江部康二の2018年6月の検査データ
こんにちは。

今回の記事は、
2002年(52歳)糖尿病発覚以来
スーパー糖質制限食を16年間実践中の、
江部康二の2018年6月の検査データの報告と解説です。

2002年6月に糖尿病確定診断で、HbA1cは6.7%でした。
このとき、体重は67kg、身長は167cm。
内臓脂肪CTは126cm2 (100未満正常)。
血圧は140-150/90前後 → 外来終了時は180/100。

スーパー糖質制限食を実践して、1ヶ月後にはHbA1cは基準値内になり、
半年後には体重は10kg減少して57kgとなり、
血圧も正常化しました。
そのまま2018年まで、血圧と体重は維持です。

内臓脂肪CTは、2004年10月には、71 cm2となっています。


<江部康二の2018年6月(68歳)の検査データ>

HbA1c:5.8%(4.6~6.2)
GA(グリコアルブミン):14.3%(11.6~16.0)

空腹時血糖値:106mg(60~109)
空腹時インスリン:1.7μU/ml(3~15)

TSH:0.81(0.34~3.88)
F-T4:1.2(0.8~1.8)
F-T3:2.5(2.1~4.0)

中性脂肪:49mg(50~149)
総コレステロール:248mg(150~219)
HDL-コレステロール:94mg(40~85)
LDL-コレステロール:135mg(140mg未満)
尿酸:3.2mg(3.4~7.0)
BUN:20.1mg(8~20)
クレアチニン:0.70mg(0.6~1.1)→ eGFR:85.38ml/min./1.73m2
血清シスタチンC:0.66mg(0.61~1.00) → eGFR:112.94ml/min./1.73m2
GOT17(5~39)
γGTP:41(84以下)
総タンパク:6.8g(6.5~8.3)
アルブミン:4.5g(3.8~5.3)

血色素量:15.5(13~17)
白血球数:5700(3900~9800)
赤血球数:487(400~560)

総ケトン体:704μM/L(26~122μM/L) 糖質制限食中は生理的で正常値
アセト酢酸:129M/L(13~69)
3ヒドロキシ酪酸:575μM/L(76以下)

尿中アセトン体:陰性
尿アルブミン定量精密・クレアチニン補正値:5.5(30以下)


68歳現在
歯は全部残っていて虫歯はありません。
聴力低下もありません。
目は裸眼で広辞苑が読めます。
夜間の尿もゼロです。
身長も縮んでいません。
皮膚のAGEs検査は、52歳レベルです。
病気なしで定期的内服薬はゼロです。

HbA1cは正常範囲内ですがやや高めのほうです。
空腹時血糖値が、正常範囲内でやや高め(正常高値)であることを反映しています。
まあ、糖尿病歴、16年ですから仕方ありませんね。

GAは正常範囲内で、上限には大分余裕があります。
これは、スーパー糖質制限食により食後高血糖がほとんどないためと思われます。
即ち「糖化」は正常人並みあるいはそれ以上に予防できていると考えられます。

甲状腺機能は、16年間常に、正常です。

総コレステロール値は、心血管疾患との関連性は無く、
脂質異常症の2007年以降のガイドラインから外れているので特に問題はありません。
HDL-コレステロールはやや多めで、LDL-コレステロールは基準値内です。
中性脂肪値が低く、HDL-Cが多いので、
小粒子LDL-Cはほとんどない良好なパターンです。
中性脂肪値49mg/dlなら、論文的には小粒子LDL-Cは皆無です。

スーパー糖質制限食なので、高タンパク・高脂質食なのですが、
尿酸は基準値よりやや低いですね。
尿酸は抗酸化物質でもあるのですが、
スーパー糖質制限食実践で、私の身体には酸化ストレスが極めて少ないので
尿酸も少ないのだと思われます。
尿酸も食べ物由来は2割程度であとは個人の体質ですのでこんなものでしょう。

高タンパク食ですが、BUNもクレアチニンもシスタチンCも正常です。

焼酎などよく飲む割には肝機能も全く正常です。 (^_^)

インスリンは、基礎分泌がやや少なめですが、
空腹時血糖値が基準値なので問題ないです。
少ないインスリン分泌量で、血糖値は正常なので好ましいパターンと言えます。

血中βヒドロキシ酪酸:575μM/L(76以下)と、
一般的基準値に比べればかなり高値ですが、
尿中のアセトン体(ケトン体の一種)は陰性です。

これは、スーパー糖質制限食実践で、心筋・骨格筋などの体細胞が、
日常的に効率良くケトン体をエネルギー源として利用するようになったため、
尿中に排泄されないのだと考えられます。

