2015年03月28日 (土)
【15/03/26 しらねのぞるば
年に1回 自分の耐糖能を測定しています
糖質制限食を継続している限りは,血糖値は安定しており,定期健診での採血検査結果や体調もいいのですが,時々「はて,自分の一日の(あるいは1食の)糖質摂取量はこれで最適なのだろうか? どこまでが安全ラインで,どこからが危険なのか?」と思う時があります.
というのも,自宅での食事は糖質量を把握しているからいいのですが,外食で他に選択の余地のない場合,『これはどうみても糖質50gくらい. どこまで食べられるのか?』などと思うことは,セイゲニストの皆様でも経験されるのではないでしょうか? 特に出張先などで,初めてみる料理は悩ましいです.
そこで,私は毎年1回,自分の耐糖能を自己測定しています. もちろん75gのブドウ糖などおそろしくて飲めませんから,G.ベッカー女史の著書【注1】を参考にして,市販のブドウ糖錠剤を使ったミニ糖負荷試験です.
【注1】グレッチェン・ベッカー 「糖尿病・最初の1年」 p.290
~あなたは自分のミニ耐糖能検査ができます~
方法は簡単で,空腹時に,市販ブドウ糖錠剤(これは正確に3gです)を少量の熱湯に溶かし,これを100ccほどのソーダ水で割って,一口で飲みきり,ストップウォッチをにらんで10,20,30,60,120分後の血糖値を測るというものです.
通常の糖負荷試験よりも初期の時間刻みが細かいのは,服用するブドウ糖の量が少ないので,血糖値のピーク時刻を見逃さないためです.
そして,ブドウ糖錠剤の個数を変えて,これを何度か繰り返しました.
測定開始はいずれも早朝空腹時です.
結果は下記の通り.
[ブドウ糖錠剤の個数と血糖値の変化]
4個 6個 8個 10個
0分 93 95 101 97
10分 115 117 127 134
20分 127 140 164 169
30分 121 162 178 190
60分 100 124 165 158
120分 99 97 112 108
180分 98 94 103 101
この結果を見ると,私の安全ライン,つまりどの時点でも血糖値180を越えないというのは,ブドウ糖錠剤 8個でした.つまり 3g×8=24 gが,現在の耐糖能限界ということになります.
もちろんこれは吸収の速いブドウ糖を一気にのんだ場合であって,実際の食事中の糖質はブドウ糖ではなく砂糖や澱粉であり,さらに食物繊維・蛋白質・脂質などとも一緒に摂っているし,その消化・吸収に要する時間と,食事にかける時間も考えれば【注2】,食事中の糖質はこれほど急速には吸収されないので,1食あたりの糖質は,これより相当多くても大丈夫でしょう.よって1食あたり糖質24gが「絶対安全ライン」,そしてその2倍の50gくらいが「毎日でなければ多分大丈夫ライン」と判断しています.
このように,自分自身の体で確認した指標があれば,これこそ正真正銘の「エビデンス」なので安心です.
【注2】ただし,大盛りのざるそばを,たった数秒で食べきった人をみたことがあります.こんな食べ方は命を縮めてますね.
なお,以上は私の場合であって,正常人であれ,糖尿人であれ,この値は一人一人違うはずです. ぜひ皆様もご自分で確認されることをおすすめします.
この試験は今年で3回目ですが,毎年同じような結果です.
よく「糖質制限すると,耐糖能が低下する」などと言われる方がいますが,少なくとも私の場合はこの3年間悪化していません. それどころか,データを詳細にみると,やや改善傾向があるかな?とみえるのですが,これはまだデータ数(n)が少ないので,SMBG機器の測定誤差範囲に埋もれて判然としません. もう数年すればわかりそうですが.】
こんにちは。
しらねのぞるば さんから、ブドウ糖錠剤と血糖自己測定器で、ミニ糖負荷試験をした結果をコメントいただきました。
しらねのぞるばさん、ありがとうございます。
確かに、75gブドウ糖負荷試験は、糖尿人には怖くてやれません。
しらねのぞるばさんの場合は、ほとんどの場合、ブドウ糖錠内服後30分値が、血糖値のピークですね。
外食時に糖質をやむを得ず摂取したときには、今後は食後30分値を測定するだけで充分ですね。
4錠(12g)・・・1gの糖質がピーク2.83mg血糖値上昇
6錠(18g)・・・1gの糖質がピーク3.72mg血糖値上昇
8錠(24g)・・・1gの糖質がピーク3.21mg血糖値上昇
10錠(30g)・・・1gの糖質がピーク3.1mg血糖値上昇
バーンスタイン先生の、「体重64kgの2型糖尿人で1gの糖質が血糖値を約3mg上昇させる」という法則ですが、摂取量が少ないとバラつくようです。30gのブドウ糖なら、ほぼぴったりです。
『1食あたり糖質24gが「絶対安全ライン」,そしてその2倍の50gくらいが「毎日でなければ多分大丈夫ライン」と判断しています。』
しらねのぞるばさんにおいては、仰る通りと思います。
血糖自己測定器を持っている糖尿人は、しらねのぞるばさんのように、ミニ糖負荷試験をして、各個人の安全圏を確かめるのもいいですね。0分、30分、60分、120分、180分くらいの測定でもOKと思います。
なお各糖尿人によって、負荷後血糖値のピークは、30分、60分、120分とそれぞれ違うと思います。
江部康二
年に1回 自分の耐糖能を測定しています
糖質制限食を継続している限りは,血糖値は安定しており,定期健診での採血検査結果や体調もいいのですが,時々「はて,自分の一日の(あるいは1食の)糖質摂取量はこれで最適なのだろうか? どこまでが安全ラインで,どこからが危険なのか?」と思う時があります.
というのも,自宅での食事は糖質量を把握しているからいいのですが,外食で他に選択の余地のない場合,『これはどうみても糖質50gくらい. どこまで食べられるのか?』などと思うことは,セイゲニストの皆様でも経験されるのではないでしょうか? 特に出張先などで,初めてみる料理は悩ましいです.
そこで,私は毎年1回,自分の耐糖能を自己測定しています. もちろん75gのブドウ糖などおそろしくて飲めませんから,G.ベッカー女史の著書【注1】を参考にして,市販のブドウ糖錠剤を使ったミニ糖負荷試験です.
【注1】グレッチェン・ベッカー 「糖尿病・最初の1年」 p.290
~あなたは自分のミニ耐糖能検査ができます~
方法は簡単で,空腹時に,市販ブドウ糖錠剤(これは正確に3gです)を少量の熱湯に溶かし,これを100ccほどのソーダ水で割って,一口で飲みきり,ストップウォッチをにらんで10,20,30,60,120分後の血糖値を測るというものです.
通常の糖負荷試験よりも初期の時間刻みが細かいのは,服用するブドウ糖の量が少ないので,血糖値のピーク時刻を見逃さないためです.
そして,ブドウ糖錠剤の個数を変えて,これを何度か繰り返しました.
測定開始はいずれも早朝空腹時です.
結果は下記の通り.
[ブドウ糖錠剤の個数と血糖値の変化]
4個 6個 8個 10個
0分 93 95 101 97
10分 115 117 127 134
20分 127 140 164 169
30分 121 162 178 190
60分 100 124 165 158
120分 99 97 112 108
180分 98 94 103 101
この結果を見ると,私の安全ライン,つまりどの時点でも血糖値180を越えないというのは,ブドウ糖錠剤 8個でした.つまり 3g×8=24 gが,現在の耐糖能限界ということになります.
もちろんこれは吸収の速いブドウ糖を一気にのんだ場合であって,実際の食事中の糖質はブドウ糖ではなく砂糖や澱粉であり,さらに食物繊維・蛋白質・脂質などとも一緒に摂っているし,その消化・吸収に要する時間と,食事にかける時間も考えれば【注2】,食事中の糖質はこれほど急速には吸収されないので,1食あたりの糖質は,これより相当多くても大丈夫でしょう.よって1食あたり糖質24gが「絶対安全ライン」,そしてその2倍の50gくらいが「毎日でなければ多分大丈夫ライン」と判断しています.
このように,自分自身の体で確認した指標があれば,これこそ正真正銘の「エビデンス」なので安心です.
【注2】ただし,大盛りのざるそばを,たった数秒で食べきった人をみたことがあります.こんな食べ方は命を縮めてますね.
なお,以上は私の場合であって,正常人であれ,糖尿人であれ,この値は一人一人違うはずです. ぜひ皆様もご自分で確認されることをおすすめします.
この試験は今年で3回目ですが,毎年同じような結果です.
よく「糖質制限すると,耐糖能が低下する」などと言われる方がいますが,少なくとも私の場合はこの3年間悪化していません. それどころか,データを詳細にみると,やや改善傾向があるかな?とみえるのですが,これはまだデータ数(n)が少ないので,SMBG機器の測定誤差範囲に埋もれて判然としません. もう数年すればわかりそうですが.】
こんにちは。
しらねのぞるば さんから、ブドウ糖錠剤と血糖自己測定器で、ミニ糖負荷試験をした結果をコメントいただきました。
しらねのぞるばさん、ありがとうございます。
確かに、75gブドウ糖負荷試験は、糖尿人には怖くてやれません。
しらねのぞるばさんの場合は、ほとんどの場合、ブドウ糖錠内服後30分値が、血糖値のピークですね。
外食時に糖質をやむを得ず摂取したときには、今後は食後30分値を測定するだけで充分ですね。
4錠(12g)・・・1gの糖質がピーク2.83mg血糖値上昇
6錠(18g)・・・1gの糖質がピーク3.72mg血糖値上昇
8錠(24g)・・・1gの糖質がピーク3.21mg血糖値上昇
10錠(30g)・・・1gの糖質がピーク3.1mg血糖値上昇
バーンスタイン先生の、「体重64kgの2型糖尿人で1gの糖質が血糖値を約3mg上昇させる」という法則ですが、摂取量が少ないとバラつくようです。30gのブドウ糖なら、ほぼぴったりです。
『1食あたり糖質24gが「絶対安全ライン」,そしてその2倍の50gくらいが「毎日でなければ多分大丈夫ライン」と判断しています。』
しらねのぞるばさんにおいては、仰る通りと思います。
血糖自己測定器を持っている糖尿人は、しらねのぞるばさんのように、ミニ糖負荷試験をして、各個人の安全圏を確かめるのもいいですね。0分、30分、60分、120分、180分くらいの測定でもOKと思います。
なお各糖尿人によって、負荷後血糖値のピークは、30分、60分、120分とそれぞれ違うと思います。
江部康二
2015年01月26日 (月)
こんばんは。
職場の健康診断では、糖尿病チェックのため、早朝空腹時の血糖値とHbA1cを検査します。
これは普通の企業は勿論のこと、医療機関でも同様です。
空腹時血糖値は、
・110mg/dl未満=正常型
・110~125=境界型
・126以上=糖尿病型
75g経口ブドウ糖負荷試験で食後2時間血糖値は、
・140未満=正常型
・140~199=境界型
・200以上=糖尿病型
と定義されています。
しかし、食後の高血糖が数年間続いてから、はじめて空腹時血糖値が境界領域に悪化してくることがほとんどです。
従って、今の健康診断のシステムでは、初期の糖尿病を見逃してしまう可能性が極めて高いのです。
食後の血糖値を測定すれば、境界型や初期の糖尿病をチェックできるのですが、現実には行われていません。
私、江部康二も、高雄病院という医療機関に1978年から勤務しているのですが、年一回の職場健診は早朝空腹時の採血でした。1997年には107、1998年には115、1999年には112mg/dlでした。
両親ともに糖尿病なので「境界領域か。そろそろ糖尿病やばいかな?」くらい軽くとらえていたのです。
今から思えば、この時点で充分食後高血糖だったのです。
そして2002年、たまたま主食(糖質)摂取後2時間の血糖値を測定したら260mg/dlもあり、糖尿人確定となったのです。
現在、糖尿病でない患者さんにも、主食(糖質)摂取後、1時間あるいは2時間の血糖値測定を勧めて、糖尿病の早期発見を目指しています。
食後1時間値が、180mg/dlを超えていれば、食後2時間値が140mg/dlの正常型でも、将来糖尿病になりやすいので注意が必要です。
正確なデータが必要なときは、75g経口ブドウ糖負荷試験を実施します。
しかしそれは、検査代もいるし、2時間以上時間がかかるし面倒くさいです。
普通に糖質のある食事(ご飯とかパンなどとおかず)をしたら、ほとんどの場合1回の食事の糖質量は70~80gあるので、それで充分代わりになります。
午前8時に食べ始めたら、
午前9時が食後1時間で、
午前10時が食後2時間です。
さらに簡便には、ドラッグストアで尿糖試験紙を購入して食後1時間~2時間の尿糖を測定したらいいです。
これなら医療機関に行く必要もないので安価ですね。
尿糖が陽性なら、食後血糖値が180mg/dlを超えている可能性が高いので、医療機関で精査が必要です。
江部康二
職場の健康診断では、糖尿病チェックのため、早朝空腹時の血糖値とHbA1cを検査します。
これは普通の企業は勿論のこと、医療機関でも同様です。
空腹時血糖値は、
・110mg/dl未満=正常型
・110~125=境界型
・126以上=糖尿病型
75g経口ブドウ糖負荷試験で食後2時間血糖値は、
・140未満=正常型
・140~199=境界型
・200以上=糖尿病型
と定義されています。
しかし、食後の高血糖が数年間続いてから、はじめて空腹時血糖値が境界領域に悪化してくることがほとんどです。
従って、今の健康診断のシステムでは、初期の糖尿病を見逃してしまう可能性が極めて高いのです。
食後の血糖値を測定すれば、境界型や初期の糖尿病をチェックできるのですが、現実には行われていません。
私、江部康二も、高雄病院という医療機関に1978年から勤務しているのですが、年一回の職場健診は早朝空腹時の採血でした。1997年には107、1998年には115、1999年には112mg/dlでした。
両親ともに糖尿病なので「境界領域か。そろそろ糖尿病やばいかな?」くらい軽くとらえていたのです。
今から思えば、この時点で充分食後高血糖だったのです。
そして2002年、たまたま主食(糖質)摂取後2時間の血糖値を測定したら260mg/dlもあり、糖尿人確定となったのです。
現在、糖尿病でない患者さんにも、主食(糖質)摂取後、1時間あるいは2時間の血糖値測定を勧めて、糖尿病の早期発見を目指しています。
食後1時間値が、180mg/dlを超えていれば、食後2時間値が140mg/dlの正常型でも、将来糖尿病になりやすいので注意が必要です。
正確なデータが必要なときは、75g経口ブドウ糖負荷試験を実施します。
しかしそれは、検査代もいるし、2時間以上時間がかかるし面倒くさいです。
普通に糖質のある食事(ご飯とかパンなどとおかず)をしたら、ほとんどの場合1回の食事の糖質量は70~80gあるので、それで充分代わりになります。
午前8時に食べ始めたら、
午前9時が食後1時間で、
午前10時が食後2時間です。
さらに簡便には、ドラッグストアで尿糖試験紙を購入して食後1時間~2時間の尿糖を測定したらいいです。
これなら医療機関に行く必要もないので安価ですね。
尿糖が陽性なら、食後血糖値が180mg/dlを超えている可能性が高いので、医療機関で精査が必要です。
江部康二
2013年07月05日 (金)
こんにちは。
血糖自己測定器ですが、インスリン注射を打っている糖尿病患者さんは、医療機関から提供して貰えます。
無料ではなくて、在宅自己注射指導管理料というものがあり、インスリン注射を打っている場合は、健康保険の枠内で保険請求がなされます。
その在宅自己注射指導管理料の中に、血糖自己測定器、センサー、ランセットなどの料金も含まれているわけです。
通常2型糖尿病の場合は、1日2回測定の計算で、1ヶ月に60枚のセンサー、60本のランセットが健康保険内で支給可能です。それ以上のセンサーは、保険が使えません。
1型糖尿病の場合は、1日4回測定の計算で、1ヶ月に120枚のセンサー、120本のランセットが健康保険内で支給可能です。
今回の
ニプロTRUEpico 自己検査用グルコース測定器 ¥3500ー
ニプロTRUEセンサー 自己検査用グルコースキット 1箱30枚で、¥2940ー
に関しては、インスリン注射を打ってない人への情報提供の意味です。
つまり、血糖自己測定を、私費でもいいのでしてみたいという糖尿人には、格安なのでとても嬉しい「ニプロTRUEpico」ということなのです。
なお、今までインスリン注射を打っていた糖尿人(血糖自己測定器は健康保険内で支給)がスーパー糖質制限食で、インスリンフリーになったら、その時から、血糖自己測定器の使用は私費になります。
インスリンフリーはとても喜ばしいことなのですが、血糖自己測定器に関しては、思わぬところで出費ということになります。
江部康二
血糖自己測定器ですが、インスリン注射を打っている糖尿病患者さんは、医療機関から提供して貰えます。
無料ではなくて、在宅自己注射指導管理料というものがあり、インスリン注射を打っている場合は、健康保険の枠内で保険請求がなされます。
