時計遺伝子と概日リズムと朝食の是非
おはようございます。

皆さん、時計遺伝子というのをご存じですか?

私は、m3.comで時計遺伝子関連の質問があったとき、浅学にしてほとんど知りませんでした。

それで5月30日(水)講演の「横浜-京都」往復の新幹線で、大塚邦明先生の『100歳を可能にする「時間医学」』(NTT出版)をざっと読んでみました。

時計遺伝子、時間医学に関する本で、とても興味深い内容でした。

興味がある方は是非、ご一読ください。

その中で、サーカディアンリズム(慨日リズム)に関して、ヒトは25時間、夜行性動物は23時間との記載がありました。

そしてヒトは日々光を浴びることで、25時間を24時間に修正するのです。

この約24時間で繰り返される生体活動の概日リズムが、動物だけでなく植物にも存在していて、地球の生命に共通だそうです。

そして光を照射することで概日リズムをリセットできるのです。

このように光が概日リズムを司るというのは、おおいに納得ですね。

地球の誕生、生命の誕生・進化の歴史、太陽光との関連など、壮大なお話しですね。

この概日リズムの時計は、哺乳類では脳の視床下部の視交叉状核にあります。

時計の中は時計細胞で満たされていて、時計細胞中に時計遺伝子があります。

そして内臓を始め身体のほとんどの細胞にも、時計遺伝子があります。

脳の視床下部の視交叉状核を主時計と呼び、身体の細胞にある時計を末梢時計と呼びます。

そして、「末梢時計は、朝食をしっかり食べることでリズムが整う」という説があるそうで、朝食摂取推進派(1日3食派)の根拠となっているようです。

しかし、これはちょっと待ってくださいですね。

太陽光が、脳の視床下部の視交叉状核の主時計の概日リズムを司るというのは、地球の歴史・環境、生命の進化を考慮しても大変リーズナブルです。

一方、地球上の生命は動物・植物を問わず飢餓との戦いの歴史でした。

朝起床後の一定時間に一定の食物を食べることは、農耕後の人類だけの、特殊な習慣です。

従いまして、ガッツリ普通の食事を朝から食べるというような特殊なことが、動物の概日リズムに関わっているというのは、進化の歴史からは考えにくいです。

従いまして、朝食を食べる必然性は全くないと思います。

ちなみに、私は朝食抜きの1日2食です。

日本では、江戸時代初期までは一日二食で、中期から三食になったようです。

平安時代や鎌倉時代の一日二食は、朝食が午の刻(正午)で、夕食が申の刻(午後4時)だったそうです。

イギリスやフランスなどヨーロッパの国々でも、 18世紀に二食から三食になったので三食の歴史は浅いようです。

なお、野生のライオンは、3日~数日間に1回の食事です。成長したライオンは1回に18kgの肉を食べるそうです。野生の虎は、7~10日間に1回の食事回数のようです。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
食育3・テーラーメードダイエット
こんばんは、江部康二です。
今日は、食養生・食育シリーズの三回目です。

『人類の本来の食生活を探求し実践する』これが現在の私の食養生ですし食育です。
 
久しぶりの格好いい決めぜりふですね。 └(^へ^)┘

そして、農耕以前の人類の本来の食生活、 糖質制限食の範疇であった可能性が極めて高いのです。

もっとも、地球の人口60億人が全員、 糖質制限食をすることは不可能ですよ。農耕の最も大きな意味は、狩猟民族時代に比べて単位面積当たりで養える人口が約60倍になったことですから、 糖質制限食では1億人しか賄えない計算です。59億人飢え死にしたりしたら洒落になりませんから・・・ <(_ _)>

糖質制限食が向いてない人は、既に腎機能障害や膵炎がある人です。理論的にはそれ以外の人は老若男女全員 糖質制限食OKです。

でも、上記の養える人口の理由で、テーラーメードダイエットがどうしても必要となってきます。

テーラーメードダイエットとはワンパターンの食事療法ではなくて、一人一人の病状・年齢・体質・嗜好などに合わせた食事療法のことです。

「糖尿病・肥満と糖質制限食」の題目でで講演会をするときも、たいていは、最後にテーラーメードダイエットのお話をします。

即ち、既に糖尿病や肥満になってしまった人は「糖質制限食」が適応です。「糖質制限食十箇条」がお奨めです。(5.9ブログ参照してくださいね)

一方、子供達、アトピー・喘息などアレルギー疾患の若い人達、高齢の人でも糖尿病や肥満のない人達は、主食は未精製の穀物にする低GI食品中心の「高雄病院食生活十箇条」
の実践です。(2.27ブログ)

糖質制限食だとグルコーススパイク(空腹時血糖値と食後血糖値の差)がほとんどなくて、代謝は極めて安定します。糖質・脂質・タンパク質代謝全てが安定しますので自己治癒力も活性化します。

玄米魚菜食などの未精製の穀物が主食で低GI食品を摂る食生活も、 糖質制限食ほどではありませんが、グルコーススパイク(7.26ブログ)はかなり小さくてすみますから代謝がそれなりに安定します。

白いパンや白米が主食で、清涼飲料水やケーキ・ポテトチップ・チョコレート・アイスクリーム・・・ラーメン・うどん・焼きそば・お好み焼き・・・など、精製炭水化物が主の食品を食べると、正常人でもその度にグルコースミニスパイクを生じ、代謝は一日に何度も乱れて、その度に肥満ホルモンであるインスリンが分泌されます。

『分かっちゃいるけどやめられない、これじゃ身体にいいわけ無いさ』ってやつですね。

以上、食養生や食育に対する私の基本姿勢を述べてみました。

江部康二

☆☆☆
『糖質制限食十箇条』 -糖尿病や肥満が気になる人に-

一、魚貝・肉・豆腐・納豆・チーズなどタンパク質や脂質が主成分の食品はしっかり食  べてよい。
二、糖質特に白パン・白米・麺類及び菓子・白砂糖など精製糖質の摂取は極力控え   る。
三、主食を摂るときは未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)
四、飲料は牛乳・果汁は飲まず、成分未調整豆乳はOK。水、番茶、麦茶、ほうじ茶も   OK。
五、糖質含有量の少ない野菜・海草・茸類は適量OK。果物は少量にとどめる。
六、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。
七、マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。
八、お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)はOK、醸造酒(ビール、日本酒、など)は   控える。
九、間食やおつまみはチーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。菓子類、ドライフルー   ツは不可。
十、できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。

『糖質制限食』の3パターン
一、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
二、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
三、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。
 *抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。


☆☆☆
アトピー性皮膚炎やアレルギー疾患の患者さんに、そして糖尿病や高脂血症などの生活習慣病予防に、「食生活十箇条」を提案しました。

『高雄病院食生活十箇条』
一、主食は未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)
二、白パン・白砂糖など精製炭水化物の摂取は極力減らす
三、発酵食品(味噌、漬け物、納豆など)をきちんと食べる
四、液体でカロリーを摂らない(飲みものは水、番茶、麦茶、ほうじ茶など)
五、魚貝類はしっかり食べ、肉類は適量を摂る
六、季節の野菜や海草はしっかり食べ、旬の果物も適量摂る
七、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)など身体に良い油脂は積極的に摂る
八、牛乳は極力減らし、チーズやプレーンヨーグルトは適量摂る
九、できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ
十、食事は楽しく、ゆっくり、よくかんで 
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
食育2・食養生
こんばんは。
約1年10ヶ月に渡り、慈しみ育てた私の可愛い声帯ポリープ・・・。
今や全然可愛げのかけらもなくて、声がドンドン嗄れてしまって、歌うはおろか、喋るのもやっとという事態に陥ってしまいました。 ( 」´O`)」

それで、とうとう手術する決心をしました。 ◆\(・・)/◇

同級生の耳鼻科医K先生にお願いして、音声外科での手術の段取りが概ね決まりました。

幻の2オクターブ超の美声復活なるか、こうご期待ですが・・・。

さて今日は、食育の続きです。

私も、もともと食養生に興味を持っていたので、食育の初代提唱者の石塚左玄のことは、ある程度知っていました。日本の食養生の始まりは、石塚左玄と考えて間違いありません。

