スーパー糖質制限食で血糖、グリヘモ、体重改善。尿中ケトン体は?
【16/12/17 あわわ

江部先生

おはようございます。
あわわと申します。

以前、9月末に先生に質問させていただき、10月からスーパー糖質制限を始めました。

それまでは緩い糖質制限を昨年11月からして、
(身長168 年齢35です)
昨年11月、糖尿病と診断
エクア、クレストール10 エパデール500服用
ヘモグロビンa1c 7.0
血糖値120
体重99
中性脂肪398
今年9月末 数値が下がっても薬を減らすことを検討いただけなかったので、糖質制限に理解のある病院に行ってみました。
クレストール2.5のみになる。
ヘモグロビンa1c5.9
血糖値88
体重79
中性脂肪66

現在 クレストール2.5のみ
ヘモグロビンa1c5.5
血糖値90
体重72
中性脂肪67
と、10月からスーパー糖質制限を始めたところ、すんなり体重も減りました。
ただ最近減り幅が小さくなってきてはいますが‥
江部先生ありがとうございました。
今後もスーパー糖質制限を続け、体重をBMI22まで落としたいとおもいます。

最後に質問させていただきたいのですが、ケトスティックでケトン体を測っていたのですが、2週間まえからケトン体が2+以上の検出が1日置き、2日置きとなり、先週半ばからケトン体が検出されなくなりました。食事内容は変えていないつもりなのですが、やはりなんらかの糖質をとってしまっているからでしょうか? 】


身長168cm 年齢35歳
2015年11月、糖尿病と診断
エクア、クレストール10 エパデール500服用
ヘモグロビンa1c 7.0 %
血糖値120mg/dl
体重99kg ・・・BMI:35.1
中性脂肪398mg/dl


緩い糖質制限を実践して
数値が下がっても薬を減らして貰えないので、
2016年9月、糖質制限に理解のある病院に転院。
クレストール2.5のみ服用。
ヘモグロビンa1c5.9%
血糖値88mg/dl
体重79 kg・・・BMI:27.99
中性脂肪66mg/dl

2016年10月からスーパー糖質制限食を開始。
2016年12月
クレストール2.5のみ服用。
ヘモグロビンa1c5.5%
血糖値90 mg/dl
体重72kg・・・BMI:25.51
中性脂肪67 mg/dl



あわわ さん
血糖値、HbA1c、中性脂肪が改善して、薬が減量できてよかったです。
薬は兎に角、少ない方がいいです。
体重減少も素晴らしいです。

BMIは22までならなくても、 23~24くらいでも大丈夫と思います。

スーパー糖質制限食で、その人の体調が一番いいあたりで体重は落ち着くと思います。

適切なBMIは、20以上25未満で、その個人により違います。

BMIが25を切ってくれば、クレストールの休薬も主治医と相談しましょう。


尿中ケトン体ですが、スーパー糖質制限食を開始したら、通常数日で、陽性になります。
血中ケトン体が高値となり、尿中に排泄されるからです。

個人差がありますが、スーパー糖質制限食実践者なら血中総ケトン体値は、300~1500μM/Lくらいです。
一般的な基準値は26~122μM/Lです。

血中ケトン体高値が、2~3ヶ月続くと体内の心筋や骨格筋など体細胞が、効率よく利用するようになります。
そのため少々、血中ケトン体が高値でも、尿中にはでなくなります。

あわわ さんも、スーパー糖質制限食開始後、2ヶ月半ですので血中ケトン体高値でも、尿中ケトン体陰性となっても自然経過と考えられます。

すなわち問題なしです。


江部康二

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ジャンル:ヘルス・ダイエット
宗田先生の胎盤などケトン体値英文論文、クリックお願い申し上げます。
精神科医師Aさんから、宗田論文の日本語版についてコメント頂きました。

ありがとうございます。

【16/10/25 精神科医師A
日本語訳
宗田哲男医師の胎盤・臍帯・新生児のケトン体値の英文論文日本語版
http://ketontai.com/archives/2248


