2016年10月02日 (日)
【16/10/02 コンタ
まだ先生が言及なさっていない、糖質制限を否定する根拠の一つについて
江部先生
はじめまして。
桐山秀樹さんが亡くなった際、先生の「高血糖の記憶」の説明を「言い訳」と断定し、聞く耳を持たなかった人が居たことは記憶に新しいです(そして、その人が桐山秀樹さんが糖質制限を中止していたことを知っているかも疑問です)。
どうかそのような人達が、ケトン体の安全性を確認する日が来てほしいものですね。
さて、本日は一つ先生に確認して頂きたいことがございましてコメントを投稿させて頂きました。「糖質制限とコルチゾールの関係について」です。ブログ内を探してみたところ、まだ言及をなさっていないことに気付いたので、よい機会なのでお伺いしてみようかと思ったのです。
糖質制限を否定する方の中に「糖質制限をすると糖新生のためにコルチゾールが分泌され、インスリン抵抗性が上がり、かえって糖尿病を発症するリスクが高まる」と主張する人が散見されます。しかし、高校で生物を少し学んだことのある私は、この主張に強い疑問を覚え、以下のような推測をしました。
(今回のお伺いとは無関係ですが、「糖質制限や食事回数の削減を行うと、少量の糖質に対しても過剰にインスリンが分泌されるようになり、結果膵臓のランゲルハンス島β細胞が疲弊し、糖尿病に至る」と主張する方もおられました)
・確かに血糖値が下がると糖質コルチコイドの一つとしてコルチゾールが分泌されるが、血糖値が安定すればコルチゾールの分泌は抑制され、元のホルモンバランスに戻る。
・コルチゾールが分泌されるとインスリン抵抗性が上がるというのは、コルチゾール自体がインスリンの働きを抑制するのであって、コルチゾール自体が直接インスリン感受性にダメージを与えるのではないため、上の通りに血糖値とホルモンバランスが安定すれば全くの無問題である。
上記の私の推測は正しいでしょうか。そして結局、糖質制限を行うことががかえって糖尿病のリスクを上げることになるのでしょうか。
この、「糖質制限とコルチゾールの関係について」がはっきりしないために、糖質制限を断念するという方は多いはずですので、是非先生の意見をお聞きしたいです。
失礼致しました。】
コンタ さん
副腎皮質からのコルチゾール分泌は、視床下部-下垂体-副腎皮質系のnegative feedback機構により調節されています。
例えば生体は、ストレス(飢餓、寒冷、外傷など)があると、下垂体のACTH分泌を介して、副腎皮質からのコルチゾール分泌を促し、
糖新生で血糖値が上昇します。コルチゾールには糖新生作用があります。
『・確かに血糖値が下がると糖質コルチコイドの一つとしてコルチゾールが分泌されるが、血糖値が安定すればコルチゾールの分泌は抑制され、元のホルモンバランスに戻る。
・コルチゾールが分泌されるとインスリン抵抗性が上がるというのは、コルチゾール自体がインスリンの働きを抑制するのであって、コルチゾール自体が直接インスリン感受性にダメージを与えるのではないため、上の通りに血糖値とホルモンバランスが安定すれば全くの無問題である。』
コンタ さんのお考えに、私も賛成です。
糖質制限食で、血糖変動幅が極めて少なくなり、全身の代謝が安定するので、コルチゾールをはじめ全身のホルモンバランスも安定すると考えられます。
糖質制限食を続けている場合、インスリン基礎分泌は普通に必要ですが、インスリン追加分泌は少量で済みます。
従って、膵臓のβ細胞は休養できるので疲弊はしません。
糖質制限食は、人類700万年間の狩猟・採集時代の食生活であり、人類本来の食事で、人類の健康食と言えます。
狩猟・採集時代は、やはりインスリンの基礎分泌は必要ですが、追加分泌は時々程度だったと考えられます。
ブドウ糖しかエネルギー源にできない赤血球のために、人体には血糖値確保のためのバックアップシステムが複数あります。
これに対して、血糖値を下げるのは唯一インスリンのみであり、バックアップシステムがありません。狩猟・採集時代の700万年間は血糖が上がるのは、時々手に入った野生の果物、ナッツ類、根茎類を摂取したときくらいであり、このときに追加分泌インスリンが必要だった程度です。
このように、700万年間、インスリン追加分泌は時々必要だった程度なので、わざわざバックアップシステムを構築する必然性がなかったと考えられます。
<血糖値確保のためのバックアップシステム>
1)グルカゴン
2)アドレナリン→ストレスで分泌増加
3)コルチゾール→ストレスで分泌増加
4)成長ホルモン
5)アミノ酸からの糖新生
6)グリセロール(中性脂肪の分解産物)からの糖新生
7)乳酸から糖新生
<血糖値を下げるのはインスリンだけ>
現代のように糖質を、頻回に摂取し、「血糖値上昇とインスリン大量分泌」を頻回に生じるとβ細胞は疲弊していき、インスリン分泌能力が低下して、40年、50年経過していくとで糖尿病発症となると考えられます。
700万年間、さほど働いていなかったβ細胞が、農耕開始後1万年間は、結構、毎日稼働し始めて、とくに精製炭水化物摂取後のこの200~300年は、朝昼晩、3時のおやつ、夜食のラーメンと、馬車馬の如く働きづめです。
現代の食生活は、膵臓のβ細胞にとって、まさに受難の時代と言えます。
2型糖尿病は、狩猟・採集時代の700万年間は存在しなかった病気であり、農耕開始(穀物食開始)以降に生じた新しい病気と考えられます。
江部康二
まだ先生が言及なさっていない、糖質制限を否定する根拠の一つについて
江部先生
はじめまして。
桐山秀樹さんが亡くなった際、先生の「高血糖の記憶」の説明を「言い訳」と断定し、聞く耳を持たなかった人が居たことは記憶に新しいです(そして、その人が桐山秀樹さんが糖質制限を中止していたことを知っているかも疑問です)。
どうかそのような人達が、ケトン体の安全性を確認する日が来てほしいものですね。
さて、本日は一つ先生に確認して頂きたいことがございましてコメントを投稿させて頂きました。「糖質制限とコルチゾールの関係について」です。ブログ内を探してみたところ、まだ言及をなさっていないことに気付いたので、よい機会なのでお伺いしてみようかと思ったのです。
糖質制限を否定する方の中に「糖質制限をすると糖新生のためにコルチゾールが分泌され、インスリン抵抗性が上がり、かえって糖尿病を発症するリスクが高まる」と主張する人が散見されます。しかし、高校で生物を少し学んだことのある私は、この主張に強い疑問を覚え、以下のような推測をしました。
(今回のお伺いとは無関係ですが、「糖質制限や食事回数の削減を行うと、少量の糖質に対しても過剰にインスリンが分泌されるようになり、結果膵臓のランゲルハンス島β細胞が疲弊し、糖尿病に至る」と主張する方もおられました)
・確かに血糖値が下がると糖質コルチコイドの一つとしてコルチゾールが分泌されるが、血糖値が安定すればコルチゾールの分泌は抑制され、元のホルモンバランスに戻る。
・コルチゾールが分泌されるとインスリン抵抗性が上がるというのは、コルチゾール自体がインスリンの働きを抑制するのであって、コルチゾール自体が直接インスリン感受性にダメージを与えるのではないため、上の通りに血糖値とホルモンバランスが安定すれば全くの無問題である。
上記の私の推測は正しいでしょうか。そして結局、糖質制限を行うことががかえって糖尿病のリスクを上げることになるのでしょうか。
この、「糖質制限とコルチゾールの関係について」がはっきりしないために、糖質制限を断念するという方は多いはずですので、是非先生の意見をお聞きしたいです。
失礼致しました。】
コンタ さん
副腎皮質からのコルチゾール分泌は、視床下部-下垂体-副腎皮質系のnegative feedback機構により調節されています。
例えば生体は、ストレス(飢餓、寒冷、外傷など)があると、下垂体のACTH分泌を介して、副腎皮質からのコルチゾール分泌を促し、
糖新生で血糖値が上昇します。コルチゾールには糖新生作用があります。
『・確かに血糖値が下がると糖質コルチコイドの一つとしてコルチゾールが分泌されるが、血糖値が安定すればコルチゾールの分泌は抑制され、元のホルモンバランスに戻る。
・コルチゾールが分泌されるとインスリン抵抗性が上がるというのは、コルチゾール自体がインスリンの働きを抑制するのであって、コルチゾール自体が直接インスリン感受性にダメージを与えるのではないため、上の通りに血糖値とホルモンバランスが安定すれば全くの無問題である。』
コンタ さんのお考えに、私も賛成です。
糖質制限食で、血糖変動幅が極めて少なくなり、全身の代謝が安定するので、コルチゾールをはじめ全身のホルモンバランスも安定すると考えられます。
糖質制限食を続けている場合、インスリン基礎分泌は普通に必要ですが、インスリン追加分泌は少量で済みます。
従って、膵臓のβ細胞は休養できるので疲弊はしません。
糖質制限食は、人類700万年間の狩猟・採集時代の食生活であり、人類本来の食事で、人類の健康食と言えます。
狩猟・採集時代は、やはりインスリンの基礎分泌は必要ですが、追加分泌は時々程度だったと考えられます。
ブドウ糖しかエネルギー源にできない赤血球のために、人体には血糖値確保のためのバックアップシステムが複数あります。
これに対して、血糖値を下げるのは唯一インスリンのみであり、バックアップシステムがありません。狩猟・採集時代の700万年間は血糖が上がるのは、時々手に入った野生の果物、ナッツ類、根茎類を摂取したときくらいであり、このときに追加分泌インスリンが必要だった程度です。
このように、700万年間、インスリン追加分泌は時々必要だった程度なので、わざわざバックアップシステムを構築する必然性がなかったと考えられます。
<血糖値確保のためのバックアップシステム>
1)グルカゴン
2)アドレナリン→ストレスで分泌増加
3)コルチゾール→ストレスで分泌増加
4)成長ホルモン
5)アミノ酸からの糖新生
6)グリセロール(中性脂肪の分解産物)からの糖新生
7)乳酸から糖新生
<血糖値を下げるのはインスリンだけ>
現代のように糖質を、頻回に摂取し、「血糖値上昇とインスリン大量分泌」を頻回に生じるとβ細胞は疲弊していき、インスリン分泌能力が低下して、40年、50年経過していくとで糖尿病発症となると考えられます。
700万年間、さほど働いていなかったβ細胞が、農耕開始後1万年間は、結構、毎日稼働し始めて、とくに精製炭水化物摂取後のこの200~300年は、朝昼晩、3時のおやつ、夜食のラーメンと、馬車馬の如く働きづめです。
現代の食生活は、膵臓のβ細胞にとって、まさに受難の時代と言えます。
2型糖尿病は、狩猟・採集時代の700万年間は存在しなかった病気であり、農耕開始(穀物食開始)以降に生じた新しい病気と考えられます。
江部康二
2016年09月29日 (木)
こんばんは。
2016年9月25日(日)
大相撲の豪栄道関が、全勝で初優勝を飾りました。
豪栄道関、おめでとございます。
豪栄道関に関して、ウェブのにっぽん放送のサイトに、、面白い記事が載りました。
三島学さんから、コメントを頂きました。
ありがとうございます。
【16/09/28 北九州 三島
豪栄道 復活優勝のわけ
http://www.1242.com/lf/articles/18100/
相撲界まで。
サッカー、テニス、ボクシング、・・・に続き】
優勝の要因を質問された豪栄道関はぽつりと「食事を変えたからなぁ」と漏らしたそうです。
週4回の焼き肉店通いは不変で、朝のけいこを終えた後のちゃんこでは炭水化物を口にせず。
これは、何と糖質制限食ではないですか。
素晴らしいです。
怪我に悩まされた豪栄道関ですが、糖質制限食のおかげで体調が非常に良いようです。
「オフロードサイクリストにおける運動代謝と身体能力へのケトン食の影響」
Nutrients 2014, 6, 2493-2508
という題のポーランドの研究は、
『低から中等度の強度のトレーニング負荷のトレーニング過程においては、ケトン食は優位である可能性がある。
筋肉のダメージも少ない。』
と結論しています。
筋肉のダメージも少ないというのが肝要で、スーパー糖質制限食やケトン食は、怪我をしにくいし、筋肉の回復も早いと思われます。
豪栄道関のさらなる活躍を期待したいと思います。
それから、長友佑都選手、ノバク・ジョコビッチ選手、井岡一翔選手の活躍も楽しみです。
我らが錦織圭選手、せめてジョコビッチのように夜だけでも糖質制限食をお願いいます。
江部康二
☆☆☆
以下、にっぽん放送のサイトから抜粋
http://www.1242.com/lf/articles/18100/
2016/09/26
優勝の要因は「食事を変えたから」大相撲大関・豪栄道豪太郎(30歳)
スポーツ人間模様
秋場所の優勝を決めていた豪栄道が千秋楽も快勝、
カド番から史上初の全勝優勝を飾りました。
1996年秋場所の横綱貴乃花以来20年ぶりの日本人力士全勝制覇など
記録づくしの初優勝です。
その貴乃花親方は現在、巡業部部長をつとめているだけに
「巡業中のけいこの賜物」と大絶賛のメッセージを送りました。
優勝の要因を質問された豪栄道はぽつりと「食事を変えたからなぁ」と漏らしました。
週4回の焼き肉店通いは変わらないものの、
朝のけいこを終えた後のちゃんこでは炭水化物を口にせず、
サプリメントなどを摂るなど食生活を改善。
さまざまな故障も癒え、夏巡業でも意欲的なけいこを連日熱心に行っていました。
元々力はあり、条件が揃っただけに、優勝しても不思議ではありませんでした。
思い出すのは2010年に発覚した野球賭博問題に豪栄道も関与していたということで、
名古屋場所の休場を勧告され十両へ陥落しました。
この時は境川親方(元小結両国)も謹慎。
唯一の楽しみの散歩も封印して、けいこが終わった後、
土俵のまわりを何週も歩く姿をみた豪栄道は
「オヤジ(境川親方)のために、必ず恩返しをする」と誓ったそうです。
2014年には大関へ昇進しましたが、それからは今ひとつ振るわず、
今場所、4度目のカド番からようやく復活しました。
横綱昇進の内規は2場所連続優勝、または、それに準ずる成績ということで、
昨日あたりの二所ノ関審判部長の話によると、3横綱を総ナメにして、
少なくとも14勝くらいすれば一気に昇進というようなことを言っていました。
そうなれば今場所休場の白鵬も黙っていません。
もちろん稀勢の里も狙っています。締めの九州場所が楽しみです。
2016年9月25日(日)
大相撲の豪栄道関が、全勝で初優勝を飾りました。
豪栄道関、おめでとございます。
豪栄道関に関して、ウェブのにっぽん放送のサイトに、、面白い記事が載りました。
三島学さんから、コメントを頂きました。
ありがとうございます。
【16/09/28 北九州 三島
豪栄道 復活優勝のわけ
http://www.1242.com/lf/articles/18100/
相撲界まで。
サッカー、テニス、ボクシング、・・・に続き】
優勝の要因を質問された豪栄道関はぽつりと「食事を変えたからなぁ」と漏らしたそうです。
週4回の焼き肉店通いは不変で、朝のけいこを終えた後のちゃんこでは炭水化物を口にせず。
これは、何と糖質制限食ではないですか。
素晴らしいです。
怪我に悩まされた豪栄道関ですが、糖質制限食のおかげで体調が非常に良いようです。
「オフロードサイクリストにおける運動代謝と身体能力へのケトン食の影響」
Nutrients 2014, 6, 2493-2508
という題のポーランドの研究は、
『低から中等度の強度のトレーニング負荷のトレーニング過程においては、ケトン食は優位である可能性がある。
筋肉のダメージも少ない。』
と結論しています。
筋肉のダメージも少ないというのが肝要で、スーパー糖質制限食やケトン食は、怪我をしにくいし、筋肉の回復も早いと思われます。
豪栄道関のさらなる活躍を期待したいと思います。
それから、長友佑都選手、ノバク・ジョコビッチ選手、井岡一翔選手の活躍も楽しみです。
我らが錦織圭選手、せめてジョコビッチのように夜だけでも糖質制限食をお願いいます。
江部康二
☆☆☆
以下、にっぽん放送のサイトから抜粋
http://www.1242.com/lf/articles/18100/
2016/09/26
優勝の要因は「食事を変えたから」大相撲大関・豪栄道豪太郎(30歳)
スポーツ人間模様
秋場所の優勝を決めていた豪栄道が千秋楽も快勝、
カド番から史上初の全勝優勝を飾りました。
1996年秋場所の横綱貴乃花以来20年ぶりの日本人力士全勝制覇など
記録づくしの初優勝です。
その貴乃花親方は現在、巡業部部長をつとめているだけに
「巡業中のけいこの賜物」と大絶賛のメッセージを送りました。
優勝の要因を質問された豪栄道はぽつりと「食事を変えたからなぁ」と漏らしました。
週4回の焼き肉店通いは変わらないものの、
朝のけいこを終えた後のちゃんこでは炭水化物を口にせず、
サプリメントなどを摂るなど食生活を改善。
さまざまな故障も癒え、夏巡業でも意欲的なけいこを連日熱心に行っていました。
元々力はあり、条件が揃っただけに、優勝しても不思議ではありませんでした。
思い出すのは2010年に発覚した野球賭博問題に豪栄道も関与していたということで、
名古屋場所の休場を勧告され十両へ陥落しました。
この時は境川親方(元小結両国)も謹慎。
唯一の楽しみの散歩も封印して、けいこが終わった後、
土俵のまわりを何週も歩く姿をみた豪栄道は
「オヤジ(境川親方)のために、必ず恩返しをする」と誓ったそうです。
2014年には大関へ昇進しましたが、それからは今ひとつ振るわず、
今場所、4度目のカド番からようやく復活しました。
横綱昇進の内規は2場所連続優勝、または、それに準ずる成績ということで、
昨日あたりの二所ノ関審判部長の話によると、3横綱を総ナメにして、
少なくとも14勝くらいすれば一気に昇進というようなことを言っていました。
そうなれば今場所休場の白鵬も黙っていません。
もちろん稀勢の里も狙っています。締めの九州場所が楽しみです。
2016年09月02日 (金)
【16/09/01 Nサトウ
江部先生はじめまして^^
江部先生はじめまして。38歳の男性です。
「京都の名医~」、「糖質制限の教科書」、「蒸し大豆のレシピ本」を購入してスーパー糖質制限食を実践してます。先生の書籍に出会えた事が今年1年の一番の収穫で、衝撃でした。
とにかく目から鱗な内容ばかりでとても興味深く拝読させて頂きました。
お蔭さまでスーパー糖質制限食を頑張って実践した結果、3か月で90kgあった体重が現在80kgに。
今のところ糖尿病は発症しておりませんが、予防の為に今後もスーパー糖質制限食を実践していく所存です。
さて早速ですが、一つ質問させて下さい。
私が摂取している日単位の大豆系の総量なのですが・・・。
・納豆2パック(1個50g)
・がんも(掌サイズ2個)
・蒸し大豆100g
と、いつも大体1日でこれだけの量を摂取してます。
これって大豆取り過ぎですかね?
