人類の主食は穀物ではない、インスリンとGLUT4、インクレチンとDPP-4
こんにちは。

人類の主食が穀物でなかったことの(状況)証拠・・・。

イギリスのヒューマン・ニュートリションの見解は?
インクレチンは何故2分で失活する?
血糖値を下げるシステムはインスリンだけでバックアップがないのは何故?
GLUT4だけがインスリン依存性なのは何故?

あくまで仮説(思考実験)なのですが、発想を思いきって転換すると興味深いことが見えてきます。

以下過去のブログに断片的に書いたことなどのまとめです。


<イギリスのヒューマン・ニュートリションの見解>

今は穀物が人類の主食となっており、皆、当たり前に思い何の疑問も持っていません。しかし、こちらもまた当たり前なのですが、農耕が始まる前の人類の主食は、決して穀物ではありません。

ヒューマン・ニュートリションという英国の最も権威ある栄養学の本があります。920ぺージに及ぶ大著で、10版を重ねている名著です。この本の75ページに

『現代の食事では、・・・・・デンプンや遊離糖に由来する「利用されやすいブドウ糖」を大量に摂取するようになっている。このような食事内容は血糖およびインスリン値の定期的な上昇をもたらし、糖尿病、冠状動脈疾患、がん、老化等、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。農業の発明以来、ヒトは穀物をベースとした食物を摂取するようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、ヒトの消化管はまだ穀物ベースの食物に適応していない。ましてや高度に加工された現代の食物に対して、到底適応しきれてないのである。』

という記述があります。

人類の本来の主食は穀物ではないし、まだまだ穀物ベースの食物に適応していないと、明記してあり、私も全く同感です。

ヒューマン・ニュートリションでは、穀物の過剰摂取の害、特に精製炭水化物による「血糖およびインスリン値の定期的な上昇」が多くの点で健康に有害と強調しています。

これは私が日頃主張している「現代人は精製炭水化物頻回過剰摂取によるブドウ糖ミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌が生活習慣病の元凶である。」という説と、全く同じといっていいと思います。

なお、<炭水化物=糖質+食物繊維>です。食物繊維は人体に吸収されないので、カロリーもゼロで、血糖値も上昇させません。カウントすべきは糖質のみです。

ヒューマン・ニュートリション 基礎・食事・臨床 第10版 2004年
JS Garrow
WPT james
A Ralph 編
日本語版監修 細谷憲政


<インクレチンとDPP-4阻害剤、インクレチンは何故2分で失活する?>

DPP-4阻害剤という糖尿病の薬が、日本でも健康保険に収載されて2009年12月から発売されました。DPP-4阻害剤は、インクレチンというホルモンを血中にとどめる作用があります。インクレチンとは、小腸から分泌されるホルモンであり、GIPとGlp-1があります。

これらは、高血糖時には、SU剤とは異なる機序でインスリン分泌を促進させます。また、インスリン生合成を促進させます。血糖値が正常のときにはインスリン分泌を促進させず、食後高血糖の時にだけインスリン分泌を促進させるので、低血糖も起こしにくいです。

まことに都合のいいホルモンなのですが、DPP-4という酵素によって速やかに分解され、血中の半減期は約2分と短いのです。このDPP-4という酵素の働きを阻害してやれば、インクレチンは血中に当分(約24時間ちかく)存在して、血糖降下作用を発揮してくれることになります。そこで登場したのが、ジャヌビア・グラクティブ・ネシーナ・エクアなどのDPP-4阻害剤です。

DPP-4阻害剤、まことに論理的に構築されたいい薬なのですが、少し根源的な疑問が湧いてきます。何故このような都合のいいホルモンが、人体においてわずか2分で分解され効果を失ってしまうのでしょうか。

考えられる一番リーズナブルな説明は、人類の進化の過程で、インクレチンは食後約2分ていど働けばもう必要充分であり、あとは消え去るのみだったということでしょう。

すなわち、農耕前の狩猟・採集時代約400万年間は、日常的な血糖値の上昇は、ほとんど無かったのですから、インクレチンが24時間も活性化している必然性はかけらもありません。復習ですが、血糖値を上げるのは糖質のみで、タンパク質・脂質はあげません。