こんにちは。

宗田哲男先生の、胎盤・臍帯・新生児のケトン体値の英文論文が、2016年9月30日(金)いよいよ、インターネットにアップされました。

以下の如く、世界初の革命的な内容の論文です。ヽ(*`▽´)ノ

【1)胎盤 組織内のケトン体値(βヒドロキシ酪酸)は平均 2235.0 μmol/L、臍帯ケトン体値は、平均779.2μmol/Lであり、胎盤内は有意に高かった(p<0.001)。新生児(4日、30日)のケトン体濃度も標準値よりも高値だった。さらに、臍帯血と胎盤内の血糖値は同様であった(表1)。

2)胎盤組織内のケトン体値は、臍帯血よりも有意に高かった(p<0.001)(図1)。前者は後者の約3倍高く、通常の血液中濃度の標準値(85μmol/L以下)より20-30倍の高値を示した。

3)胎盤組織内の血糖値は75-80 mg/dLであり、すべての妊婦で臍帯血の血糖値と比べて有意差は見られなかった(図2)。】



この論文が世界に広がるために、ブログ読者の皆さんのご協力を是非お願い申し上げます。m(_ _)m

胎盤のケトン体値は、標準値の20~30倍、
臍帯血のケトン体値は、標準値の10倍、
新生児(4日、30日)のケトン体値は標準値の3~4倍、
が、それぞれ普通です。

この論文により、ケトン体の安全性が確立されたと言えます。

英語が苦手な人も得意な人も、兎に角、下記アドレスをクリックして頂けば幸いです。
http://www.toukastress.jp/webj/article/2016/GS16-10.pdf

クリックしたらそのまま論文が出てきます。

論文へのアクセスが増えると、インターネット上で広がる速度が早まります。

ブログ読者の皆さん、クリック、よろしくお願い申し上げます。 m(_ _)mVV


江部康二



☆☆☆
http://www.toukastress.jp/webj/article/2016/GS16-10.pdf

Glycative Stress Research 2016; 3 (3): 133-140
Ketone body elevation in placenta, umbilical cord,
newborn and mother in normal delivery
Tetsuo Muneta 1), Eri Kawaguchi 1), Yasushi Nagai 2), Momoyo Matsumoto 2), Koji Ebe 3),
Hiroko Watanabe 4), Hiroshi Bando 5)

Abstract
Background: Low carbohydrate diets (LCD) have been recently prevalent in the medical and health field, especially in diabetes mellitus. We have applied LCD on thousands of patients with metabolic diseases and reported the clinical effect of LCD so far. Through our experience and research concerning LCD, the physiological role of glucose and ketone bodies during the pre- and post-partum period was investigated in this study.

Subjects and methods: Subjects were 60 normal pregnant woman who had a normal delivery in full-term, without an
abnormal glucose intolerance. Methods included the measurement of the value of ketone bodies in the umbilical cord
blood, placental tissue fluid and maternal blood, associated with the value of blood glucose. As ketone bodies, the value of
3-hydroxybutyric acid (3-OHBA, beta-hydroxybutyric acid) was measured. 3-OHBA and glucose values were measured by
the electrode method using Precision Exceed Kit (Abbott) and the conventional enzymatic cycling method, with comparison
investigation of the data from two kits.

Results: The average 3-OHBA levels were as follows: 2,235.0 μmol/L in the placenta, 779.2 μmol/L in the umbilical cord
blood, in which the former is significantly higher than the latter (p < 0.001), 240.4μmol/L in the newborn after four days,
and 366.7μmol/L after 30 days. The standard 3-OHBA level in a healthy man is less than 85 μmol/L. Glucose levels in the
umbilical cord and placenta were 78.6 mg/dL vs 74.9 mg/dL, with no significant difference, and was the same as that of the
pregnant woman. Accuracy management of the two kits revealed a significant correlation (r = 0.94, p < 0.001). 3-OHBA
values of the maternal blood and umbilical cord blood were extremely elevated from the standard level, with a mutual
significant correlation (r = 0.724, p < 0.001, n = 416).

Conclusion: This clinical study concerning ketone bodies during pre- and post-partum period was investigated, and
revealed that 1) a clinically rapid useful kit for ketone bodies had high reliability and validity compared with conventional
kit, 2) elevated values of 3-OHBA were shown in the placental tissue fluid, umbilical cord, newborn and maternal blood, 3)
3-OHBA would be a physiologically indispensable element in nutrition metabolism for fetus and newborn at least until 30
days, with further development of investigation for ketone bodies.

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脂肪酸は血液脳関門(BBB)を通過できる。
こんばんは。

今まで、「脂肪酸は血液脳関門(BBB)を通過できないがケトン体は通過できる」と述べてきました。

しかし、脂肪酸も血液脳関門を通過できると思われます。

夏井睦医師著「炭水化物が人類を滅ぼす」(光文社新書、2013年)の231、232ページにも記載してあるように、少なくともEPAやDHAという有名な脂肪酸が、現実に脂肪酸は血液脳関門を通過していることは確実です。

1)脂肪酸は血液脳関門を通過する。
2)脂肪酸はアストロサイトのミトコンドリア内でβ酸化されてエネルギー源となる。
3)神経細胞(ニューロン)では細胞膜の原料となるがエネルギー源としては使われない。


現時点で、1)2)3)が正解と考えられます。

アストロサイト(astrocyte)とは、中枢神経系に存在するグリア細胞の1つです。

グリア細胞 ( glial cell)は神経系を構成する神経細胞ではない細胞の総称であり、ヒトの脳では細胞数で神経細胞の50倍ほど存在しているとされています。

アストロサイトは神経細胞を支えて支持してる細胞です。

毛細血管の周囲はアストロサイトの足突起に覆われていて、神経細胞と毛細血管の間には常にアストロサイトが介在しています。

『毛細血管-アストロサイト-神経細胞』を一つの構成単位として捉えるとわかりやすいです。

脂肪酸は神経細胞の細胞膜の原料となりますが、エネルギー源としてはほとんど使われません。

これは、エネルギー源として利用するとき、酸素消費が一番少ないのがケトン体で次がブドウ糖であり、脂肪酸は酸素消費が多いからと思われます。

仮説ではありますが、進化の過程で脳が酸素不足にならないように、神経細胞のミトコンドリアは脂肪酸をエネルギー源としないように脂肪酸を分解する酵素を減らしたと考えられます。

アストロサイトは脂肪酸を分解してケトン体を産生します。

ケトン体は神経細胞に輸送されてミトコンドリアで代謝されてエネルギー源になります。



江部康二


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赤血球と脳のエネルギー源、ブドウ糖とケトン体。
【16/09/14 mama

Dr.かるぴんちょのサイトで生化学の教科書が紹介されていて、それによると絶食時でさえも脳のエネルギー源は100%ケトン体にはならないようですが、
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat18/post_247.html
糖質制限で脳のエネルギーをどの程度ケトン体に頼っているのかというデータはあるのでしょうか。】



こんにちは。

mamaさんから、脳のエネルギー源としてのケトン体についてコメント・質問をいただきました。

ストライヤー生化学の第5版に

「絶食、3日目には脳がエネルギーの33%をケトン体に頼り、数週間後は脳はエネルギーの70%をケトン体に頼る。」

と記載されていると、カルピンチョ先生のサイトにありました。

カルピンチョ先生、いつも信頼できる、貴重な情報をありがとうございます。

さて、ご質問の

「糖質制限食実践者において、エネルギー源として、どのていどケトン体を利用しているか」

について検討してみます。

『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』(丸善)p154

には、脳はそのエネルギー要求の20%をケトン体でまかなうことができると記載してあります。

それで、脳はどの程度までケトン体をエネルギー源とできるかということなのですが、ハーパー生化学のいう約20%までということはありません。

例えば、

『ガイトン臨床生理学』(米国の有名な医学の教科書です)
監訳・早川弘一、医学書院、1999年、870ページ

によれば、

「炭水化物がエネルギー源として使用できない時、生体のほとんどの細胞のエネルギー源は脂質の代謝により賄われる」

「エスキモー人種は時々完全な脂肪食をとるが・・・中略、・・・前略、通常ブドウ糖しかエネルギー源として利用しない脳の細胞でさえ、数週間後には50~75%のエネルギ-を脂質(ケトン体)から得られるようになっている」

という記載があります。

さらに、糖輸送体(GLUT)1欠損症の場合は、「ケトン食」(☆)が唯一の治療法です。

細胞が血液中のブドウ糖を取り込むためには、糖輸送体が必要です。

現在までGLUT1~14までが発見されています。

脳・赤血球・網膜・生殖腺胚上皮の糖輸送体はGLUT1です。

GLUT1欠損症では、GLUT1に機能不全があるため、脳細胞が血液中のブドウ糖をエネルギー源としてほとんど利用できないので、通常の食事では意識不明やてんかんの発作を頻回に生じます。

ケトン食は、脂質摂取比率87%の、スーパー糖質制限食(脂質摂取比率56%)を上回る糖質制限食です。

ケトン食実践で血中ケトン体が高値(3000~5000μM/L)となり、ケトン体が脳のエネルギー源のほとんどを占めるようになれば、GLUT1欠損症の患者さんも健康な生活をおくれます。

つまりGLUT1欠損症では脳細胞は、ブドウ糖をエネルギー源として使いにくいので、ケトン体が脳の主要なエネルギー源となるのです。

この場合、エスキモーの50~75%より、さらに高い比率で脳はケトン体をエネルギー源としている可能性があります。

また私が34才で、本断食(カロリーゼロ、塩ゼロ、水のみ摂取)をしたとき、血糖は35mg/dlまで下がりました。

しかし普通に意識は清明で外来もしてましたので、この時私の脳は、ブドウ糖ではなくケトン体を主たるエネルギー源として利用していたと考えられます。

本断食でもケトン体は、2000~4000μM/Lになります。

ケトン体が基準値(26~122μM/L)しかなくて、血糖値が35mg/dlなら、脳はエネルギー源が全く不足するので、意識不明で昏睡になります。

糖新生(肝臓でアミノ酸、乳酸、グリセロールなどからブドウ糖を作る)は、脳ではなくて赤血球のために必要なのだと思います。
赤血球は血糖値35mg/dlくらいでも生きていけるようです。


脳に続いて、赤血球のエネルギー源について考えてみます。

赤血球は、脳とは異なり、ミトコンドリアがないので、ブドウ糖しかエネルギー源にできません。

GLUT-1欠損症でも、赤血球のエネルギー源はブドウ糖だけです。

さて、血液脳関門にあるGLUT-1が正常に機能すれば、脳脊髄液中のブドウ糖は、血液中のブドウ糖濃度の60%くらいです。
髄液糖/血糖比、正常は0.6-0.7です。

髄液(脳脊髄液)とは、脳室系とクモ膜下腔を満たす、リンパ液のように無色透明な液体です。

GLUT-1欠損症の場合は、血液中の血糖値が正常値でも髄液検査では、髄液糖は 40 mg/dL 以下です。

髄液糖/血糖比は 0.45 以下(平均 0.35)です。

ということは、平均正常の半分くらいは、ブドウ糖を取り込めていることとなります。

つまりGLUT-1欠損症という診断名がついていても、ブドウ糖取り込み能力がかなり低下しているけれど、ゼロではないということです。

GLUT-1欠損症の赤血球も、脳の血液脳関門と同様にブドウ糖取り込み能力が低下していますが、平均、正常の半分程度は取り込めます。

そうすると、血糖値が100mgとすれば、赤血球内に約50mgくらいは取り込めます。

私が本断食をしたとき、血糖35mg/dlでしたが、脳はケトン体(断食中で高値:2000~3000)をエネルギー源として意識を保ち、赤血球は血糖35mg/dlでも事足りていたのだと思います。