その在宅自己注射指導管理料の中に、血糖自己測定器、センサー、ランセットなどの料金も含まれているわけです。
通常2型糖尿病の場合は、1日2回測定の計算で、1ヶ月に60枚のセンサー、60本のランセットが健康保険内で支給可能です。それ以上のセンサーは、保険が使えません。
1型糖尿病の場合は、1日4回測定の計算で、1ヶ月に120枚のセンサー、120本のランセットが健康保険内で支給可能です。
今回の
ニプロTRUEpico 自己検査用グルコース測定器 ¥3500ー
ニプロTRUEセンサー 自己検査用グルコースキット 1箱30枚で、¥2940ー
に関しては、インスリン注射を打ってない人への情報提供の意味です。
つまり、血糖自己測定を、私費でもいいのでしてみたいという糖尿人には、格安なのでとても嬉しい「ニプロTRUEpico」ということなのです。
なお、今までインスリン注射を打っていた糖尿人(血糖自己測定器は健康保険内で支給)がスーパー糖質制限食で、インスリンフリーになったら、その時から、血糖自己測定器の使用は私費になります。
インスリンフリーはとても喜ばしいことなのですが、血糖自己測定器に関しては、思わぬところで出費ということになります。
江部康二
2013年05月26日 (日)
こんばんは。
HbA1c(NGSP値)から平均血糖値を知る計算式を、ジョスリン糖尿病センターの日本語のサイトで発見しました。
便利なので紹介します。
推定平均血糖値(mg/dl)=28.7×HbA1c(%、NGSP)-46.7
です。
2007年のアメリカ糖尿病学会(ADA)で、HbA1cを反映するのに最適な方法として推定平均血糖値 (eAG)が推奨されました。
江部康二
☆☆☆
以下、ジョスリン糖尿病センターの日本語のサイトです。
http://www.aadi.joslin.org/ja/diabetes-news/new-estimated-average-glucose-eag-predicts-a1c-more-precisely
Asian American Diabetes Initiative
Joslin Diabetes Center
新しい推定平均血糖値(eAG)はより正確にA1c値を反映します
September 02, 2009
2007年のアメリカ糖尿病学会(ADA)にて、A1Cを反映するのに最適な方法として推定平均血糖値 (eAG)が推奨されました。
従来はHbA1cと表記されますが、ここでは省略語としてA1Cを用います。A1Cは、赤血球の血色素であるタンパク質のヘモグロビンにブドウ糖が不可逆的に付いたものです(糖化ヘモグロビン)。
A1Cは、測定時の食事に影響受けることなく、過去 8-12 週の血糖値を反映する検査値として、1970 年代に見出されました。一般に、A1C値が7%未満であれば、糖尿病のコントロールが良いとされています。
また、A1Cの目標値に向けての厳密な治療がされることで、糖尿病合併症の発症・進展を防ぐことができると考えられています。平均血糖値(AG)は、A1Cの関連が報告されており、糖尿病患者さんにとって、%で示されるA1Cより分かりやすい実用的な日々の目標値として適していると考えられます。
A1c-Derived Average Glucose(ADAG) studyでは、世界の10ヶ所のセンターにて、507人の被験者に、少なくとも2日間の持続的血糖モニタリング(CGM)を4回、更に、1日7回(食前後、就寝前)の自己血糖測定を週3日施行した平均血糖値(AG)を算出し、A1Cとの比較検討がなされました。☆この結果、AGとHbA1cには密な相関が見出されています。
eAG mg/dl = 28.7 x A1C – 46.7 (R2 = 0.84, P < 0.0001)
この式を用いて、A1Cから推定平均血糖値(eAG)が算出されます。
今のところ、 eAGの使用はまだ標準化されていませんが、A1Cと関連している現在最も適した目標値として推奨されています。
出典:
The Diabetes Educator, August 2009.
Diabetes Care August 2008 vol. 31 no. 8 1473-1478.
