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人体の基礎代謝。基礎代謝の比率。信頼度の高いデータ。
こんにちは。
今回は、
基礎代謝と各臓器の基礎代謝の比率について考察してみます。

基礎代謝とは、
①仰向けに寝る
②食事はなし
③適温でリラックスした状態

①②③の条件を満たしたときに消費されるエネルギーのことです。

人体の基礎代謝の比率に関して、いろんなデータがネット上で出回っています。
例えば厚生労働省のe-ヘルスネットのデータは以下です。

厚生労働省e-ヘルスネット 基礎代謝の比率
骨格筋  22%
肝臓   21%
脳    20%
心臓   9%
腎臓   8%
脂肪組織 4%
その他  16%



しかしながら、これらの様々な基礎代謝に関する情報の中で一番信頼できるデータが、

<人における組織・器官の代謝率:成人>
肝臓27%、脳19%、心臓7%、腎臓10%、筋肉18%、その他19% 

<人における組織・器官の代謝率:新生児>
肝臓20%、脳44%、心臓4%、腎臓7%、筋肉5%、その他20%


であり、「 FAO/WHO/UNU合同特別専門委員会報告」1989、13ページのTABLE 2に記載されています。
日本語訳はありましたが絶版です。

一般に通説として筋肉が基礎代謝の比率で一番多いとか言われていて、私も深く検証せずにそう思っていたのですが、
肝臓27%、筋肉18%というのは意外でした。
新生児の脳の比率は、すごいですね。

ともあれ、糖質制限食(高脂質・高タンパク食)においては、人体最大の基礎代謝率を占める肝臓が、
糖新生で活性化されるので、
糖質制限食で基礎代謝が増加するという仮説は、なかなか説得力があると自画自賛しています。
糖質セイゲニストにおいては、糖新生が多い分、肝臓の比率は27%より少し多い可能性もあります。

通常は、筋肉量の増加が基礎代謝の増加なのですが、例えば甲状腺機能亢進症でも、
基礎代謝の増加のために体重減少が生じます。

「エネルギー・蛋白質の必要量―FAO/WHO/UNU合同特別専門委員会報告-ヒトにおける基礎代謝率」は、医歯薬出版 (1990/03)で単行本になっているのですが、とっくに絶版です。


原著が以下のサイトに載っています。

http://www.fao.org/docrep/MEETING/004/M2845E/M2845E00.HTM
Joint FAO/WHO/UNU Expert Consultation on
Energy and Protein Requirements
Rome, 5 to 17 October 1981
BASAL METABOLIC RATE IN MAN
by
J.V.G.A. Durnin
University of Glasgow
Glasgow
Scotland

TABLE 2.Metabolic Rates of Organs and Tissues in Man


アマゾン
http://www.amazon.co.jp/dp/4263702476

エネルギー・蛋白質の必要量―FAO/WHO/UNU合同特別専門委員会報告 (WHOテクニカル・レポート・シリーズ)
単行本 – 1990/3
FAO/WHO/UNU合同特別専門委員会 (著), 井上五郎 (著)医歯薬出版 (1990/03)
残念ながら絶版です。


江部康二

暁現象の改善に、インターバル速歩、ながらジョギング。
【23/09/30  糖尿人
お世話になります。

早朝空腹時血糖

江部先生
早朝空腹時血糖 について質問したくメールします。
空腹時血糖高い値 だと体に悪影響及ぼすことが考察されるのでしょうか?
健康診断の数値105mg・dl規定

暁現象があるか判定のため?

