2014年02月18日 (火)
こんにちは。
14/02/14 滋賀井上 さんからコメントいただきましたが、
『これまで語られることのなかった糖質制限の副作用情報の開示と対処が必要』
と題して、自己暗示研究家さんが、アマゾンのサイトに「糖尿病治療のための! 糖質制限食パーフェクトガイド 」のレビューを書いておられます。
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4492045058/ref=cm_cr_dp_text?ie=UTF8&showViewpoints=0&sortBy=byRankDescending#R24U2N9VKIC7EL
「糖尿病治療のための! 糖質制限食パーフェクトガイド 」(東洋経済新報社)2013年の中に、『糖質制限の副作用情報の開示と対処』に関することが記載されてないので、☆☆☆☆☆の評価にしたかったけれど☆☆☆☆にしたとありました。
私も以前、この書評を拝見して、ごもっともなご意見と思いましたので、本ブログ記事においても、
「糖質制限食実践中に生じうる好ましくない症状・変化について」1)~7)
まで、記事を掲載しました。(2014/2/15の本ブログ記事をご参照ください)
自己暗示研究家さんは書評の中で
Dr.ケイトの記事
「Going Low-Carb too Fast May Trigger Thyroid Troubles and Hormone Imbalance」
「低糖質を速くやりすぎると甲状腺問題とホルモンのアンバランスの引き金を引く」
(1)
高糖質食(普通の日本人は糖質60~70%程度)から、いきなり厳しい低糖質食(しばしば50g未満)へ変えると、からだが飢餓状態に陥ったと判断し、甲状腺ホルモンT4を肝臓などで高活性のT3に変換するのではなく、無活性のリバースT3に変換する量を増やしてしまう。このため、甲状腺ホルモンT3が不足し、臨床的には甲状腺機能低下症と同じ症状が発生する。
について触れておられます。
(1)は自己暗示研究家さんが訳されたDr.ケイトの記事の要約です。
このDr.ケイトの仮説(1)は、そのまま摂取エネルギー不足による「Low T3 syndrome(低T3症候群)」のことです。
甲状腺機能低下症というのは完全に誤解です。(低T3症候群については、2014/2.17の本ブログ記事をご参照ください)
本当の飢餓状態(例えば神経性食欲不振症など)ではT3が低下しても、T4、TSHは正常です。
T3が低値で、T4、TSHとも正常な病態は「Low T3 syndrome」と呼ばれます。
糖質制限食実践で、しっかり標準必要エネルギーを摂取している場合にはそもそも「Low T3 syndrome」は生じません。
「糖質制限+カロリー制限」で、摂取エネルギー不足により本当に飢餓状態になれば「Low T3 syndrome」を生じる可能生があります。
飢餓や低栄養の場合、人体が代謝を低下させてエネルギー消費を抑えるための生体反応と考えられています。
これは甲状腺機能低下症ではありません。
甲状腺機能は正常なので、TSHも正常なのです。
Dr.ケイトやDr.バーンスタインが、「Low T3 syndrome(低T3症候群)」のことをご存じないのは不思議です。
本当の「甲状腺機能低下症」ならば、TSHが高値になります。
これが鑑別として一番参考になると思います。
TSHが、30~60ng/ml(基準値0.44~4.95ng/ml)くらいあって、甲状腺機能低下症なのに、無症状な人は結構おられます。
ちなみにTSH:10ng/ml以上は要治療とされています。
しかし例えば無症候性の甲状腺機能低下症は比較的一般的で、高齢女性、特に橋本甲状腺炎が基礎にある高齢女性の15%近くに生じるそうです。
つまり少々の甲状腺機能低下があっても、無症状のことも多いということですね。
結論としてスーパー糖質制限食で、しっかりエネルギー摂取している人が、3ヶ月や半年で甲状腺機能低下症になることはありえないと思います。
自己暗示研究家さんが書評の中で懸念されている「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ、生理不順、脱毛、生理が止まる、冷え、無気力、皮膚乾燥・・・」などの、甲状腺機能低下症のときに見られる症状が、糖質制限食実践中にもしあったとすれば、それは摂取エネルギー不足が原因と考えられます。
少なくとも高雄病院の糖尿病患者さんで、糖質制限食を実践中に「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ、生理不順、脱毛、生理が止まる、冷え、無気力、皮膚乾燥・・・」などの訴えがあった方々を、栄養指導したところ、全員が摂取エネルギー不足でした。
例えば、男性で1200kcal/日とか女性では1000kcal/日とかです。
当然のことですが、糖質制限食の範疇で摂取エネルギーを増やして、厚生労働省のいう標準必要エネルギーを満たして貰うと、皆さん「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ・・・」は速やかに改善しました。
なお、糖質制限食とは何の関係もなく、ただダイエットが目的で、摂取エネルギーが低カロリー過ぎても、
「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ、生理不順、脱毛、生理が止まる、冷え、無気力、皮膚乾燥・・・」
といった症状は出現すると思いますが、勿論これも甲状腺機能低下症ではありません。
この場合は「Low T3 syndrome(低T3症候群)」を呈する可能性はあります。
江部康二
14/02/14 滋賀井上 さんからコメントいただきましたが、
『これまで語られることのなかった糖質制限の副作用情報の開示と対処が必要』
と題して、自己暗示研究家さんが、アマゾンのサイトに「糖尿病治療のための! 糖質制限食パーフェクトガイド 」のレビューを書いておられます。
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4492045058/ref=cm_cr_dp_text?ie=UTF8&showViewpoints=0&sortBy=byRankDescending#R24U2N9VKIC7EL
「糖尿病治療のための! 糖質制限食パーフェクトガイド 」(東洋経済新報社)2013年の中に、『糖質制限の副作用情報の開示と対処』に関することが記載されてないので、☆☆☆☆☆の評価にしたかったけれど☆☆☆☆にしたとありました。
私も以前、この書評を拝見して、ごもっともなご意見と思いましたので、本ブログ記事においても、
「糖質制限食実践中に生じうる好ましくない症状・変化について」1)~7)
まで、記事を掲載しました。(2014/2/15の本ブログ記事をご参照ください)
自己暗示研究家さんは書評の中で
Dr.ケイトの記事
「Going Low-Carb too Fast May Trigger Thyroid Troubles and Hormone Imbalance」
「低糖質を速くやりすぎると甲状腺問題とホルモンのアンバランスの引き金を引く」
(1)
高糖質食(普通の日本人は糖質60~70%程度)から、いきなり厳しい低糖質食(しばしば50g未満)へ変えると、からだが飢餓状態に陥ったと判断し、甲状腺ホルモンT4を肝臓などで高活性のT3に変換するのではなく、無活性のリバースT3に変換する量を増やしてしまう。このため、甲状腺ホルモンT3が不足し、臨床的には甲状腺機能低下症と同じ症状が発生する。
について触れておられます。
(1)は自己暗示研究家さんが訳されたDr.ケイトの記事の要約です。
このDr.ケイトの仮説(1)は、そのまま摂取エネルギー不足による「Low T3 syndrome(低T3症候群)」のことです。
甲状腺機能低下症というのは完全に誤解です。(低T3症候群については、2014/2.17の本ブログ記事をご参照ください)
本当の飢餓状態(例えば神経性食欲不振症など)ではT3が低下しても、T4、TSHは正常です。
T3が低値で、T4、TSHとも正常な病態は「Low T3 syndrome」と呼ばれます。
糖質制限食実践で、しっかり標準必要エネルギーを摂取している場合にはそもそも「Low T3 syndrome」は生じません。
「糖質制限+カロリー制限」で、摂取エネルギー不足により本当に飢餓状態になれば「Low T3 syndrome」を生じる可能生があります。
飢餓や低栄養の場合、人体が代謝を低下させてエネルギー消費を抑えるための生体反応と考えられています。
これは甲状腺機能低下症ではありません。
甲状腺機能は正常なので、TSHも正常なのです。
Dr.ケイトやDr.バーンスタインが、「Low T3 syndrome(低T3症候群)」のことをご存じないのは不思議です。
本当の「甲状腺機能低下症」ならば、TSHが高値になります。
これが鑑別として一番参考になると思います。
TSHが、30~60ng/ml(基準値0.44~4.95ng/ml)くらいあって、甲状腺機能低下症なのに、無症状な人は結構おられます。
ちなみにTSH:10ng/ml以上は要治療とされています。
しかし例えば無症候性の甲状腺機能低下症は比較的一般的で、高齢女性、特に橋本甲状腺炎が基礎にある高齢女性の15%近くに生じるそうです。
つまり少々の甲状腺機能低下があっても、無症状のことも多いということですね。
結論としてスーパー糖質制限食で、しっかりエネルギー摂取している人が、3ヶ月や半年で甲状腺機能低下症になることはありえないと思います。
自己暗示研究家さんが書評の中で懸念されている「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ、生理不順、脱毛、生理が止まる、冷え、無気力、皮膚乾燥・・・」などの、甲状腺機能低下症のときに見られる症状が、糖質制限食実践中にもしあったとすれば、それは摂取エネルギー不足が原因と考えられます。
少なくとも高雄病院の糖尿病患者さんで、糖質制限食を実践中に「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ、生理不順、脱毛、生理が止まる、冷え、無気力、皮膚乾燥・・・」などの訴えがあった方々を、栄養指導したところ、全員が摂取エネルギー不足でした。
例えば、男性で1200kcal/日とか女性では1000kcal/日とかです。
当然のことですが、糖質制限食の範疇で摂取エネルギーを増やして、厚生労働省のいう標準必要エネルギーを満たして貰うと、皆さん「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ・・・」は速やかに改善しました。
なお、糖質制限食とは何の関係もなく、ただダイエットが目的で、摂取エネルギーが低カロリー過ぎても、
「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ、生理不順、脱毛、生理が止まる、冷え、無気力、皮膚乾燥・・・」
といった症状は出現すると思いますが、勿論これも甲状腺機能低下症ではありません。
この場合は「Low T3 syndrome(低T3症候群)」を呈する可能性はあります。
江部康二
| ホーム |