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コレステロール摂取基準撤廃。日本動脈硬化学会が声明
こんにちは。

A)
2015年5月1日
日本動脈硬化学会が、
「食事で体内のコレステロール値は大きく変わらない」との声明を発表しました。

B)
厚生労働省は、5年おきに改定する「食事摂取基準」の2015年版で、科学的根拠が得られなかったとしてコレステロールの摂取基準を撤廃しました。

C)
米農務省は「コレステロールは過剰摂取を懸念すべき栄養素ではない」として、摂取量を1日300ミリグラム未満に抑えていた食事指針を2015年見直す方向です。


A)B)C)のいずれもコレステロール摂取基準撤廃です。

これらを考慮すると今まで、日米共に長い間、コレステロールの摂取基準を設定して、摂取制限を推奨してきたことが、無意味だったと認めたわけですね。

まあ、『過ちては改むるに憚ること勿れ』ですから、とても良いこととは思います。

しかし米国ではずっと

「1日あたりのコレスレテロール摂取量上限は300mg。棒状のバター1本、または小さい卵2個、ステーキ300グラムに含まれる量」

を推奨し続けていたのはいったい何だったのでしょうね?

日本の厚生労働省もこれまでは、

「18歳以上の男性は1日当たり750mgム未満、女性は600mg未満の摂取基準値」

を推奨でした。

過ちを改めるには、かなり遅きに失したと思うのは私だけでしょうか?

厚生労働省は「食事からのコレステロールは一部に過ぎず、食事から多く取れば、体内で作る量を減らすなどの調整する仕組みがある」と解説。

いやはや、こんなことは、何十年も前から判明していたことと思うのですが・・・


江部康二



☆☆☆
以下毎日新聞のサイトから、一部抜粋
http://mainichi.jp/select/news/20150502k0000m040167000c.html

【コレステロール値:「食事で変わらず」動脈硬化学会が声明
毎日新聞 2015年05月02日 

日本人のコレステロール摂取

 取りすぎると動脈硬化などを招くとして悪者扱いされてきたコレステロールについて、日本動脈硬化学会(佐藤靖史理事長)は1日、「食事で体内のコレステロール値は大きく変わらない」との声明を発表した。厚生労働省も今年、5年ぶりに改定された「食事摂取基準」で、コレステロールの基準を撤廃しており、これを容認した形だ。動脈硬化予防には食事だけでなく、生活習慣や運動など包括的な対策が大切だとしている。

 コレステロールは脂質の一種で、食べ物からのほか肝臓でも作られる。動脈硬化学会は血中の「悪玉」のコレステロールが高いと心筋梗塞(こうそく)を起こしやすいとして警告する一方、日本脂質栄養学会は「数値が高い人はむしろ長生き」と主張し、論争が続いていた。

 厚労省はこれまで、18歳以上の男性は1日当たり750ミリグラム未満、女性は600ミリグラム未満の摂取基準値を設けていた。しかし5年おきに改定する「食事摂取基準」の2015年版で、科学的根拠が得られなかったとして基準を撤廃。卵の摂取量と心筋梗塞の発症リスクとの関連を調べた日本人約10万人の研究で「関連なし」との結果が出たことなどを例示し「食事からのコレステロールは一部に過ぎず、食事から多く取れば、体内で作る量を減らすなどの調整する仕組みがある」と解説した。

 米農務省も「コレステロールは過剰摂取を懸念すべき栄養素ではない」として、摂取量を1日300ミリグラム未満に抑えていた食事指針を今年見直す方向だ。

 こうした中、動脈硬化学会は1日の声明で「食べるのを制限しても血中の値が低下する人と、しにくい人がいて、個人差が大きい」と基準の撤廃に賛同した。悪玉コレステロールの値が高い人はコレステロールの摂取制限が推奨されるとする一方、食事や運動、生活習慣を全体的に改善することが必要とした。食事についても脂質だけを減らすのではなく「食物繊維を多く含む大豆製品や海藻、野菜類を増やすことが大切」と訴えた。

 生活習慣病に詳しいたちかわ総合健診センター(新潟県長岡市)の小田栄司センター長は「BMI(体格指数)が30を超える肥満の人は食事制限が心臓病予防に効果的だが、悪玉コレステロールが高くない人は、食事よりも運動の方が効果がある。指針などで一律に定めるのではなく、個々の状態に応じて考えることが大切だ」と話している。

下桐実雅子、永山悦子】


コレステロールが下がれば、血糖は上がる!スタチンで耐糖能悪化。
こんばんは。

2015/4/14のMT Proにおいて

「コレステロールが下がれば血糖は上がる!スタチンによる耐糖能障害悪化の理由も解明」

という記事が載りました。

2014年06月13日 (金)の本ブログ記事
「高強度スタチンは糖尿病リスク上昇に関連」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2994.html

でも取り上げましたが、スタチン剤で糖尿病リスク上昇というのは、もはや常識レベルになってきています。

例えば、「今日の治療薬」(南江堂)という、とてもポピュラーな毎年出る薬の本がありますが、2014年版の368ページに

「大規模臨床試験のメタアナリシスから、スタチンにより、糖尿病の新規発症がプラセボに比較して9%有意に上昇することが示された。また大規模な観察研究であるWHIでも、スタチン使用群で糖尿病の新規発症が多いことが示された」

と記載してあります。

スタチンというコレステロールを下げる薬には、横紋筋融解症、ミオパチー(筋肉痛)、肝障害などの副作用があることはよく知られていますが、糖尿病の新規発症にもしっかり留意する必要があるようです。

今回のJAMA(2015; 313: 1029-1036)の論文では、スタチン使用の有無にかかわらず、コレステロールの下降そのものが血糖の上昇と関連していることが示唆されました。

家族制高コレステロール血症の患者では、細胞内へのコレステロールの取り込みが低下しています。

著者らは、

「コレステロールの細胞取り込みを増加させるスタチンが糖尿病の有病率を上昇させるのであれば、コレステロールの細胞取り込みが低下している家族性高コレステロール血症患者では糖尿病の有病率が低下しているはずだ」

との仮説をたて、検証しました。

主解析の結果、粗解析(6万3,318人)では、家族性高コレステロール血症患者の1.75%(440人/2万5,137人)と対照者の2.93%(1,119人/3万8,183人)が2型糖尿病を有しており、家族性高コレステロール血症患者の2型糖尿病発症オッズ比は、0.62(95%CI 0.55~0.69)で有意に有病率が低かったことが判明しました。

調整後解析(3万7,233人)でも、家族性高コレステロール血症患者の1.44%(177人/1万2,300人)と対照者の3.26%(812人/2万4,898人)が2型糖尿病を有しており、家族性高コレステロール血症患者の2型糖尿病発症オッズ比は、0.49(95%CI 0.42~0.58)で有意に有病率が低かったことがわかりました。

さらに家族性高コレステロール血症患者において、コレステロール取り込みの障害が重度になるほど2型糖尿病の有病率は低くなっていたことも示されました。

これらにより、上記仮説は一定、証明されたと思われます。

「論文の著者らは、・・・中略・・・β細胞内にコレステロールが貯留することがβ細胞を障害させると考えている。」

「スタチンによる耐糖能の悪化は起こるべくして起こる主作用」


ということならば、スタチンで、コレステロールの細胞内への取り込みを増加させて、血中コレステロール値を下げることの意味そのものが問い直されて然るべきかと私は思います。

コレステロールを下げるべきか否かにおいて、「日本動脈硬化学会」と「日本脂質栄養学会」のバトルが続いています。

私自身は、「家族性の特殊例を除いては、高コレステロール血症にスタチンは不必要」という、日本脂質栄養学会の見解に賛成です。

コレステロールは、とかく悪者にされがちですが、実は、細胞膜や男性ホルモン、女性ホルモンなどの原料として人体に必要不可欠な大切な物質です。

脳の乾燥重量の65%は脂質であり、その1/4はコレステロールであり、脳においてもコレステロールは重要な構成物質なのです。

一般にLDLコレステロールは悪玉でHDLコレステロールは善玉という言い方をしますが、これも正確ではありません。

正常サイズのLDLは、中に約40%のコレステロールを含んでおり、それを末梢組織に運ぶ真っ当な役割を果たしています。

HDLは末梢組織の細胞で原料として使用されたあと、余ったコレステロールを回収して肝臓に運んでいます。 

即ち、LDLもHDLも人体に必要なものであり、日々良い仕事をしており逆に少なすぎたら困るわけです。

これらのことを普通に考察すると、

「むやみにスタチンでコレステロール値を下げることは如何なものか」

と考える次第です。


江部康二


☆☆☆
以下
2015/4/14MT Pro記事から一部抜粋
[2015年4月14日]ドクターズアイ・最新論文で考える日常臨床

コレステロールが下がれば血糖は上がる!
スタチンによる耐糖能障害悪化の理由も解明
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
研究の背景:なぜスタチンが血糖を上昇させるのか