即ち、私の血中ケトン体値は、あくまで生理的範囲のもので、
インスリン作用は一定確保されていて、血糖値も106mgと正常です。

見方を変えれば、農耕以前の人類皆糖質制限食だった頃は、
私のような血中ケトン体値のデータが当たり前で、
人類の標準だったと考えられます。

スーパー糖質制限食実践中の人の血中βヒドロキシ酪酸の標準値は、
200~800~1200μM/Lくらいと考えられますが、
3ヶ月くらい経過すると、上述のように尿中ケトン体は陰性になります。

ケトン食レベルの人達の、血中βヒドロキシ酪酸は、
3000~5000μM/Lレベルですが、尿中ケトン体は、常に陽性です。

なお、糖質制限食開始直後は、血中ケトン体の上昇に伴い、
尿中のケトン体も陽性となります。
徐々にケトン体の利用効率が良くなるに従い、
尿中ケトン体は減っていき、やがて陰性となります。


江部康二
日本の糖尿病食・糖質制限食の歴史。
<プロローグ>
こんにちは。

現在ではファミリーレストランのガストやリンガーハットでも、くら寿司でも
糖質オフメニューがあります。
ローソンやファミリーマートでも、糖質制限なパンが販売されています。

2016/7/20(水)、NHKクローズアップ現代で糖質制限食が特集されました。
NHKによれば、糖質制限食が空前のブームだそうで、
関連の市場は当時で¥3184億円とのことでした。

今や2018年で、糖質制限市場はさらに加速して拡大しています。
とうとう中国からも原稿の依頼が来ました。

私は、糖質制限食はブームではなく、科学的な真理そのものと考えています。
従ってブームのように消え去ることはなく、今後もどんどん繁栄していくと思います。

今回は、その糖質制限食と糖尿病食の歴史を考察してみました。

<夏目漱石と糖尿病と厳重食>
文豪夏目漱石(1867~1916年)は、糖尿病でした。
大正5年(1916)正月、右の上膊(上腕)神経に強い痛みと右上膊(上腕)の不全麻痺。
薬、マッサージは無効。4月、糖尿病と診断。
教え子の医師真鍋嘉一郎により、5月から、当時の最先端治療の「厳重食」を開始。尿糖は消失。
7月終わりには、右の上膊神経に強い痛みと右上膊の不全麻痺が改善。
神経衰弱の症状も減退。糖尿病も改善。11月、胃潰瘍が再発。
12月9日、胃潰瘍による出血で死亡。
厳重食で、糖尿病と糖尿病神経障害は著明改善ですが、残念ながら胃潰瘍のために死去しています。

<厳重食=スーパー糖質制限食>
昭和13年、18年の女子栄養大学の以下の「厳重食」の解説をみると、まさに、「厳重食=スーパー糖質制限食」です。

『肉類(牛、豚、鶏、魚肉、内臓、心臓、肝臓、舌、膈、腎臓、骨髄)、貝類、卵類(鶏卵、鳥卵、魚卵)、脂肪類(バター類、豚脂、ヘッド、肝油、オリーブ油、ごま油、)、豆類(豆腐、油揚げなど)、
味噌は少量、野菜(含水炭素5%以下)小松菜、京菜、白菜、筍、レタス、蕗、大根、アスパラ、果実(含水炭素の少ないもの)びわ、すもも、苺、いちじく、メロン、パイナップル、パパイヤ、りんご、蜜柑、夏みかん・・・
*梨、ブドウ、柿、バナナはやや糖質が多いので警戒を要する。』


夏目漱石と厳重食1)2)については、
精神科医師Aこと中嶋一雄医師に資料を提供して頂きました。ありがとうございました。

<日本における糖尿病食事療法の変遷>
日本でも、昭和18年(1943年) 頃は、まだ厳重食のほうが、幅を利かせていたようです。

そして日本糖尿病学会のバイブルのような食品交換表初版が1965年に発行されました。
この時、適正なカロリーということが強調されました、。
解説には、食事療法の原則として
「①適正なカロリー②糖質量の制限③糖質、たんぱく質、脂質のバランス④ビタミンおよびミネラルの適正な補給」
と記載されています。
なんと、2番目には驚くべきことに「糖質量の制限」と明記してあります。
これが、1969年の第2版になると
「①適正なカロリー(カロリーの制限)②糖質、たんぱく質、脂質のバランス③ビタミンおよびミネラルの適正な補給」
と変更されて、
「糖質量の制限」という文言が削除されています。
糖尿病食事療法の原則から、「糖質制限」が消えて、「カロリーの制限」が登場したのが2版です。

これ以降の食品交換表は、2013年、11年ぶりに改訂された第7版にいたるまで、「カロリー制限」一辺倒でした。

2013年10月の米国糖尿病学会の「栄養療法に関する声明」では、全ての糖尿病患者に適した“one-size-fits-all(唯一無二の)”食事パターンは存在しないとの見解を表明しました。
これに対して、日本糖尿病学会は、唯一無二の糖尿病食事療法として「カロリー制限・高糖質食」を、
1969年以来、現在まで推奨し続けています。

<日本における糖質制限食の歴史>
 戦前までは、厳重食があったのですが、1969年以降はすっかり消えてしまいました。
その後の糖質制限食の臨床実践は、1999年から釜池医師が宇和島で開始し、
同時に高雄病院でも筆者の兄江部洋一郎医師が開始し有効例を重ねました。

その経験を踏まえ医学文献では、2004年に筆者が本邦初の糖質制限食有効例の報告を行いました3)。
2005年には筆者が本邦初の一般向けの本を出版しました4)。

2006年荒木医師が「断糖宣言」、2007年釜池医師が「糖質ゼロの食事術」を刊行しました。
坂東医師、中村医師は約1000人を肥満外来で治療し糖質制限食の有効性を2008年に報告しました5)。
2009年、2010年、医学雑誌に筆者が小論文を発表しました6)7)。

その後、2012年に山田悟医師、白澤医師、2013年に夏井医師、2014年に渡辺信幸医師、
2015年に宗田医師が一般向け糖質制限食の本を出版しました8)9)10)11)12)。
糖質制限食の広がり、いよいよ加速がついてきました13)14)15)。


1)香川綾: 女子栄養大学「栄養と料理」 第4巻第4号 p46
  糖尿病の手当と食餌療法、昭和13年(1938年)
2)香川昇三:女子栄養大学「栄養と料理」 第9巻第5号 p27 
  糖尿病患者の厳重食、 昭和18年(1943年)
3)江部康二他:糖尿病食事療法として糖質制限食を実施した3症例,
      京都医学会雑誌51(1):125-130、2004
4)江部康二:主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ、
  2005年(東洋経済新報社)
5)坂東浩,中村巧:カーボカウントと糖質制限食, 治療,90(12):3105-3111,2008
6)江部康二:主食を抜けば(糖質を制限すれば)糖尿病は良くなる!,
  治療,91(4):682-683,2009
7)江部康二:低糖質食(糖質制限食carbohydrate restriction)の意義,
  内科,105(1):100-103,2010
8)山田悟:糖質制限食のススメ、2012年(東洋経済新報社)
9)白澤卓二:<白澤式>ケトン食事法、2012年(かんき出版)
10)夏井睦:「炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学」、光文社新書、2013年
11)渡辺信幸:日本人だからこそ「ご飯」を食べるな 肉・卵・チーズが健康長寿をつくる 、2014年(講談社)
12)宗田哲男:「ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか」、光文社新書、2015年
13)江部康二:「人類最強の『糖質制限』論 ケトン体を味方にして痩せる、健康になる」、SB新書、2016年
14)江部康二:外食でやせる! 「糖質オフ」で食べても飲んでも太らない体を手に入れる、2017年(毎日新聞出版)
15)江部康二:江部康二の糖質制限革命」2017年(東洋経済新報社)
糖質制限食で、不安発作、いびき、逆食、乱視改善。生活習慣病も。
【18/06/20 名無しの整体師
タイトルなし
初めまして。不安発作を患っていた時、
ケトン食が小児てんかんに著効が有るという情報を聞き
直感的に不安発作にも効くのではないか?と思い
糖質制限を朝から始めたところ
毎日、夕方頃に表れていた症状が初日から消えました。
メンタルクリニックから処方された抗不安薬に効果を感じなかった私にとって
驚きのことで、
しかも不安発作を何とかしたいと思ってはじめた糖質制限で
いびき、逆流性食道炎、乱視等の症状がいつの間にか消えていました。

最近、パーキンソンを患っている母を説得して糖質制限を試してもらったところ、
一日で手の震え、身体が軽くなったとのことなので
今後糖質制限を始める際の注意事項に留意しながら続けるようにしてもらうところです。
また、経過、質問、気付いたことなどがありましたら書き込ませていただきます。】


こんにちは。

名無しの整体師 さんから
糖質制限食で、不安発作、いびき、逆食、乱視改善という
とても嬉しいコメントを頂きました。
ありがとうございます。
素晴らしい経験ですね。

逆流性食道炎には即効性があることが多いですが、
不安発作にも速効性があったとはすごいです。

糖質制限食実践で、
ざっとあげてみても以下の様々な生活習慣病が改善します。

糖尿病
メタボリックシンドローム
肥満
肥満に伴う高血圧
アトピー性皮膚炎
花粉症
尋常性乾癬
逆流性食道炎
尋常性痤瘡
片頭痛
機能性低血糖
歯周症
潰瘍性大腸炎


こうなると、生活習慣病発症の本質は、
『糖質の頻回過剰摂取』
それに伴う
『食後血糖値の上昇』
『血糖変動幅の増大』
『インスリンの頻回過剰分泌』


であると私は最近は考えています。
『食後血糖値の上昇』『血糖変動幅の増大』『インスリンの頻回過剰分泌』
の三者は、いずれも『酸化ストレスリスク』となります。
これらはいずれも糖質制限食で予防可能です。

近年の研究で、
酸化ストレスが、
「糖尿病合併症・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー病・パーキンソン病等の元凶」
とされています。

確かに、御母上のパーキンソン病の症状改善にも貢献しているかもしれません。

そして、酸化ストレスリスクが、糖質制限食で予防できるのであれば
「糖尿病合併症・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー病・パーキンソン病など」
の予防にも有効な可能性が高いのです。

糖質制限食は人類本来の食事であり、人類の健康食であり、
様々な生活習慣病の治療・予防食です。


ブログ読者の皆さん、是非スーパー糖質制限食を実践されて
健康ライフをおくって頂けば幸いです。


江部康二
糖質制限食とマラソン。
【18/06/21 登山好きのランナー
いつもお世話になっております。
こんにちは。
いつも楽しく拝見しております。
過去に何度か糖質制限をしたことがありいつもある程度の成果を得ております。
今回も昨年、怪我とストレスで体重が増加してしまったので糖質制限を実施して4週間が経過しました。
46才男性事務職です。
毎朝5-10kmのランニングをしております。
今回は朝食抜き(もともとあまり食べることはない食生活)、昼はサラダ(海藻、きのこ類入)と鶏胸肉もしくは豚肉、夜は茶碗少なめ1杯の雑穀米や麺類少々を食べる時もある程度で主にストレスのない程度に家族とおかず中心の食事に低糖質の発泡酒等を350ml缶4-5本という感じで2食は主食抜きで間食やジュース類なし(もともとほとんど口にしない)の生活です。
3年ほど心拍計付の活動量計を腕に装着して記録しています。
今回、体重は平均して2.5kgマイナス、体脂肪率もマイナス2%とBMIは23台から22台へと順調に減量できているのですがひとつ問題が。
お酒に極端に弱くなりました。いつもの量を飲んでいるのにそのまま居間で眠ってしまうことが増え翌日も軽い二日酔い状態ということが増えました。
他サイトで水分量が減るので水分摂取を心がけるようにとあったので飲んでいる最中に炭酸水や烏龍茶を飲むようにしてこれは改善しました。
もうひとつは2週間経過したころから時折頭痛が出るようになりました。
思い当たるのはもともと軽度高血圧症なので測ってみると下が100前後で上が150近い数値でした。もともと似たような感じですが1年前に毎日計測していた時人比較すると若干高くなっています。
前述の活動量計の記録を確認すると安静時心拍数は糖質制限をはじめる前は52-54程度だったのが57-60と明確に上昇しております。糖質制限を開始した翌日から数値が上昇しています。
安静時心拍数の上昇、血圧の上昇(元々軽度高血圧症ではあるにしろ)は糖質制限となにか関係はありますでしょうか?またずばり間接的にでも頭痛を誘発することは考えられますでしょうか?よろしくお願いします。

PS 運動時の心拍数は糖質制限前後で特に上がりやすくなったとは感じていません。】




18/06/22 ドクター江部
Re: いつもお世話になっております。
登山好きのランナー さん

「安静時心拍数の上昇、血圧の上昇」

は糖質制限とは無関係と思います。
糖質制限をすると、血圧は下がることが多いです。
糖質制限と心拍数の変動は聞いたことがありません。

原因としては、運動量のわりに、摂取エネルギーが少ない可能性があります。


【18/06/22 登山好きのランナー
お返事ありがとうございます。
糖質制限による影響がないということがわかって安心しました。
が、心拍数に関しては聞いたことがないということですが糖質制限を開始したのとタイミングが同じでどこかに因果関係があるのでは?と素人ながら考えてしまいますね。
ありがとうございます。
目標体重まで減量できたら徐々にゆるやかな糖質制限食に戻そうと考えておりますのでその時に安静時心拍数がどう変化するのか確認してまたご報告させていただきます。
もうひとつ、以前の記事で登山でのシャリバテのことを書かれており実際自分もほとんど食べることなく登山をするのですがフルマラソン大会ではどうしても心配で栄養ゼリー等を補給します。糖質制限をしている時も糖質の補給は不要という記事も読みましたが市販の携行食やゼリーは糖質を多く含んだものばかりですがそういうものは逆に摂取すると悪影響でしょうか?携行するならこういうものが良いというものがあれば教えていただけますでしょうか?それとも結論的には水分補給のみで何も摂る必要はないと考えて良いのでしょうか?】



登山好きのランナーさん

マラソンのエネルギー源ですが、グリコーゲンは肝臓に約100g、
筋肉中に約300gしか蓄えがありません。
従って、<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムでは
400g×4= 1600kcalしか賄えませんので、
フルマラソンに必要なエネルギー量(体重60kgの男性で約2600kcal)には到底足りません。

その点、脂肪は、体重60kgで体脂肪率15%なら、9kg、81000kcalであり
必要充分な備蓄量と言えます。
つまり、理論的には42.195kmの走行課程のほとんどを、
有酸素運動の<脂肪酸-ケトン体>エネルギーシステムで走り、
ラストスパートだけ、
無酸素運動の<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムで
全力疾走というのが、理想的な配分と言えます。


結論からいうと、マラソン前も最中もスーパー糖質制限食でOKです。
水分も水で大丈夫で、塩は必要量を適宜補充です。

米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。
『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』
という内容です。

普段から
(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人
いずれの群もエリートランナーです。

研究施設に2泊3日で滞在、最大酸素摂取量、体組成、筋生検など実施、
その後トレッドミルで走った後、直後と2時間後に筋生検を実施です。

(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、
運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。

一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。

つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、
ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、
筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、
糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという研究報告です。


江部康二


ケトン適合したウルトラ持久力ランナーの代謝特性について

要約
背景


多くの成功したウルトラ持久力アスリートが、高炭水化物から低炭水化物食に切り替えた、しかし彼らは代謝適合の度合いを決定するために前もって研究はされてはいない。

方法

20人のエリートウルトラマラソンランナーとアイアンマン距離のトライアスリートが、代謝反応を決定するために最大強度の運動テストと180分間の64% VO2maxのサブ最大強度のトレッドミル運動を実行した。
1グループは従来の常に高炭水化物食(HC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25),
もう1つのグループは、低炭水化物食(LC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70),
で、平均20ヶ月(9~36ヶ月の範囲)実践した。

結果

ピークの脂肪酸化はLCグループ((1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000))が2~3倍高く、VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000)もより高かった。
サブ最高強度の運動中で平均脂肪酸化は、LCグループ(1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000)で、脂肪のが大きな貢献(88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000)に対応して59%高かった。
燃料使用量における、LCとHCの著明な相違にも関わらず、休息中の筋肉中のグリコーゲンと180分間ランニング (−64% from pre-exercise) 後のグリコーゲンレベルの低下と120分の回復(−36% from pre-exercise)において有意差はなかった。.

結論
HC(高糖質)食を実践している高度に訓練されたウルトラ持久力アスリートと比較して、長期のケトン適合食は著明に脂肪酸化の比率が高かった。
一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満パターンは運動中も3時間のランニング後も同様であった。



METABOLISM CLINICAL AND EXPERIMENTAL 65 (2016) 100 – 110
Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners


ABSTRACT
Background.

Many successful ultra-endurance athletes have switched from a highcarbohydrate
to a low-carbohydrate diet, but they have not previously been studied to
determine the extent of metabolic adaptations.

Methods.
Twenty elite ultra-marathoners and ironman distance triathletes performed a
maximal graded exercise test and a 180 min submaximal run at 64% VO2max on a treadmill
to determine metabolic responses.
One group habitually consumed a traditional highcarbohydrate
(HC: n = 10, %carbohydrate:protein:fat = 59:14:25) diet, and the other a lowcarbohydrate
(LC; n = 10, 10:19:70) diet for an average of 20 months (range 9 to 36 months).

Results.
Peak fat oxidation was 2.3-fold higher in the LC group (1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000) and it occurred at a higher percentage of VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000).
Mean fat oxidation during submaximal exercise was 59% higher in the LC
group (1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000) corresponding to a greater relative
contribution of fat (88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000). Despite these marked differences in fuel
use between LC and HC athletes, there were no significant differences in resting muscle
glycogen and the level of depletion after 180 min of running (−64% from pre-exercise) and
120 min of recovery (−36% from pre-exercise).

Conclusion.

Compared to highly trained ultra-endurance athletes consuming an HC diet,
long-term keto-adaptation results in extraordinarily high rates of fat oxidation, whereas
muscle glycogen utilization and repletion patterns during and after a 3 hour run are similar


芋焼酎と日本酒、ビール、食後の血糖値上昇が低いのはどれか?
【18/06/20 yanosono
ご参考です
http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100015/051500045/
芋焼酎と日本酒、ビール、食後の血糖値上昇が低いのはどれか?】


こんばんは。
yanosonoさんから、とても興味深い情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。

早速、日経グッデイの当該の記事を読んでみました。
以下は、記事の要約、抜粋と感想です。


芋焼酎と日本酒、ビール、食後の血糖値上昇が低いのはどれか?
http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100015/051500045/


まずは、ちょっとビックリなのですが、

「鹿児島大学は全国唯一の“焼酎学講座”が開設された大学で、焼酎についての研究も盛んに行われています。そして、私が糖尿病、肥満などを専門としていたことから、芋焼酎の健康面での機能性に注目しました。特に糖代謝にいい影響があるのではないかと考えたわけです。鹿児島は何を食べてもおいしいので、つい食べ過ぎてしまいます。さらに、車社会で慢性的に運動不足になりがちなので、実は肥満の方が多いのです」

という、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 特任教授の乾明夫さんのコメントです。
さすが鹿児島というか、焼酎に特化して学術的に研究というのは、
衝撃的ですし、そりゃー日本全国で唯一というのも納得ですね。

今回の実験の被験者は30~50代の男女6人で、「郷土の宝」である芋焼酎のため、
鹿児島大学のスタッフが被験者となったそうです。
その心意気やよしであり、good job です。

芋焼酎との比較対象は、水、ビール、日本酒の3種です。
飲酒量は、芋焼酎(アルコール度数15%)は333mL、
ビール(同5%)は1000 mL、日本酒(同15%)は333mLで、
純アルコール量はいずれも約40gと同等になるように調整です。

水も比較対象になっているのが興味深いです。
おそらく約710kcalの同一の食事での実験です。

研究結果ですが、
http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100015/051500045/?P=3
このアドレスで、グラフが見れます。

食事摂取後の血糖値の上昇は、
ビールが最も高く、次に水、日本酒で、
芋焼酎が最も低値でした。

芋焼酎は、糖質・カロリーともにゼロの“水”より、
血糖値の上昇が抑えられていました。
つまり、芋焼酎には積極的に血糖値を下げる
何らかの成分が存在することとなります。

もっとも、ビールには結構大量の糖質が含まれています。
100g中に3gくらいの糖質ですから、1000mlなら約30gの糖質でこれは多いですね。
第2位の水は糖質ゼロ・カロリーゼロですから、
このときの血糖値の上昇は、710kcalの食事に含まれる糖質によるものです。

第3位の日本酒ですが、333ml中の糖質含有量は、約13gですが、
それでも水より少し食後血糖値の上昇が低いので
日本酒にも、何らかの血糖値を下げる物質が含まれていることとなります。

そして最後に焼酎は、水よりかなり明確に食後血糖値の上昇が少ないでが、
これには焼酎の糖質含有量がゼロということも関係していると思います。

結局、日本酒と芋焼酎が、水より食後血糖値の上昇を抑制しましたが
効果としては芋焼酎の圧勝です。

結論です。
①日本酒と芋焼酎と水の結果を考慮すれば、
 アルコールそのものに血糖上昇抑制作用がある可能性が高い。
②芋焼酎には血糖上昇抑制作用があるが、それが、アルコール以外の成分も関与しているかは 現時点ではわからない。


ということとなります。
エチルアルコール単独で40g摂取して、芋焼酎(アルコール40g)摂取と比較して頂けば
芋焼酎にアルコール以外の血糖上昇抑制成分があるかどうかがわかると思います。
乾明夫先生、是非よろしくお願い申し上げます。


江部康二