Joslin Diabetes Center, 1 Joslin Place, Rm 382A, Boston, MA 02215, USA
Phone: 617-226-5815 Fax: 617-732-2607 Email: aadi@joslin.harvard.edu
HbA1c(NGSP値)から平均血糖値を知る計算式を、ジョスリン糖尿病センターの日本語のサイトで発見しました。
便利なので紹介します。
推定平均血糖値(mg/dl)=28.7×HbA1c(%、NGSP)-46.7
です。
2007年のアメリカ糖尿病学会(ADA)で、HbA1cを反映するのに最適な方法として推定平均血糖値 (eAG)が推奨されました。
江部康二
☆☆☆
以下、ジョスリン糖尿病センターの日本語のサイトです。
http://www.aadi.joslin.org/ja/diabetes-news/new-estimated-average-glucose-eag-predicts-a1c-more-precisely
Asian American Diabetes Initiative
Joslin Diabetes Center
新しい推定平均血糖値(eAG)はより正確にA1c値を反映します
September 02, 2009
2007年のアメリカ糖尿病学会(ADA)にて、A1Cを反映するのに最適な方法として推定平均血糖値 (eAG)が推奨されました。
従来はHbA1cと表記されますが、ここでは省略語としてA1Cを用います。A1Cは、赤血球の血色素であるタンパク質のヘモグロビンにブドウ糖が不可逆的に付いたものです(糖化ヘモグロビン)。
A1Cは、測定時の食事に影響受けることなく、過去 8-12 週の血糖値を反映する検査値として、1970 年代に見出されました。一般に、A1C値が7%未満であれば、糖尿病のコントロールが良いとされています。
また、A1Cの目標値に向けての厳密な治療がされることで、糖尿病合併症の発症・進展を防ぐことができると考えられています。平均血糖値(AG)は、A1Cの関連が報告されており、糖尿病患者さんにとって、%で示されるA1Cより分かりやすい実用的な日々の目標値として適していると考えられます。
A1c-Derived Average Glucose(ADAG) studyでは、世界の10ヶ所のセンターにて、507人の被験者に、少なくとも2日間の持続的血糖モニタリング(CGM)を4回、更に、1日7回(食前後、就寝前)の自己血糖測定を週3日施行した平均血糖値(AG)を算出し、A1Cとの比較検討がなされました。☆この結果、AGとHbA1cには密な相関が見出されています。
eAG mg/dl = 28.7 x A1C – 46.7 (R2 = 0.84, P < 0.0001)
この式を用いて、A1Cから推定平均血糖値(eAG)が算出されます。
今のところ、 eAGの使用はまだ標準化されていませんが、A1Cと関連している現在最も適した目標値として推奨されています。
出典:
The Diabetes Educator, August 2009.
Diabetes Care August 2008 vol. 31 no. 8 1473-1478.
Joslin Diabetes Center, 1 Joslin Place, Rm 382A, Boston, MA 02215, USA
Phone: 617-226-5815 Fax: 617-732-2607 Email: aadi@joslin.harvard.edu
2011年06月01日 (水)
こんにちは。
HOMA-βの評価について、ざとさんから、コメント・質問をいただきました。
【11/05/30 ざと
HOMA-βの値について
江部先生、いつも役に立つ情報をありがとうございます。
私は、糖質制限を始めてから1年半近く経過し、血液検査の数値上は通常人と変わらない程度まで良くなりました。
HbA1cが5.1%で空腹時血糖値が92mg/dlでした。
これもひとえに先生のブログに出会えたおかげです。ありがとうございます。
ちなみに、もしかして治ったのかもと淡い期待をして、食パン1枚を食べて1時間後の血糖値を自己測定したら撃沈しました(笑)。
さて、HOMA-βの値なのですが、今ひとつ意味が判りません。
「残存した内因性インスリン分泌機能を推定する指数」という事は判ったのですが、結局HOMA-βが高いとどういう事なのか?HOMA-βが低いとどういう事なのか?という所が全く判りません。
先日検査した値では、空腹時血糖値92,空腹時インスリン値4.7でした。
従って、HOMA-R=1.07、HOMA-β=58.34となっており両方ともに正常値に入っているようです。これは素直に嬉しいです。糖質制限食様様です。
もし、お時間が許すようでしたら話題の一つとして取り上げて頂ければ嬉しいです。】
ざと さん。
【糖質制限を始めてから1年半、HbA1cが5.1%で空腹時血糖値が92mg/dl】
全くの正常値ですね。おめでとうございます。
糖質制限食なら正常人、糖質(食パンetc)食べたら糖尿人、私も同様です。
さて、インスリンには、24時間少量持続的に出ている基礎分泌と、糖質を摂取したときに大量にでる追加分泌があります。
一般に
空腹時のIRI(インスリン)は、基礎分泌とインスリン抵抗性の評価に用います。