と、言いますのも、 「蒸し大豆レシピ」本中の大豆イソフラボン絡みの記事(12ページ)で、サプリの取り過ぎがダメなのか、サプリじゃなくても取りすぎはダメなのか自分にはよく分からない箇所があって質問させて頂きました。
自分としては蒸し大豆(新発見!)おいしいし、蒸し大豆だけで300g/日くらい摂取したいのですが^^;
御多忙とは思いますが、アドバイス頂ければ幸いです^^
唐突な質問お許しください。】
こんにちは。
Nサトウさん から、大豆食品と大豆イソフラボンについて、コメント・質問を頂きました。
Nサトウさん、拙著のご購入、ありがとうございます。
90kg → 80kg
10kgの減量成功、良かったですね。
さて、私たち糖尿人が、糖質制限食を実践していると、大豆や大豆製品を、普通の人よりたくさん摂取することになりますので、今回は、大豆製品および大豆イソフラボンについて考えてみました。
健康食ブームで、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品が、多数出回っています。
それで「大豆イソフラボンって摂りすぎても大丈夫なの?」という疑問がでてきて、それに対して厚生労働省医薬食品局食品安全部が回答しています。
まず重要なことは、長い食経験を有する大豆、あるいは、大豆食品そのものの安全性が問題となっているのではありません。
即ち、糖質制限食で豆腐や納豆や大豆パンなどの摂取量が少々増えても、食品として大豆全体を摂取している限りは、その中に含まれている大豆イソフラボンに関しては、なんの問題もありません。
もっとも糖質制限食の場合、炭水化物以外の魚介類や肉類や野菜など食べ放題なので、大豆だけに頼る必要はありません。
私の考えとしては、大豆たんぱく(植物たんぱく)だけでなく、 動物性たんぱく質(魚や肉)もしっかり摂取するのが、人類の健康食と思います。
焼き肉、ステーキ、ハンバーグ、シチュー、すき焼き、オムレツ、焼き鳥、刺身、焼き魚・煮魚、豆腐、納豆、おでん、煮野菜、生野菜・・・いろいろ食べて美味しく楽しく糖質制限食実践といきたいですね。
一方、サプリメントとして、単体の大豆イソフラボンのみを上乗せして摂取する場合の安全性が問題となり、検討されたものです。
結論としては、食品安全委員会が平成18年にまとめた「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」では、1日当たりの大豆イソフラボンの摂取目安量の上限値を70~75mgとしそのうち、サプリメントや特定保健食品などで摂取する量は1日当たり30mgまでが望ましいとしています。
実際、閉経前の女性が、過剰に大豆イソフラボンを摂取すると血中ホルモン値が変動したり、月経周期が延長することなどがあるようです。
また、閉経後女性を対象に、大豆イソフラボンの錠剤(150mg/日)を5年間服用してもらった長期試験では、60カ月で子宮内膜増殖症の発症が、有意に高くなるという報告があったそうです。
**以下の厚生労働省医薬食品局食品安全部の報道資料をご参照ください。
報道発表資料
平成18年8月23日
厚生労働省医薬食品局食品安全部
大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aについて
1.食品安全委員会では、厚生労働省の依頼を受け、大豆イソフラボンを関与成分とする特定保健用食品の安全性評価を行い、平成18年5月、安全性評価結果の報告書として「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」を取りまとめました。
2.この大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価においては、これまでの長い食経験を有する大豆あるいは大豆食品そのものの安全性を問題としているのではなく、大豆イソフラボンのみを通常の食生活に上乗せして摂取する場合の安全性が検討されたものです。
3.厚生労働省では、大豆及び大豆由来食品等に関する正確な情報提供を行うため、大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aを作成し、厚生労働省のHPに掲載しています。また、食品安全委員会の評価結果を受け、平成18年8月、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針」を策定しました。
4.大豆及び大豆由来食品等は、良質のタンパク質源であるだけでなく、カルシウム等にも富む重要な栄養源ですので、厚生労働省では、広く国民の皆様に、食生活の中で他の食品と組み合わせてバランスよく食べることをお勧めしているところです。
(参考)
「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品安全性評価の基本的な考え方2006年5月」(別添1(PDF:4,130KB))
「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針」(PDF:253KB)
農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」ホームページ:http://www.maff.go.jp/syohi_anzen/isoflavon_qa.html
食品安全委員会「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」ホームページ:http://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html
江部康二
江部先生はじめまして^^
江部先生はじめまして。38歳の男性です。
「京都の名医~」、「糖質制限の教科書」、「蒸し大豆のレシピ本」を購入してスーパー糖質制限食を実践してます。先生の書籍に出会えた事が今年1年の一番の収穫で、衝撃でした。
とにかく目から鱗な内容ばかりでとても興味深く拝読させて頂きました。
お蔭さまでスーパー糖質制限食を頑張って実践した結果、3か月で90kgあった体重が現在80kgに。
今のところ糖尿病は発症しておりませんが、予防の為に今後もスーパー糖質制限食を実践していく所存です。
さて早速ですが、一つ質問させて下さい。
私が摂取している日単位の大豆系の総量なのですが・・・。
・納豆2パック(1個50g)
・がんも(掌サイズ2個)
・蒸し大豆100g
と、いつも大体1日でこれだけの量を摂取してます。
これって大豆取り過ぎですかね?
と、言いますのも、 「蒸し大豆レシピ」本中の大豆イソフラボン絡みの記事(12ページ)で、サプリの取り過ぎがダメなのか、サプリじゃなくても取りすぎはダメなのか自分にはよく分からない箇所があって質問させて頂きました。
自分としては蒸し大豆(新発見!)おいしいし、蒸し大豆だけで300g/日くらい摂取したいのですが^^;
御多忙とは思いますが、アドバイス頂ければ幸いです^^
唐突な質問お許しください。】
こんにちは。
Nサトウさん から、大豆食品と大豆イソフラボンについて、コメント・質問を頂きました。
Nサトウさん、拙著のご購入、ありがとうございます。
90kg → 80kg
10kgの減量成功、良かったですね。
さて、私たち糖尿人が、糖質制限食を実践していると、大豆や大豆製品を、普通の人よりたくさん摂取することになりますので、今回は、大豆製品および大豆イソフラボンについて考えてみました。
健康食ブームで、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品が、多数出回っています。
それで「大豆イソフラボンって摂りすぎても大丈夫なの?」という疑問がでてきて、それに対して厚生労働省医薬食品局食品安全部が回答しています。
まず重要なことは、長い食経験を有する大豆、あるいは、大豆食品そのものの安全性が問題となっているのではありません。
即ち、糖質制限食で豆腐や納豆や大豆パンなどの摂取量が少々増えても、食品として大豆全体を摂取している限りは、その中に含まれている大豆イソフラボンに関しては、なんの問題もありません。
もっとも糖質制限食の場合、炭水化物以外の魚介類や肉類や野菜など食べ放題なので、大豆だけに頼る必要はありません。
私の考えとしては、大豆たんぱく(植物たんぱく)だけでなく、 動物性たんぱく質(魚や肉)もしっかり摂取するのが、人類の健康食と思います。
焼き肉、ステーキ、ハンバーグ、シチュー、すき焼き、オムレツ、焼き鳥、刺身、焼き魚・煮魚、豆腐、納豆、おでん、煮野菜、生野菜・・・いろいろ食べて美味しく楽しく糖質制限食実践といきたいですね。
一方、サプリメントとして、単体の大豆イソフラボンのみを上乗せして摂取する場合の安全性が問題となり、検討されたものです。
結論としては、食品安全委員会が平成18年にまとめた「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」では、1日当たりの大豆イソフラボンの摂取目安量の上限値を70~75mgとしそのうち、サプリメントや特定保健食品などで摂取する量は1日当たり30mgまでが望ましいとしています。
実際、閉経前の女性が、過剰に大豆イソフラボンを摂取すると血中ホルモン値が変動したり、月経周期が延長することなどがあるようです。
また、閉経後女性を対象に、大豆イソフラボンの錠剤(150mg/日)を5年間服用してもらった長期試験では、60カ月で子宮内膜増殖症の発症が、有意に高くなるという報告があったそうです。
**以下の厚生労働省医薬食品局食品安全部の報道資料をご参照ください。
報道発表資料
平成18年8月23日
厚生労働省医薬食品局食品安全部
大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aについて
1.食品安全委員会では、厚生労働省の依頼を受け、大豆イソフラボンを関与成分とする特定保健用食品の安全性評価を行い、平成18年5月、安全性評価結果の報告書として「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」を取りまとめました。
2.この大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価においては、これまでの長い食経験を有する大豆あるいは大豆食品そのものの安全性を問題としているのではなく、大豆イソフラボンのみを通常の食生活に上乗せして摂取する場合の安全性が検討されたものです。
3.厚生労働省では、大豆及び大豆由来食品等に関する正確な情報提供を行うため、大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aを作成し、厚生労働省のHPに掲載しています。また、食品安全委員会の評価結果を受け、平成18年8月、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針」を策定しました。
4.大豆及び大豆由来食品等は、良質のタンパク質源であるだけでなく、カルシウム等にも富む重要な栄養源ですので、厚生労働省では、広く国民の皆様に、食生活の中で他の食品と組み合わせてバランスよく食べることをお勧めしているところです。
(参考)
「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品安全性評価の基本的な考え方2006年5月」(別添1(PDF:4,130KB))
「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針」(PDF:253KB)
農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」ホームページ:http://www.maff.go.jp/syohi_anzen/isoflavon_qa.html
食品安全委員会「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」ホームページ:http://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html
江部康二
2016年08月30日 (火)
こんにちは。
今朝はとても涼しくて、めっきり秋めいてきた京都です。
おかげでクーラーなしで、ぐっすり眠れました。
夏は、キリリと冷えた辛口の白ワイン、秋と言えば、やっぱり赤ワインですかね。
五訂日本食品標準成分表によれば、
赤ワイン100ml中に1.5gの糖質、
白ワイン100ml中に2.0gの糖質、
純米酒100ml中には3.6gの糖質、
純米吟醸酒だと100ml中に4.1gの糖質、
ビールは100ml中に3.1gの糖質、
がそれぞれ含まれています。
しかし、辛口ワインの血糖を上昇させる糖質はもっと少ないと考えられます。
以前ワインの糖質量に関してYukiさんから、とても詳しいコメントをいただきました。
ブログ読者の皆さんも是非この貴重な情報を共有して欲しいと思い再び記事にしました。
Yukiさんのコメントは大変長い力作です。
ネットでいろいろ調べていただいて、苦労されたことと思います。
Yukiさん、ありがとうございました。m(_ _)m
長編なのですが、興味がある方は、是非、Yukiさんの本編をお読みいただけば幸いです。
お忙しい方には以下、私が、Yukiさんのコメントの要約を作成してみました。
①
「甲府盆地にあるワイナリー"機山ワイン"のサイトによれば、
辛口ワインの場合、含まれるブドウ糖(グルコース)量は
ボトル一本(720ml)あたり最小で0.15g、最大で0.6g。
果糖(フルクトース)は最小0.75g、最大1.5g。」
これでおよその目処が立ちますね。
②
「栽培条件の異なるブドウ『甲州』を用いた
ワインの 個性化醸造技術の確立に関する研究(第3報)
www.yitc.go.jp/Houkoku/data/H19/kei14.pdf
表16 38試験区のワインの各種分析結果 から
平均値(g/L)
有機酸:クエン酸0.7 酒石酸2.1 リンゴ酸1.8 コハク酸1.0 乳酸0.3 酢酸0.3(合計6.2)
糖類:ブドウ糖0.0 果糖3.8(合計3.8)
グリセリン6.5(グリセリン?!そんな物が入っていたとは知りませんでした)
これらを合計すると、1リットル中に全部で16.5g。
その内ブドウ糖、果糖以外の炭水化物が12.7g。
他にタンニン、アントシアニンなどのポリフェノールが
赤ワインの場合平均230mg/100ml(2.3g/L)含まれているはずなので、
おおざっぱに、糖類以外の炭水化物15g、糖類は4g、全炭水化物19g。
結局、辛口赤ワインには100ml中1g以下の糖類しか含まれておらず、
その内多くが果糖、故に血糖値をほとんど上げないお酒ってことになるのでは?」
私もYukiさんの説に賛成です。
ワイン1リットル中に、炭水化物が合計19g。
ワイン1リットル中に、血糖値を上昇させる糖類(ワインなら果糖とブドウ糖)は4gていど。
残りの15gの炭水化物は血糖値を上昇させない、グリセリンや有機酸など。
結局、辛口赤ワインなどには、
100ml中0.4gの糖類しか含まれておらず、その多くが果糖。
果糖は血糖にはほとんど変わらない。果糖のGIは20。
このように考察してみると、辛口赤ワインはビールに比べれば全然安全ですね。
③
「五訂増補日本食品標準成分表 [第1章]-2-2
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/001/002.htm
> (4) 一般成分
> 4 炭水化物
> 炭水化物は、従来同様いわゆる『差し引き法による炭水化物』すなわち、
> 水分、たんぱく質、脂質及び灰分の合計(グラム)を100グラムから
> 差し引いた値で 示した。
つまり、 水、たんぱく質、脂質、灰分、以外の物はみんなまとめて炭水化物扱い。
結局は残り物の数合わせなので、糖質、食物繊維の含有量が低い食品の場合、
あんまり当てになる数字じゃなくなっていると思います。
> なお、硝酸イオン、アルコール、酢酸、タンニン、カフェイン及びテオブ
>ロミンを比較的多く含む食品や、加熱により二酸化炭素が多量に発生する
>食品 については、これらの含量も差し引いて炭水化物量を求めた。
そこで五訂日本食品標準成分表を見ると、ワインは備考欄にアルコール以外の記載がないので、
有機酸、ポリフェノール、糖アルコール、その他の微量な芳香成分などひっくるめて炭水化物にカウントされている思われます。
ワインは有機酸が多いのでこれが結構な%を占めてるはず。
あと、調べてみたらグリセリンがかなり含まれてて、ちょっとびっくりしました。
www.yitc.go.jp/Houkoku/data/H19/kei14.pdf
によると、これらのワインの平均値では、グリセリンが6.5g/L、有機酸は6.2g/L。
これだけでも100ml中1.3gになりますから、炭水化物カウントの過半数を占めてしまいます。」
炭水化物の定義が
『水分、たんぱく質、脂質及び灰分の合計(グラム)を100グラムから差し引いた値』
なので、五訂増補日本食品標準成分表の中の赤ワイン100g中に1.5gの炭水化物、食物繊維はゼロ。
1.5gからグリセリンと有機酸1.3gをひけば、血糖値を上昇させる果糖やブドウ糖などは0.2gと極微量ですね。
これなら血糖値はほとんど上昇しません。
④
「結論。
ことワインに関しては炭水化物量ではなく"残糖"、を指標にしましょう。
私の独断ですが、ワインに含まれる糖分以外の炭水化物(定義上の)による血糖上昇作用は、きっと、、、おそらく、、、たぶん、、、、、、無視してかまわないレベルだと思われます。
(本当かな?)
江部先生、いかがでしょうか?」
Yukiさん。
ありがとうございます。
【ワインに含まれている炭水化物のかなりの量を「グリセリン+有機酸」が占めていて、これらは血糖値を上昇させない。】
【ワインに含まれている「果糖+ブドウ糖」の"残糖"およびエリスリトール以外の糖アルコールなどが血糖値を上昇させるが、
極微量である。】
私もYukiさんの結論に賛成です。
少なくとも辛口ワインなら、赤でも白でも糖質制限食OK食品と言えそうですね。(⌒o⌒)v
なお、甘口ワインは"残糖"が、辛口の10倍くらいあるので、NGですね。
江部康二
☆☆☆
<Yukiさんのコメント>
10/03/05 Yuki
ワインの血糖上昇作用について
江部先生こんにちは、初めてコメントします。以前から、大変素晴らしいブログと思いよく読ませて頂いておりました。どうやら私の母が境界型の糖尿病で、いよいよ本気で糖質制限を始めました。今後もこのブログにお世話になって参ります。 非常に長文で失礼します。
ワインの血糖上昇作用、私も非常に気になります。 調べてみました。
まず、これです。
オーストラリアワインについてのページから
甘辛度の表示
>1リットル当たりの残糖量(RZ/l)
>トロッケン(辛口):残糖分は最大9 g RZ/l。
>ただし、糖度と酸度の差が2 g/l 未満であること。
>例えば、残糖8 g/lのワインが辛口に分類されるためには、
>酸度が6g/l以上でなければならない。
>エクストラトロッケン(極辛口):残糖分は4 g /l以下。
>ハルプトロッケン(中辛口):残糖分は12 g /l以下。
>リープリッヒ:(中甘口):残糖分は45 g /l以下。
>ズュース(甘口): 残糖分は45 g /l以上。
(http://www.winesfromaustria.jp/wl-quality.html)
残糖=ワイン中の、ブドウ糖+果糖です
更に、別のサイトをヒットしたので、そのデータで計算してみました。
甲府盆地にあるワイナリー"機山ワイン"のサイトから
"ワイナリー便り" vol.128 2007/2"
>ぶどう中の糖は酵母によって代謝され、アルコールを生産します。
>酵母はグルコースとフルクトースを同時にアルコール発酵に使用し
>ますが代謝に必要なエネルギーが異なるため、グルコースを消費す
>る速度の方がややフルクトースを消費する速度より早くなります。
>このため醗酵が進むにつれてフルクトースの割合が高くなってきま
>す( glucophillic)。
>一般に辛口ワインには 0.2-0.8 g/Lのグルコースと1-2 g/Lのフルクト
>ースが含まれており、超甘口ワインでは30 g/Lのグルコースと60 g/L
>のフルクトースが含まれていると言われています。
(http://www.kizan.co.jp/monthly/0702.html)
こういうのって、多分ソムリエには常識なんでしょうが、素人には初耳でした。もっとまとまったサイトがあれば良いんですが。
このデータによれば、辛口ワインの場合、含まれるブドウ糖(グルコース)量はボトル一本あたり最小で0.15g、最大で0.6g。
果糖(フルクトース)は最小0.75g、最大1.5g。
ワインに含まれている総炭水化物量が仮に15g/L(五訂日本食品標準成分表から赤ワインのデータ、100ml中に1.5g)として、ボトル一本で11.3g。ブドウ糖と果糖以外の炭水化物が9.2gから10.4g。
この、その他の炭水化物とはアラビノースやキシロースなど五炭糖(血糖上昇作用はあるのか?)、マルトースやキシリトール(血糖上昇が遅い)、更にはエリスリトール(血糖上昇を起こさない)、などでしょうから、血糖上昇はかなり穏やかになるはず。
仮に、これらが全部エリスリトール以外の糖アルコールだとして、ブドウ糖の半分の血糖上昇作用があるとすれば、ブドウ糖換算で4.5gから5.2g程度分の血糖上昇を引き起こす計算。
つまり、辛口赤ワインの場合、ブドウ糖が一本あたりおよそ4.7gから5.8g、果糖が0.75gから1.5g含まれているのと同じ。
果糖のグリセミック指数を20として、ブドウ糖の5分の1の血糖上昇作用とすれば、正常人の場合、辛口赤ワイン一本飲むとブドウ糖を4.9gから6.1g摂取したのと同じ血糖上昇が起きるはず。
2型糖尿病の場合、糖質1gあたりの血糖値上昇を3mgとして、ブドウ糖6.1gで約18.3mgの血糖値上昇。で、いいのかな~。
結構安全?
いや、ビール750ml(ワインボトル一本分)中、糖質23gよりははるかに安全だと思います。ビールはアルコール度数が低いので赤ワインと同じだけ酔っぱらおうと思ったらこの2~3倍飲まないとなりませんし。
これが正しければ、先生のおっしゃってた
「2009年05月10日 (日) またあくまでも体験と印象ていどですが、赤ワインをボトル1本飲んでも血糖値は上昇しないようです。ビールなどとは、はっきり違います。」
の謎が解けるのでは?
更に、ちょっと良い物を見つけました。
"株式会社 和田屋"のホームページから
低糖ドイツワインの説明文を引用。
1. 通常ワインには果汁由来のぶどう糖(グルコース)、果糖(フラクトース)の2種の糖分が含まれています。
2. ドイツ発低糖ワインは分子構造が小さく、体内にすぐ吸収され、血糖値を左右するぶどう糖の量を極力抑え、体内で分解される速度が比較的緩やかな果糖により「ドイツワインのおいしさ」の1つの要素である甘み成分を一定量残す事に成功したものです。
3. 製法的には、果汁を発酵させる際に、ぶどう糖の方が果糖より早くアルコール分解されるという特性を利用し、ある程度発酵が進んだ段階で遠心分離器及びフィルターによる澱引きを行い、果糖の割合を高めています。
4. 下記 基準を守ってつくられています。
■全糖リッター当り20g以下、そのうちぶどう糖は4g以下。
■酸化防止剤(亜硫酸塩)は150mg/L以下。
■アルコール度は12%以下。
■ワインとアルコールのカロリー値は、663/Lキロカロリー以下。
■総カロリーは740/Lキロカロリー以下。
(http://www.rakuten.co.jp/wadaya/138900/1863119/)
このサイトで掲示している栄養成分表示はどうやら間違っているらしいので、別のサイトでみつけた同じワインの栄養成分表示を出しておきます。
"テーニッヒャー・ザンクト・ミヒャエル・リースリング・カビネット・トロッケン"
白 やや辛口 アルコール度数 10% 産地 モーゼル 格付 カビネット
栄養成分表示<100ml当たり>
エネルギー61kcalたんぱく質0.2g 脂質0g 炭水化物2.0g ナトリウム2.2mg フラクトース0.41g グルコース0.29g
(http://www.newmenu.net/wine/detail/gekkeikan:10000093.html)
"モーゼルラント・ドルンフェルダー・トロッケン"
赤 ライトボディー アルコール度数 11% 産地 ドイツ 格付 ターフェルヴァイン
栄養成分表示<100ml当たり>
エネルギー76kcalたんぱく質0.1g 脂質 0g 炭水化物1.0g ナトリウム1.7mg フラクトース0.3g グルコース0.2g
(http://www.newmenu.net/wine/detail/gekkeikan:10000095.html)
かなり良さそうですよね?
10/03/05 Yuki
ワインの血糖上昇作用について追伸
あっと、追加です。
ワインに含まれるエリスリトールについて、
http://www.mfc.co.jp/erisuri/002.htm
技術情報|エリスリトール|主要製品紹介|三菱化学フーズ株式会社
赤ワイン 170mg/L (つまり0.017g/100ml)
白ワイン 280mg/L (つまり0.028g/100ml)
大した事ないですね。
キシリトールについては分かりませんでした。
先のコメントで、有機酸とかポリフェノールを忘れてました。これらは炭水化物として計算されてるはず。
何とか含有量が分からないかと探してみました。
栽培条件の異なるブドウ「甲州」を用いたワインの 個性化醸造技術の確立に関する研究(第3報) www.yitc.go.jp/Houkoku/data/H19/kei14.pdf 表16 38試験区のワインの各種分析結果 から
平均値(g/L)
有機酸:クエン酸0.7 酒石酸2.1 リンゴ酸1.8 コハク酸1.0 乳酸0.3 酢酸0.3(合計6.2)
糖類:ブドウ糖0.0 果糖3.8(合計3.8)
グリセリン6.5(グリセリン?!そんな物が入っていたとは知りませんでした)
これらを合計すると全部で16.5。
その内ブドウ糖、果糖以外の炭水化物が12.7。
他にタンニン、アントシアニンなどのポリフェノールが赤ワインの場合平均230mg/100ml(2.3g/L)含まれているはずなので、 おおざっぱに、糖類以外の炭水化物15g、糖類は4g、全炭水化物19g。
結局、辛口赤ワインには100ml中1g以下の糖質しか含まれておらず、その内多くが果糖、故に血糖値をほとんど上げないお酒ってことになるのでは?
10/03/05 Yuki
ワインの炭水化物カウント
ワインの炭水化物カウント
あ、糖質ポリスさんこんにちは、実はblogにお世話になってます。
どうも。
五訂増補日本食品標準成分表 [第1章]-2-2
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/001/002.htm
> (4) 一般成分
> 4 炭水化物
> 炭水化物は、従来同様いわゆる「差し引き法による炭水化物」すなわち、
> 水分、たんぱく質、脂質及び灰分の合計(グラム)を100グラムから
> 差し引いた値で 示した。
つまり、 水、たんぱく質、脂質、灰分、以外の物はみんなまとめて炭水化物扱い。 結局は残り物の数合わせなので、糖質、食物繊維の含有量が低い食品の場合、あんまり当てになる数字じゃなくなっていると思います。
> なお、硝酸イオン、アルコール、酢酸、タンニン、カフェイン及びテオブ
>ロミンを比較的多く含む食品や、加熱により二酸化炭素が多量に発生する
>食品 については、これらの含量も差し引いて炭水化物量を求めた。
そこで五訂日本食品標準成分表を見ると、ワインは備考欄にアルコール以外の記載がないので、有機酸、ポリフェノール、糖アルコール、その他の微量な芳香成分などひっくるめて炭水化物にカウントされている思われます。
ワインは有機酸が多いのでこれが結構な%を占めてるはず。 あと、調べてみたらグリセリンがかなり含まれてて、ちょっとびっくりしました。
www.yitc.go.jp/Houkoku/data/H19/kei14.pdf
によると、これらのワインの平均値では、グリセリンが6.5g/L、有機酸は6.2g/L。これだけでも100ml中1.3gになりますから、炭水化物カウントの過半数を占めてしまいます。
結局そういうことじゃないかと。
それに加えてポリフェノールが赤で平均0.23g/100ml、エリスリトールが0.017g/100ml。その他の微量成分の積み重ねがあって炭水化物カウントは増えるけれども、つまるところ平均的な人間が、「辛口だな~、糖分がないな~」と感じる、いわゆる辛口ワイン(含まれる糖分10g/L以下の定義で) の100m中に含まれる糖分は1g以下。
ブドウ果汁中の糖分はほぼ全部ブドウ糖と果糖です。start地点でのそれらの割合は半々。しかし、ワイン酵母はアルコール発酵に際してブドウ糖を優先的に使うので、赤だろうが白だろうがワインが辛口になるまで発酵させた場合、残糖として残るのはあらかた全部果糖になってしまいます。
したがって、トロッケン、セック、セッコなどEU法で保証された辛口スティルワインの場合、含まれるブドウ糖の量は0.5g/100ml以下(それどころかおそらく果糖の半分以下のはず。0.0g/100mlであることも多いはず。)であると確信を持って言うことができます。
そのため辛口ワインを飲んだときの血糖値上昇は更に起きにくくなっている、と。
何て素晴らしい、安心して飲めるじゃありませんか。
中口のスティルワイン(モワルー、ミルト、アマービレなど)の場合でも含まれるブドウ糖は1.5g/100ml以下ですね。ボトル一本飲んだらブドウ糖が最大で11.25g。ここまでくるとちょっとまずいかな。
結論。
ことワインに関しては炭水化物量ではなく"残糖"、を指標にしましょう。私の独断ですが、ワインに含まれる糖分以外の炭水化物(定義上の)による血糖上昇作用は、きっと、、、おそらく、、、たぶん、、、、、、無視してかまわないレベルだと思われます。(本当かな?)
江部先生、いかがでしょうか?
追伸
ワインの甘辛度による分類法(EUの場合)、見つけました。
http://blogs.dion.ne.jp/yottyokky/archives/8945908.html
(1)残糖
*残糖とは、発酵完了後あるいは人工的に発酵を中断させた時点のワイン中に残る1リットル当りの糖分のことである。EUの規定では、この残糖分の量により甘辛度が分類される。
(2)スティル・ワインの分類
※数値の重複部分はどちらの表示でも可。
*フランス
0~5g/l:ブリュット(Brut)
0~10g/l:セック(Sec)
10~20g/l:ドゥミ・セック(Demi-sec)
20~30g/l:モワルー(Moelleux)
30~40g/l:ドゥー(Doux)
40g/l~:リクルー(Liquoreux)
*ドイツ
0~10g/l:トロッケン(Trocken)
10~20g/l:ハルプトロッケン(Halptrocken)
20~30g/l:ミルト(Mild)
30~40g/l:リープリッヒ(Lieblich)
40g/l~:ズィス(S醇гs)
*イタリア
0~10g/l:セッコ(Secco)
10~20g/l:アッボカート(Abboccato)
20~30g/l:アマービレ(Amabile)
30~40g/l:ドルチェ(Dolce)
(3)スパークリング・ワインの分類
※数値の重複部分はどちらの表示でも可。
*フランス
0~3g/l:ブリュット・ナチュール(Brut Nature)
0~ 6g/l:エクストラ・ブリュット(Extra Brut)
0~15g/l:ブリュット(Brut)
12~20g/l:エクストラ・セック(Extra Sec)
17~33g/l:セック(Sec)
33~50g/l:ドゥミ・セック(Demi Sec)
50g/l~:ドゥー(Doux)
*ドイツ
0~6g/l:エクストラ・ブリュット(Extra Brut)
6~15g/l:ブリュット(Brut)
12~20g/l:エクストラ・トロッケン(Extra Trocken)
17~35g/l:トロッケン(Trocken)
35~50g/l:ハルプ・トロッケン(Halbtrocken)
50g/l~:ミルト(Mild)
*イタリア
0g/l:ドス・パセ(Dos Passe)
0~6g/l:エクストラ・ブリュット(Extra Brut)
0~15g/l:ブリュット(Brut)
12~20g/l:エクストラ・セッコ(Extra Secco)
17~35g/l:セッコ(Secco)
35~50g/l:セミ・セッコ(Semi Secco)
50g/l~:ドルチェ(Dolce)
今朝はとても涼しくて、めっきり秋めいてきた京都です。
おかげでクーラーなしで、ぐっすり眠れました。
夏は、キリリと冷えた辛口の白ワイン、秋と言えば、やっぱり赤ワインですかね。
五訂日本食品標準成分表によれば、
赤ワイン100ml中に1.5gの糖質、
白ワイン100ml中に2.0gの糖質、
純米酒100ml中には3.6gの糖質、
純米吟醸酒だと100ml中に4.1gの糖質、
ビールは100ml中に3.1gの糖質、
がそれぞれ含まれています。
しかし、辛口ワインの血糖を上昇させる糖質はもっと少ないと考えられます。
以前ワインの糖質量に関してYukiさんから、とても詳しいコメントをいただきました。
ブログ読者の皆さんも是非この貴重な情報を共有して欲しいと思い再び記事にしました。
Yukiさんのコメントは大変長い力作です。
ネットでいろいろ調べていただいて、苦労されたことと思います。
Yukiさん、ありがとうございました。m(_ _)m
長編なのですが、興味がある方は、是非、Yukiさんの本編をお読みいただけば幸いです。
お忙しい方には以下、私が、Yukiさんのコメントの要約を作成してみました。
①
「甲府盆地にあるワイナリー"機山ワイン"のサイトによれば、
辛口ワインの場合、含まれるブドウ糖(グルコース)量は
ボトル一本(720ml)あたり最小で0.15g、最大で0.6g。
果糖(フルクトース)は最小0.75g、最大1.5g。」
これでおよその目処が立ちますね。
②
「栽培条件の異なるブドウ『甲州』を用いた
ワインの 個性化醸造技術の確立に関する研究(第3報)
www.yitc.go.jp/Houkoku/data/H19/kei14.pdf
表16 38試験区のワインの各種分析結果 から
平均値(g/L)
有機酸:クエン酸0.7 酒石酸2.1 リンゴ酸1.8 コハク酸1.0 乳酸0.3 酢酸0.3(合計6.2)
糖類:ブドウ糖0.0 果糖3.8(合計3.8)
グリセリン6.5(グリセリン?!そんな物が入っていたとは知りませんでした)
これらを合計すると、1リットル中に全部で16.5g。
その内ブドウ糖、果糖以外の炭水化物が12.7g。
他にタンニン、アントシアニンなどのポリフェノールが
赤ワインの場合平均230mg/100ml(2.3g/L)含まれているはずなので、
おおざっぱに、糖類以外の炭水化物15g、糖類は4g、全炭水化物19g。
結局、辛口赤ワインには100ml中1g以下の糖類しか含まれておらず、
その内多くが果糖、故に血糖値をほとんど上げないお酒ってことになるのでは?」
私もYukiさんの説に賛成です。
ワイン1リットル中に、炭水化物が合計19g。
ワイン1リットル中に、血糖値を上昇させる糖類(ワインなら果糖とブドウ糖)は4gていど。
残りの15gの炭水化物は血糖値を上昇させない、グリセリンや有機酸など。
結局、辛口赤ワインなどには、
100ml中0.4gの糖類しか含まれておらず、その多くが果糖。
果糖は血糖にはほとんど変わらない。果糖のGIは20。
このように考察してみると、辛口赤ワインはビールに比べれば全然安全ですね。
③
「五訂増補日本食品標準成分表 [第1章]-2-2
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/001/002.htm
> (4) 一般成分
> 4 炭水化物
> 炭水化物は、従来同様いわゆる『差し引き法による炭水化物』すなわち、
> 水分、たんぱく質、脂質及び灰分の合計(グラム)を100グラムから
> 差し引いた値で 示した。
つまり、 水、たんぱく質、脂質、灰分、以外の物はみんなまとめて炭水化物扱い。
結局は残り物の数合わせなので、糖質、食物繊維の含有量が低い食品の場合、
あんまり当てになる数字じゃなくなっていると思います。
> なお、硝酸イオン、アルコール、酢酸、タンニン、カフェイン及びテオブ
>ロミンを比較的多く含む食品や、加熱により二酸化炭素が多量に発生する
>食品 については、これらの含量も差し引いて炭水化物量を求めた。
そこで五訂日本食品標準成分表を見ると、ワインは備考欄にアルコール以外の記載がないので、
有機酸、ポリフェノール、糖アルコール、その他の微量な芳香成分などひっくるめて炭水化物にカウントされている思われます。
ワインは有機酸が多いのでこれが結構な%を占めてるはず。
あと、調べてみたらグリセリンがかなり含まれてて、ちょっとびっくりしました。
www.yitc.go.jp/Houkoku/data/H19/kei14.pdf
によると、これらのワインの平均値では、グリセリンが6.5g/L、有機酸は6.2g/L。
これだけでも100ml中1.3gになりますから、炭水化物カウントの過半数を占めてしまいます。」
炭水化物の定義が
『水分、たんぱく質、脂質及び灰分の合計(グラム)を100グラムから差し引いた値』
なので、五訂増補日本食品標準成分表の中の赤ワイン100g中に1.5gの炭水化物、食物繊維はゼロ。
1.5gからグリセリンと有機酸1.3gをひけば、血糖値を上昇させる果糖やブドウ糖などは0.2gと極微量ですね。
これなら血糖値はほとんど上昇しません。
④
「結論。
ことワインに関しては炭水化物量ではなく"残糖"、を指標にしましょう。
私の独断ですが、ワインに含まれる糖分以外の炭水化物(定義上の)による血糖上昇作用は、きっと、、、おそらく、、、たぶん、、、、、、無視してかまわないレベルだと思われます。
(本当かな?)
江部先生、いかがでしょうか?」
Yukiさん。
ありがとうございます。
【ワインに含まれている炭水化物のかなりの量を「グリセリン+有機酸」が占めていて、これらは血糖値を上昇させない。】
【ワインに含まれている「果糖+ブドウ糖」の"残糖"およびエリスリトール以外の糖アルコールなどが血糖値を上昇させるが、
極微量である。】
私もYukiさんの結論に賛成です。
少なくとも辛口ワインなら、赤でも白でも糖質制限食OK食品と言えそうですね。(⌒o⌒)v
なお、甘口ワインは"残糖"が、辛口の10倍くらいあるので、NGですね。
江部康二
☆☆☆
<Yukiさんのコメント>
10/03/05 Yuki
ワインの血糖上昇作用について
江部先生こんにちは、初めてコメントします。以前から、大変素晴らしいブログと思いよく読ませて頂いておりました。どうやら私の母が境界型の糖尿病で、いよいよ本気で糖質制限を始めました。今後もこのブログにお世話になって参ります。 非常に長文で失礼します。
ワインの血糖上昇作用、私も非常に気になります。 調べてみました。
まず、これです。
オーストラリアワインについてのページから
甘辛度の表示
>1リットル当たりの残糖量(RZ/l)
>トロッケン(辛口):残糖分は最大9 g RZ/l。
>ただし、糖度と酸度の差が2 g/l 未満であること。
>例えば、残糖8 g/lのワインが辛口に分類されるためには、
>酸度が6g/l以上でなければならない。
>エクストラトロッケン(極辛口):残糖分は4 g /l以下。
>ハルプトロッケン(中辛口):残糖分は12 g /l以下。
>リープリッヒ:(中甘口):残糖分は45 g /l以下。
>ズュース(甘口): 残糖分は45 g /l以上。
(http://www.winesfromaustria.jp/wl-quality.html)
残糖=ワイン中の、ブドウ糖+果糖です
更に、別のサイトをヒットしたので、そのデータで計算してみました。
甲府盆地にあるワイナリー"機山ワイン"のサイトから
"ワイナリー便り" vol.128 2007/2"
>ぶどう中の糖は酵母によって代謝され、アルコールを生産します。
>酵母はグルコースとフルクトースを同時にアルコール発酵に使用し
>ますが代謝に必要なエネルギーが異なるため、グルコースを消費す
>る速度の方がややフルクトースを消費する速度より早くなります。
>このため醗酵が進むにつれてフルクトースの割合が高くなってきま
>す( glucophillic)。
>一般に辛口ワインには 0.2-0.8 g/Lのグルコースと1-2 g/Lのフルクト
>ースが含まれており、超甘口ワインでは30 g/Lのグルコースと60 g/L
>のフルクトースが含まれていると言われています。
(http://www.kizan.co.jp/monthly/0702.html)
こういうのって、多分ソムリエには常識なんでしょうが、素人には初耳でした。もっとまとまったサイトがあれば良いんですが。
このデータによれば、辛口ワインの場合、含まれるブドウ糖(グルコース)量はボトル一本あたり最小で0.15g、最大で0.6g。
果糖(フルクトース)は最小0.75g、最大1.5g。
ワインに含まれている総炭水化物量が仮に15g/L(五訂日本食品標準成分表から赤ワインのデータ、100ml中に1.5g)として、ボトル一本で11.3g。ブドウ糖と果糖以外の炭水化物が9.2gから10.4g。
この、その他の炭水化物とはアラビノースやキシロースなど五炭糖(血糖上昇作用はあるのか?)、マルトースやキシリトール(血糖上昇が遅い)、更にはエリスリトール(血糖上昇を起こさない)、などでしょうから、血糖上昇はかなり穏やかになるはず。
仮に、これらが全部エリスリトール以外の糖アルコールだとして、ブドウ糖の半分の血糖上昇作用があるとすれば、ブドウ糖換算で4.5gから5.2g程度分の血糖上昇を引き起こす計算。
つまり、辛口赤ワインの場合、ブドウ糖が一本あたりおよそ4.7gから5.8g、果糖が0.75gから1.5g含まれているのと同じ。
果糖のグリセミック指数を20として、ブドウ糖の5分の1の血糖上昇作用とすれば、正常人の場合、辛口赤ワイン一本飲むとブドウ糖を4.9gから6.1g摂取したのと同じ血糖上昇が起きるはず。
2型糖尿病の場合、糖質1gあたりの血糖値上昇を3mgとして、ブドウ糖6.1gで約18.3mgの血糖値上昇。で、いいのかな~。
結構安全?
いや、ビール750ml(ワインボトル一本分)中、糖質23gよりははるかに安全だと思います。ビールはアルコール度数が低いので赤ワインと同じだけ酔っぱらおうと思ったらこの2~3倍飲まないとなりませんし。
これが正しければ、先生のおっしゃってた
「2009年05月10日 (日) またあくまでも体験と印象ていどですが、赤ワインをボトル1本飲んでも血糖値は上昇しないようです。ビールなどとは、はっきり違います。」
の謎が解けるのでは?
更に、ちょっと良い物を見つけました。
"株式会社 和田屋"のホームページから
低糖ドイツワインの説明文を引用。
1. 通常ワインには果汁由来のぶどう糖(グルコース)、果糖(フラクトース)の2種の糖分が含まれています。
2. ドイツ発低糖ワインは分子構造が小さく、体内にすぐ吸収され、血糖値を左右するぶどう糖の量を極力抑え、体内で分解される速度が比較的緩やかな果糖により「ドイツワインのおいしさ」の1つの要素である甘み成分を一定量残す事に成功したものです。
3. 製法的には、果汁を発酵させる際に、ぶどう糖の方が果糖より早くアルコール分解されるという特性を利用し、ある程度発酵が進んだ段階で遠心分離器及びフィルターによる澱引きを行い、果糖の割合を高めています。
4. 下記 基準を守ってつくられています。
■全糖リッター当り20g以下、そのうちぶどう糖は4g以下。
■酸化防止剤(亜硫酸塩)は150mg/L以下。
■アルコール度は12%以下。
■ワインとアルコールのカロリー値は、663/Lキロカロリー以下。
■総カロリーは740/Lキロカロリー以下。
(http://www.rakuten.co.jp/wadaya/138900/1863119/)
このサイトで掲示している栄養成分表示はどうやら間違っているらしいので、別のサイトでみつけた同じワインの栄養成分表示を出しておきます。
"テーニッヒャー・ザンクト・ミヒャエル・リースリング・カビネット・トロッケン"
白 やや辛口 アルコール度数 10% 産地 モーゼル 格付 カビネット
栄養成分表示<100ml当たり>
エネルギー61kcalたんぱく質0.2g 脂質0g 炭水化物2.0g ナトリウム2.2mg フラクトース0.41g グルコース0.29g
(http://www.newmenu.net/wine/detail/gekkeikan:10000093.html)
"モーゼルラント・ドルンフェルダー・トロッケン"
赤 ライトボディー アルコール度数 11% 産地 ドイツ 格付 ターフェルヴァイン
栄養成分表示<100ml当たり>
エネルギー76kcalたんぱく質0.1g 脂質 0g 炭水化物1.0g ナトリウム1.7mg フラクトース0.3g グルコース0.2g
(http://www.newmenu.net/wine/detail/gekkeikan:10000095.html)
かなり良さそうですよね?
10/03/05 Yuki
ワインの血糖上昇作用について追伸
あっと、追加です。
ワインに含まれるエリスリトールについて、
http://www.mfc.co.jp/erisuri/002.htm
技術情報|エリスリトール|主要製品紹介|三菱化学フーズ株式会社
赤ワイン 170mg/L (つまり0.017g/100ml)
白ワイン 280mg/L (つまり0.028g/100ml)
大した事ないですね。
キシリトールについては分かりませんでした。
先のコメントで、有機酸とかポリフェノールを忘れてました。これらは炭水化物として計算されてるはず。
何とか含有量が分からないかと探してみました。
栽培条件の異なるブドウ「甲州」を用いたワインの 個性化醸造技術の確立に関する研究(第3報) www.yitc.go.jp/Houkoku/data/H19/kei14.pdf 表16 38試験区のワインの各種分析結果 から
平均値(g/L)
有機酸:クエン酸0.7 酒石酸2.1 リンゴ酸1.8 コハク酸1.0 乳酸0.3 酢酸0.3(合計6.2)
糖類:ブドウ糖0.0 果糖3.8(合計3.8)
グリセリン6.5(グリセリン?!そんな物が入っていたとは知りませんでした)
これらを合計すると全部で16.5。
その内ブドウ糖、果糖以外の炭水化物が12.7。
他にタンニン、アントシアニンなどのポリフェノールが赤ワインの場合平均230mg/100ml(2.3g/L)含まれているはずなので、 おおざっぱに、糖類以外の炭水化物15g、糖類は4g、全炭水化物19g。
結局、辛口赤ワインには100ml中1g以下の糖質しか含まれておらず、その内多くが果糖、故に血糖値をほとんど上げないお酒ってことになるのでは?
10/03/05 Yuki
ワインの炭水化物カウント
ワインの炭水化物カウント
あ、糖質ポリスさんこんにちは、実はblogにお世話になってます。
どうも。
五訂増補日本食品標準成分表 [第1章]-2-2
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/001/002.htm
> (4) 一般成分
> 4 炭水化物
> 炭水化物は、従来同様いわゆる「差し引き法による炭水化物」すなわち、
> 水分、たんぱく質、脂質及び灰分の合計(グラム)を100グラムから
> 差し引いた値で 示した。
つまり、 水、たんぱく質、脂質、灰分、以外の物はみんなまとめて炭水化物扱い。 結局は残り物の数合わせなので、糖質、食物繊維の含有量が低い食品の場合、あんまり当てになる数字じゃなくなっていると思います。
> なお、硝酸イオン、アルコール、酢酸、タンニン、カフェイン及びテオブ
>ロミンを比較的多く含む食品や、加熱により二酸化炭素が多量に発生する
>食品 については、これらの含量も差し引いて炭水化物量を求めた。
そこで五訂日本食品標準成分表を見ると、ワインは備考欄にアルコール以外の記載がないので、有機酸、ポリフェノール、糖アルコール、その他の微量な芳香成分などひっくるめて炭水化物にカウントされている思われます。
ワインは有機酸が多いのでこれが結構な%を占めてるはず。 あと、調べてみたらグリセリンがかなり含まれてて、ちょっとびっくりしました。
www.yitc.go.jp/Houkoku/data/H19/kei14.pdf
によると、これらのワインの平均値では、グリセリンが6.5g/L、有機酸は6.2g/L。これだけでも100ml中1.3gになりますから、炭水化物カウントの過半数を占めてしまいます。
結局そういうことじゃないかと。
それに加えてポリフェノールが赤で平均0.23g/100ml、エリスリトールが0.017g/100ml。その他の微量成分の積み重ねがあって炭水化物カウントは増えるけれども、つまるところ平均的な人間が、「辛口だな~、糖分がないな~」と感じる、いわゆる辛口ワイン(含まれる糖分10g/L以下の定義で) の100m中に含まれる糖分は1g以下。
ブドウ果汁中の糖分はほぼ全部ブドウ糖と果糖です。start地点でのそれらの割合は半々。しかし、ワイン酵母はアルコール発酵に際してブドウ糖を優先的に使うので、赤だろうが白だろうがワインが辛口になるまで発酵させた場合、残糖として残るのはあらかた全部果糖になってしまいます。
したがって、トロッケン、セック、セッコなどEU法で保証された辛口スティルワインの場合、含まれるブドウ糖の量は0.5g/100ml以下(それどころかおそらく果糖の半分以下のはず。0.0g/100mlであることも多いはず。)であると確信を持って言うことができます。
そのため辛口ワインを飲んだときの血糖値上昇は更に起きにくくなっている、と。
何て素晴らしい、安心して飲めるじゃありませんか。
中口のスティルワイン(モワルー、ミルト、アマービレなど)の場合でも含まれるブドウ糖は1.5g/100ml以下ですね。ボトル一本飲んだらブドウ糖が最大で11.25g。ここまでくるとちょっとまずいかな。
結論。
ことワインに関しては炭水化物量ではなく"残糖"、を指標にしましょう。私の独断ですが、ワインに含まれる糖分以外の炭水化物(定義上の)による血糖上昇作用は、きっと、、、おそらく、、、たぶん、、、、、、無視してかまわないレベルだと思われます。(本当かな?)
江部先生、いかがでしょうか?
追伸
ワインの甘辛度による分類法(EUの場合)、見つけました。
http://blogs.dion.ne.jp/yottyokky/archives/8945908.html
(1)残糖
*残糖とは、発酵完了後あるいは人工的に発酵を中断させた時点のワイン中に残る1リットル当りの糖分のことである。EUの規定では、この残糖分の量により甘辛度が分類される。
(2)スティル・ワインの分類
※数値の重複部分はどちらの表示でも可。
*フランス
0~5g/l:ブリュット(Brut)
0~10g/l:セック(Sec)
10~20g/l:ドゥミ・セック(Demi-sec)
20~30g/l:モワルー(Moelleux)
30~40g/l:ドゥー(Doux)
40g/l~:リクルー(Liquoreux)
*ドイツ
0~10g/l:トロッケン(Trocken)
10~20g/l:ハルプトロッケン(Halptrocken)
20~30g/l:ミルト(Mild)
30~40g/l:リープリッヒ(Lieblich)
40g/l~:ズィス(S醇гs)
*イタリア
0~10g/l:セッコ(Secco)
10~20g/l:アッボカート(Abboccato)
20~30g/l:アマービレ(Amabile)
30~40g/l:ドルチェ(Dolce)
(3)スパークリング・ワインの分類
※数値の重複部分はどちらの表示でも可。
*フランス
0~3g/l:ブリュット・ナチュール(Brut Nature)
0~ 6g/l:エクストラ・ブリュット(Extra Brut)
0~15g/l:ブリュット(Brut)
12~20g/l:エクストラ・セック(Extra Sec)
17~33g/l:セック(Sec)
33~50g/l:ドゥミ・セック(Demi Sec)
50g/l~:ドゥー(Doux)
*ドイツ
0~6g/l:エクストラ・ブリュット(Extra Brut)
6~15g/l:ブリュット(Brut)
12~20g/l:エクストラ・トロッケン(Extra Trocken)
17~35g/l:トロッケン(Trocken)
35~50g/l:ハルプ・トロッケン(Halbtrocken)
50g/l~:ミルト(Mild)
*イタリア
0g/l:ドス・パセ(Dos Passe)
0~6g/l:エクストラ・ブリュット(Extra Brut)
0~15g/l:ブリュット(Brut)
12~20g/l:エクストラ・セッコ(Extra Secco)
17~35g/l:セッコ(Secco)
35~50g/l:セミ・セッコ(Semi Secco)
50g/l~:ドルチェ(Dolce)
2016年07月27日 (水)
こんにちは。
精神科医師Aさんから興味深い情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。
日本外科代謝栄養学会において
「糖質制限食が腸管虚血再灌流後の生体反応に及ぼす影響について」
という発表がありました。
マウスを通常食群(N=30)と糖質制限食群群(N=29)の2群に分けそれぞれ食餌を3週間自由摂取。
食餌の組成内容は
通常食: 炭水化物65% 脂質16% アミノ酸19%、
糖質制限食: 炭水化物20% 脂質62% アミノ酸18%
両群のマウスの上腸間膜動脈をしばって、60分間血流を止めます。
その後、血流を再開して、生存率を調べた研究です。
再灌流後の生存率は
12時間後 通常食:糖質制限食群 80% vs 100%
24時間後 通常食:糖質制限食群 53% vs69%
48時間後 通常食:糖質制限食群 30% vs52%
いずれも糖質制限食群で良好で、
特に12時間での生存率では有意差を認めました。
再灌流後6時間の血清中アデイポネクチン値、レプチン値、 腸管組織のSOD活性値に有意差なしなので、なぜ糖質制限食マウスで生存率が改善したかはさらなる検討が必要とのことです。
いつも私が言っているように、マウスの主食は本来は穀物なので高脂肪食を食べさせるのは、かなりのハンディになるはずです。
それにも関わらず、結果は、糖質制限・高脂肪食マウスの生存率が改善ですので高脂肪・低糖質食そのものに、なんらかの生存率を向上させる効能があったと考えられます。
あくまでも仮説ですが、ケトン体高値が生存率改善に関与している可能性がありますね。
血中ケトン体値を調べてあれば、と思いました。
江部康二
『16/07/26 精神科医師A
日本外科代謝栄養学会(1)
外科と代謝・栄養50巻3号 2016年6月15日発行
日本外科代謝栄養学会第53回学術集会プログラム・予稿
P178
糖質制限食が腸管虚血再灌流後の生体反応に及ぼす影響について
○渡邊智記1)2)、深柄和彦2)、村越智2)、 守屋智之 1)、李基成2)、山本順 司1)、長谷和生1)、安原洋2)
1)防衛医科大学校外科 2)東京大学医学部附属病院手術部
【背景】
近年、肥満患者に対する糖質制限食(Low carbohydrate-high fat diet 以下LCHFD)による栄養介入が、体重減少・耐糖能の改善や循環器疾患リスクの軽減に有効と報告されている。しかし、高脂肪食による炎症反応増悪の報告もあり、LCHFD摂取患者が外科侵襲後に予期せぬ転帰をたどる危険性も否定できない。今回我々は、LCHFD の摂取が外科侵襲時に及ぼす影響に関してマウス腸管虚血再灌流モデルで検討した。
【方法】
1) マウスを通常食群 (以下N群)(N=30)とLCHFD群(以下LCHFD群)(N=29)の2群に分けそれぞれ食餌を3週間自由摂取させた。
食餌の組成内容は通常食: 炭水化物65% 脂質16% アミノ酸19%、LCHFD食: 炭水化物20% 脂質62% アミノ酸18%であった。その後麻酔下に上腸間膜動脈をクランプ、60分後にクランプを解除し再灌流後の生存を48時間観察した。
2) マウスをN 群(N=9)、LCHFD群(N=9)の2群に分け、1)と同様に3週間の自由摂取の後に60分間の腸管虚血を施行。再灌流後6時間に致死せしめ、血液・腸管組織を採取。血清中のアデイポサイトカイン値、腸管組織のSOD活性値を測定しおよび腸管傷害度をChiu分類にて評価した。
【結果】
1) 再灌流後の生存率はN群、LCHFD群の順に12時間(80% vs 100%)、24時間(53% vs 69%)、48時間(30% vs 52%)であり、いずれもLCHFD群で良好で特に12時間での生存率では有意差を認 めた (Fisher's exact test: p=0.02)。生存時間においてもLCHFD群で良好な傾向がみられた (log rank test: p=0.07 )
2) 再灌流後6時間での各項目の値はN群、LCHFD群の順にアデイポネクチン: 5.8±0.7μl/ml vs 5.9±0.6μl/ml、レプチン: 4.4±0.5ng/ml vs 4.3±0.4ng/ml、 SOD活性値: 27.8±5.6u/g vs 34.1±4.7u/gと同等で、Chiu分類による腸管障害度の評価もN群平均Grade2.3、LCHFD群 平均Grade2.2であった。
【結語】
糖質制限食の比較的長期間(3週間)の自由摂取は腸管虚血再灌流後の予後改善をもたらした。しかし、血清中のアデイポサイトカイン値、腸管組織中SOD活性、腸管傷害の程度は大きな違いを認めず、生存改善の機序についてはさらなる検討が必要である。』
精神科医師Aさんから興味深い情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。
日本外科代謝栄養学会において
「糖質制限食が腸管虚血再灌流後の生体反応に及ぼす影響について」
という発表がありました。
マウスを通常食群(N=30)と糖質制限食群群(N=29)の2群に分けそれぞれ食餌を3週間自由摂取。
食餌の組成内容は
通常食: 炭水化物65% 脂質16% アミノ酸19%、
糖質制限食: 炭水化物20% 脂質62% アミノ酸18%
両群のマウスの上腸間膜動脈をしばって、60分間血流を止めます。
その後、血流を再開して、生存率を調べた研究です。
再灌流後の生存率は
12時間後 通常食:糖質制限食群 80% vs 100%
24時間後 通常食:糖質制限食群 53% vs69%
48時間後 通常食:糖質制限食群 30% vs52%
いずれも糖質制限食群で良好で、
特に12時間での生存率では有意差を認めました。
再灌流後6時間の血清中アデイポネクチン値、レプチン値、 腸管組織のSOD活性値に有意差なしなので、なぜ糖質制限食マウスで生存率が改善したかはさらなる検討が必要とのことです。
いつも私が言っているように、マウスの主食は本来は穀物なので高脂肪食を食べさせるのは、かなりのハンディになるはずです。
それにも関わらず、結果は、糖質制限・高脂肪食マウスの生存率が改善ですので高脂肪・低糖質食そのものに、なんらかの生存率を向上させる効能があったと考えられます。
あくまでも仮説ですが、ケトン体高値が生存率改善に関与している可能性がありますね。
血中ケトン体値を調べてあれば、と思いました。
江部康二
『16/07/26 精神科医師A
日本外科代謝栄養学会(1)
外科と代謝・栄養50巻3号 2016年6月15日発行
日本外科代謝栄養学会第53回学術集会プログラム・予稿
P178
糖質制限食が腸管虚血再灌流後の生体反応に及ぼす影響について
○渡邊智記1)2)、深柄和彦2)、村越智2)、 守屋智之 1)、李基成2)、山本順 司1)、長谷和生1)、安原洋2)
1)防衛医科大学校外科 2)東京大学医学部附属病院手術部
【背景】
近年、肥満患者に対する糖質制限食(Low carbohydrate-high fat diet 以下LCHFD)による栄養介入が、体重減少・耐糖能の改善や循環器疾患リスクの軽減に有効と報告されている。しかし、高脂肪食による炎症反応増悪の報告もあり、LCHFD摂取患者が外科侵襲後に予期せぬ転帰をたどる危険性も否定できない。今回我々は、LCHFD の摂取が外科侵襲時に及ぼす影響に関してマウス腸管虚血再灌流モデルで検討した。
【方法】
1) マウスを通常食群 (以下N群)(N=30)とLCHFD群(以下LCHFD群)(N=29)の2群に分けそれぞれ食餌を3週間自由摂取させた。
食餌の組成内容は通常食: 炭水化物65% 脂質16% アミノ酸19%、LCHFD食: 炭水化物20% 脂質62% アミノ酸18%であった。その後麻酔下に上腸間膜動脈をクランプ、60分後にクランプを解除し再灌流後の生存を48時間観察した。
2) マウスをN 群(N=9)、LCHFD群(N=9)の2群に分け、1)と同様に3週間の自由摂取の後に60分間の腸管虚血を施行。再灌流後6時間に致死せしめ、血液・腸管組織を採取。血清中のアデイポサイトカイン値、腸管組織のSOD活性値を測定しおよび腸管傷害度をChiu分類にて評価した。
【結果】
1) 再灌流後の生存率はN群、LCHFD群の順に12時間(80% vs 100%)、24時間(53% vs 69%)、48時間(30% vs 52%)であり、いずれもLCHFD群で良好で特に12時間での生存率では有意差を認 めた (Fisher's exact test: p=0.02)。生存時間においてもLCHFD群で良好な傾向がみられた (log rank test: p=0.07 )
2) 再灌流後6時間での各項目の値はN群、LCHFD群の順にアデイポネクチン: 5.8±0.7μl/ml vs 5.9±0.6μl/ml、レプチン: 4.4±0.5ng/ml vs 4.3±0.4ng/ml、 SOD活性値: 27.8±5.6u/g vs 34.1±4.7u/gと同等で、Chiu分類による腸管障害度の評価もN群平均Grade2.3、LCHFD群 平均Grade2.2であった。
【結語】
糖質制限食の比較的長期間(3週間)の自由摂取は腸管虚血再灌流後の予後改善をもたらした。しかし、血清中のアデイポサイトカイン値、腸管組織中SOD活性、腸管傷害の程度は大きな違いを認めず、生存改善の機序についてはさらなる検討が必要である。』