes-cafe.com/largetable/modules/popnupblog/index.php?postid=351
のサイトの管理者はお医者さんと思います。ニュートラルなよいサイトですね。
今回は糖質制限食に批判的なご意見のようですが、2011年2月7日と8日の本ブログ
「週間東洋経済が糖尿病特集・糖質制限食には批判的?」
「週間東洋経済が糖尿病特集・糖質制限食には批判的? 続き」
を見ていただけば、糖質制限食をより深くご理解いただけると思います。
江部康二
(*)
Himsworth HP. The dietetic factor determining the glucose tolerance and sensitivity to insulin of healthy men. Clin Sci 2, 67-94, 1935.
(**)
Wilkerson HLC, Hyman C, Kaufman M, McCuistion AC, Francis JO. Diagnostic evaluation of oral glucose tolerance tests in nondiabetic subjects after various levels of carbohydrate intake. N Engl J Med 262, 1047-1053, 1960.
2010年10月24日 (日)
こんにちは。
てつさんから、糖質制限食で耐糖能改善という嬉しいコメントをいただきました
「10/10/23 てつ
先生お久しぶりです。
自分はヘモクロビンA1cが7.8あったのですが、糖質制限食のおかげで今年に入ってからは5.0以上の数値を見てないです。本当に感謝です。
始めて半年後にブドウ糖負荷試験をしたのですが、そのときも2時間後の血糖値が70台にまで下がっていました。糖質制限食のすごさを実感しました、ありがとうございます。」
てつさん。
劇的改善ですね。良かったです。
ヘモクロビンA1cが7.8%→2010年は5.0%未満
素晴らしいです。
糖質制限食開始後半年の75g経口ブドウ糖負荷試験で、2時間値が70台・・・
これはもう、完全に正常型です。
ヘモクロビンA1cが7.8の時は、平均血糖値が183mgです。
糖尿病型→正常型
ですね。
壊れたβ細胞は戻りませんが、疲弊していたβ細胞が糖質制限食で休養を得て回復したのでしょう。
10月22日(金)のブログに
【死滅したβ細胞は当然回復不能です。死滅したβ細胞が何割を占めているかには個人差があります。この部分が、「糖尿病はいったん診断されたら治らない」とされているところです。
一方、疲弊していたβ細胞は、糖質制限食で休養を得て回復しますから、その分は耐糖能が改善する可能性はありえます。
糖尿病型が正常型に改善するのはさすがにごくまれでしょうが、境界型レベルに改善することはたまにはあると思います。
あるいは、同じ糖尿病型でも食後血糖値の上昇ていどが、糖質制限食実践前より少しましになるとかで、私はこのパターンです。】
と書きました。
皆が皆、糖質制限食で正常型に改善とはいきませんが、てつさんは、とてもラッキーでしたね。
江部康二
てつさんから、糖質制限食で耐糖能改善という嬉しいコメントをいただきました
「10/10/23 てつ
先生お久しぶりです。
自分はヘモクロビンA1cが7.8あったのですが、糖質制限食のおかげで今年に入ってからは5.0以上の数値を見てないです。本当に感謝です。
始めて半年後にブドウ糖負荷試験をしたのですが、そのときも2時間後の血糖値が70台にまで下がっていました。糖質制限食のすごさを実感しました、ありがとうございます。」
てつさん。
劇的改善ですね。良かったです。
ヘモクロビンA1cが7.8%→2010年は5.0%未満
素晴らしいです。
糖質制限食開始後半年の75g経口ブドウ糖負荷試験で、2時間値が70台・・・
これはもう、完全に正常型です。
ヘモクロビンA1cが7.8の時は、平均血糖値が183mgです。
糖尿病型→正常型
ですね。
壊れたβ細胞は戻りませんが、疲弊していたβ細胞が糖質制限食で休養を得て回復したのでしょう。
10月22日(金)のブログに
【死滅したβ細胞は当然回復不能です。死滅したβ細胞が何割を占めているかには個人差があります。この部分が、「糖尿病はいったん診断されたら治らない」とされているところです。
一方、疲弊していたβ細胞は、糖質制限食で休養を得て回復しますから、その分は耐糖能が改善する可能性はありえます。
糖尿病型が正常型に改善するのはさすがにごくまれでしょうが、境界型レベルに改善することはたまにはあると思います。
あるいは、同じ糖尿病型でも食後血糖値の上昇ていどが、糖質制限食実践前より少しましになるとかで、私はこのパターンです。】
と書きました。
皆が皆、糖質制限食で正常型に改善とはいきませんが、てつさんは、とてもラッキーでしたね。
江部康二
2009年03月17日 (火)
おはようございます。
ネット上で「糖質制限食をすると耐糖能が落ちる」というような記載があるようですが、そんなことはありませんよ。
糖尿人が糖質制限食を実践すれば、耐糖能は基本的に改善します。 (^_^)
一方、耐糖能の改善には、個人差があります。回復の程度は糖尿病発症の時点で、膵臓のβ細胞が、どのくらいダメージを受けていたかによると思います。
以下は、糖尿病患者Sさんのデータです。 立派な糖尿病型から正常型に見事に回復されました。
2005年9月の健康診断で、空腹時血糖値:202mg/dl、HbA1c:6.9% と糖尿病の確定診断を受けました。
カロリー制限食と運動療法で2年間頑張りましたが、
2007年9月の検査で、空腹時血糖値:163mg/dl、HbA1c:7.1%
空腹時血糖値はやや改善したものの、126mg/dlを超えて糖尿病型、HbA1cは少し悪化しています。
2007年10月から糖質制限食を実践、
2007年11月高雄病院初診時、HbA1c:6.7%と改善。
2008年7月、HbA1c:5.5%と改善。
下記は、糖質制限食を約8ヶ月実践されたあとの、Sさんの2008年7月の糖質摂取時の検査です。
食前 食後30 食後60 食後90 食後120分
IRI 3.8 35.2 58.5 55.1 24.9
血糖値 108 148 189 142 126
耐糖能が改善し、血糖値は正常パターンとなっています。インスリン分泌指数も0.785と、正常ですね。
糖質制限食を8ヶ月間、実践したことによりインスリンの基礎分泌が回復して、空腹時血糖値が202mg→108mgと正常化。
インスリン追加分泌第一相も回復してインスリン指数0.4以上で正常化。
インスリン追加分泌第二相も回復して食後2時間血糖値126mgと正常化。
2005年に糖尿病が発見されたときは、空腹時血糖値が203mgなので、経口血糖負荷試験をすれば、食後血糖値は当然、200mg以上は確実で、完全に糖尿病パターンだったと考えられます。
このように、糖質制限食実践により、Sさんは見事に耐糖能が回復し、糖尿人から正常人にもどられたわけです。
それではなぜ糖質制限食で耐糖能が改善するのかを考えてみましょう。
糖尿病の人は、インスリンの作用不足があります。より正確には、インスリン分泌不足とインスリン抵抗性が合わさってインスリン作用不足となり、糖尿病を発症します。日本人の場合は、インスリン分泌不足が主となることが多いとされています。
<糖質・脂質・タンパク質>のうち血糖値を急峻に上昇させるのは、糖質だけです。糖質を摂取すると食後高血糖(ブドウ糖スパイク)を起こし、インスリンが大量に追加分泌されます。
1日3回以上毎日糖質を摂取して運動不足もあれば、インスリンが大量に追加分泌されることが長年続いて、遂に膵臓が疲弊していきます。
膵臓が疲弊すると、インスリン分泌能力は低下して、耐糖能も低下して糖尿病を発症します。糖尿病を発症した時点で、膵臓のβ細胞は、「既に回復不能のダメージを受けたもの」「疲弊しているが回復可能なもの」「健常なもの」があります。
このようなとき、糖質制限食を実践すると、インスリン必要量は極めて少量ですむので、疲弊していた膵臓のβ細胞は休養できます。そうすると、インスリン分泌能の回復が期待できます。インスリンの分泌が回復すれば、当然耐糖能も改善します。
しかし「既に回復不能のダメージを受けたもの」がどのくらいを占めるかにより、改善には個人差があります。
高雄病院では1999年から糖質制限食を始めて、もう足かけ10年ですね。400人以上の糖尿病入院患者さんで確認済みですが、糖質制限食により、食後血糖値も空腹時血糖値も改善します。空腹時血糖値が改善するということは、インスリン基礎分泌もあるていど回復したということですね。
一方、糖尿人が糖質を摂取して食後高血糖が生じると
① 高血糖により膵臓のβ細胞(インスリンを分泌)が直接ダメージを受ける。
② 高血糖により、インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性の増大)
①②により高血糖→「インスリン分泌低下+インスリン抵抗性増大」→高血糖
という繰り返しを生じますが、この悪循環のことを糖毒といい、糖尿病悪化の大きな要因となっています。(=_=;)
血糖値を急峻に上昇させるのは、糖質だけです。従って、糖尿人が糖質を摂取すれば、わざわざ糖毒状態を引き起こし、糖尿病が悪化し、長引けば膵臓のβ細胞も回復不能で死滅していくのです。
糖質制限食を実践すれば、速やかに食後高血糖が改善し、きっちりこの糖毒を断ち切ることができるので、糖尿病がめきめき改善するのです。糖質制限食で糖毒が改善すれば、β細胞のインスリン分泌能も回復していき、耐糖能も改善していきます。ヾ(^▽^)
結論です。
1 糖質制限食を実践すれば必要なインスリンはごく少量ですむので、β細胞が休養できて回復し、耐糖能が改善する。
2 糖質制限食を実践すれば、「糖毒」が改善するのでβ細胞のダメージがとれて回復する。また「糖毒」が改善するのでインスリン抵抗性も改善する。この二つにより耐糖能が改善する。
3 糖尿人が糖質を摂取すれば、必ず食後高血糖を生じ、そのため英国の大規模疫学研究UKPDSで確認された「2型糖尿病はどんな治療を行ってもインスリン作用不足が進行する不治の病である。」という結論となる。
最後になりますが、人類が穀物を主食とし始めて定着したのは400万年の歴史の中で、わずか4000年ていどですから1/1000の期間です。糖質制限食は穀物を常食とする以前(999/1000の期間)の人類の食生活に戻るだけです。
すなわち、農耕以前は人類皆糖質制限食です。
またイヌイットは、生肉・生魚が主食です。まさにスーパー 糖質制限食を数千年食べ続けたわけですが、伝統的食生活を守っていたころは、糖尿病や心筋梗塞やアレルギー疾患そして癌も極めて少なかったことが知られていますね。
江部康二
ネット上で「糖質制限食をすると耐糖能が落ちる」というような記載があるようですが、そんなことはありませんよ。
糖尿人が糖質制限食を実践すれば、耐糖能は基本的に改善します。 (^_^)
一方、耐糖能の改善には、個人差があります。回復の程度は糖尿病発症の時点で、膵臓のβ細胞が、どのくらいダメージを受けていたかによると思います。
以下は、糖尿病患者Sさんのデータです。 立派な糖尿病型から正常型に見事に回復されました。
2005年9月の健康診断で、空腹時血糖値:202mg/dl、HbA1c:6.9% と糖尿病の確定診断を受けました。
カロリー制限食と運動療法で2年間頑張りましたが、
2007年9月の検査で、空腹時血糖値:163mg/dl、HbA1c:7.1%
空腹時血糖値はやや改善したものの、126mg/dlを超えて糖尿病型、HbA1cは少し悪化しています。
2007年10月から糖質制限食を実践、
2007年11月高雄病院初診時、HbA1c:6.7%と改善。
2008年7月、HbA1c:5.5%と改善。
下記は、糖質制限食を約8ヶ月実践されたあとの、Sさんの2008年7月の糖質摂取時の検査です。
食前 食後30 食後60 食後90 食後120分
IRI 3.8 35.2 58.5 55.1 24.9
血糖値 108 148 189 142 126
耐糖能が改善し、血糖値は正常パターンとなっています。インスリン分泌指数も0.785と、正常ですね。
糖質制限食を8ヶ月間、実践したことによりインスリンの基礎分泌が回復して、空腹時血糖値が202mg→108mgと正常化。
インスリン追加分泌第一相も回復してインスリン指数0.4以上で正常化。
インスリン追加分泌第二相も回復して食後2時間血糖値126mgと正常化。
2005年に糖尿病が発見されたときは、空腹時血糖値が203mgなので、経口血糖負荷試験をすれば、食後血糖値は当然、200mg以上は確実で、完全に糖尿病パターンだったと考えられます。
このように、糖質制限食実践により、Sさんは見事に耐糖能が回復し、糖尿人から正常人にもどられたわけです。
それではなぜ糖質制限食で耐糖能が改善するのかを考えてみましょう。
糖尿病の人は、インスリンの作用不足があります。より正確には、インスリン分泌不足とインスリン抵抗性が合わさってインスリン作用不足となり、糖尿病を発症します。日本人の場合は、インスリン分泌不足が主となることが多いとされています。
<糖質・脂質・タンパク質>のうち血糖値を急峻に上昇させるのは、糖質だけです。糖質を摂取すると食後高血糖(ブドウ糖スパイク)を起こし、インスリンが大量に追加分泌されます。
1日3回以上毎日糖質を摂取して運動不足もあれば、インスリンが大量に追加分泌されることが長年続いて、遂に膵臓が疲弊していきます。
膵臓が疲弊すると、インスリン分泌能力は低下して、耐糖能も低下して糖尿病を発症します。糖尿病を発症した時点で、膵臓のβ細胞は、「既に回復不能のダメージを受けたもの」「疲弊しているが回復可能なもの」「健常なもの」があります。
このようなとき、糖質制限食を実践すると、インスリン必要量は極めて少量ですむので、疲弊していた膵臓のβ細胞は休養できます。そうすると、インスリン分泌能の回復が期待できます。インスリンの分泌が回復すれば、当然耐糖能も改善します。
しかし「既に回復不能のダメージを受けたもの」がどのくらいを占めるかにより、改善には個人差があります。
高雄病院では1999年から糖質制限食を始めて、もう足かけ10年ですね。400人以上の糖尿病入院患者さんで確認済みですが、糖質制限食により、食後血糖値も空腹時血糖値も改善します。空腹時血糖値が改善するということは、インスリン基礎分泌もあるていど回復したということですね。
一方、糖尿人が糖質を摂取して食後高血糖が生じると
① 高血糖により膵臓のβ細胞(インスリンを分泌)が直接ダメージを受ける。
② 高血糖により、インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性の増大)
①②により高血糖→「インスリン分泌低下+インスリン抵抗性増大」→高血糖
という繰り返しを生じますが、この悪循環のことを糖毒といい、糖尿病悪化の大きな要因となっています。(=_=;)
血糖値を急峻に上昇させるのは、糖質だけです。従って、糖尿人が糖質を摂取すれば、わざわざ糖毒状態を引き起こし、糖尿病が悪化し、長引けば膵臓のβ細胞も回復不能で死滅していくのです。
糖質制限食を実践すれば、速やかに食後高血糖が改善し、きっちりこの糖毒を断ち切ることができるので、糖尿病がめきめき改善するのです。糖質制限食で糖毒が改善すれば、β細胞のインスリン分泌能も回復していき、耐糖能も改善していきます。ヾ(^▽^)
結論です。
1 糖質制限食を実践すれば必要なインスリンはごく少量ですむので、β細胞が休養できて回復し、耐糖能が改善する。
2 糖質制限食を実践すれば、「糖毒」が改善するのでβ細胞のダメージがとれて回復する。また「糖毒」が改善するのでインスリン抵抗性も改善する。この二つにより耐糖能が改善する。
3 糖尿人が糖質を摂取すれば、必ず食後高血糖を生じ、そのため英国の大規模疫学研究UKPDSで確認された「2型糖尿病はどんな治療を行ってもインスリン作用不足が進行する不治の病である。」という結論となる。
最後になりますが、人類が穀物を主食とし始めて定着したのは400万年の歴史の中で、わずか4000年ていどですから1/1000の期間です。糖質制限食は穀物を常食とする以前(999/1000の期間)の人類の食生活に戻るだけです。
すなわち、農耕以前は人類皆糖質制限食です。
またイヌイットは、生肉・生魚が主食です。まさにスーパー 糖質制限食を数千年食べ続けたわけですが、伝統的食生活を守っていたころは、糖尿病や心筋梗塞やアレルギー疾患そして癌も極めて少なかったことが知られていますね。
江部康二
2008年12月04日 (木)
おはようございます。
今回も昨日に続いて、「糖質制限食実践で耐糖能改善」という嬉しいコメントをたまさんからいただきました。
『以前、2時間後の血糖値について質問させていただきました
私の場合
HbA1c:5.1、空腹時:80台後半、2時間後:218でしたので正常高値ができても何も発見できませんね(;´∩`)
最近、再試験を受けてきました
結果は
HbA1c:4.8、空腹時:89、1時間後:204、2時間後:175
と、完璧ではありませんでしたが改善されてました
(「改善」と思って良いでしょうか?)
主食やお菓子は抜けても食材に含まれる糖質までは目が行き届かないのですが(;´∩`)それでも、制限したことで、きちんと変化するんですね
次の段階目指して継続してがんばります(^□^)
by たま 2008/11/27 12:26』
たまさん。コメントありがとうございます。
「HbA1c:5.1、空腹時:80台後半、2時間後:218」
確かにこのデータなら、
メタボ健診の特定保健指導レベル100mg/dl以上
日本糖尿病学会の新しい基準「正常高値」100mg/dL~110mg/dL未満
といった基準でも発見できませんね。
やはり、食べ始めてから2時間後の血糖値測定が、糖尿病早期発見には一番良いですね。
あるいは、もっと簡便に
まず食後2時間の尿糖を調べる。
陰性のひとはOK。
尿糖陽性の人は
暇があれば、75g経口ブドウ糖負荷試験、
忙しい人は、食べ始めて2時間後の血糖値測定。
これなら、無駄な医療費や手間暇かけずに糖尿病の早期発見が可能ですね。 (^_^)
「HbA1c:4.8、空腹時:89、1時間後:204、2時間後:175」
糖質制限食実践後の再検査(75g経口ブドウ糖負荷試験?)では、2時間後血糖値が175mgであり、診断基準的には200mg未満と境界型にまで改善しています。糖質制限食で膵臓が休養できて、疲弊していたβ細胞が回復したおかげでしょう。
このまま糖質制限食を続けられて、さらに耐糖能が改善すれば、2時間値が140mg未満の正常型も夢ではありませんね。(⌒o⌒)v
江部康二
今回も昨日に続いて、「糖質制限食実践で耐糖能改善」という嬉しいコメントをたまさんからいただきました。
『以前、2時間後の血糖値について質問させていただきました
私の場合
HbA1c:5.1、空腹時:80台後半、2時間後:218でしたので正常高値ができても何も発見できませんね(;´∩`)
最近、再試験を受けてきました
結果は
HbA1c:4.8、空腹時:89、1時間後:204、2時間後:175
と、完璧ではありませんでしたが改善されてました
(「改善」と思って良いでしょうか?)
主食やお菓子は抜けても食材に含まれる糖質までは目が行き届かないのですが(;´∩`)それでも、制限したことで、きちんと変化するんですね
次の段階目指して継続してがんばります(^□^)
by たま 2008/11/27 12:26』
たまさん。コメントありがとうございます。
「HbA1c:5.1、空腹時:80台後半、2時間後:218」
確かにこのデータなら、
メタボ健診の特定保健指導レベル100mg/dl以上
日本糖尿病学会の新しい基準「正常高値」100mg/dL~110mg/dL未満
といった基準でも発見できませんね。
やはり、食べ始めてから2時間後の血糖値測定が、糖尿病早期発見には一番良いですね。
あるいは、もっと簡便に
まず食後2時間の尿糖を調べる。
陰性のひとはOK。
尿糖陽性の人は
暇があれば、75g経口ブドウ糖負荷試験、
忙しい人は、食べ始めて2時間後の血糖値測定。
これなら、無駄な医療費や手間暇かけずに糖尿病の早期発見が可能ですね。 (^_^)
「HbA1c:4.8、空腹時:89、1時間後:204、2時間後:175」
糖質制限食実践後の再検査(75g経口ブドウ糖負荷試験?)では、2時間後血糖値が175mgであり、診断基準的には200mg未満と境界型にまで改善しています。糖質制限食で膵臓が休養できて、疲弊していたβ細胞が回復したおかげでしょう。
このまま糖質制限食を続けられて、さらに耐糖能が改善すれば、2時間値が140mg未満の正常型も夢ではありませんね。(⌒o⌒)v
江部康二