農耕開始前の人類の食生活は、魚貝類・小動物・動物の肉・内臓・骨髄・野草・野菜・キノコ・海藻・昆虫などが日常的な食料です。時々食べることができたのは、木の実・ナッツ・果物・山芋などでしょう。

これらの中で、日常的には野菜、たまにナッツや果物を摂取したときに、その糖質量に応じて軽度血糖値が上昇しますので、インクレチンはそれに対応していたものと考えられます。そうであれば食後だけ約2分間働けば充分です。

農耕が始まり穀物を常食し、食後高血糖が日常的に生じるようになった後は、インクレチンにおおいに活躍して欲しいところですが、如何せん400万年間の進化の重みは大きくて、DPP-4が律儀にすぐ分解してしまう癖がついているのです。

10000~4000年くらいの穀物が主食の歴史ていどでは、新たな都合のいい突然変異は生じなかったのでしょう。今この時代にDPP-4阻害剤の登場というのは、歴史の皮肉を感じます。

ともあれ、インクレチンが約2分間で分解されるという生理学的事実は、人類は主食が穀物(糖質)ではない状況で、400万年進化してきたことの、証拠といえます。


<血糖値を上昇させるシステムと血糖値を下げるシステム>

脳は、ケトン体をエネルギー源として、いくらでも利用できます。しかし、人体で唯一赤血球だけは、ミトコンドリアというエネルギー生産装置をもっていないので、ブドウ糖しか利用できません。従って、人体は赤血球のために、最低限の血糖値を常に確保する必要があり、多重のバックアップシステムを持っています。

グルカゴンやエピネフリンというホルモン、副腎皮質ステロイドホルモンなどは血糖上昇作用があります。そして肝臓でアミノ酸やグリセロール(中性脂肪の分解産物)や乳酸から糖新生してブドウ糖をつくり、血糖値を確保します。

一方、血糖値を下げるシステムは唯一インスリンのみです。 糖質をほとんど摂取しない農耕以前の400万年間は、血糖値が上がることはまれであり、追加分泌インスリンはほとんど必要なかったため、バックアップシステムをつくる必然性がなかったと考えられます。このことも、人類の主食が穀物(糖質)ではなかったことの状況証拠です。


<インスリンとGLUT4>

ブドウ糖が、細胞膜を通過するためには、特別な膜輸送タンパク質が必要です。それが糖輸送体(GLUT)であり、現在GLUT1~GLUT14まで確認されています。GLUT1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で常に細胞の表面にあり、血流さえあれば即血糖を取り込めます。

これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なのがGLUT4で、基礎分泌のインスリンレベルだと、通常は細胞内部に沈んでいます。GLUT1~GLUT14の中で、インスリンに依存しているのはGLUT4だけで特殊です。インスリンが追加分泌されると、通常は細胞内に沈んでいるGLUT4が細胞表面に移動して、血糖値を取り込めるようになるのです。

インスリンやGLUT4の役割を、農耕が始まる前の狩猟・採集時代にまで遡って考察してみました。

そもそも、GLUT4は、今でこそ(農耕開始以後)獅子奮迅の大活躍なのですが、農耕前は、ほとんど活動することはなかったと考えられます。つまり、農耕後、日常的に穀物を摂取して、食後血糖値が上昇するようになってからは

『食後血糖値上昇→インスリン追加分泌→GLUT4が筋肉細胞・脂肪細胞表面にトランスロケーション→血糖値の細胞内への取り込み』

というシステムが、毎日食事のたびに稼働するようになりました。

しかし、狩猟・採集時代には、今のような穀物はありませんので、たまの少量の糖質摂取(果物やナッツ類)で、ごく軽度血糖値上昇があり、インスリン少量追加分泌のときだけGLUT4の出番があったに過ぎません。

年間を通して、時々運良く、果物やナッツ類が採集できた場合のみです。この頃は、血糖値は慌てて下げなくてはいけないほど上昇していないので、GLUT4の役割は、筋肉細胞で血糖値を下げるというよりは、脂肪細胞で中性脂肪を作らせて冬に備える役割のほうが、はるかに大きな意味を持っていたと思います。

すなわち、農耕以前は「インスリン+GLUT4」のコンビは、たまに運良く糖質(野生の果物やナッツ類)を摂取して時だけ、もっぱら中性脂肪生産システムとして活躍していたものと考えられます。

また、糖質を摂取すれば血糖値が上昇し、インスリンには無関係に、肝臓にも取り込まれてグリコーゲンを蓄積しますが、余った血糖が中性脂肪に変えられ脂肪細胞に蓄えられます。

この中性脂肪蓄積システムも、農耕後には日常的に稼働していますが、狩猟・採集時代には、食後血糖値の上昇はほとんどないので、肝臓に取り込まれるブドウ糖もごく少量であり、中性脂肪に変換されることも少なかったと思います。

次に果糖と中性脂肪について考えてみます。

果物に含まれる糖質の主成分の果糖ですが、実におもしろい性質を持っています。果糖が脂肪合成を誘導しやすい糖質であることは、以前から知られています。ヒトにおいて、高果糖食が肝臓での脂肪合成を促進し、血中の中性脂肪濃度を上昇させ、インスリン抵抗性を生じることが報告されています。

果物中の果糖は、GLUT5によって吸収されますが、血糖にはほとんど変わらずに肝臓まで運ばれ、ブドウ糖代謝系に入ります。このとき果糖は、ブドウ糖より急速に代謝されるという特徴があります。

果糖は、肝臓での脂肪合成酵素群の発現を促進させる作用も持っており、急速に代謝されることと合わせて、とても中性脂肪に変わり易いのです。このように、果物の果糖は中性脂肪をためやすく肥満しやすい性質をもっており、現代では要注意食材といえます。

さて、それでは再び、狩猟・採集時代の人類の食生活を考えてみましょう。

果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖質が含まれています。10万年や20万年前に、アフリカの人類が、運良く果物にありついたとき、

A)『ブドウ糖やショ糖→血糖値少し上昇→インスリン追加分泌少量→GLUT4が脂肪細胞表面に移動して血糖を取り込んで中性脂肪に変えて蓄積』

B)『果糖→インスリンとは無関係にGLUT5により吸収されて肝臓に運ばれて速やかに中性脂肪合成』
これらA)B)の2つのシステムが稼働したはずです。

A)B)の2つのシステムは、農耕以前の人類の食生活と生存競争において、極めて重要な意味を持っていたと考えられます。

即ち、体に中性脂肪を蓄えることは、ご先祖にとって、飢餓に備えるための唯一無二のセーフティーネットであったからです。

果糖がインスリンに依存せずに、肝臓でブドウ糖より速く代謝され中性脂肪に変わるのも、農耕以前の人類においてはとても大きな利点であったと考えられます。

体脂肪をあるていど蓄えることができるのが、現世人類の大きな特徴です。特に現世人類の女性の乳房とお尻は、脂肪の蓄積装置としてはとても優れたものであり、現世人類が6属21種の人類の中で唯一生き残った大きな理由の一つと言えます。

現世人類のごく普通の体型の女性なら、その体脂肪により、水さえあれば母子ともに2ヶ月くらいは生存可能という、大きなアドバンテージがあるのです。

まとめると、農耕以前の糖質を摂取しない日常の食生活においては、「インスリン+GLUT4」のコンビは、ほとんど働く必然性はなかったわけです。

同じ糖輸送体でも、GLUT1(脳・赤血球・網膜の糖輸送体)の方は、インスリンには無関係に常に細胞表面にあって、農耕前も農耕以後も24時間常に活動しているわけで、GLUT4とは大きな違いがあります。

インスリンが分泌されたときだけ稼働するというGLUT4のシステムは、他のGLUTに比べて大変特殊であり不思議な代物です。

しかし、毎食糖質を摂取する現代からみると不思議なシステムですが、糖質がたまにしか摂取できない時代においては、必要な時だけ稼働するというとても合理的なものといえます。

農耕以前の400万年間、人類はたまに運良く手に入った果物やナッツなどを食べ、血糖値が軽度上昇したときだけ「インスリン+GLUT4」を稼働させて、飢餓に対する唯一のセーフティーネットである中性脂肪を蓄えていたのです。

普段は必要ないので、GLUT4は細胞内で鎮座していたのでしょう。「インスリン+GLUT4」の特殊性も、人類の主食が穀物(糖質)でなかった状況証拠と言えます。


<炭水化物(糖質)の歴史的存在意義および価値は?>

さて人類の進化の歴史において、炭水化物(糖質)の存在意義および価値は?ひらたく言うと、糖質は何のためにあったのでしょうか?

必須アミノ酸、必須脂肪酸は、厳然と存在します。人体で生産することができないアミノ酸と脂肪酸は、必ず食物から摂取する必要があります。また、ビタミンも体内で合成できないものがほとんどで、食物から摂取する必要があります。これに対して、必須糖質は存在しません。

体内で必要なブドウ糖は、肝臓で糖新生してまかなうので、食物から摂取する必要はないのです。人体内で絶対に必要なブドウ糖は、赤血球のためです。赤血球は、ミトコンドリアというエネルギー生産装置を持っていないので、ブドウ糖しか利用できません。

脳は、脂肪酸の分解物のケトン体をいくらでもエネルギー源としますし、ブドウ糖も利用します。他の心筋、骨格筋、体細胞は日常的には脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源として、時々ブドウ糖も利用します。

人類の進化の歴史において、農耕が始まる前の狩猟・採集時代における糖質の役割は、中性脂肪蓄積が第一義であったと考えられます。

初期の人類において、中性脂肪を体脂肪として蓄えておくことは、日常的に襲ってくる飢餓への、唯一のセーフティーネットであったと考えられます。

狩猟・採集時代に時々手に入った糖質は、野生の果物、ナッツ類、山芋などです。運良くこれらを得たとき、少量のインスリンが追加分泌されて、脂肪細胞のGLUT4が細胞表面に上がりブドウ糖を取り込んで中性脂肪に変えていたのです。

また果物の果糖は、ブドウ糖にはほとんど変わりませんが、吸収されて肝臓にいたり、ブドウ糖より速やかに中性脂肪になり蓄積されます。

果物の糖質には、ブドウ糖、ショ糖、果糖などがあります。このように、人類の進化の過程では、糖質は時々しか手に入らない貴重な中性脂肪蓄積のもとだったと考えられます。

本来、中性脂肪蓄積が第一義であった糖質を、農耕が定着して以降は、日常的に摂取するようになりました。さらにこの200年は、精製炭水化物を常食するようになったので、大量の追加分泌インスリンがでて、大変中性脂肪が蓄積されやすい状況となり、肥満が発症しやすくなったのです。




江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
農耕前のGLUT4とインスリン、果糖は貴重な中性脂肪蓄積システム・続き
おはようございます。

今回は、昨日の記事の続きで、果糖と中性脂肪について考えてみます。

果物に含まれる糖質の主成分の果糖ですが、実におもしろい性質を持っています。

果糖が脂肪合成を誘導しやすい糖質であることは、以前から知られています。

ヒトにおいて、高果糖食が肝臓での脂肪合成を促進し、血中の中性脂肪濃度を上昇させ、インスリン抵抗性を生じることが報告されています。

果物中の果糖は、GLUT5によって吸収されますが、血糖にはほとんど変わらずに肝臓まで運ばれ、ブドウ糖代謝系に入ります。このとき果糖は、ブドウ糖より急速に代謝されるという特徴があります。

果糖は、肝臓での脂肪合成酵素群の発現を促進させる作用も持っており、急速に代謝されることと合わせて、とても中性脂肪に変わり易いのです。

このように、現代では、は中性脂肪をためやすく肥満しやすい性質をもっており、要注意食材といえます。

さて、それでは再び、狩猟・採集時代の人類の食生活を考えてみましょう。

果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖質が含まれています。10万年や20万年前に、アフリカの人類のご先祖が、運良く果物にありついたとき、

A)『ブドウ糖やショ糖→血糖値少し上昇→インスリン追加分泌少量→GLUT4が脂肪細胞表面に移動して血糖を取り込んで中性脂肪に変えて蓄積』

B)『果糖→インスリンとは無関係にGLUT5により吸収されて肝臓に運ばれて速やかに中性脂肪合成』

これらA)B)の2つのシステムが稼働したはずです。

A)B)の2つのシステムは、農耕以前の人類の食生活と生存競争において、極めて重要な意味を持っていたと考えられます。

即ち、体に中性脂肪を蓄えることは、ご先祖にとって、飢餓に備えるための唯一無二のセーフティーネットであったからです。

果糖がインスリンに依存せずに、肝臓でブドウ糖より速く代謝され中性脂肪に変わるのも、農耕以前の人類においてはとても大きな利点であったと考えられます。

体脂肪をあるていど蓄えることができるのが、現世人類の大きな特徴です。特に現世人類の女性の乳房とお尻は、脂肪の蓄積装置としてはとても優れたものであり、現世人類が6属21種の人類の中で唯一生き残った大きな理由の一つと言えます。

現世人類のごく普通の体型の女性なら、その体脂肪により、水さえあれば母子ともに2ヶ月くらいは生存可能という大きなアドバンテージがあるのです。



江部康二


☆☆☆☆
昨日(2011.4.22)のブログ記事を再掲します。

こんばんは。

ここ3回、肥満や中性脂肪やインスリンやGLUT4について考えてきました。

今回は、さらに突っ込んで、インスリンやGLUT4の役割を、農耕が始まる前の狩猟・採集時代にまで遡って考察してみました。

大変興味深い大胆な仮説を思いつきましたので、是非読んでくださいね。 (^^)

そもそも、GLUT4は、今でこそ(農耕開始以後)獅子奮迅の大活躍なのですが、農耕前は、ほとんど活動することはなかったと考えられます。

つまり、農耕後、日常的に穀物を摂取して、食後血糖値が上昇するようになってからは

『食後血糖値上昇→インスリン追加分泌→GLUT4が筋肉細胞・脂肪細胞表面にトランスロケーション』

というシステムが、毎日食事のたびに稼働するようになりました。

しかし、狩猟・採集時代には、穀物はありませんので、たまの少量の糖質摂取(果物やナッツ類)で、ごく軽度血糖値上昇があり、インスリン少量追加分泌のときだけGLUT4の出番があったに過ぎません。年間を通して、時々運良く、果物やナッツ類が採集できた場合のみですね。

この頃は、血糖値は慌てて下げなくてはいけないほど上昇していないので、GLUT4の役割は、筋肉細胞で血糖値を下げるというよりは、脂肪細胞で中性脂肪を作らせて冬に備える役割のほうが、はるかに大きな意味を持っていたと思います。

すなわち、農耕以前は「インスリン+GLUT4」のコンビは、たまに運良く糖質(野生の果物やナッツ類)を摂取して時だけ、もっぱら中性脂肪生産システムとして活躍していたものと考えられます。

そして農耕以前の糖質を摂取しない日常の食生活においては、「インスリン+GLUT4」のコンビは、ほとんど働く必然性はなかったわけです。

同じ糖輸送体でも、GLUT1(脳・赤血球・網膜の糖輸送体)のほうは、インスリンには無関係に常に細胞表面にあって、農耕前も農耕以後も24時間常に活動しているわけで、GLUT4とは大きな違いがあります。

また、糖質を摂取すれば血糖値が上昇し、インスリンには無関係に、肝臓に取り込まれてグリコーゲンを蓄積しますが、余った血糖が中性脂肪に変えられます。

この中性脂肪蓄積システムも、農耕後には日常的に稼働していますが、狩猟・採集時代には、食後血糖値の上昇はほとんどないので、肝臓に取り込まれるブドウ糖もごく少量であり、中性脂肪に蓄積されるほどはなかったと思います。


<続く >

次回は、果糖と中性脂肪の考察です。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
農耕前のGLUT4とインスリン、果糖は貴重な中性脂肪蓄積システム
こんばんは。

ここ3回、肥満や中性脂肪やインスリンやGLUT4について考えてきました。

今回は、さらに突っ込んで、インスリンやGLUT4の役割を、農耕が始まる前の狩猟・採集時代にまで遡って考察してみました。

大変興味深い大胆な仮説を思いつきましたので、是非読んでくださいね。 (^^)

そもそも、GLUT4は、今でこそ(農耕開始以後)獅子奮迅の大活躍なのですが、農耕前は、ほとんど活動することはなかったと考えられます。

つまり、農耕後、日常的に穀物を摂取して、食後血糖値が上昇するようになってからは

『食後血糖値上昇→インスリン追加分泌→GLUT4が筋肉細胞・脂肪細胞表面にトランスロケーション』

というシステムが、毎日食事のたびに稼働するようになりました。

しかし、狩猟・採集時代には、穀物はありませんので、たまの少量の糖質摂取(果物やナッツ類)で、ごく軽度血糖値上昇があり、インスリン少量追加分泌のときだけGLUT4の出番があったに過ぎません。年間を通して、時々運良く、果物やナッツ類が採集できた場合のみですね。

この頃は、血糖値は慌てて下げなくてはいけないほど上昇していないので、GLUT4の役割は、筋肉細胞で血糖値を下げるというよりは、脂肪細胞で中性脂肪を作らせて冬に備える役割のほうが、はるかに大きな意味を持っていたと思います。

すなわち、農耕以前は「インスリン+GLUT4」のコンビは、たまに運良く糖質(野生の果物やナッツ類)を摂取して時だけ、もっぱら中性脂肪生産システムとして活躍していたものと考えられます。

そして農耕以前の糖質を摂取しない日常の食生活においては、「インスリン+GLUT4」のコンビは、ほとんど働く必然性はなかったわけです。

同じ糖輸送体でも、GLUT1(脳・赤血球・網膜の糖輸送体)のほうは、インスリンには無関係に常に細胞表面にあって、農耕前も農耕以後も24時間常に活動しているわけで、GLUT4とは大きな違いがあります。

また、糖質を摂取すれば血糖値が上昇し、インスリンには無関係に、肝臓に取り込まれてグリコーゲンを蓄積しますが、余った血糖が中性脂肪に変えられます。

この中性脂肪蓄積システムも、農耕後には日常的に稼働していますが、狩猟・採集時代には、食後血糖値の上昇はほとんどないので、肝臓に取り込まれるブドウ糖もごく少量であり、中性脂肪に蓄積されるほどはなかったと思います。


<続く >

次回は、果糖と中性脂肪の考察です。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質摂取で肥満する理由とGLUT4、インスリン
こんにちは。


A)『糖質摂取で血糖値上昇→インスリン追加分泌→脂肪細胞表面にGLUT4発現→血糖を取り込んで中性脂肪に合成して脂肪細胞内に蓄積』

B)『糖質摂取で血糖値上昇→肝臓が約50%を取り込んで中性脂肪合成→中性脂肪はVLDLとして血中に放出→余剰の中性脂肪は脂肪細胞に取り込まれて蓄積』


普通に糖質を摂取しているときは、A)B)のプロセスで中性脂肪が脂肪細胞に蓄積され、体脂肪が増えていきます。

それでも、筋肉量がしっかりあって基礎代謝が多い人は、『食事で蓄えられた中性脂肪』と、『空腹時や睡眠時に消費される中性脂肪』のバランスがとれていて、肥満(脂肪蓄積)は生じずにすみます。

中年で筋肉量が減り、基礎代謝も減少すれば

『食事で蓄えられた中性脂肪』 > 『空腹時や睡眠時に消費される中性脂肪』

となり、肥満が始まります。

インスリンが追加分泌されればその量に応じて、GLUT4が脂肪細胞や筋肉細胞表面に発現してくるわけです。インスリンの量が多ければ、細胞表面に発現するGLUT4の数が増えます。

糖輸送体(GLUT)は1~14まで報告されています。GLUT4は筋肉細胞と脂肪細胞に特異的で、インスリンにより細胞表面にトランスロケーションするという、他の13種の糖輸送体にはない特徴を持っています。

スーパー糖質制限食なら、血糖値はほとんど上昇しないし、食後の追加分泌インスリンはせいぜい2倍くらいです。

これくらいのインスリン量なら、脂肪細胞や筋肉細胞の表面に発現するGLUT4の数はごくわずかです。

従って、脂肪細胞が血糖値を取り込んで、中性脂肪に変えて備蓄することもほとんどありません。

それどころか、ステーキを食べている最中にも、脂肪は分解されて脂肪酸やケトン体となり、筋肉や体の組織で利用されているのです。

即ち、スーパー糖質制限食で高タンパク・高脂質で高カロリーの食事をしても、インスリンはほとんど分泌されないので、脂肪細胞表面に発現するGLUT4の数は極少なく、ブドウ糖を中性脂肪に変える回路はほとんど働きません。

また糖質を摂取して上昇した血糖は、インスリンとは無関係に肝臓で約50%が取り込まれ、残りは大循環に回ります。

肝臓に取り込まれたブドウ糖は、グリコーゲンとして蓄えられますが、余剰のブドウ糖は中性脂肪に変換されます。

スーパー糖質制限食なら、食後血糖値はほとんど上昇しないので、肝臓に取り込まれるブドウ糖もほとんどありません。従って肝臓で合成する中性脂肪もほとんどありません。


A)『糖質摂取で血糖値上昇→インスリン追加分泌→脂肪細胞表面にGLUT4発現→血糖を取り込んで中性脂肪に合成して脂肪細胞内に蓄積』

B)『糖質摂取で血糖値上昇→肝臓が約50%を取り込んで中性脂肪合成→中性脂肪はVLDLとして血中に放出→余剰の中性脂肪は脂肪細胞に取り込まれて蓄積』

糖質を摂取したときに認められるA)B)のパターンが、スーパー糖質制限食実践ならほとんどないので、中性脂肪が脂肪細胞に蓄積されにくいのです。

糖質摂取とインスリン分泌で太りやすい理由、糖質制限食でやせやすい理由、お分りいただけたでしょうか。


江部康二



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
江部康二の中年太り、糖質制限食で解決
こんにちは。

今回は、私が中年太りに至ったプロセスと、解決したプロセスのお話しです。

私の飲酒歴は学生時代からで、タバコは一切なしです。

京大医学部入学が、1968年です。

学生時代はお金がないですから、札幌ジャイアンツ(当時の巨大な瓶ビール)や一升瓶の料理用ワイン、安物の日本酒の三倍醸造酒の一升瓶などが中心でした。

学生時代は、身長167cm、55~56kgくらいで、いくら食べても飲んでも決して太りませんでした。

三倍醸造酒で二日酔いになると最悪で、三日酔いくらいになるので、日本酒は大嫌いになりました。( ̄_ ̄|||)

それで1974年、社会人になってからは、ブランデーやウィスキーをもっぱら飲んでいました。

その頃の私は、結構な大食いのほうで、割り勘負けはまずありませんでしたが、炭水化物も含めていくら食べても飲んでも決して太りませんでした。

医学生時代は野球部で6年間練習や試合をしていたので、その分の筋肉の貯金があって、社会人になってからもしばらくは基礎代謝が盛んだったのでしょう。

とある時、尾瀬あきら作の漫画「夏子の酒」を読んで感動し、40歳過ぎからからは、純米酒に目覚めました。
三倍醸造酒は最悪ですが、純米酒は最高に美味しかったです。(⌒o⌒)v

「酒をやるなら純米大吟醸、ビール飲むなら恵比寿ビール、愛読書並びに推薦書は夏子の酒・・・」

てなキャッチコピーで、それまでのウィスキーやブランデーから純米酒と恵比寿ビールに切り替えて、当時浴びるように飲んでいました。

主食は、病院では玄米で、家では胚芽米でした。当時は「粗食のすすめ」で有名な幕内秀夫先生の推進する
「学校給食と子供の健康を考える会」にも関係していて「学校給食を完全米飯に」という運動をしていたこともあり、外食、講演や旅行などの食事や、新幹線の駅弁では、おかずよりは兎に角米飯をしっかり食べるようにしていました。忙しい時は、おにぎりだけでお腹いっぱいとかも多かったです。

肉や脂の食材は、できるだけ控えて魚介中心にして、調理油は極力使わずカロリー制限も一定していました。運動は、30才から始めた週2回のテニスです。

運動量は、社会人に成り立ての頃より、テニスの分は少し多いくらいで、食事は肉・油脂を控えてカロリー制限でそれなりに気をつけていたのですが、40才過ぎから徐々にお腹が出てきて、体重も増え始めました。年齢とともに筋肉量が減少して、基礎代謝が低下してきたのでしょう。

『食事で蓄えられた中性脂肪』と『空腹時や睡眠時に消費される中性脂肪』のバランスが崩れ始めた時期だったと思います。

兎に角、米飯を中心に炭水化物の摂取は多かったです。毎日食事の度に、大量のインスリン追加分泌を繰り返し、だめ押しに毎晩毎晩、雨の日も風の日も雪の日も晴れの日も曇りの日も、律儀に純米酒と恵比寿ビールで飲酒後もインスリン追加分泌を生じていたのでしょう。

当時は、テニスの帰りにスポーツジムにもよって、自転車こぎや腹筋・背筋運動もやってました。

30代よりは運動量も増やして食事にも気を使っていたのに、なぜか体重はさらに増加し、腹回りも順調に育っていきました。

所詮この程度の運動では、日々の大量の炭水化物摂取に拮抗できるはずもなく、インスリン過剰分泌でますます肥満していったのだ思います。

肥満すればインスリン抵抗性が増して効きが悪くなるので、益々過剰のインスリンを分泌せざるを得ません。肥満ホルモンであるインスリン分泌の悪循環ですね。

52歳、糖尿病発覚時には、とうとう体重67kgになって、学生時代より約10kg増えてしまいました。

血圧は160/100、腹囲は86cmと、メタボリック・シンドロームの診断基準を見事に満たしていました。

ここに至り、一念発起して、2002年6月から糖質制限食を開始しました。肉・魚・野菜・豆腐などおかずは食べ放題で、主食(糖質)だけはなしです。

酒は日本酒、ビールなどの糖質を含んでいる醸造酒は中止し、もっぱら焼酎(蒸留酒)としました。

辛口赤ワインだけは、醸造酒の中でも血糖値をほとんど上昇させないので、適宜飲んでいました。

純米大吟醸・恵比寿ビール時代を知る友人達からは、非難囂々、ブーイング続出でしたが、糖尿病・メタボとおさらばするために、背に腹は代えられません。

この間、スポーツジムはやめてしまい、テニスも2回/週から、1回/週に減ったので、運動量は40代に比し確実に減りました。

また、肉や炒め物や揚げ物など脂質をたっぷり摂取したので、40代の油脂は極力控えていた時代に比し、総摂取カロリーは増えていたと思います。お酒の量は、全く不変でした。

運動量は減って、総摂取エネルギーは増加したにも関わらず、6ヶ月間の糖質制限食で、体重は約10kg減って57kgにおち、血圧も120/70、HbA1Cも4.9%と改善しました。メタボリック・シンドロームも解消しました。

このように、私の肥満(中年太り)には総摂取エネルギーよりも総糖質摂取量のほうが、色濃く関係していたことは間違いありません。

『糖質摂取で血糖値上昇→インスリン追加分泌→脂肪細胞表面にGLUT4発現→血糖を取り込んで中性脂肪に合成して脂肪細胞内に蓄積』

『糖質摂取で血糖値上昇→肝臓が取り込んで中性脂肪合成→中性脂肪はVLDLとして血中に放出→余剰の中性脂肪は脂肪細胞に取り込まれて蓄積』

という悪循環が、糖質制限食で断ち切れたのだと思います。

その後は、2011年現在に至るまで、身長、体重は167cm、56~57kgとほぼ一定で、血圧も120~130/70~80ていど、HbA1cは5.1~5.4%ていどです。

今は、主食(糖質)を食べなければ正常人、主食(糖質)を食べれば糖尿人です。厳しく4%台を目指すのは、美味しく楽しく糖質制限食が困難となるので、今ぐらいで折り合いをつけときます。 (^^)


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット