インフルエンザワクチンに比し、麻疹ワクチンが有効な理由。関空麻疹集団発生。
こんにちは。

関西空港での麻疹の集団発生が、記憶に新しいです。

「関空を2016年7月31日に利用した誰かから広がったとみるのが有力だ」

関空を運営する関西エアポート幹部は、関空関係者らが次々と麻疹に感染する「関空ルート」の起点を7月末と推定しています。

国内で8月9~11日に、麻疹を発症した4人が全員、7月31日に関空にいたことがわかり、麻疹の潜伏期間(10~12日)から逆算すると、この時期に関空にいた「誰か」から感染したとみられるためです。

4人の内訳は1人が関西エアポートのグループ会社の従業員、残り3人は一般客で、麻疹の遺伝子型も同じ「H1」で中国やモンゴルで多い型でした。

結局、関空関連のはしか感染者は、計43人となりました。

そのほとんどが、関空の職員と関係者でした。

9月6日に感染が判明した女性従業員を最後に新たな患者は確認されず、大阪府は、集団感染は終息したと発表しました。

それにしても、麻疹ウィルス、ほんのちょっとしたすれ違いくらいで、すごい感染力です。
空気、飛沫(ひまつ)、接触で感染です。

血中抗体は麻疹ワクチン接種後約2週間から出現しますが、麻しんの患者と接触して緊急に発症を予防したい場合、接触後72時間以内に予防接種を受けることで発症を防御できる可能性があります。

ただし、100%ではないので、事前に予防接種を受けておくことが重要です。

さて、麻疹ワクチンはインフルエンザワクチンと違って、明確に感染防御にも流行予防にも有効です。

今回は、麻疹とインフルエンザの違いと、ワクチンの有効性の違いを検討してみます。

まず、厚生労働省のサイト(*)を読んでみました。

それによると、平成19・20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、平成21年以降10~20代の患者数は激減しました。

またウイルス分離・検出状況からは、平成22年11月以降は海外由来型のみであり、平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は見られません。

平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。

つまり、麻疹ワクチンを2回摂取することを徹底した結果、平成22年11月以降は、日本発の麻疹は消滅したわけで、劇的な効果を示しています。

そして、平成27年3月27日、WHOにより「日本が麻疹の排除状態」にあることが認定されたわけです。

毎年、流行を繰り返しているインフルエンザに対して、毎年インフルエンザワクチンを多くの日本人が接種していますが、流行は防げていません。

麻疹とインフルエンザで、何が違うのでしょう?

麻疹ワクチンもインフルエンザワクチンも、IgG抗体は作るけれど、粘膜面のIgA抗体は作れませんので、粘膜表面での感染防御は困難なのは同一なのに、何故効果にこれほどの差があるのでしょう?

検討してみます。

インフルエンザワクチンを注射することにより、IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。

従って、インフルエンザウィルスが、咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。

普通のインフルエンザウィルス(弱毒型)は、呼吸器と消化器でだけ生存できて、血中には入れません。

鳥インフルエンザの変異した強毒型(今のところなし)が危険なのは、血中に侵入できて、全身にウィルスがばらまかれるからです。

つまり血中に侵入した強毒型インフルエンザウィルスは、脳にも侵入してインフルエンザ脳炎を生じ得るので危険なのです。

従って強毒型インフルエンザウィルスに対しては、IgG抗体をつくる今のインフルエンザワクチンが一定有効な可能性がありますが、普通の弱毒型インフルエンザウィルスには、現行のインフルエンザワクチンは、感染防御に関しては、効果は期待できませんし、流行予防も困難なのです。

一方、麻疹は、麻疹ウイルスへの曝露から、発症まで7~14日間程度かかります。

その後カタル期(口腔粘膜症状と37~38度前後の風邪症状)が3~4日間続き、いったん解熱したあと半日で39~40度の発熱と全身の発疹がでます。

麻疹ウィルスが口腔粘膜から血中に入って全身にばらまかれるので、カタル期のあと「39~40度の発熱と全身の発疹」が出現すると考えられます。

麻疹ワクチンを接種している場合、麻疹ウィルスが口腔粘膜内に侵入したら、粘膜内の体液中のIgG抗体が、麻疹ウィルスと戦いを開始します。

従って、カタル期には、すでに麻疹ウィルスを駆逐すべく、IgG抗体が活躍しているので、血中に入るのを予防できる可能性が高いのです。

インフルエンザウィルスと違って発病までが長いし、血中に入るまでに一定の期間があるので、粘膜細胞内のIgG抗体が間に合うのです。

この時点で、ほぼ防衛成功と考えられます。

麻疹ウィルスが血中に入るのを防ぐことができれば、「39~40度の発熱と全身の発疹」が防げるので、感染源となることが激減して、流行もしないと考えられます。


結論です。

1)麻疹ウィルスは血中に侵入して全身に播種されるが、麻疹ワクチン接種によるIgG抗体がそれを防ぐ。従って高熱や発疹が予防できる。

2)インフルエンザワクチン接種によるIgG抗体では、感染防御は困難である。
 インフルエンザウィルスは血中に侵入できないので、麻疹ワクチンほどのIgG抗体による顕著な効果は期待できない。



江部康二



(*)厚生労働症のサイト
http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/

I 麻しんに関する基礎知識

I-1 麻しんとはどんな病気ですか?

「麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症として知られています。

麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、その感染力は非常に強いと言われています。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。また、麻しんウイルスは、ヒトからヒトへ感染すると言われています。

感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1000人に1人と言われています。

近年はワクチンの2回接種が行われ、麻しんに感染する方の人数は減っています。」


Ⅰ-2 麻しんはどうやって予防するのですか?

「麻しんは感染力が強く、空気感染もするので、手洗い、マスクのみで予防はできません。麻しんワクチンが有効な予防法といえるでしょう。また、麻しんの患者さんに接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンの予防接種をすることも効果的であると考えられています。」http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/

I-3  近年の麻しんの流行はどのような状況ですか?

「麻しんは毎年春から初夏にかけて流行が見られます。過去5年の推移を見ると、平成19・20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、平成21年以降10~20代の患者数は激減しました。患者発生の中心は0~1歳となった一方で、20歳以上の成人例の割合も増加しています。

またウイルス分離・検出状況からは平成22年11月以降は海外由来型のみであり、平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は見られません。

平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。

麻しんの流行状況等に関する情報は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページで確認することができます。国立感染症研究所感染症情報センターのホームページアドレスは、( http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html)です。」


I-4 なぜ、平成19・20年に10代から20代の人を中心に流行したのですか?

「かつては小児のうちに麻しんに感染し、自然に免疫を獲得するのが通常でした。しかし、麻しんワクチンの接種率の上昇で自然に感染する人は少なくなってきています。

10代から20代の人たちの中には、今まで一度も麻しんの予防接種を受けていない人がいます。そのうえ、そもそも予防接種は、一度で十分な免疫が獲得できるとは限らず、麻しんワクチンを一回接種しても、数%程度の人には十分な免疫がつかないことが知られています。そのような人達が蓄積していたものと考えられています。

さらに、麻しんワクチンの接種率の上昇に伴って、麻しんの患者数が減り、麻しんウイルスにさらされる機会が減少しました。そのため、幼少時にワクチンを1回のみ接種していた当時の10代から20代の人は免疫が強化されておらず、時間の経過とともに免疫が徐々に弱まって来ている人がいたことも原因の一つと考えられています。

Ⅰ-3で述べられているように、平成21年以降の10~20代の麻しんは激減し、患者発生の動向は変化しています。」


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