2017年03月08日 (水)
こんにちは。
質の悪いHbA1cを見つけるには、どうしたらいいでしょう?
SU剤内服や、インスリン注射中で、糖質を食べていて、一見HbA1cはコントロール良好でも食後高血糖と空腹時低血糖が隠れている場合があります。
①食後1時間血糖値を測定する。
②グリコアルブミン(GA)を測定する。
食後高血糖の有無を見るには、①と②の二つの手段があります。
①は、食事開始後1時間の血糖値を測定することで、食後高血糖があれば、発見できます。
もちろん、食後高血糖発見のためには、糖質摂取が必要です。
朝8時に食事を開始したら、朝9時に測定すると食後1時間血糖値となります。
食後1時間血糖値が180mg/dlを超えていたら、要注意です。
グリコアルブミン(GA)は、180mg/dlを超える食後高血糖が1~2時間と短時間でもあれば、それを反映します。
GAの基準値は、11~16%です。
GAは過去2週間の平均血糖値を反映します。
GAは、20%未満でコントロール良好ですが、16%を超えていれば一定の食後高血糖があることになります。
14日間の入院でも、短期間で劇的に改善するので、高雄病院ではほとんどの糖尿病患者さんで、HbA1cとGAの両方を検査します。
HbA1cは、過去2ヶ月の平均血糖値を反映していますので、14日間の入院では、ほとんど改善がわかりません。
また食後1~2時間の高血糖が、1日3回あってもそれを拾い上げることができないので欠陥がある検査と言えます。
2型糖尿病だと、GAとHbA1cのどちらかを月に1回検査ということが、健康保険上のしばりです。
そうすると
A)<GA+早朝空腹時血糖値>
B)<HbA1c+早朝空腹時血糖値>
食後高血糖を見逃さないためには、
月に一回A)
のほうが
月に一回B)
よりも好ましいと言えます。
江部康二
質の悪いHbA1cを見つけるには、どうしたらいいでしょう?
SU剤内服や、インスリン注射中で、糖質を食べていて、一見HbA1cはコントロール良好でも食後高血糖と空腹時低血糖が隠れている場合があります。
①食後1時間血糖値を測定する。
②グリコアルブミン(GA)を測定する。
食後高血糖の有無を見るには、①と②の二つの手段があります。
①は、食事開始後1時間の血糖値を測定することで、食後高血糖があれば、発見できます。
もちろん、食後高血糖発見のためには、糖質摂取が必要です。
朝8時に食事を開始したら、朝9時に測定すると食後1時間血糖値となります。
食後1時間血糖値が180mg/dlを超えていたら、要注意です。
グリコアルブミン(GA)は、180mg/dlを超える食後高血糖が1~2時間と短時間でもあれば、それを反映します。
GAの基準値は、11~16%です。
GAは過去2週間の平均血糖値を反映します。
GAは、20%未満でコントロール良好ですが、16%を超えていれば一定の食後高血糖があることになります。
14日間の入院でも、短期間で劇的に改善するので、高雄病院ではほとんどの糖尿病患者さんで、HbA1cとGAの両方を検査します。
HbA1cは、過去2ヶ月の平均血糖値を反映していますので、14日間の入院では、ほとんど改善がわかりません。
また食後1~2時間の高血糖が、1日3回あってもそれを拾い上げることができないので欠陥がある検査と言えます。
2型糖尿病だと、GAとHbA1cのどちらかを月に1回検査ということが、健康保険上のしばりです。
そうすると
A)<GA+早朝空腹時血糖値>
B)<HbA1c+早朝空腹時血糖値>
食後高血糖を見逃さないためには、
月に一回A)
のほうが
月に一回B)
よりも好ましいと言えます。
江部康二
2017年03月07日 (火)
こんばんは。
今日は、『上質のHbA1c』と『質の悪いHbA1c』について考えてみます。
糖尿病合併症を予防するには、「平均血糖値」と「平均血糖変動幅」の2つの改善が大切です。
つまり、見かけ上の平均血糖値の改善(HbA1cの改善)だけでは、糖尿病合併症のリスクは防げないということです。
現実に毎年、
糖尿病腎症から16000人が透析導入、
糖尿病網膜症から3000人が失明、
糖尿病足病変から3000人が足の切断、
といった合併症の悲劇が生じています。
なぜ、合併症が減少しないのか考えてみます。
現在、ほとんどの病院で、糖尿病コントロールに関して
①HbA1c
②空腹時血糖値
①と②の検査データで評価しています。
日本糖尿病学会の「熊本宣言2013」においてHbA1cが7.0%未満ならコントロール良好となります。
そうすると、例えばHbA1cが6.4%なら、評価基準ではコントロール良好となります。
HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値を示しています。
弱点としては、同じHbA1c:6.4%で一見コントロール良好の人でも『上質のHbA1c』の場合と『質の悪いHbA1c』の場合の区別がつかないことです。
例えばHbA1c6.4%で一見コントロール良好のAさんとBさんがいたとします。
HbA1c:6.4%ということは、平均血糖値は137mgです。
<HbA1c✕28.7 - 46.7 = 平均血糖値>
Aさんは、薬なしでやや緩い糖質制限食を実践中で、食前血糖値が108mgくらい、食後血糖値のピークが166mgくらいだったとしたら、アバウトには平均血糖値は137mgくらいですからHbA1cは6.4%です。
Bさんは、糖質を摂取してインスリン注射をしていて、HbA1c6.4%というコントロール良好を見かけ上は保っています。
しかしその実態は、過剰のインスリンにより空腹時血糖値が52mgくらいになり、少し糖質が多いと食後血糖値は222mgくらいに上昇しますが、それでも平均血糖値は137mgです。
AさんとBさんは、HbA1cという「平均血糖値」の指標は同じですが、「平均血糖変動幅」に関しては、AさんはBさんに比し圧倒的に良好な結果となります。
近年、平均血糖変動幅増大が、もっとも酸化ストレスと相関していて、次が食後高血糖で、それぞれ心血管疾患のリスクとなるとされています。
また、低血糖も急性冠症候群(心筋梗塞や狭心症など)の大きなリスクとなることがわかっています。
従って、同じHbA1c6.4%でも、Bさんの場合は、<平均血糖変動幅の増大・食後高血糖・空腹時低血糖>というの3つのリスクが、日常的な糖尿病治療の中に隠れ潜んでいるわけで、心筋梗塞や糖尿病合併症のリスクも、常に存在していることとなります。
このように分析してみると、糖質制限食でHbA1c:6.4%を保っているAさんは、『良質のHbA1c』であり、糖質を摂取して、インスリンでHbA1c:6.4%を見かけ上保っているBさんは、実際には『質の悪いのHbA1c』ということがよくわかると思います。
この質の悪いHbA1cの存在が、合併症が減らない元凶と言えます。
『糖質を普通に摂取しながら、強化インスリン療法や経口剤でHbA1c:6.0%を目指した群が、7.5%程度のゆるい目標の群より総死亡率が増加した。』
という衝撃的な結果となったACCORD試験が、まさに『質の悪いHbA1c』の存在の証明と言えるでしょう。
スーパー糖質制限食なら、薬物に頼ることなく「平均血糖値」と「平均血糖変動幅」の両者をコントロール良好に保つことが、多くの糖尿人において可能です。
従って合併症も予防できることとなります。
江部康二
今日は、『上質のHbA1c』と『質の悪いHbA1c』について考えてみます。
糖尿病合併症を予防するには、「平均血糖値」と「平均血糖変動幅」の2つの改善が大切です。
つまり、見かけ上の平均血糖値の改善(HbA1cの改善)だけでは、糖尿病合併症のリスクは防げないということです。
現実に毎年、
糖尿病腎症から16000人が透析導入、
糖尿病網膜症から3000人が失明、
糖尿病足病変から3000人が足の切断、
といった合併症の悲劇が生じています。
なぜ、合併症が減少しないのか考えてみます。
現在、ほとんどの病院で、糖尿病コントロールに関して
①HbA1c
②空腹時血糖値
①と②の検査データで評価しています。
日本糖尿病学会の「熊本宣言2013」においてHbA1cが7.0%未満ならコントロール良好となります。
そうすると、例えばHbA1cが6.4%なら、評価基準ではコントロール良好となります。
HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値を示しています。
弱点としては、同じHbA1c:6.4%で一見コントロール良好の人でも『上質のHbA1c』の場合と『質の悪いHbA1c』の場合の区別がつかないことです。
例えばHbA1c6.4%で一見コントロール良好のAさんとBさんがいたとします。
HbA1c:6.4%ということは、平均血糖値は137mgです。
<HbA1c✕28.7 - 46.7 = 平均血糖値>
Aさんは、薬なしでやや緩い糖質制限食を実践中で、食前血糖値が108mgくらい、食後血糖値のピークが166mgくらいだったとしたら、アバウトには平均血糖値は137mgくらいですからHbA1cは6.4%です。
Bさんは、糖質を摂取してインスリン注射をしていて、HbA1c6.4%というコントロール良好を見かけ上は保っています。
しかしその実態は、過剰のインスリンにより空腹時血糖値が52mgくらいになり、少し糖質が多いと食後血糖値は222mgくらいに上昇しますが、それでも平均血糖値は137mgです。
AさんとBさんは、HbA1cという「平均血糖値」の指標は同じですが、「平均血糖変動幅」に関しては、AさんはBさんに比し圧倒的に良好な結果となります。
近年、平均血糖変動幅増大が、もっとも酸化ストレスと相関していて、次が食後高血糖で、それぞれ心血管疾患のリスクとなるとされています。
また、低血糖も急性冠症候群(心筋梗塞や狭心症など)の大きなリスクとなることがわかっています。
従って、同じHbA1c6.4%でも、Bさんの場合は、<平均血糖変動幅の増大・食後高血糖・空腹時低血糖>というの3つのリスクが、日常的な糖尿病治療の中に隠れ潜んでいるわけで、心筋梗塞や糖尿病合併症のリスクも、常に存在していることとなります。
このように分析してみると、糖質制限食でHbA1c:6.4%を保っているAさんは、『良質のHbA1c』であり、糖質を摂取して、インスリンでHbA1c:6.4%を見かけ上保っているBさんは、実際には『質の悪いのHbA1c』ということがよくわかると思います。
この質の悪いHbA1cの存在が、合併症が減らない元凶と言えます。
『糖質を普通に摂取しながら、強化インスリン療法や経口剤でHbA1c:6.0%を目指した群が、7.5%程度のゆるい目標の群より総死亡率が増加した。』
という衝撃的な結果となったACCORD試験が、まさに『質の悪いHbA1c』の存在の証明と言えるでしょう。
スーパー糖質制限食なら、薬物に頼ることなく「平均血糖値」と「平均血糖変動幅」の両者をコントロール良好に保つことが、多くの糖尿人において可能です。
従って合併症も予防できることとなります。
江部康二
2016年03月18日 (金)
【16/03/17 ココア
ヘモグロビン
江部先生、こんにちは。
いつも暖かくアドバイス頂き感謝しています。
さてスーパー実施中ですがヘモグロビンが5.5%からなかなか改善しません。現在は朝空腹時95、1時間値120以下、2時間値110以下に抑えてるのですが。
それとも空腹時90-100で5.5%は妥当な数字ですか?
糖質制限始める前、食後180あった時とヘモグロビンの値が同じで不思議です。
年齢と共に上がっていくので30台のうちにもう少し下げたいのですが。。。糖質制限すると5%位になると思っていました。
スーパー糖質制限、気長に続けます! 】
ココアさんから、糖質制限食をしているのに、HbA1cが5.5%で、糖質制限前と不変なのが不思議というコメントを頂きました。
ココアさん
朝空腹時95、1時間値120以下、2時間値110以下
HbA1c5.5%なら、平均血糖値は、111mg/dlです。
*<HbA1c×28.7>-46.7=平均血糖値
血糖変動も少なくて、とてもよいコントロールと思います。
糖質制限開始前は、食後血糖値180mgとやや高値です。
この頃は、夕方空腹時血糖値とか夜中の血糖値が50~60mgくらいの低血糖気味な状態があった可能性が高いです。
つまり血糖値の乱高下があったと考えられます。
そうでないとHbA1cが5.5%にはなりません。
平均血糖値の指標であるHbA1cは見かけ上は5.5%と良好でも、中身は血糖値の乱高下(平均血糖変動幅増大)を伴う質の悪いHbA1cです。
糖質制限後のHbA1c5.5%は血糖の乱高下がない質のいいHbA1cです。
糖尿病コントロールにおいて、「平均血糖値」だけではなく「平均血糖変動幅」の改善も大切です。
つまり、見かけ上の平均血糖値の改善(HbA1cの改善)だけでは、糖尿病合併症のリスクは防げないということです。
この『上質のHbA1c』という興味深い概念について、考えてみました。
HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値を示しています。
弱点としては、同じHbA1c:6.5%で一見コントロール良好の人でも『上質のHbA1c』の場合と『不良のHbA1c』の場合の区別がつかないことです。
例えばHbA1c6.5%でコントロール良好のAさんとBさんがいたとします。
HbA1c:6.5%ということは、平均血糖値は140mgくらいです。
Aさんは、薬なしでやや緩い糖質制限食を実践中で、食前血糖値が108mgくらい、食後血糖値が172mgくらいだったとしたら、アバウトには平均血糖値は140mgですからHbA1cは6.5%です。
Bさんは、糖質を摂取してインスリン注射をしていて、HbA1c6.5%というコントロール良好を見かけ上は保っています。
しかしその実態は、過剰のインスリンの時は血糖値が50mgくらいになり、糖質が多くてインスリンが足らないと食後血糖値は230mgくらいに上昇しますが、それでも平均血糖値は141mgです。
AさんとBさんは、HbA1cという「平均血糖値」の指標は同じですが、「平均血糖変動幅」は大きく異なっています。
平均血糖変動幅の増大は糖尿病合併症の大きなリスクとなりますし、低血糖も急性冠症候群(心筋梗塞や狭心症など)の大きなリスクとなることがわかっています。
従って、同じHbA1c6.5%でも、Bさんの場合は、<平均血糖変動幅の増大・食後高血糖・低血糖>というの3つのリスクが、日常的な糖尿病治療の中に隠れ潜んでいるわけで、心筋梗塞や糖尿病合併症のリスクも、常に存在していることとなります。
このように分析してみると、糖質制限食でHbA1c:6.5%を保っているAさんは、『良質のHbA1c』であり、糖質を摂取して、インスリンでHbA1c:6.5%を見かけ上保っているBさんは、実際には『不良のHbA1c』ということがよくわかると思います。
糖質を普通に摂取しながら、強化インスリン療法や経口剤でHbA1c:6.0%を目指した群が、7.5%程度のゆるい目標の群より総死亡率が増加したという衝撃的な結果となったACCORD試験が、まさに『不良のHbA1c』の存在の証明と言えるでしょう。
スーパー糖質制限食なら、薬物に頼ることなく「平均血糖値」と「平均血糖変動幅」の両者をコントロール良好に保つことが、多くの糖尿人において可能です。
また薬もなしなので低血糖も起こりません。
なお、グリコアルブミン検査なら、不良のHbA1cのときは、高値となるのでわかりやすいです。
江部康二
ヘモグロビン
江部先生、こんにちは。
いつも暖かくアドバイス頂き感謝しています。
さてスーパー実施中ですがヘモグロビンが5.5%からなかなか改善しません。現在は朝空腹時95、1時間値120以下、2時間値110以下に抑えてるのですが。
それとも空腹時90-100で5.5%は妥当な数字ですか?
糖質制限始める前、食後180あった時とヘモグロビンの値が同じで不思議です。
年齢と共に上がっていくので30台のうちにもう少し下げたいのですが。。。糖質制限すると5%位になると思っていました。
スーパー糖質制限、気長に続けます! 】
ココアさんから、糖質制限食をしているのに、HbA1cが5.5%で、糖質制限前と不変なのが不思議というコメントを頂きました。
ココアさん
朝空腹時95、1時間値120以下、2時間値110以下
HbA1c5.5%なら、平均血糖値は、111mg/dlです。
*<HbA1c×28.7>-46.7=平均血糖値
血糖変動も少なくて、とてもよいコントロールと思います。
糖質制限開始前は、食後血糖値180mgとやや高値です。
この頃は、夕方空腹時血糖値とか夜中の血糖値が50~60mgくらいの低血糖気味な状態があった可能性が高いです。
つまり血糖値の乱高下があったと考えられます。
そうでないとHbA1cが5.5%にはなりません。
平均血糖値の指標であるHbA1cは見かけ上は5.5%と良好でも、中身は血糖値の乱高下(平均血糖変動幅増大)を伴う質の悪いHbA1cです。
糖質制限後のHbA1c5.5%は血糖の乱高下がない質のいいHbA1cです。
糖尿病コントロールにおいて、「平均血糖値」だけではなく「平均血糖変動幅」の改善も大切です。
つまり、見かけ上の平均血糖値の改善(HbA1cの改善)だけでは、糖尿病合併症のリスクは防げないということです。
この『上質のHbA1c』という興味深い概念について、考えてみました。
HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値を示しています。
弱点としては、同じHbA1c:6.5%で一見コントロール良好の人でも『上質のHbA1c』の場合と『不良のHbA1c』の場合の区別がつかないことです。
例えばHbA1c6.5%でコントロール良好のAさんとBさんがいたとします。
HbA1c:6.5%ということは、平均血糖値は140mgくらいです。
Aさんは、薬なしでやや緩い糖質制限食を実践中で、食前血糖値が108mgくらい、食後血糖値が172mgくらいだったとしたら、アバウトには平均血糖値は140mgですからHbA1cは6.5%です。
Bさんは、糖質を摂取してインスリン注射をしていて、HbA1c6.5%というコントロール良好を見かけ上は保っています。
しかしその実態は、過剰のインスリンの時は血糖値が50mgくらいになり、糖質が多くてインスリンが足らないと食後血糖値は230mgくらいに上昇しますが、それでも平均血糖値は141mgです。
AさんとBさんは、HbA1cという「平均血糖値」の指標は同じですが、「平均血糖変動幅」は大きく異なっています。
平均血糖変動幅の増大は糖尿病合併症の大きなリスクとなりますし、低血糖も急性冠症候群(心筋梗塞や狭心症など)の大きなリスクとなることがわかっています。
従って、同じHbA1c6.5%でも、Bさんの場合は、<平均血糖変動幅の増大・食後高血糖・低血糖>というの3つのリスクが、日常的な糖尿病治療の中に隠れ潜んでいるわけで、心筋梗塞や糖尿病合併症のリスクも、常に存在していることとなります。
このように分析してみると、糖質制限食でHbA1c:6.5%を保っているAさんは、『良質のHbA1c』であり、糖質を摂取して、インスリンでHbA1c:6.5%を見かけ上保っているBさんは、実際には『不良のHbA1c』ということがよくわかると思います。
糖質を普通に摂取しながら、強化インスリン療法や経口剤でHbA1c:6.0%を目指した群が、7.5%程度のゆるい目標の群より総死亡率が増加したという衝撃的な結果となったACCORD試験が、まさに『不良のHbA1c』の存在の証明と言えるでしょう。
スーパー糖質制限食なら、薬物に頼ることなく「平均血糖値」と「平均血糖変動幅」の両者をコントロール良好に保つことが、多くの糖尿人において可能です。
また薬もなしなので低血糖も起こりません。
なお、グリコアルブミン検査なら、不良のHbA1cのときは、高値となるのでわかりやすいです。
江部康二
2015年12月29日 (火)
【15/12/28 ゆみ
いつもブログ拝読したおります。
看護師をしており、患者様の血糖値を測る時についでに自分の血糖値を測ってみましたら食後1時間で200を超えており、それから先生の著書を購入し糖質制限食を行っております。緩い制限で約半年経ちましたが数値が改善せず、初めて質問させて頂きます。
食前血糖値86
HbA1c 6.0→5.7
インスリン 2.8→1.4
グリコアルブミン15.6→17.1
HOMAβを計算すると21.9
HOMA-Rが0.3とかなり低値になります。
内服を開始した方がよいでしょうか?
現在48歳、瘦せ型です。
お忙しい中恐縮ですが、お時間ある時にアドバイス頂けると嬉しいです。】
ゆみさん。
拙著のご購入、ありがとうございます。
食後1時間の血糖値が200mg/dlを超えていたのなら、将来糖尿病になりやすいので、糖質制限食を開始されたのは正解と思います。
<緩い糖質制限食開始後、半年目のデータ>
食前血糖値86mg/dl (基準値60~110mg/dl未満
HbA1c 6.0→5.7 % (基準値:6.2未満)
インスリン 2.8→1.4 μU/ml
グリコアルブミン(GA)15.6→17.1% (基準値:11.8~16.0)
HbA1cは改善していますが、GAが少し悪化しています。
もっとも、GAのコントロール良好目標値は、20.0未満なのでコントロール良好ではあります。
インスリン基礎分泌の基準値は、検査機関により差がありますが、3~15μU/mlとか、5〜10μU/mL とかですので、ゆみさんは、やや低めでしょうか。
ただ、空腹時インスリン値が1.4 μU/ml と低値なのに空腹時血糖値は86mg/dlととてもよいデータです。
ということは、少ないインスリンの量で空腹時血糖値は正常に保たれているので、とても好ましい状態と言えます。
インスリンは人体に絶対に必要ですが、少量で済めば済むほど、人体には優しいのです。
実は、高インスリン血症には、発がんやアルツハイマー病のリスクがあるのです。
HbA1cが基準値内に入っているのに対して、GAが基準値を超えているのは、食後高血糖を反映していると考えられます。
緩い糖質制限食なら、1回の糖質量が、40gくらいあるので、食後1時間血糖値は、180~200mgを超えている可能性があります。
その後、食後2時間値が140mg/dl未満なら正常型です。
食後1~2時間だけの高血糖(180mg/dl以上)を、GAは鋭敏に反映しますが、HbA1cはほとんんど反映しません。
ゆみさんの場合、その差がでたものと考えられます。
私の最近のHbA1cは5.7%で、GAは13.2%です。
私は、スーパー糖質制限食なので、1回の食事の糖質量は、10~20g以下です。
それで食後高血糖が全くないので、GA値が、非常に良いのだと考えられます。
ゆみさんも、スーパー糖質制限食なら、内服薬なしでGAも基準値になると思いますよ。
HOMAβが21.9(40~60)と低値なので、インスリン分泌能はやや低下しています。
HOMAβは、負荷後2時間のインスリン分泌能と相関するとされています。
HOMA-Rは0.3(1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があり。)ですので、インスリン抵抗性は全く無くて正常です。
インスリン分泌指標
HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時の検査であるが経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関する。
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60
30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下。
インスリン使用中の患者には使えない。
インスリン抵抗性指標
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
江部康二
いつもブログ拝読したおります。
看護師をしており、患者様の血糖値を測る時についでに自分の血糖値を測ってみましたら食後1時間で200を超えており、それから先生の著書を購入し糖質制限食を行っております。緩い制限で約半年経ちましたが数値が改善せず、初めて質問させて頂きます。
食前血糖値86
HbA1c 6.0→5.7
インスリン 2.8→1.4
グリコアルブミン15.6→17.1
HOMAβを計算すると21.9
HOMA-Rが0.3とかなり低値になります。
内服を開始した方がよいでしょうか?
現在48歳、瘦せ型です。
お忙しい中恐縮ですが、お時間ある時にアドバイス頂けると嬉しいです。】
ゆみさん。
拙著のご購入、ありがとうございます。
食後1時間の血糖値が200mg/dlを超えていたのなら、将来糖尿病になりやすいので、糖質制限食を開始されたのは正解と思います。
<緩い糖質制限食開始後、半年目のデータ>
食前血糖値86mg/dl (基準値60~110mg/dl未満
HbA1c 6.0→5.7 % (基準値:6.2未満)
インスリン 2.8→1.4 μU/ml
グリコアルブミン(GA)15.6→17.1% (基準値:11.8~16.0)
HbA1cは改善していますが、GAが少し悪化しています。
もっとも、GAのコントロール良好目標値は、20.0未満なのでコントロール良好ではあります。
インスリン基礎分泌の基準値は、検査機関により差がありますが、3~15μU/mlとか、5〜10μU/mL とかですので、ゆみさんは、やや低めでしょうか。
ただ、空腹時インスリン値が1.4 μU/ml と低値なのに空腹時血糖値は86mg/dlととてもよいデータです。
ということは、少ないインスリンの量で空腹時血糖値は正常に保たれているので、とても好ましい状態と言えます。
インスリンは人体に絶対に必要ですが、少量で済めば済むほど、人体には優しいのです。
実は、高インスリン血症には、発がんやアルツハイマー病のリスクがあるのです。
HbA1cが基準値内に入っているのに対して、GAが基準値を超えているのは、食後高血糖を反映していると考えられます。
緩い糖質制限食なら、1回の糖質量が、40gくらいあるので、食後1時間血糖値は、180~200mgを超えている可能性があります。
その後、食後2時間値が140mg/dl未満なら正常型です。
食後1~2時間だけの高血糖(180mg/dl以上)を、GAは鋭敏に反映しますが、HbA1cはほとんんど反映しません。
ゆみさんの場合、その差がでたものと考えられます。
私の最近のHbA1cは5.7%で、GAは13.2%です。
私は、スーパー糖質制限食なので、1回の食事の糖質量は、10~20g以下です。
それで食後高血糖が全くないので、GA値が、非常に良いのだと考えられます。
ゆみさんも、スーパー糖質制限食なら、内服薬なしでGAも基準値になると思いますよ。
HOMAβが21.9(40~60)と低値なので、インスリン分泌能はやや低下しています。
HOMAβは、負荷後2時間のインスリン分泌能と相関するとされています。
HOMA-Rは0.3(1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があり。)ですので、インスリン抵抗性は全く無くて正常です。
インスリン分泌指標
HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時の検査であるが経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関する。
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60
30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下。
インスリン使用中の患者には使えない。
インスリン抵抗性指標
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
江部康二
2015年11月03日 (火)
こんにちは。
今回の記事は、グリコアルブミン(GA)とグリコヘモグロビン(HbA1c)を比較してみます。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
一般的知識では、
「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」
の平均血糖値を反映します。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の反映度合い>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードより、9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖に対しては、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、
およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.6%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.2%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.1%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データ(2015年9月)だと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.52:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
一方、〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
HbA1cが、5.6%(NGSP)
HbA1c5.2%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、
GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、
GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。
私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。
HbA1cより、有用なので、グリコアルブミン検査は今後、もっと普及して欲しいと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
今回の記事は、グリコアルブミン(GA)とグリコヘモグロビン(HbA1c)を比較してみます。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
一般的知識では、
「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」
の平均血糖値を反映します。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の反映度合い>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードより、9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖に対しては、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、
およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.6%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.2%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.1%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データ(2015年9月)だと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.52:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
一方、〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
HbA1cが、5.6%(NGSP)
HbA1c5.2%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、
GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、
GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。
私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。
HbA1cより、有用なので、グリコアルブミン検査は今後、もっと普及して欲しいと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二