<左玄の食養の基本原理>
1食本主義
 食べ物が病気をつくり、食べ物が病気を治すという基本姿勢
2穀食主義
 人は歯の形から考えて、主として穀物を食べるべきだという考え方
3身土不二論
 住んでいる土地で採れたものを食べる、あるいはその季節の旬のものを食べること
4一物全体食
 食物は余すことなく、骨も皮も、根も葉も丸ごと食べること
5ナトリウム・カリウム調和論
ナトリウム(Na)とは食塩と動物性食品を言い、とカリウム(K)とは穀物・野菜・果物・海草などの植物性食品を言い、そのバランスが肝要

食本主義に関しては、私も賛成です。
糖質制限食もまさに食本主義といえます。

穀食主義については、人類400万年の歴史から考えると異論のあるところです。何せ、穀物が主食になったのは約4000年で、人類の歴史からしたら、僅か1/1000に過ぎないのですから

身土不二論に関しては悪くない考えと思うのですが、食料自給率が文明国中最低の日本としてはつらいものがありますね。

一物全体食は、私も可能な限りは賛成です。

ナトリウム・カリウム調和論即ち、動物性食品と植物性食品のバランス・・・。

明治の文明開化の頃、肉食礼賛的な風潮があったのに対して警鐘をならしたものです。従って基本的には動物性食品を減らし植物性食品を増やす立場です。

しかし、現在の一部の食養家のように、動物性食品は一切だめというように硬直化はしていません。例えば左玄は、肉体労働者は肉を摂っても良いとか、山村の場合は鶏・獣の肉を食うべしと述べています。

私の立場は、1984年に高雄病院に食養生として、玄米魚菜食を導入したころは、左玄の考え方に近かったと思います。今でも上述の如く、五つの原理のうち、食本主義、一物全体食、身土不二論には基本的に賛成です。

一方、穀食主義とナトリウム・カリウム調和論には、疑問を持っています。

まあ 糖質制限食ですから、肉や魚や動物性食品をたっぷりとるのが今の私の立場です。

そしてテーラーメードダイエット(2.27、3.1ブログ)とブドウ糖スパイク(7.26ブログ)が今の私のキーワードです。

このキーワードで 糖質制限食と玄米魚菜食(いわゆる食養生)を矛盾することなく両立させることができます。

そして私の食育感は、この流れに沿うものとして存在します。

<続く>

江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
食育(しょくいく)
こんばんは、江部康二です。
今日は、今流行の『食育』についての質問です。

「食育について。
ドクター江部康二さま。
高雄病院京都駅前診療所開設、予約の患者さんへの対応で大忙しの幕開け…よかったですね! おめでとうございます。
電子カルテも、ドクター江部ならば、ブログ効果できっとすんなり使いこなせるんじゃないかしら。
私は、ドクターより10歳以上(?)は若いと思うのですが、ブログ開設に四苦八苦しております。
私も、ドクターを見習って、ブログ効果で減酒への近道を狙っているのですが。

さて、食生活全般についての質問です。お時間があったら教えてください。

いま世間では、ちょっとした「食育」ブームですよね。メディアでも頻繁に使われるようになった言葉ですが、その使われ方にハテナ?と思うことがしばしばなんです。

本来「食育」という言葉は、食養生の考えから生まれた言葉であるはず…。
その根幹には、日本の伝統的な食生活を見直そうという発想があったと思うんです。
季節感、土地のもの、なるべく安全な食品…。
大量生産、大量流通、大量消費への警鐘というか。
そういったことがキーワードだったように記憶しているのですが。

現在は、規則正しく朝昼晩三食きちんと食べて、しかも、栄養バランスを考えて、好き嫌いをなくしてなんでも食べる。それが食育の基本のように言われています。

西洋栄養学の、カロリー計算的な視点で語られているような気がするんです。
食の安全性については一切触れられない(企業との絡みがあるからでしょうか)
これはこれで一見間違ってはいないようでもあるが、なにか根本がズレている…。
息子の幼稚園にやってくる地元保健所の栄養士さんの話を聞いていると、なんでこんなややこしい話になるのだろう? と思うことがしばしば。

とにかく、炭水化物でお腹をいっぱいにして、副食は赤青黄色の野菜をたっぷりとって、動物性たんぱく質は少なめに、脂質はできるかぎり抑える(肉は控え、揚げ物は厳禁)。バターはダメでマーガリンにしましょう。カロリー計算も忘れずに…。
という感じなんです…。とほほ。

ウチの6歳の息子は、「糖質制限食」的食生活をしていて、
どうも幼稚園で浮いているようなんです…。
食生活の常識は、ドクター江部の理論ですっかりくつがえされたと思うのですが、打破していくには、まだまだ行政レベルでは、ハードルの高い課題です。

ちょっと脱線しましたが、「食育」という言葉の定義をドクター江部ならばどのようにお考えでしょうか?
本来的な意味もきちんと知りたいと思う今日この頃でした。

by: シープシぺッタ * 2007/10/02 11:31 * URL」


シープシペッタさん。お祝いのコメントありがとうございます。

確かに、現在は猫も杓子も食育、食育で何やら正体不明といった雰囲気ですよね。

もともと高雄病院では、1984年から給食に玄米魚菜食を導入していたり、私自身、「粗食のすすめ」の著者・幕内秀夫先生の「学校給食と子どもの健康を考える会」に協力して、給食をパンからお米にという運動を展開しています。

このように、私も食養生を提唱してきた医師の一人として、食育関係の講演を頼まれることがあります。

そこで感じたことは、主催する団体にによってかなり食育に対するイメージに差があるということです。

シープシペッタさんが経験された『朝昼晩三食きちんと食べて栄養バランスを考える系』、『子供の教育系』、『食糧自給率を上げよう系』、『食品の安全性確保系』、『自然食・有機農法系』、『伝統的な食文化を守ろう系』・・・

かなり雑多な混沌状態ですので、まずは少し食育の歴史的ルーツと変遷を辿ってみましょう。

食育という言葉は、明治時代に石塚左玄が初めて用いました。
左玄は1851年、漢方医・石塚泰助の長男として福井市に生まれました。 その生い立ちから、漢方医学にも精通していました。

石塚左玄は、明治の文明開化の中で、欧米近代医学を学び、陸軍軍医の道に入り、陸軍少将、薬剤監にまでのぼりつめ退官しました。

退官後は開業し、自らを「食医」と称し、「食べ物が病気をつくり、食べ物が病気を治す」と考え、食養医学を提唱しました。

「食物養生法」という本を発行したこともあり石塚養生所には患者が門前市をなしたと言われています。

食本主義、穀食主義、身土不二論、一物全体食、夫婦アルカリ(ナトリウムとカリウムの調和)論など現在の食養の基本を創生したのも石塚左玄なのです。

しかし、食育という言葉はあまり広がらずに、戦後を待つこととなります。
 
石塚左玄の食養法によって健康を回復した桜沢如一が興したマクロビオティックが、戦後それなりの広がりを見せました。

昭和50年代になると有機農法、自然食、代替医療といった流れの中で「食育」がぼちぼち唱えられるようになり始めました。この頃の食育は石塚左玄の提唱に近いものと考えられます。

時は移って、平成14年11月21日、自民党の政務調査会内に「食育調査会」が設置されました。

一般にあまり知られていない「食育」という言葉でしたが、マスコミにもとりあげられ、翌15年に小泉総理の施政方針演説に取り上げられて「食育」が一般化しました。

平成17年6月10日、食育基本法が成立しました。食育によって国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことを目的としているそうです。

歴史的に振り返ってみると、ルーツは間違いなく石塚左玄ですね。「食育基本法」の中に書いてある『食育は生きる上での基本であり、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの』というのも、ほとんど左玄のパチリですね。

左玄の「通俗食物養生法」に「今日、学童を持つ人は、体育も智育も才育も、すべて食育であると認識すべき」と記され、食育、知育、徳育、体育、才育を合わせた「五育」の中で食育は子育ての土台にあるとし、知育、徳育、体育、才育はすべて食育の下に位置すると位置づけています。

なお「食育基本法」、このように理念はなかなかいいのですが、かなり長ったらしくて総花的なことが書いてあります。また石塚左玄のことをどこまで理解して取り入れたのかも不明です。

まあ、興味がある方は、下記のホームページを参照してみてください。

続く・・・次回は、私の食育感を書いてみたいと思います。
 
***食育基本法
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