2008年02月05日 (火)
おはようございます。
今日はたかさんから、コメントと<高タンパク食とカルシウム>に関する質問をいただきました。
ブログも1年間続けてきて、内容がかなり多くなってきてますので、私自身何を書いたのか検索するのに結構苦労しています。(*´・⊇・)
このご質問に関しては、2007.9.24のブログに
<高タンパク食と骨粗鬆症>と題して既に回答してありますので、再掲します。
『午前中はすい臓が寝ている?
江部先生ご回答いただきありがとうございます。
糖新生以外のブログも読ませていただきました。15年間糖尿人をやりながら、知らない世界がありました。これからもよろしくお願いいたします。
投薬を一切やめ自己血糖をこまめに測りながら糖質制限食をやってみると、自分の体の素の状態がわかってきました。
ここ6日間の血糖値はつぎの通りです。
早朝空腹時 117-147
朝食(糖質7-10g)後max 179-199
昼食なし
夕食前 95-118
夕食(8-12g)後max 120-135
早朝は糖新生により就寝時より20-30高くなり、朝食後は膵臓がまだ眠っているようで血糖値は危険域180まで上昇。午後は糖新生がないおかげかインシュリンの分泌が回復し始め夕食前に120以下。夕食後は140までしか上がらず就寝前に120以下に戻る。
午前と午後でインスリンの分泌量が違うようなのです。午前中だけ投薬を再開しようかと思ってしまいます。もうしばらく我慢我慢。こんな糖尿病人はいるのでしょうか?
追伸:高たんぱく食を続けると、カルシウムが不足するとの記載を見ました。ブログで取り上げていただければ幸いです。
2008/02/04 Mon 18:18:08 たか』
たかさん、データ拝見しました。
<グリミクロン40mg*3、メディット250mg*3、アクトス30mg*1>を一切中止して
「早朝空腹時 117-147
朝食(糖質7-10g)後max 179-199
昼食なし
夕食前 95-118
夕食(8-12g)後max 120-135 」
朝食後は糖尿病領域ではなくて、境界型に収まっていますね。 (^_^)
食後2時間値が200mg未満なら境界型、140mg未満なら正常です。夕食前、夕食後は正常人の値です。インスリンの追加分泌はあるていど保たれていますよ。
薬を一切中止してこの値ならかなり良い結果だと思います。早朝空腹時血糖値が117mgと境界型から147mgと糖尿病型ですが、糖質制限食を続けることで、疲れていた膵臓が休養できてさらに回復すれば、インスリン基礎分泌も改善し、もっと下がる可能性があります。 糖質制限食を続けて、経過をみてくださいね。
「追伸:高たんぱく食を続けると、カルシウムが不足するとの記載を見ました。ブログで取り上げていただければ幸いです。」
<高タンパク食と骨粗鬆症> 再掲
糖質制限食は、相対的に高タンパク食・高脂肪食になります。
今まで、高タンパク食・高脂肪食が健常な腎臓や膵臓を傷害しないことや、発ガンや冠動脈疾患のリスクもないことをブログで説明してきました。
今回は、高タンパク食と骨粗鬆症の問題です。
1968年にWachman and Bernsteinが「内因性酸仮説」において、
『高タンパク食を摂取すると、タンパク質代謝によって作られた酸を緩衝するために骨のカルシウムが利用されるため、骨粗鬆症になりやすく尿中のカルシウムも増加する』
と提唱しました。
あくまで仮説に過ぎず、証明された訳ではないのですが、かなり一人歩きしてしまいました。いろんなブログで、高タンパク食の害を説明しようとする時には、よくこの仮説が引用してあります。
まあ、世界中でこれを巡って、その後30年以上論争が続いてきました。実際、研究によってはこの仮説を支持するようなものもありました。
しかし、一方で高タンパク食が骨粗鬆症の予防や、大腿骨頭骨折予防に益があるという研究もたくさんありました。
こういった歴史的状況を背景に、この論争に決着をつけるような研究論文を今回発見しました。(*1 巻末の英文の文献です)
572人の女性と388 人の男性(55–92才)を4年間観察した研究です。
『食事中のタンパク質が、骨粗鬆症を予防するのか、障害するのか、過去の研究では両方あって、はっきりしない。それでこの研究を行った。
結果:動物性タンパク質は成人女性においては、骨の健康を守る役割がある。
一方、植物性タンパク質は、骨カルシウム量には両性で無関係である。
結論:動物性タンパク質の摂取量が多いほど、少なくとも成人女性では、統計的に有意差をもって、骨の健康に役立つ』
他の研究者の42の論文にこの論文が引用してあり、評価が高いことを示しています。
私の結論です。
女性では動物性タンパク質で骨粗鬆症が予防できる可能性が高まりました。男性では、予防できるかどうかわかりませんが、少なくとも骨粗鬆症の悪化は考えにくいです。
*1
「American Journal of Epidemiology Vol. 155, No. 7 : 636-644 、2002
Protein Consumption and Bone Mineral Density in the Elderly
The Rancho Bernardo Study
Joanne H. E. Promislow1, Deborah Goodman-Gruen2, Donald J. Slymen3 and Elizabeth Barrett-Connor2
1 Department of Epidemiology, School of Public Health, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC.
2 Department of Family and Preventive Medicine, School of Medicine, University of California, San Diego, La Jolla, CA.
3 Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, San Diego State University, San Diego, CA.」
江部康二
今日はたかさんから、コメントと<高タンパク食とカルシウム>に関する質問をいただきました。
ブログも1年間続けてきて、内容がかなり多くなってきてますので、私自身何を書いたのか検索するのに結構苦労しています。(*´・⊇・)
このご質問に関しては、2007.9.24のブログに
<高タンパク食と骨粗鬆症>と題して既に回答してありますので、再掲します。
『午前中はすい臓が寝ている?
江部先生ご回答いただきありがとうございます。
糖新生以外のブログも読ませていただきました。15年間糖尿人をやりながら、知らない世界がありました。これからもよろしくお願いいたします。
投薬を一切やめ自己血糖をこまめに測りながら糖質制限食をやってみると、自分の体の素の状態がわかってきました。
ここ6日間の血糖値はつぎの通りです。
早朝空腹時 117-147
朝食(糖質7-10g)後max 179-199
昼食なし
夕食前 95-118
夕食(8-12g)後max 120-135
早朝は糖新生により就寝時より20-30高くなり、朝食後は膵臓がまだ眠っているようで血糖値は危険域180まで上昇。午後は糖新生がないおかげかインシュリンの分泌が回復し始め夕食前に120以下。夕食後は140までしか上がらず就寝前に120以下に戻る。
午前と午後でインスリンの分泌量が違うようなのです。午前中だけ投薬を再開しようかと思ってしまいます。もうしばらく我慢我慢。こんな糖尿病人はいるのでしょうか?
追伸:高たんぱく食を続けると、カルシウムが不足するとの記載を見ました。ブログで取り上げていただければ幸いです。
2008/02/04 Mon 18:18:08 たか』
たかさん、データ拝見しました。
<グリミクロン40mg*3、メディット250mg*3、アクトス30mg*1>を一切中止して
「早朝空腹時 117-147
朝食(糖質7-10g)後max 179-199
昼食なし
夕食前 95-118
夕食(8-12g)後max 120-135 」
朝食後は糖尿病領域ではなくて、境界型に収まっていますね。 (^_^)
食後2時間値が200mg未満なら境界型、140mg未満なら正常です。夕食前、夕食後は正常人の値です。インスリンの追加分泌はあるていど保たれていますよ。
薬を一切中止してこの値ならかなり良い結果だと思います。早朝空腹時血糖値が117mgと境界型から147mgと糖尿病型ですが、糖質制限食を続けることで、疲れていた膵臓が休養できてさらに回復すれば、インスリン基礎分泌も改善し、もっと下がる可能性があります。 糖質制限食を続けて、経過をみてくださいね。
「追伸:高たんぱく食を続けると、カルシウムが不足するとの記載を見ました。ブログで取り上げていただければ幸いです。」
<高タンパク食と骨粗鬆症> 再掲
糖質制限食は、相対的に高タンパク食・高脂肪食になります。
今まで、高タンパク食・高脂肪食が健常な腎臓や膵臓を傷害しないことや、発ガンや冠動脈疾患のリスクもないことをブログで説明してきました。
今回は、高タンパク食と骨粗鬆症の問題です。
1968年にWachman and Bernsteinが「内因性酸仮説」において、
『高タンパク食を摂取すると、タンパク質代謝によって作られた酸を緩衝するために骨のカルシウムが利用されるため、骨粗鬆症になりやすく尿中のカルシウムも増加する』
と提唱しました。
あくまで仮説に過ぎず、証明された訳ではないのですが、かなり一人歩きしてしまいました。いろんなブログで、高タンパク食の害を説明しようとする時には、よくこの仮説が引用してあります。
まあ、世界中でこれを巡って、その後30年以上論争が続いてきました。実際、研究によってはこの仮説を支持するようなものもありました。
しかし、一方で高タンパク食が骨粗鬆症の予防や、大腿骨頭骨折予防に益があるという研究もたくさんありました。
こういった歴史的状況を背景に、この論争に決着をつけるような研究論文を今回発見しました。(*1 巻末の英文の文献です)
572人の女性と388 人の男性(55–92才)を4年間観察した研究です。
『食事中のタンパク質が、骨粗鬆症を予防するのか、障害するのか、過去の研究では両方あって、はっきりしない。それでこの研究を行った。
結果:動物性タンパク質は成人女性においては、骨の健康を守る役割がある。
一方、植物性タンパク質は、骨カルシウム量には両性で無関係である。
結論:動物性タンパク質の摂取量が多いほど、少なくとも成人女性では、統計的に有意差をもって、骨の健康に役立つ』
他の研究者の42の論文にこの論文が引用してあり、評価が高いことを示しています。
私の結論です。
女性では動物性タンパク質で骨粗鬆症が予防できる可能性が高まりました。男性では、予防できるかどうかわかりませんが、少なくとも骨粗鬆症の悪化は考えにくいです。
*1
「American Journal of Epidemiology Vol. 155, No. 7 : 636-644 、2002
Protein Consumption and Bone Mineral Density in the Elderly
The Rancho Bernardo Study
Joanne H. E. Promislow1, Deborah Goodman-Gruen2, Donald J. Slymen3 and Elizabeth Barrett-Connor2
1 Department of Epidemiology, School of Public Health, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC.
2 Department of Family and Preventive Medicine, School of Medicine, University of California, San Diego, La Jolla, CA.
3 Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, San Diego State University, San Diego, CA.」
江部康二
2007年09月24日 (月)
こんにちは。例によって少し筋肉痛の江部康二です。
糖質制限食は、相対的に高タンパク食・高脂肪食になります。
今まで、高タンパク食・高脂肪食が健常な腎臓や膵臓を傷害しないことや、発ガンや冠動脈疾患のリスクもないことをブログで説明してきました。
今回は、高タンパク食と骨粗鬆症の問題です。
1968年にWachman and Bernsteinが「内因性酸仮説」において、
『高タンパク食を摂取すると、タンパク質代謝によって作られた酸を緩衝するために骨のカルシウムが利用されるため、骨粗鬆症になりやすく尿中のカルシウムも増加する』
と提唱しました。
あくまで仮説に過ぎず、証明された訳ではないのですが、かなり一人歩きしてしまいました。いろんなブログで、高タンパク食の害を説明しようとする時には、よくこの仮説が引用してあります。
まあ、世界中でこれを巡って、その後30年以上論争が続いてきました。実際、研究によってはこの仮説を支持するようなものもありました。
しかし、一方で高タンパク食が骨粗鬆症の予防や、大腿骨頭骨折予防に益があるという研究もたくさんありました。
こういった歴史的状況を背景に、この論争に決着をつけるような研究論文を今回発見しました。(*1 巻末の英文の文献です)
572人の女性と388 人の男性(55–92才)を4年間観察した研究です。
『食事中のタンパク質が、骨粗鬆症を予防するのか、障害するのか、過去の研究では両方あって、はっきりしない。それでこの研究を行った。
結果:動物性タンパク質は成人女性においては、骨の健康を守る役割がある。
一方、植物性タンパク質は、骨カルシウム量には両性で無関係である。
結論:動物性タンパク質の摂取量が多いほど、少なくとも成人女性では、統計的に有意差をもって、骨の健康に役立つ』
他の研究者の42の論文にこの論文が引用してあり、評価が高いことを示しています。
私の結論です。
女性では動物性タンパク質で骨粗鬆症が予防できる可能性が高まりました。男性では、予防できるかどうかわかりませんが、少なくとも骨粗鬆症の悪化は考えにくいです。
*1
「American Journal of Epidemiology Vol. 155, No. 7 : 636-644 、2002
Protein Consumption and Bone Mineral Density in the Elderly
The Rancho Bernardo Study
Joanne H. E. Promislow1, Deborah Goodman-Gruen2, Donald J. Slymen3 and Elizabeth Barrett-Connor2
1 Department of Epidemiology, School of Public Health, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC.
2 Department of Family and Preventive Medicine, School of Medicine, University of California, San Diego, La Jolla, CA.
3 Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, San Diego State University, San Diego, CA.」
糖質制限食は、相対的に高タンパク食・高脂肪食になります。
今まで、高タンパク食・高脂肪食が健常な腎臓や膵臓を傷害しないことや、発ガンや冠動脈疾患のリスクもないことをブログで説明してきました。
今回は、高タンパク食と骨粗鬆症の問題です。
1968年にWachman and Bernsteinが「内因性酸仮説」において、
『高タンパク食を摂取すると、タンパク質代謝によって作られた酸を緩衝するために骨のカルシウムが利用されるため、骨粗鬆症になりやすく尿中のカルシウムも増加する』
と提唱しました。
あくまで仮説に過ぎず、証明された訳ではないのですが、かなり一人歩きしてしまいました。いろんなブログで、高タンパク食の害を説明しようとする時には、よくこの仮説が引用してあります。
まあ、世界中でこれを巡って、その後30年以上論争が続いてきました。実際、研究によってはこの仮説を支持するようなものもありました。
しかし、一方で高タンパク食が骨粗鬆症の予防や、大腿骨頭骨折予防に益があるという研究もたくさんありました。
こういった歴史的状況を背景に、この論争に決着をつけるような研究論文を今回発見しました。(*1 巻末の英文の文献です)
572人の女性と388 人の男性(55–92才)を4年間観察した研究です。
『食事中のタンパク質が、骨粗鬆症を予防するのか、障害するのか、過去の研究では両方あって、はっきりしない。それでこの研究を行った。
結果:動物性タンパク質は成人女性においては、骨の健康を守る役割がある。
一方、植物性タンパク質は、骨カルシウム量には両性で無関係である。
結論:動物性タンパク質の摂取量が多いほど、少なくとも成人女性では、統計的に有意差をもって、骨の健康に役立つ』
他の研究者の42の論文にこの論文が引用してあり、評価が高いことを示しています。
私の結論です。
女性では動物性タンパク質で骨粗鬆症が予防できる可能性が高まりました。男性では、予防できるかどうかわかりませんが、少なくとも骨粗鬆症の悪化は考えにくいです。
*1
「American Journal of Epidemiology Vol. 155, No. 7 : 636-644 、2002
Protein Consumption and Bone Mineral Density in the Elderly
The Rancho Bernardo Study
Joanne H. E. Promislow1, Deborah Goodman-Gruen2, Donald J. Slymen3 and Elizabeth Barrett-Connor2
1 Department of Epidemiology, School of Public Health, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC.
2 Department of Family and Preventive Medicine, School of Medicine, University of California, San Diego, La Jolla, CA.
3 Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, San Diego State University, San Diego, CA.」
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