負荷後のIRI(インスリン)は、追加分泌の評価に用います。
その中で、HOMA-βは、空腹時血糖値と空腹時インスリン値で計算するのですが、経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関することがわかっています。
HOMA-βが高値ということは、インスリン追加分泌が出過ぎるタイプということになります。
通常は、インスリン抵抗性があるとき、インスリンが多くでるようになります。
インスリン抵抗性はHOMA-Rで計算しますが、空腹時のIRI(インスリン)が上限近い、あるいはそれ以上あればそれだけでもインスリン抵抗性がある可能性が高いです。
空腹時のIRI(インスリン)の基準値は、施設にもよりますが3~10μU/mLくらいです。
HOMA-βが低いということは、インスリン追加分泌能力が低下していることとなります。
罹病期間の長い糖尿人では、HOMA-βが基準値を下回ることが多いです。
かくいう私もHOMA-βが基準値を下回っております。私の場合、インスリン基礎分泌も、基準値をやや下回ることが多いです。それでも、スーパー糖質制限食を実践する限りは検査データは正常人です。
☆☆☆
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
☆☆☆
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60
***
HOMA-RもHOMA-βも糖尿病が進行した状態では適応がない。
耐糖能異常から軽度の糖尿病までの時期において有用な方法である。
***参考
改訂第4版「糖尿病専門医研修ガイドブック」日本糖尿病学会編(診断と治療社)2009
183ページ
江部康二
HOMA-βの評価について、ざとさんから、コメント・質問をいただきました。
【11/05/30 ざと
HOMA-βの値について
江部先生、いつも役に立つ情報をありがとうございます。
私は、糖質制限を始めてから1年半近く経過し、血液検査の数値上は通常人と変わらない程度まで良くなりました。
HbA1cが5.1%で空腹時血糖値が92mg/dlでした。
これもひとえに先生のブログに出会えたおかげです。ありがとうございます。
ちなみに、もしかして治ったのかもと淡い期待をして、食パン1枚を食べて1時間後の血糖値を自己測定したら撃沈しました(笑)。
さて、HOMA-βの値なのですが、今ひとつ意味が判りません。
「残存した内因性インスリン分泌機能を推定する指数」という事は判ったのですが、結局HOMA-βが高いとどういう事なのか?HOMA-βが低いとどういう事なのか?という所が全く判りません。
先日検査した値では、空腹時血糖値92,空腹時インスリン値4.7でした。
従って、HOMA-R=1.07、HOMA-β=58.34となっており両方ともに正常値に入っているようです。これは素直に嬉しいです。糖質制限食様様です。
もし、お時間が許すようでしたら話題の一つとして取り上げて頂ければ嬉しいです。】
ざと さん。
【糖質制限を始めてから1年半、HbA1cが5.1%で空腹時血糖値が92mg/dl】
全くの正常値ですね。おめでとうございます。
糖質制限食なら正常人、糖質(食パンetc)食べたら糖尿人、私も同様です。
さて、インスリンには、24時間少量持続的に出ている基礎分泌と、糖質を摂取したときに大量にでる追加分泌があります。
一般に
空腹時のIRI(インスリン)は、基礎分泌とインスリン抵抗性の評価に用います。
負荷後のIRI(インスリン)は、追加分泌の評価に用います。
その中で、HOMA-βは、空腹時血糖値と空腹時インスリン値で計算するのですが、経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関することがわかっています。
HOMA-βが高値ということは、インスリン追加分泌が出過ぎるタイプということになります。
通常は、インスリン抵抗性があるとき、インスリンが多くでるようになります。
インスリン抵抗性はHOMA-Rで計算しますが、空腹時のIRI(インスリン)が上限近い、あるいはそれ以上あればそれだけでもインスリン抵抗性がある可能性が高いです。
空腹時のIRI(インスリン)の基準値は、施設にもよりますが3~10μU/mLくらいです。
HOMA-βが低いということは、インスリン追加分泌能力が低下していることとなります。
罹病期間の長い糖尿人では、HOMA-βが基準値を下回ることが多いです。
かくいう私もHOMA-βが基準値を下回っております。私の場合、インスリン基礎分泌も、基準値をやや下回ることが多いです。それでも、スーパー糖質制限食を実践する限りは検査データは正常人です。
☆☆☆
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
☆☆☆
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60
***
HOMA-RもHOMA-βも糖尿病が進行した状態では適応がない。
耐糖能異常から軽度の糖尿病までの時期において有用な方法である。
***参考
改訂第4版「糖尿病専門医研修ガイドブック」日本糖尿病学会編(診断と治療社)2009
183ページ
江部康二