2015年07月19日 (日)
こんにちは。
グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味ですが、実際の症例で検討してみました。
1)60代女性 時々糖質摂取あるがHbA1cは良好
HbA1c:6.4%(NGSP) JDS:6.0%
グリコアルブミン:20.0%
GA/HbA1c=3.33
2)50代男性 昼に麺類を食べるがHbA1cは良好
HbA1c:5.8%(NGSP) JDS:5.4%
グリコアルブミン:18.0%
GA/HbA1c=3.33
3)50代男性 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c:5.8%(NGSP) JDS:5.4%
グリコアルブミン:14.3%
GA/HbA1c=2.65
4)50代女性 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c:6.4%(NGSP) JDS:6.0%
グリコアルブミン:14.8%
GA/HbA1c=2.47
5)江部康二 65才 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
GA/HbA1c=2.48
1)と4)とを比べると、HbA1cは6.4%(NGSP)、6.0%(JDS)と同じですが、GA/HbA1cは、3.33と2.47と大きな差があります。
1)の女性は、同じ値のHbA1cでも、食後高血糖を生じていた質の良くないHbA1cということで、
4)の女性は、食後高血糖のない良質のHbA1cということがわかります。
同様に、2)3)5)の男性は、HbA1cは、5.8%(NGSP)、5.4%(JDS)と同じです。
しかし、GA/HbA1cは、3.33と2.47、2.48と大きな差があります。
2)の男性は同じ値のHbA1cでも食後高血糖を生じていた質の良くないHbA1cであり、
3)5)の男性は、食後高血糖のない良質のHbA1cということがわかります。
やはり、HbA1cだけでは食後高血糖を見逃してしまうので、グリコアルブミン(GA)も時々調べるのが正解と思われます。
グリコアルブミン(%)
17.0未満:優
17.0~20.0未満:良
20.0~21.0未満:不十分
21.0~24.0:不良
24.0以上:不可
HbA1c
6.0未満:血糖正常化を目指す際の目標
7.0未満:合併症予防のための目標
8.0未満:治療が困難なときの目標
江部康二
☆☆☆
以下は、2015年7月7日の、本ブログ記事の再掲です。
グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味
こんにちは。
今日は、グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味を考えてみます。
<グリコアルブミン(GA)とHbA1cの値の乖離>
2014年9月の採血で
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
というデータでした。
まあ日本糖尿病学会の目標値では、「合併症予防が7.0%未満」、「血糖正常化を目指す際は6.0%未満」ですから、HbA1cのコントロールは優秀です。
しかし基準値の上限の近くであり、メタボ健診の特定保健指導は5.6%以上なので、これには引っ掛ってしまいます。
一方、GAのデータは、もっともっと優秀で、基準値の下限に近いくらいです。
この時は、浅学にして、HbA1cとGAの値がなぜこれだけ乖離するのかよくわかりませんでした。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
一般的知識では、
「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」
の平均血糖値を反映します。
しかし、この知識では、HbA1cTとGAの乖離の説明がつきません。
それで少し、ネットで調べてみました。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の評価>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードの9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖にも、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データだと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.48:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
同じように
HbA1c5.8%(NGSP)
HbA1c5.4%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。
私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。
グリコアルブミン検査は今後、普及していくと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味ですが、実際の症例で検討してみました。
1)60代女性 時々糖質摂取あるがHbA1cは良好
HbA1c:6.4%(NGSP) JDS:6.0%
グリコアルブミン:20.0%
GA/HbA1c=3.33
2)50代男性 昼に麺類を食べるがHbA1cは良好
HbA1c:5.8%(NGSP) JDS:5.4%
グリコアルブミン:18.0%
GA/HbA1c=3.33
3)50代男性 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c:5.8%(NGSP) JDS:5.4%
グリコアルブミン:14.3%
GA/HbA1c=2.65
4)50代女性 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c:6.4%(NGSP) JDS:6.0%
グリコアルブミン:14.8%
GA/HbA1c=2.47
5)江部康二 65才 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
GA/HbA1c=2.48
1)と4)とを比べると、HbA1cは6.4%(NGSP)、6.0%(JDS)と同じですが、GA/HbA1cは、3.33と2.47と大きな差があります。
1)の女性は、同じ値のHbA1cでも、食後高血糖を生じていた質の良くないHbA1cということで、
4)の女性は、食後高血糖のない良質のHbA1cということがわかります。
同様に、2)3)5)の男性は、HbA1cは、5.8%(NGSP)、5.4%(JDS)と同じです。
しかし、GA/HbA1cは、3.33と2.47、2.48と大きな差があります。
2)の男性は同じ値のHbA1cでも食後高血糖を生じていた質の良くないHbA1cであり、
3)5)の男性は、食後高血糖のない良質のHbA1cということがわかります。
やはり、HbA1cだけでは食後高血糖を見逃してしまうので、グリコアルブミン(GA)も時々調べるのが正解と思われます。
グリコアルブミン(%)
17.0未満:優
17.0~20.0未満:良
20.0~21.0未満:不十分
21.0~24.0:不良
24.0以上:不可
HbA1c
6.0未満:血糖正常化を目指す際の目標
7.0未満:合併症予防のための目標
8.0未満:治療が困難なときの目標
江部康二
☆☆☆
以下は、2015年7月7日の、本ブログ記事の再掲です。
グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味
こんにちは。
今日は、グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味を考えてみます。
<グリコアルブミン(GA)とHbA1cの値の乖離>
2014年9月の採血で
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
というデータでした。
まあ日本糖尿病学会の目標値では、「合併症予防が7.0%未満」、「血糖正常化を目指す際は6.0%未満」ですから、HbA1cのコントロールは優秀です。
しかし基準値の上限の近くであり、メタボ健診の特定保健指導は5.6%以上なので、これには引っ掛ってしまいます。
一方、GAのデータは、もっともっと優秀で、基準値の下限に近いくらいです。
この時は、浅学にして、HbA1cとGAの値がなぜこれだけ乖離するのかよくわかりませんでした。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
一般的知識では、
「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」
の平均血糖値を反映します。
しかし、この知識では、HbA1cTとGAの乖離の説明がつきません。
それで少し、ネットで調べてみました。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の評価>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードの9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖にも、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データだと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.48:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
同じように
HbA1c5.8%(NGSP)
HbA1c5.4%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。
私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。
グリコアルブミン検査は今後、普及していくと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
2015年07月07日 (火)
こんにちは。
今日は、グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味を考えてみます。
<グリコアルブミン(GA)とHbA1cの値の乖離>
2014年9月の採血で
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
というデータでした。
まあ日本糖尿病学会の目標値では、「合併症予防が7.0%未満」、「血糖正常化を目指す際は6.0%未満」ですから、HbA1cのコントロールは優秀です。
しかし基準値の上限の近くであり、メタボ健診の特定保健指導は5.6%以上なので、これには引っ掛ってしまいます。
一方、GAのデータは、もっともっと優秀で、基準値の下限に近いくらいです。
この時は、浅学にして、HbA1cとGAの値がなぜこれだけ乖離するのかよくわかりませんでした。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
一般的知識では、
「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」
の平均血糖値を反映します。
しかし、この知識では、HbA1cTとGAの乖離の説明がつきません。
それで少し、ネットで調べてみました。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の評価>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードの9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖にも、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データだと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.48:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
同じように
HbA1c5.8%(NGSP)
HbA1c5.4%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。
私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。
グリコアルブミン検査は今後、普及していくと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
今日は、グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味を考えてみます。
<グリコアルブミン(GA)とHbA1cの値の乖離>
2014年9月の採血で
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
というデータでした。
まあ日本糖尿病学会の目標値では、「合併症予防が7.0%未満」、「血糖正常化を目指す際は6.0%未満」ですから、HbA1cのコントロールは優秀です。
しかし基準値の上限の近くであり、メタボ健診の特定保健指導は5.6%以上なので、これには引っ掛ってしまいます。
一方、GAのデータは、もっともっと優秀で、基準値の下限に近いくらいです。
この時は、浅学にして、HbA1cとGAの値がなぜこれだけ乖離するのかよくわかりませんでした。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
一般的知識では、
「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」
の平均血糖値を反映します。
しかし、この知識では、HbA1cTとGAの乖離の説明がつきません。
それで少し、ネットで調べてみました。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の評価>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードの9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖にも、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データだと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.48:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
同じように
HbA1c5.8%(NGSP)
HbA1c5.4%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。
私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。
グリコアルブミン検査は今後、普及していくと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
2015年07月03日 (金)
【15/07/03 misako
先生、いつもありがとうございます。
じつは、まさに
「それから、一定の糖尿病罹病期間があって、血糖コントロールが悪かったけれど、その時点では網膜症はないと言われていた人が、糖質制限食を開始して血糖コントロール良好となり、数ヶ月後眼底検査をしたら軽症単純網膜症が発見された、というようなことがまれにあります。 これは糖質制限食開始時点で既に潜在的な網膜症はあったのが、時間的経過で顕在化したもので、高血糖の記憶によるものと思われます。」
この通りとしか思えない出来事が自分の身にふりかかってきてしまいました。
DKA(糖尿病ケトアシドーシス)で入院した時の眼底検査で「異常なしです」と言われていたのですが、半年ぶりにさきほど検査したら「単純性網膜症、ただしまだレーザー治療をするほどではない」と言われました。
このごろ血糖コントロールはとてもいいですし、ランタスの注射量も8→2単位にまで減ってきているので、どんどん悪化していくことは無いと思いますが、「高血糖の記憶」の恐ろしさを改めて痛感いたしました。】
こんにちは。
misako さんから、高血糖の記憶についてコメントいただきました。
ありがとうございます。
misako さん、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)で入院されたとは大変でした。
糖尿病ケトアシドーシスは命に関わる重篤な病態です。
血糖コントロールが悪い状態がかなりの期間続いていて、とうとう発症したのだと思われます。
misako さんの入院時のHbA1cが15.0%でしたから、その可能性が高いです。
単純網膜症の初期なら、まだまだ大丈夫です。
ランタス2単位というごく少量のインスリンでHbA1cも6.0%未満でしたね。
例えば同じHbA1c6.0%だとしても、スーパー糖質制限食なら「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクのない、良質なHbA1cです。
一方、従来の糖尿病食(高糖質食)なら「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクを必ず生じるので、質の悪いHbA1cです。
このままスーパー糖質制限食を続けられたら、ランタスゼロも夢ではないですし、単純網膜症の進行は皆無です。
一番上手くいけば、単純網膜症が回復する可能性もありますよ。
江部康二
先生、いつもありがとうございます。
じつは、まさに
「それから、一定の糖尿病罹病期間があって、血糖コントロールが悪かったけれど、その時点では網膜症はないと言われていた人が、糖質制限食を開始して血糖コントロール良好となり、数ヶ月後眼底検査をしたら軽症単純網膜症が発見された、というようなことがまれにあります。 これは糖質制限食開始時点で既に潜在的な網膜症はあったのが、時間的経過で顕在化したもので、高血糖の記憶によるものと思われます。」
この通りとしか思えない出来事が自分の身にふりかかってきてしまいました。
DKA(糖尿病ケトアシドーシス)で入院した時の眼底検査で「異常なしです」と言われていたのですが、半年ぶりにさきほど検査したら「単純性網膜症、ただしまだレーザー治療をするほどではない」と言われました。
このごろ血糖コントロールはとてもいいですし、ランタスの注射量も8→2単位にまで減ってきているので、どんどん悪化していくことは無いと思いますが、「高血糖の記憶」の恐ろしさを改めて痛感いたしました。】
こんにちは。
misako さんから、高血糖の記憶についてコメントいただきました。
ありがとうございます。
misako さん、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)で入院されたとは大変でした。
糖尿病ケトアシドーシスは命に関わる重篤な病態です。
血糖コントロールが悪い状態がかなりの期間続いていて、とうとう発症したのだと思われます。
misako さんの入院時のHbA1cが15.0%でしたから、その可能性が高いです。
単純網膜症の初期なら、まだまだ大丈夫です。
ランタス2単位というごく少量のインスリンでHbA1cも6.0%未満でしたね。
例えば同じHbA1c6.0%だとしても、スーパー糖質制限食なら「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクのない、良質なHbA1cです。
一方、従来の糖尿病食(高糖質食)なら「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクを必ず生じるので、質の悪いHbA1cです。
このままスーパー糖質制限食を続けられたら、ランタスゼロも夢ではないですし、単純網膜症の進行は皆無です。
一番上手くいけば、単純網膜症が回復する可能性もありますよ。
江部康二
2015年02月25日 (水)
【15/02/25 うらら
HOMA-βの高値について
江部先生、はじめまして。
境界型で先生の本を一気購入し、blogも拝読、勉強してせっせと発症を防ぐ為に糖質制限食を実施中です。
今回は私ではなく24歳の娘についてちょっと疑問が有り、もしよろしければご享受頂けないものかと思い書き込ませて頂きました。
◆血液検査でHbA1cが5.5(NGSP)だったので24歳にしてこれは高いのでは?とブドウ糖負荷検査を受けさせました。
血糖値 インスリン
空腹時 88 8.4
30分 158 76.9
60分 107 93.9
120分 81 55.0
身長165cm、体重48kg
HDL-80 LDL-99 中性脂肪 46
計算してみると
HOMA-R 1.8
HOMA-β 120
インスリン分泌指数 0.9
…と、HOMA-Rも高め、HOMA-βにおいては「120%」と異常高値なのですが…
診察して貰ったのは糖尿病専門医の内科医師ですが、
「問題有りませんでした。今日の検査で飲んだモノの様な甘い飲み物とかあまり飲まないようにね」
と言われただけでした。
この場合はインスリン抵抗性アリで、境界型にはならないのでしょうか。
負荷検査を受ける前に、他の2軒の内科医でもHbA1cがこの年齢で高めですがと尋ねてみましたが「年齢関係なく6.2までは気にしなくていい」とあっさり帰されました。
何しろ若いので、このまま鵜呑みにして甘いものだけを避けていたらいいのか、軽い糖質制限を始めた方がいいのかとても困っています。
普段からサイダーの様な甘い飲料系は苦手なので飲んでいませんし痩せ型なのでこれ以上体重も落とせません。
大変お忙しい中お手を煩わせてしまう様で申し訳御座いませんが何かアドバイスを頂けたらとてもありがたいと思います。
よろしくお願いします。】
うららさん。
拙著のご購入ありがとうございます。
娘さん、24才でHbA1cが5.5%(NGSP)ということは、<HbA1c(NGSP)×28.7-46.7>で計算して、推定平均血糖値は111mgです。年齢的には確かに、やや高めですね。
2008年4月に始まった特定健診・特定保健指導(メタボ健診)のための基準において、HbA1c5.6%以上は特定保健指導の対象ですから、正常ギリギリのところです。
40才から70才がメタボ健診の対象ですので、24才の数値としては仰有るとおり少し心配です。
HOMA-R 1.8 ・・・1.6以下は正常。2.5以上はインスリン抵抗性あり。
なので、インスリン抵抗性傾向が少しありです。
HOMA-β 120 ・・・40~60%が基準値なので、かなり追加分泌インスリンが多いです。
インスリン分泌指数 0.9 ・・・0.4以上で正常です。
75g経口ブドウ糖負荷試験の結果はデータだけで見ると医師のいうとおり、正常型です。
しかし、120分値で81mgまで血糖が低下しているのに、インスリンはまだ55μU/mlと、結構分泌されているので、このあと機能性低血糖になりやすいパターンなので、そのことを知っておきましょう。
清涼飲料水や精製炭水化物の白米やパンやお菓子などは、機能性低血糖のリスクとなりやすいので注意が必要です。
うららさんが境界型なら、娘さんも将来境界型になりやすいと思います。
今から、つらくない範囲で糖質制限食を実践すれば、予防できます。
スーパー糖質制限食でなくて、緩やかな糖質制限食でも充分境界型発症予防になります。
またそれで、機能性低血糖のリスクも防げると思います。
スーパー糖質制限食なら、1回の食事の糖質量が10~20g以下が目安で、
緩やかな糖質制限食なら、1回の食事の糖質量が30~40gでOKです。
江部康二
インスリン分泌指標
HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関する。
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60%
30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下。
HAOMA-βはインスリン使用中の患者には使えない。
インスリン分泌指数
インスリン追加分泌のうち初期追加分泌能はインスリン分泌指数で見る。
Insulinogenic index(⊿IRI/⊿BS)
=(負荷後30分IRI値-負荷後IRI値)/ (負荷後30分血糖値-負荷前血糖値)
0.4以上は初期追加分泌能維持。2型では0.3以下が多い。
インスリン抵抗性指標
HOMA-R
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い
HOMA-βの高値について
江部先生、はじめまして。
境界型で先生の本を一気購入し、blogも拝読、勉強してせっせと発症を防ぐ為に糖質制限食を実施中です。
今回は私ではなく24歳の娘についてちょっと疑問が有り、もしよろしければご享受頂けないものかと思い書き込ませて頂きました。
◆血液検査でHbA1cが5.5(NGSP)だったので24歳にしてこれは高いのでは?とブドウ糖負荷検査を受けさせました。
血糖値 インスリン
空腹時 88 8.4
30分 158 76.9
60分 107 93.9
120分 81 55.0
身長165cm、体重48kg
HDL-80 LDL-99 中性脂肪 46
計算してみると
HOMA-R 1.8
HOMA-β 120
インスリン分泌指数 0.9
…と、HOMA-Rも高め、HOMA-βにおいては「120%」と異常高値なのですが…
診察して貰ったのは糖尿病専門医の内科医師ですが、
「問題有りませんでした。今日の検査で飲んだモノの様な甘い飲み物とかあまり飲まないようにね」
と言われただけでした。
この場合はインスリン抵抗性アリで、境界型にはならないのでしょうか。
負荷検査を受ける前に、他の2軒の内科医でもHbA1cがこの年齢で高めですがと尋ねてみましたが「年齢関係なく6.2までは気にしなくていい」とあっさり帰されました。
何しろ若いので、このまま鵜呑みにして甘いものだけを避けていたらいいのか、軽い糖質制限を始めた方がいいのかとても困っています。
普段からサイダーの様な甘い飲料系は苦手なので飲んでいませんし痩せ型なのでこれ以上体重も落とせません。
大変お忙しい中お手を煩わせてしまう様で申し訳御座いませんが何かアドバイスを頂けたらとてもありがたいと思います。
よろしくお願いします。】
うららさん。
拙著のご購入ありがとうございます。
娘さん、24才でHbA1cが5.5%(NGSP)ということは、<HbA1c(NGSP)×28.7-46.7>で計算して、推定平均血糖値は111mgです。年齢的には確かに、やや高めですね。
2008年4月に始まった特定健診・特定保健指導(メタボ健診)のための基準において、HbA1c5.6%以上は特定保健指導の対象ですから、正常ギリギリのところです。
40才から70才がメタボ健診の対象ですので、24才の数値としては仰有るとおり少し心配です。
HOMA-R 1.8 ・・・1.6以下は正常。2.5以上はインスリン抵抗性あり。
なので、インスリン抵抗性傾向が少しありです。
HOMA-β 120 ・・・40~60%が基準値なので、かなり追加分泌インスリンが多いです。
インスリン分泌指数 0.9 ・・・0.4以上で正常です。
75g経口ブドウ糖負荷試験の結果はデータだけで見ると医師のいうとおり、正常型です。
しかし、120分値で81mgまで血糖が低下しているのに、インスリンはまだ55μU/mlと、結構分泌されているので、このあと機能性低血糖になりやすいパターンなので、そのことを知っておきましょう。
清涼飲料水や精製炭水化物の白米やパンやお菓子などは、機能性低血糖のリスクとなりやすいので注意が必要です。
うららさんが境界型なら、娘さんも将来境界型になりやすいと思います。
今から、つらくない範囲で糖質制限食を実践すれば、予防できます。
スーパー糖質制限食でなくて、緩やかな糖質制限食でも充分境界型発症予防になります。
またそれで、機能性低血糖のリスクも防げると思います。
スーパー糖質制限食なら、1回の食事の糖質量が10~20g以下が目安で、
緩やかな糖質制限食なら、1回の食事の糖質量が30~40gでOKです。
江部康二
インスリン分泌指標
HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関する。
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60%
30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下。
HAOMA-βはインスリン使用中の患者には使えない。
インスリン分泌指数
インスリン追加分泌のうち初期追加分泌能はインスリン分泌指数で見る。
Insulinogenic index(⊿IRI/⊿BS)
=(負荷後30分IRI値-負荷後IRI値)/ (負荷後30分血糖値-負荷前血糖値)
0.4以上は初期追加分泌能維持。2型では0.3以下が多い。
インスリン抵抗性指標
HOMA-R
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い
2014年09月22日 (月)
こんばんは。
貧血があるとHbA1cの値は上がるのでしょうか?
それとも下がるのでしょうか?
貧血とHbA1cの関係を説明する前に、HbA1c(ヘモグロビンA1c)とは何かを考えてみましょう。
赤血球の中に含まれているヘモグロビンは、鉄を含む赤色の色素部分のヘムと、蛋白部分のグロビンでできています。
ヘモグロビンはグロビン部分の違いによりHbA、HbA2、HbFの3種類に分けられます。
成人では、HbAが97%を占めています。
血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、グリケーティッドヘモグロビンです。
これを略してグリコヘモグロビンですが、HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、検査により識別することができます。
HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。
このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。
HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られて血液中を循環し、寿命は約120日間ですから、HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。
より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3~4ヶ月で作られます。
従いまして、HbA1cの値は通常は過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映していると、考えればよいことになります。
さて、溶血性貧血、腎性貧血など、赤血球の寿命が短縮するような病態のときは、HbA1cの生産量がその分蓄積されずに減りますので、実際の値よりも低くなります。肝硬変に伴う脾機能亢進による貧血も赤血球の寿命が短縮します。
鉄欠乏性貧血の場合、鉄不足で貧血のときは、代償性に赤血球の寿命が延びるので、HbA1cは寿命が延びた分蓄積して、高値にシフトします。
鉄剤投与を開始して、鉄欠乏性貧血が回復している時期は、幼弱赤血球が増えて、赤血球の寿命が短くなり、HbA1cは低値となります。
従いまして、糖尿病腎症から透析になった糖尿人の場合は、腎性貧血で赤血球の寿命が短くなっているので、見かけ上はHbA1cが改善して、低下したようにみえますが、実態を反映していないことになります。
それで日本透析医学会では透析患者の血糖指標としては、グリコアルブミン(GA)を推奨しています。
血液中のタンパク質の一種であるアルブミンにブドウ糖がくっついたものをグリコアルブミン(GA)といい、GAは、約2週間の血糖状態をもっとも鋭敏に反映すると言われています。
そして、アルブミンは赤血球の寿命とは無関係なので、貧血にも影響されないので、日本透析医学会が推奨しているわけですね。
江部康二
貧血があるとHbA1cの値は上がるのでしょうか?
それとも下がるのでしょうか?
貧血とHbA1cの関係を説明する前に、HbA1c(ヘモグロビンA1c)とは何かを考えてみましょう。
赤血球の中に含まれているヘモグロビンは、鉄を含む赤色の色素部分のヘムと、蛋白部分のグロビンでできています。
ヘモグロビンはグロビン部分の違いによりHbA、HbA2、HbFの3種類に分けられます。
成人では、HbAが97%を占めています。
血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、グリケーティッドヘモグロビンです。
これを略してグリコヘモグロビンですが、HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、検査により識別することができます。
HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。
このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。
HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られて血液中を循環し、寿命は約120日間ですから、HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。
より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3~4ヶ月で作られます。
従いまして、HbA1cの値は通常は過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映していると、考えればよいことになります。
さて、溶血性貧血、腎性貧血など、赤血球の寿命が短縮するような病態のときは、HbA1cの生産量がその分蓄積されずに減りますので、実際の値よりも低くなります。肝硬変に伴う脾機能亢進による貧血も赤血球の寿命が短縮します。
鉄欠乏性貧血の場合、鉄不足で貧血のときは、代償性に赤血球の寿命が延びるので、HbA1cは寿命が延びた分蓄積して、高値にシフトします。
鉄剤投与を開始して、鉄欠乏性貧血が回復している時期は、幼弱赤血球が増えて、赤血球の寿命が短くなり、HbA1cは低値となります。
従いまして、糖尿病腎症から透析になった糖尿人の場合は、腎性貧血で赤血球の寿命が短くなっているので、見かけ上はHbA1cが改善して、低下したようにみえますが、実態を反映していないことになります。
それで日本透析医学会では透析患者の血糖指標としては、グリコアルブミン(GA)を推奨しています。
血液中のタンパク質の一種であるアルブミンにブドウ糖がくっついたものをグリコアルブミン(GA)といい、GAは、約2週間の血糖状態をもっとも鋭敏に反映すると言われています。
そして、アルブミンは赤血球の寿命とは無関係なので、貧血にも影響されないので、日本透析医学会が推奨しているわけですね。
江部康二