通常、血糖値35mg/dlなら、脳脊髄液のブドウ糖濃度は21mg/dlとなりますので、ケトン体髙値がなければ、意識不明ですね。

血液脳関門にあるGLUT-1が正常に機能すれば、脳脊髄液中のブドウ糖は、血液中のブドウ糖濃度の60%くらいです。


糖尿病専門医研修ガイドブック(改訂第4版、2009年)293ページには、低血糖症の定義として、

「低血糖症状があり血糖値60mg/dl以下」

と記載されています。

血糖値が60mg/dlなら、脳脊髄液のブドウ糖濃度は36mg/dlです。

このように考察すると、赤血球も脳細胞も、それぞれブドウ糖濃度が35~36~37mg/dlくらいで、エネルギー源としては何とか足りているということのようです。

(☆)
1)Ketogenic Diet(ケトン食)は、
2010年版COCHRANE LIBRARLY(コクラン ライブラリー)
2011年版NICE(英国政府ガイドライン)
という国際的に有名な公的治療ガイドラインに難治性小児てんかん治療に採用されました。

2)
日本の厚生労働省も、てんかん食を食事療法として2016年4月1日より保険適用としました。
てんかん食とはケトン食のことです。




江部康二

テーマ:糖質制限食
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ケトン体は安全で人体において極めて有用な物質です。
【16/07/11 沙門

ケトン体が血管を傷つける

江部先生

先日、NHKの番組ためしてガッテンで糖質制限について放送していましたが、その中でケトン体が血管を傷つけるという発言がありましたが、そのような論文や研究があるのでしょうか?私は血管を傷つけるのは糖質だと思っていたので少し驚きました。】



こんにちは。
沙門 さん から、ケトン体と血管についてコメント・質問をいただきました。

沙門 さん、そうですね。
糖質摂取による「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」が酸化ストレスリスクとなり、血管合併症の元凶となることには、多くのエビデンスがあります。

ケトン体に限らず、結論が異なる論文・研究はいつの時代にもあります。

かつて、確かにケトン体が危険視されていた時代がありましたが、最近の研究では、ケトン体は危険どころか、生体の最も重要なエネルギー源の一つです。 また生体に有用な作用を持っています。


A)
「βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する」
という大変興味深いScience の論文もあります。
Science は、とても信頼度の高い権威ある科学雑誌です。
酸化ストレスを抑制することで、動脈硬化、癌、アルツハイマー病など様々な病気の予防になり、老化の抑制にもなります。
詳しくは
2013年02月12日 (火)の本ブログ記事
ケトン体が酸化ストレスの抑制に寄与する
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2416.html
もご参照いただけば幸いです。


B)
また、ぺこぽよ さんからも以下のコメントを頂きました。
「神経内科分野からケトン体のアルツハイマー病への認知機能改善効果の報告が増えています。
動物実験でも認知機能の改善効果があるようです(Neurol.Aging 2012 Feb:33(2) 425 e19-425e27、Adv.Exp.Med.Biol 662:71-75. 2010、Biomaterials.34(30) 7552-7562.2013)。」


C)
さらに、しらねのぞるば さんから、「ケトン体は人体に必須の生化学役割を担っている」という当然とは言え重要なコメントをいただきました。

ディアベテス・リサーチ アンド クリニカル・プラクティスという英文医学雑誌に掲載された最新論文(*)の要約を紹介していただきました。

要約
ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)は、空腹時や運動時において、脂肪組織から末梢組織への便利なエネルギー運搬体である。
しかしながらβ-ヒドロキシ酪酸は、単なる代謝産物ではなく、重要な細胞内シグナル伝達の役割を持っている。
β-ヒドロキシ酪酸はヒストン脱アセチル化酵素の内因性抑制物質であり、少なくとも二つの細胞表面受容体のリガンドである。
それに加えてβ-ヒドロキシ酪酸代謝のダウンストリーム産物(アセチル-CoA、サクシニル-CoA、NAD+を含む)は、それ自体がシグナル活性を持っている。
β-ヒドロキシ酪酸のこれらの調整機能は、細胞機能と遺伝子発現との外部環境リンクに役立ち、2型糖尿病を含む代謝性疾患の病因論と治療に重要な意味をもつ。


論文の本意は
1)
ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)は、空腹時や運動時において、脂肪組織から末梢組織への便利なエネルギー運搬体である。
2)
β-ヒドロキシ酪酸は、エネルギー源であるだけではなく、重要な細胞内シグナル伝達の役割を持っている。
3)
β-ヒドロキシ酪酸は遺伝子の発現の制御にも関与している。
4)
β-ヒドロキシ酪酸のダウンストリーム産物もシグナル活性を持っている。
5)
β-ヒドロキシ酪酸のこれらの調整機能は、細胞機能と遺伝子発現の外部環境リンクに役立つ。
6)
β-ヒドロキシ酪酸のこれらの調整機能は、2型糖尿病を含む代謝性疾患の病因論と治療に重要な意味をもつ。


(*)Diabetes Research and Clinical Practice
Volume 106, Issue 2, Pages 173–181, November 2014
β-hydroxybutyrate: Much more than a metabolite
John C. Newman, Eric Verdin


ということで、A)B)C)を考慮すれば、ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)はエネルギー源としてとても便利なだけではなく、人体の機能が正常に働くために、大変重要な役割を果たしていることは明白です。

すなわちケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)がなければ、そもそも人体の細胞は、まともに機能できないということです。

また、ケトン体は酸化ストレスの抑制やアルツハイマー病改善効果もあり、人体にとって極めて有益な物質です。


ケトン体(βヒドロキシ酪酸)の安全性の最終証明としては、宗田哲男医師の研究(私も共同演者の一人です)があります。

2014年第17回日本病態栄養学会。宗田医師らの発表。
 *胎児の胎盤(絨毛間液)の平均βヒドロキシ酪酸値、平均1730μmol/L(58検体)
 *新生児の血中平均βヒドロキシ酪酸値は、 平均240.4μmol/L(312例、生後4日)
 *成人の現行の基準値は、 βヒドロキシ酪酸値は85 μmol/L以下。

2015年第18回日本病態栄養学会。宗田医師らの発表。分娩時60検体。
 *胎盤組織液の平均βヒドロキシ酪酸値は2235.0μmol/L、臍帯血は平均779.2μmol/L


胎盤のケトン体は成人基準値の約30倍、新生児のケトン体は成人基準値の3~数倍と高値であり、インスリン作用が保たれている限りケトン体は極めて安全な物質です。

宗田医師の研究がもうすぐ論文化される予定ですので、乞うご期待です。


このように大切なケトン体のことを、まるで悪者のように扱う一部の医師には、猛省を促したいですね。



江部康二


たがしゅう先生から、ケトン体に関するわかりやすいコメントをいただきました。
ありがとうございます。


☆☆☆
【16/07/12 たがしゅう

広い視野でケトン体を捉える

江部先生

いつもお世話になっております。

またケトン体の安全性を担保するデータを信頼度の高いものを中心にまとめて頂き有難うございます。おかげさまで頭の中が整理されました。

その中でも宗田先生の研究報告が圧倒的に説得力があると私は思っています。宗田先生の御発表は、糖質制限妊婦だけの話と誤解されがちですが、そうではなくて糖質制限とは無関係に一般の妊婦においても胎児、胎盤、臍帯血のケトン体濃度が高かった事を示しているわけですから。

もしもケトン体が血管に悪いというのなら、ヒトは妊娠の時期からデフォルトで血管に悪い物質をたくさん抱えているのか、というヘンテコな話になってしまいます。

ケトン体を悪くみている医師は言わば「ケトアシドーシスの呪縛」に捉われています。原因と結果をはき違えたまま考えているから本質が見えないのだと思います。

糖尿病診療マスター
2016年6月号(Vol.14 No.6)
特集 食事療法 Revisit

上記の雑誌によれば、山田悟先生が「ケトン体は血管に悪い?」という心配を抱えておられる根拠論文は、いずれも最近早期の動脈硬化を捉える事ができる検査として注目されているFMD(flow mediated dilation; 血流依存性血管拡張反応)という検査について検証したものです。

このFMDという検査、主に上腕をマンシェットで5分程度圧迫して血管にわざと圧力をかけ、解除した時に血管がどのくらい拡がるか、というのをエコー下に計測し、数値化するというものです。

血管の内側を覆う内皮細胞がうまく機能していれば血管圧迫解除後速やかに拡張してくれるのですが、うまく拡張しない場合は内皮細胞の機能低下があるのではないかと考えられています。

内皮細胞の異常は動脈硬化の最初の段階だと考えられており、画像上動脈硬化がまだ見えない段階から内皮の機能を推測できるという点で、この検査は動脈硬化の早期発見に期待されているわけです。

一方でこのFMD、検査自体の信頼度にも問題点が残されている検査でもあります。その辺りは「血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン Guidelines for non-invasive vascular function test (JCS 2013)」に詳しく書かれています。ネットで無料で閲覧可です。

具体的な問題点としては「分母である血管径基礎値が大きければ、たとえ内皮機能が正常であってもFMDは相対的に低く算出される」ことや「検査機器・手技(測定条件、カフの位置、血管径の測定方法、安静時径・最大拡張径の評価方法)の統一がなされていないこともFMD測定値の普遍性(施設間でのばらつき)に影響する」ことなどが挙げられます。

山田先生の根拠論文はコメント末に示す1)-3)ですが、読んでみるといずれも少人数(8~20名程度)、短期間(6週~2か月)での無作為ランダム化比較試験です。いずれの論文でも「低炭水化物食の方でFMDが低下したから、内皮機能が低下している可能性がある」と結論づけています。

おそらく山田先生に言わせればエビデンスレベル1(無作為ランダム化比較試験)だから信頼できる、ということなのでしょうけど、エビデンスレベル1なら何でもいいのか、と言いたくなります。短期間・少人数過ぎますし、2)の論文に至っては低炭水化物食で5日目に低下したFMDでは、60日目に元に戻っているという結果も提示されていました。

またFMDは捉える対象が早期すぎていろいろな条件で変動するようです。こちらのサイト(http://www.mediacross.jp/FMD/1-10.html)では運動でもFMDが低下する事が示されていますが、それだと「運動は血管に悪い?」という話になってしまいます。本当でしょうか?

いくらエビデンスレベルの高い論文だろうと、もともと信頼性に問題が残る検査で、しかも少人数で短期間で検証したようなものは、そのまま鵜呑みにはできないのではないでしょうか。

それに「木を見て森を見ず」にならないように、ケトン体にまつわる状況を俯瞰でみれば真実がどちらにあるかはすぐにわかります。

ケトン体は・・・
Aにとっては○
Bにとっては○
Cにとっては○
Dにとっては○
Eにとっては○
Fにとっては○
Gにとっては○
・・・
でもZにとっては×

そういう状況であれば、「Zの検証方法が間違っているんじゃないの?」と考えるのが普通ではないかと私は思います。

1) Phillips SA, Jurva JW, Syed AQ, et al(2008) Benent of low-fat over low-carbohydrate diet on endothelial health in obesity. Hypertension 51:376-382
2) Buscemi S, Verga S, Tranchina MR,et al(2009) Effects of hypocaloric very-low-carbohydrate diet vs. Mediterranean diet on endothelial function in obese women. Eur J Clin lnvest 39:339-347
3) Varady KA,Bhutani S,Klempel MC,et al(2011) Improvements in vascular health by a low-fat diet, but not a high-fat diet, are mediated by changes in adipocyte biology. Nutr J 10:8】




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