暁現象が発生する理由の考察
教えていただければ幸いです。】


おはようございます。
こんにちは。
糖尿人 さんから、早朝空腹時血糖値高値について、コメントを頂きました。
まず、早朝空腹時血糖値ですが、105mg/dlなら、109mg/dl以下であり、正常値です。
日本糖尿病学会は、合併症予防のためには、早朝空腹時血糖値130mg/dl未満を推奨しています。
糖尿病の人における早朝空腹時血糖値の高値は、暁現象と考えられます。
 
早朝の空腹時血糖値は、正常人では、寝る前より低いのが普通です。
ところが、就寝前よりも朝起きたときの血糖値のほうが高いという現象が、
糖尿人によくみられ、「暁現象」と呼ばれています。
 
朝方3~4時ころは、基礎分泌インスリンは一番低値になります。
さらにこの時間帯、成長ホルモンコルチゾールが増えて
血糖が上がりやすくなるのですが、
正常人は即座にインスリン分泌を増やして対応します。
糖尿人はインスリンを増加させてそれに対抗できないから、
暁現象を生じるとされています。
 
成長ホルモンは、肝臓でのグリコーゲン分解を促し、
また抗インスリン作用(インスリンを抑制し、血糖値を上昇させる)を持つため、
血糖値を上昇させます。
コルチゾールは肝臓での糖新生を促進させて、血糖値を上昇させます。
 
また糖尿病患者では起床前後の交感神経活性化が暁現象に関係しています。
交感神経活性化でカテコラミンなどのインスリン拮抗ホルモンが増えます。
膵臓では交感神経刺激によりインスリン分泌抑制グルカゴン分泌促進が起こり、
血糖値が上昇します。
 
夜間睡眠時は、肝臓がブドウ糖を合成して(糖新生)血液中に送り、
血糖値を維持しますが、もともと糖尿人は正常人に比べて糖新生が増加しています。
 
この時間帯、基礎分泌インスリンは、正常人なら少し分泌されれば血糖値が下がりますが、
2型の糖尿人は正常人の2倍の量が必要だといわれていますので、
そもそもハンディがあります。
糖新生が多くなると、
正常人なら即座に基礎分泌インスリンの分泌を増加させて対応します。
しかし、糖尿人はインスリンの分泌量調整がスムースに血糖値いために、
糖新生を制御できず、暁現象が起きると考えられます。
 
暁現象を改善するには運動が良いです。
簡単で長続きする運動として
<インターバル速歩><ながらジョギング>がお奨めです。
 
以下のブログ記事をご参照頂ければ幸いです。
 
インターバル速歩と体力。8000歩/日との比較。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4826.html
2019年02月20日 (水)
 
体脂肪率の改善、糖質制限食、インターバル速歩、ながらジョグ。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5345.html
2020年08月20日 (木)

 

米国の糖尿病退役軍人285,705人の研究で、
A1c値は冬に高く、夏に低く、0.22の差がありました。
HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値の指標です。
つまり28万人という大規模な研究では、
血糖値は夏に低く、冬に高いということとなります。
糖尿人さんの空腹時血糖値は、季節変動はありますか?

 
江部康二


万病の元『糖尿病・メタボ・生活習慣病』を解決・糖質制限食」講演。東京。
こんにちは。
2023年11月5日(日)東京都内で、
「健康をセルフマネジメントする時代へ 
万病の元『糖尿病・メタボ・生活習慣病』
を解決する糖質制限食」

と題して、一般の方向けの講演会を開催いたします。
講師は、札幌市の西岡第一病院 麻酔科部長の清水泰行先生と私です。

清水先生は、ブログ「ドクターシミズのひとりごと」で、
豊富な文献や知識をもとに
糖質制限食を始めとして様々な情報を日々発信しておられます。


第1部は、私の「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」という題の講演です。
糖質制限食の最新知識と旧石器時代のお話をします。
日本列島にヒトが住み始めたのは旧石器時代からです。
旧石器時代は約38000年前から16000年前までの約22000年間続きました。

ナウマン象、ニホンシカ、イノシシ、ウサギ・・・ などを狩猟してとり、肉食が主でした。
・・・北海道ではマンモスも食べていました。
糖質摂取比率は10%以下でしたでしょう。 
当時の日本列島は多くは亜寒帯性の針葉樹林が広がっていて、
植物性の食品は乏しく漁撈も未発達なため、大型哺乳類を主とした狩猟に依存した生活でした。
植物食は自然薯(山芋)、百合根、コケモモ、松の実、山菜などしか、ありませんでした。

私達、日本人は、この肉食を主とした22000年間で、身体を形成したので、
肉食に特化して適合していると考えられます。
スーパー糖質制限食は、この旧石器時代の食生活と同様のPFCの摂取比率です。
米を食べ始めたのは、僅か2500年前の弥生時代からなので、肉食の歴史には遠く及びません。

第2部は、
清水先生に「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」と題して、
お話しいただきます。

講師より
「現代の生活習慣や食事は、人類の本来のものとはかけ離れてしまっています。
人間の代謝は食事と運動で変化します。
食事が間違っていれば、代謝も悪くなり、様々な疾患や症状を起こすでしょう。
糖質制限はかつてない広がりを見せていますが、日本の医療はいまだそれに逆行しています。

医療は日々進歩していると言われています。様々な治療法や薬が開発され、救われた人もいるでしょう。
しかし一方で、様々な病気が激増しています。まさにパンデミックです。
医学教育や医療は病気に対応する方向へ進むだけで、
病気にならないように予防する方向へとはほとんど進んでいません。
薬による検査の数値の正常化を目標とした医療では、
根本原因はそのままにされてしまうので、健康にはなれません。

健康を取り戻すためには、人間の本来の初期設定に戻す必要があります。
医療の常識や定説を覆し、根本から健康になるためにはどうすれば良いのか?
様々なエビデンスを提示して、糖質過剰摂取の危険性、
糖質制限で得られる大きなメリットなどについてお話させていただきます。」


ブログ読者の皆さん是非、東京講演会にご参加頂ければ、幸いです。


江部康二


以下事務局からのお知らせです。

*************

ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきまして、 ありがとうございます。

11月5日(日)東京都内で、「健康をセルフマネジメントする時代へ 万病の元『糖尿病・メタボ・生活習慣病』を解決する糖質制限食」と題して、一般の方向けの講演会を開催いたします。

講師は、札幌市の西岡第一病院 麻酔科部長の清水泰行先生と当会理事長の江部康二医師です。

第1部は、江部理事長が「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」 と題してお話しします。

第2部は、清水先生に「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」と題して、お話しいただきます。

清水先生は、健康や医療に関する定説に疑問を抱き、あまたの論文を参照しつつ考察を重ねて、ブログ「ドクターシミズのひとりごと」で精力的に情報を発信しておられ、『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』(光文社新書)等のご著書も上梓されています。

また、糖質制限を実践されながら、100㎞のウルトラマラソンも走るマラソンランナーでもいらっしゃいます。

糖尿病・メタボをはじめ生活習慣病でお困りの方、健康を取り戻したい方、健康を上手にセルフマネジメントされたい方、必聴の内容です。

関東にお住まいの方をはじめ、たくさんのご参加をお待ちしております。

*当日講演会終了後に、賛助会員交流会を開催いたします。

☆講演会・賛助会員交流会情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity

///////////////////ご案内/////////////////////

(一社)日本糖質制限医療推進協会主催 講演会(東京)

~健康をセルフマネジメントする時代へ~
万病の元「糖尿病・メタボ・生活習慣病」を解決する糖質制限食

◆日程:2023年11月5日(日)13:40~16:30頃 ※開場・受付は、13:20~

◆会場: WATERRAS COMMON 3F「ワテラスコモンホール」

東京都千代田区神田淡路町2丁目101番地
http://www.waterrascommon.com/access.html

◆受講費:賛助会員 2,800円 / 一般(会員の方以外)3,300円

◆内容: 第1部・第2部は講演各60分程度、最後に質疑応答を予定しております。

・第1部

「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」

講師: 江部 康二 医師 / (一財)高雄病院・(一社)日本糖質制限医療推進協会理事長

・第2部

「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」

講師: 清水 泰行 医師 / 社会医療法人仁陽会 西岡第一病院 麻酔科部長

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<清水先生より>

現代の生活習慣や食事は、人類の本来のものとはかけ離れてしまっています。
人間の代謝は食事と運動で変化します。
食事が間違っていれば、代謝も悪くなり、様々な疾患や症状を起こすでしょう。
糖質制限はかつてない広がりを見せていますが、日本の医療はいまだそれに逆行しています。

医療は日々進歩していると言われています。様々な治療法や薬が開発され、救われた人もいるでしょう。
しかし一方で、様々な病気が激増しています。まさにパンデミックです。
医学教育や医療は病気に対応する方向へ進むだけで、病気にならないように予防する方向へとはほとんど進んでいません。
薬による検査の数値の正常化を目標とした医療では、根本原因はそのままにされてしまうので、健康にはなれません。

健康を取り戻すためには、人間の本来の初期設定に戻す必要があります。
医療の常識や定説を覆し、根本から健康になるためにはどうすれば良いのか?
様々なエビデンスを提示して、糖質過剰摂取の危険性、糖質制限で得られる大きなメリットなどについてお話させていただきます。

<清水先生ご略歴>

北海道大学医学部卒業。
『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』 (光文社新書)など、これまでに3冊の著書を上梓している。
麻酔、ペインクリニック(痛み専門の治療)だけでなく、患者さんの健康的な食事の相談、糖質制限にも積極的に対応。
自身のブログ(*)では、病気および健康や運動、薬の副作用等の多くの情報を発信し続けている。
ウルトラマラソン(100km)も走るマラソンランナーでもある。
*「ドクターシミズのひとりごと」 https://promea2014.com/blog/

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。

◆お申し込み方法:

★賛助会員の方:
 
事務局へメールにて、参加ご希望のイベント名をご明記の上、お申し込み下さい。

※複数名でお申し込みの場合は、全員のご氏名をご明記下さい。
※領収書の発行をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。

★賛助会員入会をご希望の方:
 
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up

2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会出席のお問い合わせ」を選択いただき、「通信」欄に参加ご希望のイベント名(11/5東京講演会、賛助会員交流会)をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact

★一般(会員以外の方)で、講演会への参加のみご希望の方:

下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-gen

■その他:

・予約制です。当日参加はできません。

・当日は直接各会場へお越し頂き、受付にてお名前をお伝えください。

・講演会のキャンセルは11月2日(木)までに、交流会のキャンセルは10月31日(火)までに事務局へメールにてご連絡願います。
これら以降のご返金は対応致しかねますので、予めご了承ください。  
ケトン体について。ハーパー生化学。
【23/09/27 uragasumi

いつも、貴重な知識をありがとうございます。
先日、中学の友人3人で飲んだとき、医師をやっているやつだけが、
ケトン体がエネルギー源だということを知らなくて、
やはり、現在の世の中はこうなっているんだなとあらためて思いました。
こういう人に理解を深めてもらうには、
もし、論文や生理学・生化学のテキストの新しい版などの
ここに書いてあるという出典情報があると、
とても説得力があると思います。

大変ご面倒ではあるかと思いますが、
一度ご検討いただきますと、
世の中への貢献もさらに深まるかなと思います。】



こんにちは。
uragasumi さんから、ケトン体についてコメント・質問を頂きました。

なるほど、中学の友人3人で飲んだときに、
お医者さんだけが、ケトン体がエネルギー源になることを知らなかったのですね。
これは、ある意味、仕方のないことだと思います。
つまり、医学部の教育では、まずケトン体のことなどあまり習わないし、
臨床医になってからも<脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム>
のことなど学習する機会がないからです。

一方、ハーパー生化学という医学生の教科書がありますが、
ほぼ全ての医学生が持っていると思います。

この「ハーパー・生化学」(原著27版)の訳本、
155ぺージ・図16-9の説明に、
「心臓のような肝外組織では代謝エネルギー源は次の順に好まれて酸化される。
(1)ケトン体.(2)脂肪酸.(3)グルコース」

との記載があります。
また157ページ左側27行には、
「遊離脂肪酸は肝臓、心臓、骨格筋において好まれて利用される代謝エネルギー源であ り、
グル コースの消費を節約することができる。」

とあり、
157ページ、左側38行には、
「ケトン体は、骨格筋と心筋の主要な代謝エネルギー源であり、脳のエネルギーの必要性を部分的に満たす。」
とあります。

つまり、ケトン体は、脳を含めて、肝臓以外の全ての臓器や組織で、
もっとも好まれるエネルギー源
とされています。


また、脳は、エネルギー源として、ケトン体を最も好むと、Dr.Cahillは述べています。
2006年の論文ですが、 Dr.Cahillは当時、
最もケトン体について精力的に研究されていたと認識しています。
米ハーバード大のDr.Cahillはその論文で
「多くの研究により、ヒトの脳はブドウ糖なしでケトン体だけでも
生存できると思われるが、実験的にも倫理的にも証明は難しい」

としています。(注1)
注1:Annu. Rev. Nutr. 2006. 26:1-22 FUEL METABOLISM IN STARVATION George F. Cahill, Jr.

このように、ケトン体は、とても優れものなのです。

江部康二

ケトン体も脂肪酸も血液脳関門(BBB)を通過できる。
こんにちは。

血液脳関門(BBB)はとても大事なシステムですが、諸刃の剣でもあります。
BBBは、脳の血管と脳細胞の間での物質交換を制限する機構で、
神経機能に最適な環境を常に維持するのに役立っています。
一方、BBBがあることでほとんどの薬剤が血流から脳内へ移行できないため、
脳を対象とする治療において大きな障壁となっているのです。

さて一般には長い間、
「脂肪酸は血液脳関門(BBB)を通過できないがケトン体は通過できる」
とされていましたが、近年の研究で、
脂肪酸も血液脳関門を通過できることが明らかとなりました。

夏井睦医師著「炭水化物が人類を滅ぼす」(光文社新書、2013年)の231、232ページにも記載してあるように、
少なくともEPAやDHAという有名な脂肪酸が、血液脳関門を通過していることは確実です。

1)脂肪酸は血液脳関門を通過する。
2)脂肪酸はアストロサイトのミトコンドリア内でβ酸化されてエネルギー源となる。
3)神経細胞(ニューロン)では細胞膜の原料となるがエネルギー源としては使われない。


現時点で、1)2)3)が正解と考えられます。

アストロサイト(astrocyte)とは、中枢神経系に存在するグリア細胞の1つです。

グリア細胞 ( glial cell)は神経系を構成する神経細胞ではない細胞の総称であり、
ヒトの脳では細胞数で神経細胞の50倍ほど存在しているとされています。

アストロサイトは神経細胞を支えて支持している細胞です。

毛細血管の周囲はアストロサイトの足突起に覆われていて、
神経細胞と毛細血管の間には常にアストロサイトが介在しています。

『毛細血管-アストロサイト-神経細胞』を一つの構成単位として捉えるとわかりやすいです。

脂肪酸は神経細胞の細胞膜の原料となりますが、
エネルギー源としてはほとんど使われません。

これは、エネルギー源として利用するとき、
酸素消費が一番少ないのがケトン体で次がブドウ糖であり、
脂肪酸は酸素消費が多いからと思われます。

仮説ではありますが、進化の過程で脳が酸素不足にならないように、
神経細胞のミトコンドリアは脂肪酸をエネルギー源としないように
脂肪酸を分解する酵素を減らしたと考えられます。

アストロサイトは脂肪酸を分解してケトン体を産生します。
ケトン体は神経細胞に輸送されてミトコンドリアで代謝されてエネルギー源になります。


江部康二