 スタチンによる耐糖能障害の悪化は以前から報告され,その作用はスタチン全体の普遍的な作用であると考えられるようになった(Lancet 2010; 375: 735-742,JAMA 2011; 305: 2556-2564)。しかし,スタチンには多面的な作用があるとされることもあり,なぜスタチンが血糖を上昇させるのかについて,詳細な検討はなされてこなかったように思う。

 このたび,スタチン使用の有無にかかわらず,コレステロールの下降そのものが血糖の上昇と関連していることを示唆する論文がJAMA(2015; 313: 1029-1036)に掲載された。コレステロールと血糖値との複雑な関係を垣間見る思いであり,ご紹介したい。



研究のポイント1:家族性高コレステロール血症の病型別の2型糖尿病有病率の解析

 オランダ・アムステルダムの科学医学センターのKastelein氏らは,コレステロールの細胞取り込みを増加させるスタチンが糖尿病の有病率を上昇させるのであれば,コレステロールの細胞取り込みが低下している家族性高コレステロール血症患者では糖尿病の有病率が低下しているはずだとの仮説を立て,オランダの家族性高コレステロール血症スクリーニングプログラムのデータによりこの仮説を検証することとした。

 1994年に開始された家族性高コレステロール血症スクリーニングプログラムでは,家族性高コレステロール血症が疑われた患者でDNA検査が実施され,変異が確認された場合には第一親等の親族でも同様にDNA検査が実施され,また,第一親等の中でも家族性高コレステロール血症患者が見つかると,患者や第一親等は調査を受け,糖尿病の有無,投薬内容や臨床データが集められた。また,2004年以降は脂質プロファイルやリポプロテインの検討もなされた。

 本研究では,高コレステロール血症と糖尿病有病率の関係を知るために,家族性高コレステロール血症患者とそうした変異をもたない第一親等の人(対照者)とで,糖尿病有病率の比較がなされた(主解析)。また,家族性高コレステロール血症患者については, apoBの変異者とLDL受容体の変異者に分類したり,あるいは,LDL受容体の変異者をLDL受容体の完全欠損者と部分欠損者とに分けたりした解析(二次解析)もなされた。

研究のポイント2:家族性高コレステロール血症患者は糖尿病になりにくい

 1994年1月~2014年1月に6万3,385人にDNA検査が実施された。そのうち65人は家族性高コレステロール血症のホモ欠損者であるという理由で対象から除外され(私にはホモ欠損者を除外する理由が理解できない),2型糖尿病かどうかのデータが取られていなかった2人も除外して,計6万3,318人が主解析(粗解析)の対象となった。また,調整に必要な脂質プロファイル,BMI,喫煙状況,年齢のデータが不明な人が除外され,3万7,233人が主解析(調整後解析)の対象となった。そこからさらに前駆蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)変異者も除外され(私にはPCSK9変異者を除外する理由が理解できないが,おそらく56人とあまりに少数のためと思われる),3万7,177人が二次解析の対象となった。

 主解析の結果,粗解析(6万3,318人)では,家族性高コレステロール血症患者の1.75%(440人/2万5,137人)と対照者の2.93%(1,119人/3万8,183人)が2型糖尿病を有しており,家族性高コレステロール血症患者の2型糖尿病発症オッズ比は0.62(95%CI 0.55~0.69)で有意に有病率が低かった※1。

 調整後解析(3万7,233人)でも,家族性高コレステロール血症患者の1.44%(177人/1万2,300人)と対照者の3.26%(812人/2万4,898人)が2型糖尿病を有しており,家族性高コレステロール血症患者の2型糖尿病発症オッズ比は0.49(95%CI 0.42~0.58)で有意に有病率が低かった※2。

 また,家族性高コレステロール血症患者を遺伝子異常で分類すると,コレステロール取り込みの障害が重度になるほど2型糖尿病の有病率は低くなっていた(表)。


私の考察:細胞内コレステロール取り込みが耐糖能障害に関与

 以前,家族性高コレステロール血症患者と年齢・性をマッチさせた対照とで冠動脈硬化を比較した研究において,家族性高コレステロール血症患者での2型糖尿病有病率が低いことが報告されていた(Eur J Clin Invest 1997; 27: 366-373)。今回の研究は,この先行研究における二次的な解析の結果を,主解析として再確認したものであり,スタチン使用の有無にかかわらず,細胞のコレステロール取り込みの障害そのものが耐糖能と直接的に関連することを示すものである。

 論文の著者らは,β細胞をLDL(コレステロール)とともに培養すると死んでしまったり(Endocrinology 2002; 143: 3449-3453),インスリン分泌が障害されたりし(Endocrinology 2009; 150: 4521-4530),また,β細胞からのコレステロールの排泄障害でも同様のことが生じる(Nat Med 2007; 13: 340-347)ことから,β細胞内にコレステロールが貯留することがβ細胞を障害させると考えている。

 もちろん,本研究は横断研究であり,因果関係に結論を出すことはできないが,β細胞内のコレステロール代謝に注目する必要があることを知らしめた点で興味深く,また,スタチンによる耐糖能の悪化は起こるべくして起こる主作用であるとする点でも関心を集めるであろう。

 ただし,これまでも繰り返し語られてきたように,スタチン剤の使用は2型糖尿病患者を増やしても心血管死亡率を低下させるものであり,高コレステロール血症患者へのスタチンの投与を躊躇すべきではない(Lancet 2010; 375: 700-701,JAMA 2015; 313: 1016-1017)。

※1 山田註;分母を加算すると6万3,320人になるので,本来の6万3,318人と合致しない。2型糖尿病の有無が不明だったはずの2人が除外されずにカウントされていると思われる
※2 山田註;分母を加算すると3万7,198人になるので,本来の3万7,233人と合致しない。この不一致の理由は不明である

食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国
【15/02/20 福助

食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国

江部先生

米農務省と米保健福祉省も、コレステロールを多く含む食品の摂取制限を、政府ガイドラインの草案から削除するとのことです。

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『食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国』

          AFP=時事 2月20日(金)10時40分配信

米農務省(US Department of Agriculture、USDA)と米保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services、HHS)は19日、コレステロールを多く含む食品の摂取制限に関する文言が、米国人の栄養に関する新たな政府ガイドラインの草案から削除されることを明らかにした。

現行のガイドライン「Dietary guidelines for Americans(米国人のための食生活指針)」では、1日あたりのコレスレテロール推奨摂取量上限は300ミリグラムとされている。これは棒状のバター1本、または小さい卵2個、ステーキ300グラムに含まれる量にあたる。

これまでは、コレステロールの過剰摂取によってプラークが動脈に蓄積し、心臓発作や脳卒中リスクが高まると考えられていた。ただ、2015年版ガイドラインでは、食事から摂取のコレステロールと血清コレステロールの間に明確な関連を示す証拠がないとして、コレステロール摂取の上限値が撤廃される可能性が出てきた。

「health.gov/dietaryguidelines」で閲覧できる草案には「コレステロールは過剰消費が問題となる栄養素ではない」とある。栄養、医療、公衆衛生の米専門家ら14人がこの新たな草案をまとめた。

新たなガイドラインをめぐっては、45日間の意見聴取期間が設けられた後、3月24日にメリーランド(Maryland)州ベセスダ(Bethesda)で開催される公開会合で討議にかけられる予定。

一方、コレステロールとセットで語られることの多い飽和脂肪については、より厳しい摂取量の制限が求められた。

2010年の指針では、飽和脂肪からのカロリーを一日当たりの全カロリー摂取量の10%とするとしていたが、草案では同8%とされた。

ニューヨーク(New York)にあるマウントサイナイ医科大学ベス・イスラエル病院(Mount Sinai Beth Israel hospital)のレベッカ・ソロモン(Rebecca Solomon)氏(臨床栄養学)は、「長い間、(体内の)コレステロールレベルについては、食事性のコレステロールではなく、遺伝や飽和脂肪の過剰摂取が主要な原因であることは分かっていた」と述べ、このような形で認識されて嬉しいと続けた。【翻訳編集】 AFPBB News 】

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こんばんは。

福助さんから、大変興味深いヤフーニュースの記事についてコメントをいただきました。
ありがとうございます。

ヤフーニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150220-00000007-jij_afp-int
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『食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国』

糖質制限食は、高コレステロール食ですから、追い風ですね。

おそらく、数年以上長期に経過すれば、高コレステロール食でも低コレステロール食でも肝臓が生産を調整するので、コレステロール値は均等化するということなのでしょう。

一方、スーパー糖質制限食開始前に

156cm。 68kg、BMI:27.9 
元々菜食+魚で・・・コレステロールは基準値内。

であった女性がスーパー糖質制限食実践、半年後に

55.7kg、BMI:22.9。
TC:502mg/dl  TG:66mg/dl  HDL-C:104mg/dl  LDL-C:384mg/dl

になりゼチーア投与で1ヶ月後に
TC:221mg/dl  TG:142mg/dl  HDL-C:90mg/dl  LDL-C:102mg/dl

となったケースを経験しましたので、短期的には、食材のコレステロールが血清コレステロールに影響を与える可能性はあると思います。


「飽和脂肪からのカロリーを一日当たりの全カロリー摂取量の10%とするとしていたが、草案では同8%とされた。」

とのことですが、脂肪悪玉説を否定する以下の信頼度の高い論文があります。

米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において

「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」

という報告がなされています。

米国医師会雑誌は、インパクトファクターが高く、ニューイングランドジャーナルに次ぐ権威有る医学雑誌です。

RCT研究論文ですので、エビデンスレベルも信頼度が高いです。

5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した結果です。

高額の費用をつぎ込んだ大規模臨床試験で、二度とできない高いレベルの研究です。

2万5千人ずつにグループ分けをして、一方は、脂肪熱量比率20%で強力に低脂肪食を指導しました。

残るグループは脂肪制限なしなので、米国女性平均なら30数%の脂肪摂取比率です。

当然、肉も多く食べているので総脂肪に対する飽和脂肪酸摂取比率も高いと考えられます。

平均的米国女性に対して、約半分近くまで、脂肪摂取比率を厳格に減らして臨床試験を実施したわけです。

研究をデザインした医師は、

「高脂肪食が大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクを増大させる=脂肪悪玉説」
「高脂肪食が、血清コレステロール値を増加させる」

という従来の定説を掲げて、それを証明するためにこのRCTを実施したと思います。

すなわち、

「低脂肪食実践により、大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクが減少する」
「低脂肪食実践により、血清コレステロール値は低下する」

と信じてこのRCTを開始したと考えられます。

ところが、豈図らんや、低脂肪食は、乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを全く下げなかったのです。

そして血清コレステロール値も優位差なしでした。

これは、即ち、脂肪悪玉説が根底から否定されたということです。

結論です。

『5万人を8年間追跡したJAMA掲載のRCT研究論文で、少なくとも乳ガン・大腸ガン・心血管疾患に関しては、脂肪悪玉説は否定された。』

『血清コレステロールに関しても、高脂肪食は無関係』

ということになります。

脂肪悪玉説を根底から覆す良質の信頼度の高いエビデンスです。


江部康二


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
脂質管理ガイドライン(米国心臓病学会/米国心臓協会、2013年)
【14/12/15 nana

江部先生

はじめまして。nanaと申します。

いつも先生のブログとご著書(すべて持っております)で勉強させていただいております。先生の講演会も何度か参加させていただいております。

私はスタンダード、たまにスーパーで糖質制限をしてもう10年以上になります。

糖尿病ではなく全くの健康体ですが、血糖コントロールと体調維持のために糖質制限を続けています。先生と同様、毎晩アサヒスタイルフリーと黒霧島を楽しんでおります。

私の夫ですが、毎年健康診断でLDLコレステロール値が170~190mg/dlを推移していて、企業医の先生にコレステロールを下げる薬を毎年勧められています。(薬は断っています)

私の勧めで夫も3年前にスーパーで糖質制限をしまして、半年で10キロ近く減量して標準体重になりました。その結果、長年悩まされていた花粉症がかなり軽減し、首に出来ていた小さいブツブツしたいぼ状のものが目立たないくらい小さくなりました。疲れにくくなり、体調も改善したので、それ以来緩めの糖質制限を続けています。

ちなみに今年の診断結果ですが、LDLが175mg/dl、HDLは59mg/dl、中性脂肪113mg/dl、体重63㎏でした。身長は173㎝です。

LDLよりも私が気になったのは、空腹時血糖が100mg/dl、HbA1c(NGSP)が5.6%という今回の数値です。

企業医の先生はかなり怒ってらして、薬を飲まないとどうなっても知らない、と言っているそうです。

今までのLDLの数値だけなら心配しなかったのですが、今回の空腹時血糖とHbA1cの結果を見たら、糖尿病予備軍の範囲なのではないかと心配になりました。

私の考えは、緩めだった糖質制限をスタンダードにして、しばらく様子を見ようかと思ったのですが、企業医の先生の仰るように、薬の服用を検討した方がよろしいのでしょうか。

お忙しいところ大変恐縮ですが、先生のご意見をお伺い出来ましたらありがたく思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。】



こんにちは。

nanaさんから、LDL-コレステロール値に関して、コメント質問をいただきました。

拙著のご購入、講演会へのご参加、ありがとうございます。

アサヒスタイルフリーと黒霧島、美味しく楽しくで、いいですね。

LDL-コレステロール値に関しては、日本動脈硬化学会と日本脂質栄養学会のバトルが記憶に新しい所です。

日本動脈硬化学会は、「LDLを下げるべし」という立場で、日本脂質栄養学会は、「LDLは高値の方がいい」という立場です。

このバトル、未だに決着はついていません。

さて、2013年12月、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)は、

「成人のアテローム性動脈硬化疾患予防のための脂質管理ガイドライン(GL)」

を改訂し、公開しました。

今までのガイドラインはかなり異なる画期的ガイドラインでした。

このガイドラインでは、心臓に健康的な生活習慣の遵守が、アテローム性動脈硬化症予防の基礎であると強調しました。その上で、スタチンを用いた脂質低下療法による利益を得ることができる集団を以下の4つに特定しました。

①アテローム性動脈硬化症の臨床症状
②二次性脂質異常症(甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群などほかの疾患が原因)を除くLDL-C値≥190mg/dL
③糖尿病患者の一次予防(LDL-C値70~189mg/dL、40~75歳)
④アテローム性動脈硬化症発生リスク≥7.5%の非糖尿病患者(LDL-C値70~189mg/dL、40~75歳)


は動脈硬化の臨床症状がすでに存在するグループです。


は、LDL-C値≥190mg/dLのグループです。
つまり他に特に病気がないLDL-コレステロール値だけが高値のグループです。


糖尿病患者(LDL-C値70~189mg/dL、40~75歳)は過去に心筋梗塞や狭心症を起こしていなくても適応となるということです。


アテローム性動脈硬化症のリスクスコアについては、性別、年齢、人種、コレステロール値、HDL-C値、血圧値、降圧薬による治療の有無、糖尿病の既往、喫煙歴などを入力すると、10年間のアテローム性動脈硬化症の発生リスクが分かります。
リスク計算ツールは、http://my.americanheart.org/professional/StatementsGuidelines/PreventionGuidelines/Prevention-Guidelines_UCM_457698_SubHomePage.jspから、ダウンロードできます。


米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインは、質の高いRCT研究論文とメタ解析のみを参考としていますので、一定の信頼度があります。

一番の特徴は、過去の様々なガイドラインとは異なり、LDL-コレステロールの管理目標値をエビデンスがないとして排除したことです。

さて、nanaさんのお連れ合いですが、
<空腹時血糖が100mg/dl、HbA1c(NGSP)が5.6%>
なので、糖尿病ではないので、まず③ではないです。

<LDLが175mg/dl、HDLは59mg/dl、中性脂肪113mg/dl、体重63㎏。身長173㎝>
で、10kg減量成功で花粉症が軽減し、疲れにくくなり、体調良好であれば、①と④もまず大丈夫と思います。

あと②ですが、
<毎年健康診断でLDLコレステロール値が170~190mg/dlを推移>
なら190mg/dl以上ではないので、②も大丈夫です。


いろんなガイドラインがありますが、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の最新のガイドラインに従えば、nanaさんのお連れ合いは、スタチンの適応ではないので、薬は要らないこととなります。

ここまでは、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインに基づくエビデンスレベルの話です。

ここからは、③に関しての私見ですが、私のように2型糖尿病の診断基準は一旦満たしたけれど、スーパー糖質制限食実践で血糖コントロールが、食前も食後も基準値内の場合は範疇に入らないと考えられます。

逆に言えば糖尿病で糖質を食べている方々は、「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクを毎食生じているので、③の要件を満たすことになるのだと思います。

米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインは、普通に糖質を摂取している2型糖尿病患者におけるエビデンスに基づいています。

私の場合2002年の糖尿病発覚以降ずっとスーパー糖質制限食を続けていて、スタチンを含め、定期的な薬は一切飲んでいませんが、現時点で心身共に健康です。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コレステロールおよび卵の摂取は糖尿病発症リスクを上げない
【14/10/01 精神科医師A

JPHC study
◇コレステロールおよび卵の摂取と糖尿病との関連について

http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3460.html

①男女ともにコレステロールの高摂取では糖尿病発症リスクは上がらない

②閉経後女性において、コレステロールの摂取により糖尿病発症リスクが低下

③男女ともに卵の高摂取で糖尿病発症リスクは上がらない

  ・・・・・・・・・・・・・・・

ところで、2013/3/18の糖尿病学会提言では、

「脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満そして糖尿病の増加に大きく関与しているのではないかと考えられており…」

「欧米の研究においては対象となるBMIは30~35以上のことが多く、肥満度の異なる日本人の糖尿病の病態に立脚した適正な炭水化物摂取量については、いまだ十分なエビデンスが揃っているとは言えない」

http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=40



おはようございます。

精神科医師AさんからJPHC study(*)(多目的コホート研究)の
「コレステロールおよび卵の摂取と糖尿病との関連について」
興味深い情報をコメントいただきました。
ありがとうございます。

JPHC studyは、国立がん研究センターをはじめ、日本全国の公的な施設が集まって、がん・心筋梗塞・脳卒中などの成人病の発症と、食習慣・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣の関わりを検証する目的の研究です。

今回は、その中で『British Journal of Nutrition 2014年9月』にWEBで公開された研究です。

①男女ともにコレステロールの高摂取では糖尿病発症リスクは上がらない
②閉経後女性において、コレステロールの摂取により糖尿病発症リスクが低下
③男女ともに卵の高摂取で糖尿病発症リスクは上がらない


この研究の結論は、精神科医師Aさんがご指摘のように上記①②③です。

詳しくはhttp://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3460.htmlをご参照ください。

要するに、コレステロールや卵を多く摂取しても、糖尿病発症リスクは上がらないということです。

さらに、閉経後女性では、コレステロールの摂取により糖尿病発症リスクが低下する可能性が示されました。

これにより、日本人が対象の信頼度の高い研究で、卵のような脂質の多い食材を多く摂取しても、コレステロールという脂質を多く摂取しても糖尿病発症リスクは上昇しないことが明らかとなりました。

ちなみに卵は脂質の比率が約60%の高脂質な食材です。
(ゆで卵100gが151kcal、脂質は10g、脂質比率は59.6%)

2013/3/18の糖尿病学会提言とは正反対の結果を示す、2014/9のJPHC study(多目的コホート研究)発表でした。


江部康二


(*)
http://epi.ncc.go.jp/jphc/index.html
多目的コホート研究(JPHC Study)

 「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」(主任研究者 津金昌一郎 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長)において全国11保健所と国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大学、研究機関、医療機関などとの共同研究として行われています。
 この研究は平成21年度までは厚生労働省がん研究助成金による指定研究班として実施されていました。
 平成22年度以降は独立行政法人国立がん研究センターによって実施されています。

研究の背景

日本国民をその平均寿命(平成20年:男性 79歳、女性 86歳)以前に死に至らしめたり、生活の質を低下させる重要な原因になっている、がん・心筋梗塞・脳卒中などの成人病の発症には、食習慣・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣が深く関わっており、生活習慣の改善によって、これら疾病の発症をある程度未然に防ぐことが可能であるものと考えられています。しかしながら、どの様な食事をすれば良いのか、飲酒はどの程度が適量であるかなどについて、日本人についてのデータは充分とは言えないのが現状です。

研究の目的

日本各地にお住まいの約10万人の方々から、その生活習慣についての情報を集め、10年以上の長期にわたって疾病の発症に関する追跡を行うことによって、どの様な生活習慣が疾病の発症に関連しているのかを明らかにすることを目的として、本研究が行われています。


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット