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過去の高血糖期間の消えない借金(高血糖の記憶)と心筋梗塞
こんにちは。

今日は「高血糖の記憶」のお話です。

すなわち、糖尿人において数年間以上血糖コントロールが不良であれば、血管の内皮に悪影響が出て、動脈硬化が生じます。

例えば、心臓の血管(冠動脈)が動脈硬化により狭くなって、つまりやすい状態になり、心筋梗塞や狭心症の危険があります。

これを「高血糖の記憶」といい、「消えない借金」のように生体内の動脈硬化が、ずっと残存して続きます。

つまり、数年間の高血糖期間のあと、継続して良好な血糖コントロールが得られても、血管合併症リスクは、その動脈硬化の部分では、消えないということです。

過去のコントロール不良の頃の消えない動脈硬化の借金が、「高血糖の記憶」です。

例えば、数年間HbA1c:8~9%台だったのが、スーパー糖質制限食開始で、速やかに血糖コントロール良好になり、その後はずっとHbA1c:6%台をキープしていても、当初の「高血糖の記憶」は、消えずに残っているということです。

私が担当する糖尿病患者さんで、上記のケースを経験しました。

『2007年8月13日初診時、64才男性。
高雄病院初診時、糖尿病診断後5年経過。
アマリール(1)2錠×1朝後 内服。
HbA1cは9.5%(NGSP)、随時血糖値371mg/dl。

高雄病院初診後、アマリールは中止して、スタンダード糖質制限食開始、
〔昼はグルコバイ(50)2錠とグルファスト(10)1錠〕を食直前内服
にて血糖値速やかに改善、11月15日にはHbA1c6.8%に改善。
そのままずっとHbA1c6.1~6.7%、コントロール良好を維持。

2009年4月16日、頸動脈エコーにて、左右にプラークあり。
2007年11月、コントロール良好となってから2年後、
2009年10月1日、「早足で歩くと胸痛(+)~(±)」という訴えがあり、
即、循環器内科に紹介。
翌日、循環器内科受診で負荷心電図陽性所見。
10月28日入院し冠動脈造影。
右冠動脈50-75%、左前下行枝99%、左回旋枝75%狭窄。
高血糖の記憶による冠動脈硬化のための労作性狭心症で左前下行枝にステントを挿入。

その後は、2016年1月まで6年間以上、狭心症再発なくHbA1cも6.0~6.5%ていど。』



私の患者さんのケースでは、スーパー糖質制限食を開始して2ヶ月後には血糖コントロール良好になっています。

しかし、その2年後に労作時狭心症を発症し、左前下行枝が99%狭窄しておりステントを挿入されました。

幸い、その後も糖質制限食でコントロール良好を保たれて、6年間以上発作もなく、年一回の循環器科の検査も良好です。
ステントは最初の1本だけです。

糖尿人が冠動脈狭窄で、狭心症や心筋梗塞を起こしてステントが挿入された場合、同じようにカロリー制限高糖質食を食べていると、食後高血糖や平均血糖変動幅増大を毎日生じて、1年後や2年後に、冠動脈の別の枝に再狭窄を起こしてまたステントが入ります。
これを繰り返して、ステントが4本、5本というケースがかなり多いのです。

この点、糖質制限食だと血糖コントロール良好で、食後高血糖や平均血糖変動幅増大もないので、再狭窄のリスクがなく、ステントが新たに挿入されることはないのです。

一方、現在、糖質制限食で血糖コントロール良好の糖尿人も血液・尿検査だけでなく、心臓や脳や眼底の検査(画像診断など)が必要ということです。

従って循環器内科、脳外科、眼科などで合併症のチェックが肝要です。

また、糖質制限食開始時に、まず眼科や循環器内科や脳外科で合併症のチェックをしておくと安心です。



江部康二


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット