糖質制限食と腎機能検査、シスタチンC、クレアチニン、BUN
こんばんは。

スーパー糖質制限食開始後は、食後血糖値はリアルタイムに改善します。
一方、尿素窒素(BUN)が上昇することがあります。

尿素窒素(BUN)の一般的な正常値は8~20gm/dlくらいですが、スーパー糖質制限食中は、21~30mg/dl程度に上昇することがあります。

腎機能検査の一つである、BUNが基準値より高値であれば、誰でも気になりますよね。

でも、血清クレアチニン値や血清シスタチンC値が基準値内なら、BUNが高値でも生理的なものであり、腎機能障害ではないので心配ないです。

それでは、尿素窒素(BUN)がスーパー糖質制限食実践で、何故生理的高値になるのかを考えてみます。

細胞内の蛋白質が限度まで満たされると、体液中のアミノ酸は分解され、エネルギーとして使われたり、主に脂質あるいは、わずかながらグリコーゲンとして貯蔵されます。この大部分は、肝臓で行われます。

アミノ酸分解産物であるアンモニアが、そのままでは神経毒性を有するため、肝で尿素サイクルの代謝をうけて無害な尿素が産生されます。

尿素のほとんどは、腎臓の糸球体で濾過されて尿中に排泄されますが、その一部は再吸収され、血中に戻されます。

一部再吸収されるので、高タンパク食(糖質制限食)により血中尿素窒素(BUN)が高値となることがありますが、これは生理的な現象で、腎機能障害ではありません。

また、高タンパク食(糖質制限食)で、正常な腎臓に負担がかかるということもありません。

従いまして糖質制限食実践中の方において、BUN軽度高値でも、血中クレアチニン値や血中シスタチンCの値が正常であれば問題ありませんのでご安心ください。

血清シスタチンCは、血清クレアチニンよりは、かなり鋭敏な腎機能検査の指標で、初期の腎機能障害を拾い上げることができます。

つまりクレアチンが異常値になった段階はすでに、腎障害はあるていど進んでいる段階なので要注意なのです。

血清クレアチニン値は、GFRが30ml/min前後に低下する時期から上昇するのに対し、血清シスタチンC値はGFR 70ml/min前後に低下したころから上昇します。

したがって、シスタチンCはクレアチニンより初期の段階から腎機能障害をチェックできる利点があります。

シスタチンCを用いた、eGFR (eGFRcys) は、食事や筋肉量、運動の影響を受けずに、糸球体濾過量を反映するので、実際の腎機能を示す最もよい指標と考えられます。

『CKD診療ガイド2012』において、 「るいそうまたは下肢切断者などの筋肉量の少ない場合には、eGFRcysがより適切である」と、クレアチニンを用いた場合よりもシスタチンCを用いたeGFRが望ましいとされています。

なお血清クレアチニンは、尿素窒素よりは腎機能以外の要素の影響は受けにくいのですが、筋トレとかで筋肉量が多い人は、やや高値となります。また検査前に運動で筋肉を酷使した後などにもクレアチニンは高値となります。

この場合は、血清クレアチニンが高値でも腎機能傷害ではありません。

このようなとき、血清シスタチンCを検査すれば本当の腎機能がわかります。

血液による腎機能検査の基準値
尿素窒素(BUN):8~20mg/dl
クレアチニン:0.6~1.1mg/dl
血清シスタチンC:0.53~0.95mg/dl


上記数値は、検査機関により差がありますが、およその基準値です。
血清シスタチンCは、男女で基準値が違う検査機関もあります。

eGFRの計算式は「シスタチンC eGFR」で、グーグルで検索すればすぐ表示されます。

年齢、性別、血清シスタチンC値を記入すれば計算できます。

江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
高たんぱく食と腎機能、糖質制限食について。2016年。
【16/03/09 ハイジ

糖質制限による腎機能への影響について

こんにちは。いつも勉強させて頂いております。

32歳、1型糖尿病発症2年目の女です。半年程前から、糖質制限をはじめました。スーパー糖質制限とまでは行きませんが、1日の糖質量は50〜80g程度だと思います。

1型なのでインスリンはベーサル、ボーラス共に欠かせませんが、糖質OFFメニューのお陰で両方のインスリンとも少量で済み、血糖コントロールはかなり良好、a1cは毎月5%前半、低血糖もほぼないです。

体調も良く、コレステロール、中性脂肪共に標準低値なのですが、クレアチニンのみ0.74と女性にしては高い値が出てしまいました。

またそのときの検診で尿蛋白も±が出てしまい、怖くなって自身で検査シートを買い朝一の尿で尿検査してみたところ、明らかに+寄りの±が出てしまい、心配しています...。

1月の時点でのクレアチニンは0.57、尿蛋白も−なので、急激に腎機能が悪化したのかとも思いましたが、一つ思い当たる節といえばここ2.3ヶ月はかなりガチガチの糖質制限をしていたことです。

肉、魚中心、パン等も全て小麦たんぱくかふすま粉、大豆粉を使用しています。

この生活に満足しているだけに、もしもこの高たんぱく食が影響しているとしたらとてもショックです...。

高たんぱく食によって尿蛋白が出たりクレアチニンが上がるということはありえるのでしょうか。ご教授いただければ嬉しいです。】


こんにちは。

高たんぱく食と腎機能について、1型糖尿病のハイジさんから、コメント・質問を頂きました。

ハイジさん、糖質制限食で血糖、HbA1cコントロール良好、良かったです。

クレアチニンはまず大丈夫と思いますが、念のために血清シスタチンCを調べましょう。

腎機能に関してシスタチンCのほうが信頼度が高い検査です。

尿たんぱくも定量検査をしてみましょう。

試験紙は色で判断しているのでそれほど正確ではありません。

糖質制限食は、相対的に高たんぱく食になるので、腎機能が心配というのは、よくある質問です。

従来の古い知識では、医師でもそのように説明する場合もあると思います。

しかし、私自身は、そう単純なものではないと思っていますので、以下、考察してみます。


1)日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」

腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」において、eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質は過剰な摂取をしないという表現となっていて、制限という記載はなし。


2)米国糖尿病学会の栄養療法に関する声明

米国糖尿病学会(ADA)は、Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定。
根拠はランク(A)で、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解。


糖質制限食は、高タンパク・高脂質食になりますが1)により、糖尿病腎症第3期でも、eGFR60ml/分以上なら、糖質制限食OKです。

そして2)により、今後は、糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応することとなります。


3)「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
II  各論
たんぱく質(PDF:1,149KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042630.pdf
<97ページ>

3─1.耐容上限量の設定
たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。
しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分には見当たらない。
そこで、耐容上限量は設定しないこととした。


結局、現時点では、正常人がタンパク質をたくさん食べて危険という根拠もないけれど、たくさん食べても安全という根拠もないということですね。

まさに、自分で考えて選択して自己責任で食事療法を実践することとなります。

ちなみに、江部康二は、糖尿病発覚の2002年(52才)からスーパー糖質制限食を開始して2016年3月(66才)現在まで続けています。

タンパク質の摂取量は、一日あたり130~140gくらいと、普通人よりかなり大量のタンパク質を摂取してます。
体重1kgあたり2.4gのタンパク質なので、超高たんぱく食です。
それでも尿酸は低めですし、腎機能に何の問題もありません。

最近の検査データは
クレアチニン:0.67mg/dl(0.6~1.1)  eGFR:90.7ml/min./1.73m2
シスタチンC:0.58/L(0.53~0.95)  eGFR:131.6ml/min./1.73m2
尿中アルブミン:4.6mg/g・c(30.0未満)
です。

クレアチニン、シスタチンC、eGFR、尿中微量アルブミンの検査が全て基準値内なので、腎機能に何の問題もありません。

<高雄病院の方針>

現時点で高雄病院では、糖尿病腎症でもeGFRが60ml/分以上の場合は、糖尿病コントロールのためにも糖質制限食を推奨しています。

糖尿病腎症で、腎機能悪化の最大のリスクは「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」と考えられるからです。

糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応するようにしています。

万一スーパー糖質制限食でクレアチニン値の悪化傾向があれば、「超低たんぱく・低糖質・高脂肪食」・・・即ちケトン食も、腎不全に一考の余地ありと現在検討中です。

<結論>

1)GFRが60ml/分以上の場合は、タンパク質制限よりも血糖コントロールを優先して、
  糖尿病腎症でも、普通にスーパー糖質制限食を実践することを推奨する。 

2)GFRが60ml/分未満の場合は、よく相談して糖質制限食を実践するかどうか個別に対応する。

3)GFRが60ml/分未満で、スーパー糖質制限食を選択開始した場合、毎月腎機能検査を実施して、
 血清クレアチニン値を測定し、その結果でスーパー糖質制限食を継続するか否かを決める。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版。糖尿病腎症と糖質制限食。
こんばんは。

慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版に関して以前記事にしましたが、たんぱく質制限に関して、やや不正確な表現がありましたので今回、青字の部分を書き直しました。

日本腎臓病学会のサイト
http://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php

の中で、

<慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版(日本腎臓病学会誌、56巻5号)>

<CKD診療ガイドライン2013>

をPDFファイルで閲覧することができます。

<慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版>

表1 CKDステージによる食事療法基準

ステージ(GFR)         たんぱく質(g/kgBW/日)

ステージ1(GFR≧90)      過剰な摂取をしない
ステージ 2(GFR 60~89)     過剰な摂取をしない
ステージ 3a(GFR 45~59)     0.8~1.0
ステージ 3b(GFR 30~44)     0.6~0.8
ステージ 4(GFR 15~29)      0.6~0.8
ステージ 5(GFR<15)       0.6~0.8
     5D(透析療法中)      0.9~1.2



となっています。

透析になると、たんぱく摂取基準量が増えます。

CKDステージによる食事療法基準によれば、糖尿病腎症第3期で、蛋白尿が陽性の段階でもGFRが60ml/分以上あれば、
過剰な摂取はしないという表現ですので、GFRが60ml/分未満の時のようないわゆるたんぱく制限は必要ないわけです。

過剰を示す具体的な指示量としては、進行するリスクのある CKDにおいては 1.3 g/kg 標準体重/日を超えないことが
1 つの目安としてありますので透析中の人より、さらにたんぱく質摂取許容量が多くなっています。


エビデンスが相対的に少ない糖尿病性腎症においては、
ステージ G1~G2 では 1.0~1.2、
G3 では0.8~1.0、
G4~G5 では 0.6~0.8 g/kg 標準体重/日で指導してもよいとされています。

<CKD診療ガイドライン2013>
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013 編集 日本腎臓病学会
29ペ-ジに、以下の記載があります。

『3.CKDと栄養

5.たんぱく質制限の適応

たんぱく質制限の適応は、主にステージ G3b より進行した CKD であるが、画一的な制限は不適切であり、個々の症例に応じた検討が必要である。

これまでに行われた RCT のほとんどは、対象の平均年齢が50~55歳で、主に顕性蛋白尿を呈している CKD ステージ G3b~5 であること、つまり末期腎不全のリスクが高い集団に対して行われている。

日本の CKD ステージ G3a に多くみられるような蛋白尿の少ない高齢者は末期腎不全に至るリスクが低く、腎機能低下速度自体の抑制効果は明らかでないことからも、たんぱく質制限をそのような対象に行う意義は乏しい。

また,現時点では早期 CKD における有効性は不明である。

個々の症例に対する適応や制限のレベルは、事前に予想される末期腎不全に至る可能性とたんぱく質制限の潜在的な危険性の両面を考慮して、リスクとベネフィットの観点から、実際の診療にあたる腎臓専門医が慎重に検討する必要がある。』


*GはGFRのことで、G1、G2、G3a、G3b、G4、G5と進行していきます。
G1はGFRが90ml/分以上です。
G2はGFRが60~89ml/分
G3aはGFRが45~59ml/分
G3bはGFR が30~44ml/分 
G4はGFR が15~29ml/分
G5はGFRが<15ml/分
5D(透析療法中)

CKD診療ガイドライン2013においても、画一的なたんぱく制限は不適切であり、個々の症例に応じた検討が必要としています。

また、たんぱく質制限の適応は主にステージ G3b(GFR45未満)より進行した CKD としています。

それでも、97頁で日本腎臓病学会は、一応たんぱく制限を推奨しています。

推奨グレード C1なので、エビデンスレベルは弱いです。

たんぱく質摂取制限は、糖尿病性腎症の進展を抑制するというエビデンスは十分ではないが、一定の腎症抑制効果が期待できる可能性があるため推奨する。ただし、たんぱく質の制限量は個々の病態、リスク、アドヒアランスなどを総合的に判断して設定されるべきである。」

98頁には
「たんぱく質摂取制限の腎症の進展抑制に対する効果は明らかではない(特に 2 型糖尿病)」という記載もあります。 

一方、98ページには

「非糖尿病慢性糸球体腎炎の腎不全(血清 Cr 6 mg/dL)症例を対象として、
超たんぱく質制限食(0.5 g/kg 標準体重/日未満)が腎機能低下を遅延させたことが報告されている。」


という記載もあります。

<米国糖尿病学会>

これに対して、米国糖尿病学会(ADA)は

Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版

において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。

『糖尿病腎症の所見のない糖尿病患者では、最適な血糖コントロール、あるいは、心血管疾患リスクの改善のための理想的な蛋白質摂取量に関しては、これを推奨するに足る十分なエビデンスは存在しない。したがって、目標は個別化されなければならない。C

糖尿病腎症(微量アルブミン尿、および、顕性蛋白尿)を有する糖尿病患者では、通常の摂取量以下に蛋白質摂取量を減量することは、血糖状態、心血管リスク、あるいは、糸球体ろ過率低下の経過に変化を与えないので、推奨されない。A』


糖尿病腎症のない糖尿病患者での理想的な蛋白質摂取量のエビデンスは、存在しないと断定しています。

さらに踏み込んで、糖尿病腎症を有する患者においても、「蛋白質制限は推奨しない」とランクAで断定しています。

根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。


<高雄病院の方針>

現時点で高雄病院では、糖尿病腎症でもeGFRが60ml/分以上の場合は、糖尿病コントロールのためにも糖質制限食を推奨しています。

糖尿病腎症で、腎機能悪化の最大のリスクは「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」と考えられるからです。

糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応するようにしています。

万一スーパー糖質制限食でクレアチニン値の悪化傾向があれば、「超低たんぱく・低糖質・高脂肪食」・・・即ちケトン食も、腎不全に一考の余地ありと現在検討中です。

<結論>

1)GFRが60ml/分以上の場合は、タンパク質制限よりも血糖コントロールを優先して、
  糖尿病腎症でも、普通にスーパー糖質制限食を実践することを推奨する。 

2)GFRが60ml/分未満の場合は、よく相談して糖質制限食を実践するかどうか個別に対応する。

3)GFRが60ml/分未満で、スーパー糖質制限食を選択開始した場合、毎月腎機能検査を実施して、
 血清クレアチニン値を測定し、その結果でスーパー糖質制限食を継続するか否かを決める。
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
スーパー糖質制限食と腎機能、アマリール内服は?
【16/01/13 スーパー糖制限食をしたい夫婦

糖制限食の適応でしょうか

お忙しい中、申し訳ありません。
夫婦そろって糖尿病・肥満です。

夫は、クレアチニンが1.08で、医者から腎臓が弱ってきていると言われました。顔の頬に引きつりも起き始めたので、それも神経障害が出てきたのだろうと言われました。HbA1cは8.4です。薬は朝にアクトス30、アジルバ20、グラクティブ100mg、アマリール0.5mg、グリコラン250mg、ノルバスク5mg、バイアスピリン。夜はグリコランとノルバスク。毎食前にボグリボース0.2を飲んでいます。体重91キロ。

私のほうは、中性脂肪が245、総コレステロールが251、LDL163で投薬をはじめようかと言われました。それからアミラーゼが毎回35以下、CRP定量も毎回0.6以下にはならず、今回も0.8でした。担当医の話では、肥満だから内蔵が炎症を起こしているのだろうとの説明です。私の薬は朝と晩にエクア50mgとグリコラン250mg、毎食前にセイブル50mgです。体重は93キロの超肥満です。HbA1cは8.3です。

二人してすぐにでも江部先生のご本を参考に糖制限食(できればスーパー制限食)をはじめようと話していたのですが、腎臓障害があるとだめというようなことを読んだ記憶があったので不安になってしまいました。
私たちのような臨床検査結果でもスーパー糖制限食を実施してかまわないでしょうか。

ご多忙の中、勝手なことをお尋ねいたしまして先生のお時間を無駄にし本当に申し訳ありません。】


こんばんは。

スーパー糖制限食をしたい夫婦 さんから、スーパー糖質制限食と腎機能、アマリール内服などについて、コメント・質問をいただきました。

ご主人はクレアチニンが1.08mg/dlですが、基準値は「0.5~1.1mg/dl」くらいでしょうか?

確かに軽度腎機能障害の疑いはありますが、スーパー糖質制限食実践は可能と思います。

実践にあたっては、低血糖予防のためアマリールを中止するのがよいと思います。

他の内服薬は、大丈夫です。

腎機能障害のリスクとして最大なのは高血糖であり、ついで高血圧、肥満などがあります。

スーパー糖質制限食により、高血糖と肥満が改善すれば腎機能にもよい影響がでると思います。

減量に成功すれば降圧剤も減らせるかもしれません。

高タンパク食が腎機能に良くないという説もありますが、エビデンスレベルは低いです。

そして米国糖尿病学会は、糖尿病腎症には「蛋白制限」は推奨しないと2013年10月の栄養勧告で明言しています。

『GFR クレアチン』 でグーグルで検索してみましょう。

クレアチニン値と年齢・性別でeGFRが算出できる計算式のサイトがあるので調べてみましょう。

<高雄病院の方針>

現時点で高雄病院では、糖尿病腎症でもeGFRが60ml/分以上の場合は、糖尿病コントロールのためにも糖質制限食を推奨しています。

糖尿病腎症で、腎機能悪化の最大のリスクは「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」と考えられるからです。

糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応するようにしています。

万一スーパー糖質制限食でクレアチニン値の悪化傾向があれば、「超低たんぱく・低糖質・高脂肪食」・・・即ちケトン食も、腎不全に一考の余地ありと現在検討中です。

1)GFRが60ml/分以上の場合は、タンパク質制限よりも血糖コントロールを優先して、
  糖尿病腎症でも、普通にスーパー糖質制限食を実践することを推奨する。 
2)GFRが60ml/分未満の場合は、よく相談して糖質制限食を実践するかどうか個別に対応する。
3)GFRが60ml/分未満で、スーパー糖質制限食を選択開始した場合、毎月腎機能検査を実施して、 
  血清クレアチニン値を測定し、その結果でスーパー糖質制限食を継続するか否かを決める。


上記が、腎機能障害がある糖尿人への高雄病院の方針です。

奥さんのCRP軽度上昇は、主治医の仰有る通り、肥満のためと思われます。

肥満者の脂肪組織が炎症を生じる物質を分泌させるのが原因とされています。

従って、スーパー糖質制限食で肥満が改善すれば、CRPも正常化すると思われます。

勿論、血糖値、HbA1cも改善します。

コレステロール値も経過をみてよいと思います。


上記に注意していただいて、ご夫婦でスーパー糖質制限食実践、OKと思います。



江部康二


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版。糖尿病腎症と糖質制限食。
【15/10/12 HK

CKDについて

私自身はCKDが進んでももちろん糖質制限は工夫して行う必要があると思います。
ただ、CKD診療ガイド2013」において、「eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質制限の必要なしと明示されました。」という部分ををみつけだせませんでした。 また腎学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」ではCKDステージ1,2でたんぱく質の過剰な摂取をしない、ステージ3aで0.8-1.0、ステージ3b以降で0.6-0.8g/kgとなってます。
CKDでは低糖質中蛋白質高脂肪でなんとかせねばと思います。】



こんばんは。

HKさんから、糖尿病腎症と糖質制限食に関してコメントを頂きました。
コメント・情報をありがとうございます。


日本腎臓病学会のサイト
http://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php
の中で、

<慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版(日本腎臓病学会誌、56巻5号)>

<CKD診療ガイドライン2013>
をPDFファイルで閲覧することができます。

<慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版>

表1 CKDステージによる食事療法基準

ステージ(GFR)         たんぱく質(g/kgBW/日)

ステージ1(GFR≧90)      過剰な摂取をしない
ステージ 2(GFR 60~89)     過剰な摂取をしない
ステージ 3a(GFR 45~59)     0.8~1.0
ステージ 3b(GFR 30~44)     0.6~0.8
ステージ 4(GFR 15~29)      0.6~0.8
ステージ 5(GFR<15)       0.6~0.8
     5D(透析療法中)      0.9~1.2



となっています。

透析になると、たんぱく摂取基準量が増えます。

CKDステージによる食事療法基準によれば、糖尿病腎症第3期で、蛋白尿が陽性の段階でもGFRが60ml/分以上あれば、過剰な摂取はしないという表現ですので、いわゆるたんぱく制限は必要ないわけです。

過剰を示す具体的な指示量としては、進行するリスクのある CKDにおいては 1.3 g/kg 標準体重/日を超えないことが 1 つの目安としてありますので透析中の人より、さらにたんぱく質摂取量が多くなっています。


エビデンスが相対的に少ない糖尿病性腎症においては、
ステージ G1~G2 では 1.0~1.2、
G3 では0.8~1.0、
G4~G5 では 0.6~0.8 g/kg 標準体重/日で指導してもよいとされています。

<CKD診療ガイドライン2013>
エビデンスに基づく
CKD診療ガイドライン2013 編集 日本腎臓病学会
29ペ-ジに、以下の記載があります。

『3.CKDと栄養

5.たんぱく質制限の適応

たんぱく質制限の適応は、主にステージ G3b より進行した CKD であるが、画一的な制限は不適切であり、個々の症例に応じた検討が必要である。

これまでに行われた RCT のほとんどは、対象の平均年齢が50~55歳で、主に顕性蛋白尿を呈している CKD ステージ G3b~5 であること、つまり末期腎不全のリスクが高い集団に対して行われている。

日本の CKD ステージ G3a に多くみられるような蛋白尿の少ない高齢者は末期腎不全に至るリスクが低く、腎機能低下速度自体の抑制効果は明らかでないことからも、たんぱく質制限をそのような対象に行う意義は乏しい。

また,現時点では早期 CKD における有効性は不明である。

個々の症例に対する適応や制限のレベルは、事前に予想される末期腎不全に至る可能性とたんぱく質制限の潜在的な危険性の両面を考慮して、リスクとベネフィットの観点から、実際の診療にあたる腎臓専門医が慎重に検討する必要がある。』


*GはGFRのことで、G1、G2、G3a、G3b、G4、G5と進行していきます。
G1はGFRが90ml/分以上です。
G2はGFRが60~89ml/分
G3aはGFRが45~59ml/分
G 3bはGFR が30~44ml/分 
G 4はGFR が15~29ml/分
G5はGFRが<15ml/分
5D(透析療法中)

CKD診療ガイドライン2013においても、画一的なたんぱく制限は不適切であり、個々の症例に応じた検討が必要としています。

また、たんぱく質制限の適応は主にステージ G3b(GFR45未満)より進行した CKD としています。

それでも、97頁で日本腎臓病学会は、一応たんぱく制限を推奨しています。

推奨グレード C1なので、エビデンスレベルは弱いです。

たんぱく質摂取制限は、糖尿病性腎症の進展を抑制するというエビデンスは十分ではないが、一定の腎症抑制効果が期待できる可能性があるため推奨する。ただし、たんぱく質の制限量は個々の病態、リスク、アドヒアランスなどを総合的に判断して設定されるべきである。」

98頁には
「たんぱく質摂取制限の腎症の進展抑制に対する効果は明らかではない(特に 2 型糖尿病)」という記載もあります。 

一方、98ページには

「非糖尿病慢性糸球体腎炎の腎不全(血清 Cr 6 mg/dL)症例を対象として、
超たんぱく質制限食(0.5 g/kg 標準体重/日未満)が腎機能低下を遅延させたことが報告されている。」

という記載もあります。

<米国糖尿病学会>

これに対して、米国糖尿病学会(ADA)は

Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版

において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。

『糖尿病腎症の所見のない糖尿病患者では、最適な血糖コントロール、あるいは、心血管疾患リスクの改善のための理想的な蛋白質摂取量に関しては、これを推奨するに足る十分なエビデンスは存在しない。したがって、目標は個別化されなければならない。C

糖尿病腎症(微量アルブミン尿、および、顕性蛋白尿)を有する糖尿病患者では、通常の摂取量以下に蛋白質摂取量を減量することは、血糖状態、心血管リスク、あるいは、糸球体ろ過率低下の経過に変化を与えないので、推奨されない。A』


糖尿病腎症のない糖尿病患者での理想的な蛋白質摂取量のエビデンスは、存在しないと断定しています。

さらに踏み込んで、糖尿病腎症を有する患者においても、「蛋白質制限は推奨しない」とランクAで断定しています。

根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。


<高雄病院の方針>

現時点で高雄病院では、糖尿病腎症でもeGFRが60ml/分以上の場合は、糖尿病コントロールのためにも糖質制限食を推奨しています。

糖尿病腎症で、腎機能悪化の最大のリスクは「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」と考えられるからです。

糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応するようにしています。

万一スーパー糖質制限食でクレアチニン値の悪化傾向があれば、「超低たんぱく・低糖質・高脂肪食」・・・即ちケトン食も、腎不全に一考の余地ありと現在検討中です。

<結論>

1)GFRが60ml/分以上の場合は、タンパク質制限よりも血糖コントロールを優先して、
  糖尿病腎症でも、普通にスーパー糖質制限食を実践することを推奨する。 

2)GFRが60ml/分未満の場合は、よく相談して糖質制限食を実践するかどうか個別に対応する。

3)GFRが60ml/分未満で、スーパー糖質制限食を選択開始した場合、毎月腎機能検査を実施して、
 血清クレアチニン値を測定し、その結果でスーパー糖質制限食を継続するか否かを決める。

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット