2023年12月03日 (日)
こんにちは。
高雄病院には、1型糖尿病患者さんも、結構通院しておられます。
1型糖尿病患者さんは、全国に10〜14万人おられるようですが、そのほとんどが「糖質制限食」をご存じないと思います。
2018年10月19日のと糖尿病ネットワークの記事によると、以下の如くです。
【日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人と推定されると、
厚生労働省の研究班が公表した。とくにコントロールが難しい1型糖尿病を、
「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。
「こうした患者を支援する適切な対応が望まれる」と強調している。
厚生労働省の研究班による「1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究」(代表者:田嶼尚子・東京慈恵会医科大学)では、
2014年から4年間にわたって、1型糖尿病の実態調査などを続けてきた。
研究班はこのほど、日本の1型糖尿病の患者数の推計などを公表した。
1型糖尿病のなかでもとくにコントロールが難しく、
身体的にも社会的にも対応に格別の配慮が必要な1型糖尿病を、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。
「1型糖尿病患者の健康が損なわれるのを防ぐことが重要」と強調している。】
高雄病院に通院しておられない1型糖尿病患者さんのほとんどが、「糖質制限食」のことをご存じないと思います。
そして、血糖コントロールができている限り、
インスリン注射の単位は少なければ少ないほど身体に優しいという重要な事実を、ご存じないと思います。
インスリンの単位が多いと癌やアルツハイマー病のリスクになるというエビデンスもあまり知られていません。
またインスリンの単位が多いほど、当然、低血糖も生じやすいのです。
従って、1型糖尿病患者さんが、糖質制限食を導入してインスリンの単位を減らすことは、
大変大きなメリットがあるということです。
日本の1型糖尿病患者さんに、是非、「糖質制限食」のことを知って頂きたいと思っています。
江部康二
以下、中嶋一雄先生から、わかりやすいコメントを頂いた、
1型糖尿病に関する2019年12月1日の本ブログ記事を再掲します。
【19/11/30 中嶋一雄
糖尿病学会誌
学会誌「糖尿病」61巻11号787-788頁(2018)
「1型糖尿病患者における糖質制限について」いkの
中嶋一雄
https://doi.org/10.11213/tonyobyo.61.787
発行して1年経過したので、誰でも閲覧できるようになりました。
糖質制限に批判的な人物がいたら、これを印刷して読ませてあげてください】
おはようございます。
中嶋一雄先生から、コメントを頂きました。
ありがとうございます。
1型糖尿病患者における糖質制限について、
日本の文献と欧米の文献を整理整頓して論じて頂きました。(☆)
とても参考になります。
日本糖尿病学会誌に
糖尿病Vol. 60 (2017) No. 6 p. 449-455
症例報告厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン1回法を約15年継続している罹病歴33年の1型糖尿病の1例
https://doi.org/10.11213/tonyobyo.60.449
と題する症例報告が掲載されて、
主治医は
「日本糖尿病学会により推奨される食事療法(炭水化物 50-60 %)を摂取し
必要なインスリンを追加することが標準的な糖尿病の治療であり推奨する」
ことを説明したとあります。(☆☆)
この主治医の説明には、おおいに違和感を覚えます。
罹病歴33年の1型糖尿病患者さんが、自分の頭で考えて
厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン1回法を約15年継続し
血糖コントロール良好を保ち、糖尿病合併症なしです。
これだけ素晴らしい結果を出している1型糖尿病患者さんに対して、
エビデンスはないと日本糖尿病学会も自ら認めている、
「糖尿病食(炭水化物50~60%)」を推奨するとは、あり得ません。
少なくとも、この個人においては、最高の状態を保っているわけですので、
無根拠な「糖尿病食」を推奨する理由は皆無です。
計算してみると、2002年から糖質制限食を開始しておられます。
高雄病院で糖質制限食を導入したのは1999年ですが、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」江部康二著(東洋経済新報社)
を上梓したのが、2005年です。
ということは、日本で糖質制限食の概念が一般的になる前に、
自力で開始しておられるので、すごく勉強しておられるのだと思います。
なお、従来の糖尿病食は、カロリー制限・高糖質食ですので、
「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」という合併症リスクを、必ず生じます。
誠に遺憾ながら、従来の糖尿病食は、「合併症製造食」としか言いようがないのです
中嶋先生も指摘しておられるように「1型糖尿病と糖質制限」に関して
エビデンスはまだありません。
一方、症例報告は
「1 型糖尿病とてんかんの合併例に,超低炭水化物食であるケトン食療法を実施して,
血糖維持と痙攣発作がいずれも改善し安定した状態を得られたと,
すでに複数の症例が報告されている.」
「Flash glucose monitoring(FGM)とインスリンポンプを併用して,
1 型糖尿病患者にそれまでの 1 日量 100-150 g から,
30-50 g 迄に減量した低炭水化物食を実施した症例報告も行われている.
本例ではインスリンの 1 日量が 50 単位から30 単位に減量でき,
FGM により記録された毎日の平均血糖値は改善し,
脂質異常等の合併症も生じなかったとある.」
あります。
このように、
1型糖尿病において、糖質制限食を導入すれば、インスリンの単位が大幅に減量できます。
従って、低血糖リスクも大幅に減少します。
過剰のインスリンは酸化ストレスリスクであり、
<肥満、老化、動脈硬化、がん、アルツハイマー病・・・etc>
の元凶となりますので、インスリンの減量にはおおいに意味があります。
一方、減量したとはいえ、1型でインスリンは必ず注射していますので、
ケトアシドーシスのリスクは、ほぼ皆無と言えます。
つまり、1型糖尿病と糖質制限食は相性が良いということです。
(☆)
以下の緑の文字の記載が、中嶋先生の論文です。
学会誌「糖尿病」61巻11号787-788頁(2018)
「1型糖尿病患者における糖質制限について」
中嶋一雄
【近年糖尿病の食事療法に糖質制限食が注目され,米国のジョスリン糖尿病センターでは,2004 年より食事療法勧告において炭水化物を 40 %エネルギーと定めている1)
米国糖尿病学会は 2013 年 10 月より,
食事療法においてあらゆる栄養素比率を選択することが可能であるとの見解を出した2).
本誌 60 巻 6 号に
「厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン 1 回法を約 15 年継続している罹病歴 33 年の 1型糖尿病の 1 例」
と題する症例報告3)が掲載された.
日本糖尿病学会により推奨される食事療法(炭水化物 50-60 %)を摂取し
必要なインスリンを追加することが
標準的な糖尿病の治療であり推奨することを説明したとある.
一方,1 型糖尿病における糖質制限については統一見解には至っていないと思われる.
1 型糖尿病とてんかんの合併例に,超低炭水化物食であるケトン食療法を実施して,
血糖維持と痙攣発作がいずれも改善し安定した状態を得られたと,
すでに複数の症例が報告されている4~6).
2018 年になり,
1 型糖尿病と低炭水化物食との研究について系統的レビューが発表された7).
炭水化物を45 %エネルギー以下とした論文のレビューを実施したが,
HbA1c の低下がみられた論文とみられなかった論文とが混在しており,
エビデンスとしては限界があるため全体として結論は下せず,
さらなる臨床研究をすすめる必要があると記載されている.
一方,近年に使用開始された
Flash glucose monitoring(FGM)とインスリンポンプを併用して,
1 型糖尿病患者にそれまでの 1 日量 100-150 g から,
30-50 g 迄に減量した低炭水化物食を実施した症例報告も行われている8).
本例ではインスリンの 1 日量が 50 単位から30 単位に減量でき,
FGM により記録された毎日の平均血糖値は改善し,
脂質異常等の合併症も生じなかったとある.
FGM による血糖変化の観察と適切なインスリン調節が
安全な血糖維持をもたらしたと考えられ,
頭痛は減少し睡眠も良好化し情動面が改善するなど,本人の QOL も向上した.
1 型糖尿病患者における糖質制限についてさらなる臨床研究が望まれる.
(☆☆)
糖尿病Vol. 60 (2017) No. 6 p. 449-455
症例報告厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン1回法を約15年継続している罹病歴33年の1型糖尿病の1例
抄録
症例は46歳男性である.13歳時に1型糖尿病を発症し,インスリン治療を開始された.
10代より運動時の低血糖のためインスリンを減量し,
30代より糖質制限を行い持効型溶解インスリン1回法に変更,
HbA1c 7 %前後で経過した.
45歳,当科に入院時,我々は
1型糖尿病における糖質制限の有効性,安全性に関する報告は少なく
動脈硬化性疾患のリスクとなること,
インスリン減量がケトアシドーシス発症の危険となることを繰り返し説明し,
炭水化物比50~60 %の食事を勧めた.
しかし,現時点では動脈硬化性疾患やケトーシスの既往はなく,
患者の強い意向に沿った糖質制限食とインスリン1回法を容認せざるを得なかった.
その危険性を十分に患者に説明するとともに,
慢性合併症やケトーシスのモニタリング等,慎重に経過観察する必要がある.
厳密な糖質制限と持効型インスリン1回法を長期間継続した1型糖尿病の症例は
希少であるため,報告する.
江部康二
高雄病院には、1型糖尿病患者さんも、結構通院しておられます。
1型糖尿病患者さんは、全国に10〜14万人おられるようですが、そのほとんどが「糖質制限食」をご存じないと思います。
2018年10月19日のと糖尿病ネットワークの記事によると、以下の如くです。
【日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人と推定されると、
厚生労働省の研究班が公表した。とくにコントロールが難しい1型糖尿病を、
「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。
「こうした患者を支援する適切な対応が望まれる」と強調している。
厚生労働省の研究班による「1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究」(代表者:田嶼尚子・東京慈恵会医科大学)では、
2014年から4年間にわたって、1型糖尿病の実態調査などを続けてきた。
研究班はこのほど、日本の1型糖尿病の患者数の推計などを公表した。
1型糖尿病のなかでもとくにコントロールが難しく、
身体的にも社会的にも対応に格別の配慮が必要な1型糖尿病を、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。
「1型糖尿病患者の健康が損なわれるのを防ぐことが重要」と強調している。】
高雄病院に通院しておられない1型糖尿病患者さんのほとんどが、「糖質制限食」のことをご存じないと思います。
そして、血糖コントロールができている限り、
インスリン注射の単位は少なければ少ないほど身体に優しいという重要な事実を、ご存じないと思います。
インスリンの単位が多いと癌やアルツハイマー病のリスクになるというエビデンスもあまり知られていません。
またインスリンの単位が多いほど、当然、低血糖も生じやすいのです。
従って、1型糖尿病患者さんが、糖質制限食を導入してインスリンの単位を減らすことは、
大変大きなメリットがあるということです。
日本の1型糖尿病患者さんに、是非、「糖質制限食」のことを知って頂きたいと思っています。
江部康二
以下、中嶋一雄先生から、わかりやすいコメントを頂いた、
1型糖尿病に関する2019年12月1日の本ブログ記事を再掲します。
【19/11/30 中嶋一雄
糖尿病学会誌
学会誌「糖尿病」61巻11号787-788頁(2018)
「1型糖尿病患者における糖質制限について」いkの
中嶋一雄
https://doi.org/10.11213/tonyobyo.61.787
発行して1年経過したので、誰でも閲覧できるようになりました。
糖質制限に批判的な人物がいたら、これを印刷して読ませてあげてください】
おはようございます。
中嶋一雄先生から、コメントを頂きました。
ありがとうございます。
1型糖尿病患者における糖質制限について、
日本の文献と欧米の文献を整理整頓して論じて頂きました。(☆)
とても参考になります。
日本糖尿病学会誌に
糖尿病Vol. 60 (2017) No. 6 p. 449-455
症例報告厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン1回法を約15年継続している罹病歴33年の1型糖尿病の1例
https://doi.org/10.11213/tonyobyo.60.449
と題する症例報告が掲載されて、
主治医は
「日本糖尿病学会により推奨される食事療法(炭水化物 50-60 %)を摂取し
必要なインスリンを追加することが標準的な糖尿病の治療であり推奨する」
ことを説明したとあります。(☆☆)
この主治医の説明には、おおいに違和感を覚えます。
罹病歴33年の1型糖尿病患者さんが、自分の頭で考えて
厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン1回法を約15年継続し
血糖コントロール良好を保ち、糖尿病合併症なしです。
これだけ素晴らしい結果を出している1型糖尿病患者さんに対して、
エビデンスはないと日本糖尿病学会も自ら認めている、
「糖尿病食(炭水化物50~60%)」を推奨するとは、あり得ません。
少なくとも、この個人においては、最高の状態を保っているわけですので、
無根拠な「糖尿病食」を推奨する理由は皆無です。
計算してみると、2002年から糖質制限食を開始しておられます。
高雄病院で糖質制限食を導入したのは1999年ですが、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」江部康二著(東洋経済新報社)
を上梓したのが、2005年です。
ということは、日本で糖質制限食の概念が一般的になる前に、
自力で開始しておられるので、すごく勉強しておられるのだと思います。
なお、従来の糖尿病食は、カロリー制限・高糖質食ですので、
「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」という合併症リスクを、必ず生じます。
誠に遺憾ながら、従来の糖尿病食は、「合併症製造食」としか言いようがないのです
中嶋先生も指摘しておられるように「1型糖尿病と糖質制限」に関して
エビデンスはまだありません。
一方、症例報告は
「1 型糖尿病とてんかんの合併例に,超低炭水化物食であるケトン食療法を実施して,
血糖維持と痙攣発作がいずれも改善し安定した状態を得られたと,
すでに複数の症例が報告されている.」
「Flash glucose monitoring(FGM)とインスリンポンプを併用して,
1 型糖尿病患者にそれまでの 1 日量 100-150 g から,
30-50 g 迄に減量した低炭水化物食を実施した症例報告も行われている.
本例ではインスリンの 1 日量が 50 単位から30 単位に減量でき,
FGM により記録された毎日の平均血糖値は改善し,
脂質異常等の合併症も生じなかったとある.」
あります。
このように、
1型糖尿病において、糖質制限食を導入すれば、インスリンの単位が大幅に減量できます。
従って、低血糖リスクも大幅に減少します。
過剰のインスリンは酸化ストレスリスクであり、
<肥満、老化、動脈硬化、がん、アルツハイマー病・・・etc>
の元凶となりますので、インスリンの減量にはおおいに意味があります。
一方、減量したとはいえ、1型でインスリンは必ず注射していますので、
ケトアシドーシスのリスクは、ほぼ皆無と言えます。
つまり、1型糖尿病と糖質制限食は相性が良いということです。
(☆)
以下の緑の文字の記載が、中嶋先生の論文です。
学会誌「糖尿病」61巻11号787-788頁(2018)
「1型糖尿病患者における糖質制限について」
中嶋一雄
【近年糖尿病の食事療法に糖質制限食が注目され,米国のジョスリン糖尿病センターでは,2004 年より食事療法勧告において炭水化物を 40 %エネルギーと定めている1)
米国糖尿病学会は 2013 年 10 月より,
食事療法においてあらゆる栄養素比率を選択することが可能であるとの見解を出した2).
本誌 60 巻 6 号に
「厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン 1 回法を約 15 年継続している罹病歴 33 年の 1型糖尿病の 1 例」
と題する症例報告3)が掲載された.
日本糖尿病学会により推奨される食事療法(炭水化物 50-60 %)を摂取し
必要なインスリンを追加することが
標準的な糖尿病の治療であり推奨することを説明したとある.
一方,1 型糖尿病における糖質制限については統一見解には至っていないと思われる.
1 型糖尿病とてんかんの合併例に,超低炭水化物食であるケトン食療法を実施して,
血糖維持と痙攣発作がいずれも改善し安定した状態を得られたと,
すでに複数の症例が報告されている4~6).
2018 年になり,
1 型糖尿病と低炭水化物食との研究について系統的レビューが発表された7).
炭水化物を45 %エネルギー以下とした論文のレビューを実施したが,
HbA1c の低下がみられた論文とみられなかった論文とが混在しており,
エビデンスとしては限界があるため全体として結論は下せず,
さらなる臨床研究をすすめる必要があると記載されている.
一方,近年に使用開始された
Flash glucose monitoring(FGM)とインスリンポンプを併用して,
1 型糖尿病患者にそれまでの 1 日量 100-150 g から,
30-50 g 迄に減量した低炭水化物食を実施した症例報告も行われている8).
本例ではインスリンの 1 日量が 50 単位から30 単位に減量でき,
FGM により記録された毎日の平均血糖値は改善し,
脂質異常等の合併症も生じなかったとある.
FGM による血糖変化の観察と適切なインスリン調節が
安全な血糖維持をもたらしたと考えられ,
頭痛は減少し睡眠も良好化し情動面が改善するなど,本人の QOL も向上した.
1 型糖尿病患者における糖質制限についてさらなる臨床研究が望まれる.
(☆☆)
糖尿病Vol. 60 (2017) No. 6 p. 449-455
症例報告厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン1回法を約15年継続している罹病歴33年の1型糖尿病の1例
抄録
症例は46歳男性である.13歳時に1型糖尿病を発症し,インスリン治療を開始された.
10代より運動時の低血糖のためインスリンを減量し,
30代より糖質制限を行い持効型溶解インスリン1回法に変更,
HbA1c 7 %前後で経過した.
45歳,当科に入院時,我々は
1型糖尿病における糖質制限の有効性,安全性に関する報告は少なく
動脈硬化性疾患のリスクとなること,
インスリン減量がケトアシドーシス発症の危険となることを繰り返し説明し,
炭水化物比50~60 %の食事を勧めた.
しかし,現時点では動脈硬化性疾患やケトーシスの既往はなく,
患者の強い意向に沿った糖質制限食とインスリン1回法を容認せざるを得なかった.
その危険性を十分に患者に説明するとともに,
慢性合併症やケトーシスのモニタリング等,慎重に経過観察する必要がある.
厳密な糖質制限と持効型インスリン1回法を長期間継続した1型糖尿病の症例は
希少であるため,報告する.
江部康二
2023年12月01日 (金)
こんばんは。
糖質制限食ビギナーさんから、HOMA-R、HOMA-βについて、コメント・質問を頂きました。
今回は、インスリン、Cペプチド、「インスリン分泌指標」や「インスリン抵抗性指標」について
検討してみます。
早朝空腹時のインスリン(IRI)や血糖値を測定することで
いろんな指標が計算できます。
【インスリン、Cペプチド】
インスリン
早朝空腹時の血中インスリン(基準値は3.5~15μU/mL)を測定すれば、基礎分泌能力がわかります。
Cペプチド
通常は、血液中のインスリン(IRI)そのものを測定しますが、
インスリン注射中の糖尿人は、C-ペプタイド(CPR)というものを調べます。
IRIの測定は、注射したインスリンの影響を受けますので不正確になりますが、
CPRの方は、外から注射したインスリンとは無関係の、
内因性インスリンの分泌状態を示しています。
早朝空腹時血中CPR(基準値は1.5~3.5ng/mL)を測定することで、
インスリンの基礎分泌能力がわかります。
蓄尿して一日尿中のCPR(基準値は17~181μg/day)を測定することは、
一日の内因性インスリン分泌総量(基礎分泌+追加分泌)の指標となります。
以下に、臨床上役に立つ
インスリン分泌指標、インスリン抵抗性指標をまとめてみます。
【インスリン分泌指標】
HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時の検査であるが経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関する。
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度が高い。
正常値:40-60
30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下。
インスリン使用中の患者には使えない。
インスリン分泌指数
インスリン追加分泌のうち初期追加分泌能はインスリン分泌指数で見る。
Insulinogenic index(⊿IRI/⊿BS)
=(負荷後30分IRI値-負荷前IRI値)/ (負荷後30分血糖値-負荷前血糖値)
0.4以上は初期追加分泌能維持。2型では0.3以下が多い。
SUIT指数
空腹時CPR(ng/ml)×1485/<空腹時血糖値(mg/dl)-61.8>
50%以下は軽度、20%以下は顕著なインスリン分泌低下。
30%以下だとインスリン治療が必要。
Cペプチドインデックス(CPI)
空腹時CPR(ng/ml)×100/空腹時血糖値(mg/dl)
1.2以上は正常。0.8以下でインスリン分泌低下。
1.2以上の場合は食事や経口薬治療、0.8未満の場合はインスリン療法を選択。
空腹時血糖値140mg/dl以上なら、CPIのほうが、HOMA-βやSUIT指数より信頼度が高い。
【インスリン抵抗性指標】
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
江部康二
糖質制限食ビギナーさんから、HOMA-R、HOMA-βについて、コメント・質問を頂きました。
今回は、インスリン、Cペプチド、「インスリン分泌指標」や「インスリン抵抗性指標」について
検討してみます。
早朝空腹時のインスリン(IRI)や血糖値を測定することで
いろんな指標が計算できます。
【インスリン、Cペプチド】
インスリン
早朝空腹時の血中インスリン(基準値は3.5~15μU/mL)を測定すれば、基礎分泌能力がわかります。
Cペプチド
通常は、血液中のインスリン(IRI)そのものを測定しますが、
インスリン注射中の糖尿人は、C-ペプタイド(CPR)というものを調べます。
IRIの測定は、注射したインスリンの影響を受けますので不正確になりますが、
CPRの方は、外から注射したインスリンとは無関係の、
内因性インスリンの分泌状態を示しています。
早朝空腹時血中CPR(基準値は1.5~3.5ng/mL)を測定することで、
インスリンの基礎分泌能力がわかります。
蓄尿して一日尿中のCPR(基準値は17~181μg/day)を測定することは、
一日の内因性インスリン分泌総量(基礎分泌+追加分泌)の指標となります。
以下に、臨床上役に立つ
インスリン分泌指標、インスリン抵抗性指標をまとめてみます。
【インスリン分泌指標】
HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時の検査であるが経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、よく相関する。
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度が高い。
正常値:40-60
30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下。
インスリン使用中の患者には使えない。
インスリン分泌指数
インスリン追加分泌のうち初期追加分泌能はインスリン分泌指数で見る。
Insulinogenic index(⊿IRI/⊿BS)
=(負荷後30分IRI値-負荷前IRI値)/ (負荷後30分血糖値-負荷前血糖値)
0.4以上は初期追加分泌能維持。2型では0.3以下が多い。
SUIT指数
空腹時CPR(ng/ml)×1485/<空腹時血糖値(mg/dl)-61.8>
50%以下は軽度、20%以下は顕著なインスリン分泌低下。
30%以下だとインスリン治療が必要。
Cペプチドインデックス(CPI)
空腹時CPR(ng/ml)×100/空腹時血糖値(mg/dl)
1.2以上は正常。0.8以下でインスリン分泌低下。
1.2以上の場合は食事や経口薬治療、0.8未満の場合はインスリン療法を選択。
空腹時血糖値140mg/dl以上なら、CPIのほうが、HOMA-βやSUIT指数より信頼度が高い。
【インスリン抵抗性指標】
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
江部康二
2023年11月30日 (木)
こんにちは。
京都では、かなり久しぶりの糖質制限食の講演です。
京都の皆さん、是非ふるってご参加頂ければ幸いです。
主催は、NHK文化センター京都教室です。
糖質制限で健康になろう
~糖尿病・メタボ・生活習慣病を考える~
講師高雄病院 理事長 江部 康二
<教室講演>と<オンライン講演>があります。
日本列島にヒトが住み始めたのは旧石器時代からです。
旧石器時代は約38000年前から16000年前までの約22000年間続きました。
ナウマン象、オオツノジカ、ヘラジカ、シカ、イノシシ、ムササビ・・・ などを狩猟してとり、
肉食が主でした。
・・・北海道ではマンモスも食べていました。
糖質摂取比率は10%以下でしたでしょう。
当時の日本列島は多くは亜寒帯性の針葉樹林が広がっていて、
植物性の食品は乏しく漁撈も未発達なため、
大型哺乳類を主とした狩猟に依存した生活でした。
植物食は自然薯(山芋)、百合根、コケモモ、松の実、マツボックリ、山菜などしか、
ありませんでした。
私達、日本人は、この肉食を主とした22000年間で、身体を形成したので、
肉食に特化して適合していると考えられます。
スーパー糖質制限食は、この旧石器時代の食生活と同様のPFCの摂取比率です。
米を食べ始めたのは、僅か2500年前の弥生時代からなので、肉食の歴史には遠く及びません。
江部康二
■教室受講
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1280128.html
糖質制限で健康になろう
~糖尿病・メタボ・生活習慣病を考える~
講師高雄病院 理事長 江部 康二
カテゴリー 特別・短期・1日講座
特別講座・講演会 健康
お友達におすすめ
医学的に考える糖質制限法とは?
★こちらは 教室講座 です★
糖質制限食の理論を解説し
旧石器時代・縄文時代・弥生時代の食生活にも触れ、
症例も提示して、わかりやすく解説します。
【講師紹介】江部 康二(えべ こうじ)
一般財団法人高雄病院理事長。
一般社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長。
1950年京都府生まれ。
1974年京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所を経て、1978年より高雄病院に医局長として勤務。
2000年理事長就任。
2001年から糖質制限食に取り組む。
2002年に自身の糖尿病に気づき、自ら糖質制限食を実践、
肥満と糖尿病を克服。
豊富な症例をもとに糖質制限食の研究を続けている。
著書・監修書多
開催期間 12/9、土曜日
日時15:00~16:30
回数:1回
途中受講できません
受講形態:対面型コース受講料(税込み)
教材費(税込み):会員3,432円一般(入会不要)4,125円
日程 ○2023/12/09(土)
持ち物筆記用具
備考●こちらは教室講座です。
オンライン講座ではありません。
■オンライン受講
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1282360.html
糖質制限で健康になろう
~糖尿病・メタボ・生活習慣病を考える~
講師高雄病院 理事長 江部 康二
カテゴリー特別・短期・1日講座 >
特別講座・講演会 健康・エクササイズ・スポーツ >
お友達におすすめ
★「糖質制限食」の体系を確立したパイオニア!
★ こちらはオンライン講座です
★
糖質制限食の理論を解説し
旧石器時代・縄文時代・弥生時代の食生活にも触れ、
症例も提示して、わかりやすく解説します。
【講師紹介】江部 康二(えべ こうじ)
一般財団法人高雄病院理事長。
一般社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長。
1950年京都府生まれ。
1974年京都大学医学部卒業。
京都大学胸部疾患研究所を経て、1978年より高雄病院に医局長として勤務。
2000年理事長就任。
2001年から糖質制限食に取り組む。
2002年に自身の糖尿病に気づき、自ら糖質制限食を実践、肥満と糖尿病を克服。
豊富な症例をもとに糖質制限食の研究を続けている。
著書・監修書多
講座の詳細
教室名京都教室
開催期間12/9曜日・日時15:00~16:30
回数:1回
途中受講できません
受講形態オンラインコース受講料(税込み)
教材費(税込み):会員・一般(入会不要)3,300円日程
○2023/12/09(土)
●PC、タブレット(LANケーブルもしくはwi-fiに接続し、通信環境の良いところから参加してください)
※資料がある場合は招待メールにてご案内します。
※こちらの講座は教室講座を収録して配信します。
ご了承ください。
備考●事前にビデオ会議ツールZoomアプリをインストールしてください
(詳細は「オンライン講座受講前の準備」ページをご覧ください。)
※講座日前日にご登録のメールアドレスへZoomへの招待メールをお送りします。
※講座時間5分前よりZoomに入室いただけます。
京都では、かなり久しぶりの糖質制限食の講演です。
京都の皆さん、是非ふるってご参加頂ければ幸いです。
主催は、NHK文化センター京都教室です。
糖質制限で健康になろう
~糖尿病・メタボ・生活習慣病を考える~
講師高雄病院 理事長 江部 康二
<教室講演>と<オンライン講演>があります。
日本列島にヒトが住み始めたのは旧石器時代からです。
旧石器時代は約38000年前から16000年前までの約22000年間続きました。
ナウマン象、オオツノジカ、ヘラジカ、シカ、イノシシ、ムササビ・・・ などを狩猟してとり、
肉食が主でした。
・・・北海道ではマンモスも食べていました。
糖質摂取比率は10%以下でしたでしょう。
当時の日本列島は多くは亜寒帯性の針葉樹林が広がっていて、
植物性の食品は乏しく漁撈も未発達なため、
大型哺乳類を主とした狩猟に依存した生活でした。
植物食は自然薯(山芋)、百合根、コケモモ、松の実、マツボックリ、山菜などしか、
ありませんでした。
私達、日本人は、この肉食を主とした22000年間で、身体を形成したので、
肉食に特化して適合していると考えられます。
スーパー糖質制限食は、この旧石器時代の食生活と同様のPFCの摂取比率です。
米を食べ始めたのは、僅か2500年前の弥生時代からなので、肉食の歴史には遠く及びません。
江部康二
■教室受講
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1280128.html
糖質制限で健康になろう
~糖尿病・メタボ・生活習慣病を考える~
講師高雄病院 理事長 江部 康二
カテゴリー 特別・短期・1日講座
特別講座・講演会 健康
お友達におすすめ
医学的に考える糖質制限法とは?
★こちらは 教室講座 です★
糖質制限食の理論を解説し
旧石器時代・縄文時代・弥生時代の食生活にも触れ、
症例も提示して、わかりやすく解説します。
【講師紹介】江部 康二(えべ こうじ)
一般財団法人高雄病院理事長。
一般社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長。
1950年京都府生まれ。
1974年京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所を経て、1978年より高雄病院に医局長として勤務。
2000年理事長就任。
2001年から糖質制限食に取り組む。
2002年に自身の糖尿病に気づき、自ら糖質制限食を実践、
肥満と糖尿病を克服。
豊富な症例をもとに糖質制限食の研究を続けている。
著書・監修書多
開催期間 12/9、土曜日
日時15:00~16:30
回数:1回
途中受講できません
受講形態:対面型コース受講料(税込み)
教材費(税込み):会員3,432円一般(入会不要)4,125円
日程 ○2023/12/09(土)
持ち物筆記用具
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オンライン講座ではありません。
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糖質制限食の理論を解説し
旧石器時代・縄文時代・弥生時代の食生活にも触れ、
症例も提示して、わかりやすく解説します。
【講師紹介】江部 康二(えべ こうじ)
一般財団法人高雄病院理事長。
一般社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長。
1950年京都府生まれ。
1974年京都大学医学部卒業。
京都大学胸部疾患研究所を経て、1978年より高雄病院に医局長として勤務。
2000年理事長就任。
2001年から糖質制限食に取り組む。
2002年に自身の糖尿病に気づき、自ら糖質制限食を実践、肥満と糖尿病を克服。
豊富な症例をもとに糖質制限食の研究を続けている。
著書・監修書多
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教室名京都教室
開催期間12/9曜日・日時15:00~16:30
回数:1回
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教材費(税込み):会員・一般(入会不要)3,300円日程
○2023/12/09(土)
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ご了承ください。
備考●事前にビデオ会議ツールZoomアプリをインストールしてください
(詳細は「オンライン講座受講前の準備」ページをご覧ください。)
※講座日前日にご登録のメールアドレスへZoomへの招待メールをお送りします。
※講座時間5分前よりZoomに入室いただけます。
2023年11月29日 (水)
こんにちは。
インフルエンザが流行っています。
国立感染研究所のインフルエンザ流行レベルマップによれば、
2023年 第46週 (11月13日~11月19日) 2023年11月22日現在
2023年第46週の定点当たり報告数は21.66(患者報告数106,940)となり、
前週の定点当たり報告数17.35よりも増加しました。
43都道府県では前週の報告数よりも増加し、
4都道府県では前週の報告数よりも減少しました。
つまり、9割以上の都道府県で増加しています。
インフルエンザワクチンを既に接種した人もまだの人もおられると思います。
さて、それでは、インフルエンザワクチンの効果はどの程度あるのでしょうか?
今回は、インフルエンザワクチンについて考察してみます。
<インフルエンザワクチンに関する考察>
ワクチン接種後、抵抗力がつく まで2週間かかるとされ、
効果が持続する期間は約5か月間ですので、
10月初めに接種すれば、翌2024年の3月初めまではカバーできます。
まず、インフルエンザワクチンに関して、是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです。
すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、
数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。
以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、
「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、
マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、
必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。
<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、
過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体が駆けつけて戦うことになります。
鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますがあまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。
下記の青字は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」
(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」】
<集団感染>
石川県のホームページに、「インフルエンザ様疾患及び新型コロナウイルス感染症による集団感染事例」が記載されています。
それによると、2023/11/13~11/19で、
26の施設で集団感染が発生していて、そのうち学校が20施設です。
これらの中で、多くの施設において、インフルエンザワクチン接種済みと
思われます。
このように、インフルエンザワクチンは、水際での感染防御により
集団感染を防ぐことに関しては、
ほとんど無力だと思われます。
そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。
これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて記事にしました。
そして、日頃、自分の自然免疫を高めるような生活習慣を心がけることも大切です。
例えば、私はスーパー糖質制限食を実践して、8000歩/日(そのうち過半数は速歩)歩いています。
あとは、自分の頭で考えて、接種するか否かを選択して頂ければ幸いです。
江部康二
インフルエンザが流行っています。
国立感染研究所のインフルエンザ流行レベルマップによれば、
2023年 第46週 (11月13日~11月19日) 2023年11月22日現在
2023年第46週の定点当たり報告数は21.66(患者報告数106,940)となり、
前週の定点当たり報告数17.35よりも増加しました。
43都道府県では前週の報告数よりも増加し、
4都道府県では前週の報告数よりも減少しました。
つまり、9割以上の都道府県で増加しています。
インフルエンザワクチンを既に接種した人もまだの人もおられると思います。
さて、それでは、インフルエンザワクチンの効果はどの程度あるのでしょうか?
今回は、インフルエンザワクチンについて考察してみます。
<インフルエンザワクチンに関する考察>
ワクチン接種後、抵抗力がつく まで2週間かかるとされ、
効果が持続する期間は約5か月間ですので、
10月初めに接種すれば、翌2024年の3月初めまではカバーできます。
まず、インフルエンザワクチンに関して、是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです。
すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、
数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。
以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、
「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、
マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、
必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。
<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、
過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体が駆けつけて戦うことになります。
鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますがあまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。
下記の青字は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」
(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」】
<集団感染>
石川県のホームページに、「インフルエンザ様疾患及び新型コロナウイルス感染症による集団感染事例」が記載されています。
それによると、2023/11/13~11/19で、
26の施設で集団感染が発生していて、そのうち学校が20施設です。
これらの中で、多くの施設において、インフルエンザワクチン接種済みと
思われます。
このように、インフルエンザワクチンは、水際での感染防御により
集団感染を防ぐことに関しては、
ほとんど無力だと思われます。
そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。
これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて記事にしました。
そして、日頃、自分の自然免疫を高めるような生活習慣を心がけることも大切です。
例えば、私はスーパー糖質制限食を実践して、8000歩/日(そのうち過半数は速歩)歩いています。
あとは、自分の頭で考えて、接種するか否かを選択して頂ければ幸いです。
江部康二
2023年11月28日 (火)
こんにちは。
中西健一郎 さんから
「糖質制限時の体重が落ちる仕組みについて」
コメント・質問を頂きました。
糖質制限食実践による体重減少効果に関して、
よく質問がありますので、復習を兼ねて考察してみます。
スーパー糖質制限食なら、
運動量不変で、体脂肪が減ります。
例えば、血中総ケトン体の基準値は、
26~122μM/Lですが、スーパー糖質制限食実践中は、
400~1000~2000μM/Lくらいに上昇します。
肝臓で脂肪酸の分解物のアセチルCoAからケトン体を作ります。
ケトン体の上昇は、まさに脂肪が燃えている証拠ですね。
かくいう私も、52歳のとき、167cm、67kgから、スーパー糖質制限食実践で、
運動量は不変で、半年で57kgに減量し、学生時代の体重に戻りました。
階段は駆け上がるし、週1テニスは普通にしてましたので、
筋肉量は維持できていて、脂肪が燃えて減量できたと考えられます。
73歳現在も57kg前後で維持していて、階段は駆け上がります。
但し、4階くらいまでですが・・・。(^^;)
現在も筋肉は年齢相応ていど以上はあると思いますし、
歩く速度もかなり速いほうです。
スポーツジムなどで鍛えているわけではありませんが、
73歳としてはかなり体力はあるほうだと思います。
筋肉量を増やすには通常は筋トレが必要です。
しかし、毎日<インターバル速歩(3分間の速歩×5セット)>を、5セット以上実践しているので
筋力も少しは増えていると思います。
日常の歩行は、ほとんどが早歩きで、家では<ながらジョギング>もしていますので、
下肢の筋力は、73歳にしては、あるほうだと思います。
<インスリン>
それではまず、インスリンについて考えて見ます。
◇インスリンは脂肪細胞内の中性脂肪分解を抑制。
◇インスリンは血中の中性脂肪を分解し脂肪細胞内に蓄える。
◇インスリンは筋肉細胞に血糖を取り込ませるが、
余剰の血糖は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄える。
◇肥満のメカニズムはインスリンによる脂肪蓄積。
このようにインスリンには脂肪を蓄える作用があるので、
別名肥満ホルモンと呼ばれています。
そしてインスリンを大量に分泌させるのは、糖質のみです。
たんぱく質もインスリンを少し分泌させますが、脂質は分泌させません。
『糖質摂取→血糖上昇→インスリン分泌→脂肪蓄積』
このシステムは、狩猟・採集時代には、飢餓に対するセーフティーネットとして
おおいに役立っていたのですが、皮肉なことに現代では肥満の元凶となっています。
<スーパー糖質制限食の4つの利点>
◆<糖質制限食による体重減少効果>
①インスリン(肥満ホルモン)の基礎分泌はあるが、追加分泌は最小限である。
②食事中も含めて常に体脂肪が燃えている。
③食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ、それにかなりのエネルギーを消費する。
④高タンパク食により、食事誘発熱産生(DIT)が亢進する。
高蛋白食は、摂食時の食事誘発熱産生(DIT)が通常食に比べて増加します。
DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、糖質では6%、脂質では4%、タンパク質で30%です。
食事誘発熱産生(DIT)を、もっと簡単に説明すると、食事において
100キロカロリーの糖質だけを摂取した時は、6キロカロリーが、
100キロカロリーの脂質だけを摂取した時は、4キロカロリーが、
100キロカロリーのタンパク質だけを摂取した時は、30キロカロリーが
熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされるということです。
◆<糖質を摂取した場合>
A)血糖値が上昇してインスリン(肥満ホルモン)がたっぷり分泌される。
B)体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C)肝臓の糖新生はストップする。
D)高タンパク食よる亢進した食事誘発熱産生(DIT)はなくなる。
①②③④とA)B)C)D)両者を比べてみれば、高糖質食より糖質制限食の方が、
体重減少効果が高いことが一目でわかると思います。
たとえ低脂質食でカロリー制限していても、
糖質を摂れば体重減少への利点がすべて消えてしまうわけです。
これは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質であり、
あくまで糖質を摂るかどうかがカギとなります。
<摂取エネルギーと消費エネルギー>
1)摂取エネルギー > 消費エネルギー → 体重増加
摂取エネルギー = 消費エネルギー → 体重不変
摂取エネルギー < 消費エネルギー → 体重減少
2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発熱産生(DIT)」
3)糖質制限食なら、高糖質食の時には無い
「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の増加
「高蛋白食摂取」→食事誘発熱産生(DIT)の増加
が認められる。
1)は生理学的事実です。
2)3)を比較すると糖質制限食の方が高糖質食に比し、
体重が減少しやすいことは明白です。
<推定エネルギー必要量と糖質制限食>
減量を目指す時に、日本糖尿病学会推奨のように
男性:1600~2000kcal/日
女性:1400~1800kcal/日
といった、厳しいカロリー制限は必要ありません。
「日本人の食事摂取基準」(2020年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量/日
男性 女性
15-17才 2500 2850 3150 2050 2300 2550kcal
18-29才 2300 2650 3050 1650 1950 2200
30-49才 2300 2650 3050 1750 2000 2300
50-69才 2100 2450 2800 1650 1900 2200
70才 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
くらいが目安です。
このように、冷静に理論的に考えると、
糖質制限食以外で減量することは極めて困難であることがわかると思います。
上記の推奨通りに糖質制限食を実践しているのに、体重が減少しない場合は
以下のように、「基礎代謝が低い」とか「大食漢」とかがあります。
<基礎礎代謝が低い場合は?>
基礎代謝が低いタイプの人は
「糖質制限+カロリー制限」が必要です。
基礎代謝が低い人は、「推定エネルギー必要量」
が、通常より少なくなるということです。
女性に時にあり、数%くらいの比率です。
<大食漢タイプの場合は?>
大食いの方々が時におられます。やはり数%の比率です。自分は大食いなのに、それに気がついてないことがあります。例えば家族が皆大食いなのでそんなものと思っている場合です。他人と自分の食事摂取量を比較することも必要です。このタイプは「糖質制限食+人並みの摂取カロリー」が必要です。
人並みの摂取カロリーとは、すなわち「推定エネルギー必要量」です。
<減量できないときは?>
1)
いつのまにか、糖質制限が緩くなった可能性があります。
2)
何らかの理由で、基礎代謝が低下した可能性があります。
3)
大食いタイプ、或いは知らぬ間に、摂取カロリーが多くなった可能性があります。
4)
すでに、BMI20以上~25未満で適正体重になっていることがあります。
江部康二
中西健一郎 さんから
「糖質制限時の体重が落ちる仕組みについて」
コメント・質問を頂きました。
糖質制限食実践による体重減少効果に関して、
よく質問がありますので、復習を兼ねて考察してみます。
スーパー糖質制限食なら、
運動量不変で、体脂肪が減ります。
例えば、血中総ケトン体の基準値は、
26~122μM/Lですが、スーパー糖質制限食実践中は、
400~1000~2000μM/Lくらいに上昇します。
肝臓で脂肪酸の分解物のアセチルCoAからケトン体を作ります。
ケトン体の上昇は、まさに脂肪が燃えている証拠ですね。
かくいう私も、52歳のとき、167cm、67kgから、スーパー糖質制限食実践で、
運動量は不変で、半年で57kgに減量し、学生時代の体重に戻りました。
階段は駆け上がるし、週1テニスは普通にしてましたので、
筋肉量は維持できていて、脂肪が燃えて減量できたと考えられます。
73歳現在も57kg前後で維持していて、階段は駆け上がります。
但し、4階くらいまでですが・・・。(^^;)
現在も筋肉は年齢相応ていど以上はあると思いますし、
歩く速度もかなり速いほうです。
スポーツジムなどで鍛えているわけではありませんが、
73歳としてはかなり体力はあるほうだと思います。
筋肉量を増やすには通常は筋トレが必要です。
しかし、毎日<インターバル速歩(3分間の速歩×5セット)>を、5セット以上実践しているので
筋力も少しは増えていると思います。
日常の歩行は、ほとんどが早歩きで、家では<ながらジョギング>もしていますので、
下肢の筋力は、73歳にしては、あるほうだと思います。
<インスリン>
それではまず、インスリンについて考えて見ます。
◇インスリンは脂肪細胞内の中性脂肪分解を抑制。
◇インスリンは血中の中性脂肪を分解し脂肪細胞内に蓄える。
◇インスリンは筋肉細胞に血糖を取り込ませるが、
余剰の血糖は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄える。
◇肥満のメカニズムはインスリンによる脂肪蓄積。
このようにインスリンには脂肪を蓄える作用があるので、
別名肥満ホルモンと呼ばれています。
そしてインスリンを大量に分泌させるのは、糖質のみです。
たんぱく質もインスリンを少し分泌させますが、脂質は分泌させません。
『糖質摂取→血糖上昇→インスリン分泌→脂肪蓄積』
このシステムは、狩猟・採集時代には、飢餓に対するセーフティーネットとして
おおいに役立っていたのですが、皮肉なことに現代では肥満の元凶となっています。
<スーパー糖質制限食の4つの利点>
◆<糖質制限食による体重減少効果>
①インスリン(肥満ホルモン)の基礎分泌はあるが、追加分泌は最小限である。
②食事中も含めて常に体脂肪が燃えている。
③食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ、それにかなりのエネルギーを消費する。
④高タンパク食により、食事誘発熱産生(DIT)が亢進する。
高蛋白食は、摂食時の食事誘発熱産生(DIT)が通常食に比べて増加します。
DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、糖質では6%、脂質では4%、タンパク質で30%です。
食事誘発熱産生(DIT)を、もっと簡単に説明すると、食事において
100キロカロリーの糖質だけを摂取した時は、6キロカロリーが、
100キロカロリーの脂質だけを摂取した時は、4キロカロリーが、
100キロカロリーのタンパク質だけを摂取した時は、30キロカロリーが
熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされるということです。
◆<糖質を摂取した場合>
A)血糖値が上昇してインスリン(肥満ホルモン)がたっぷり分泌される。
B)体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C)肝臓の糖新生はストップする。
D)高タンパク食よる亢進した食事誘発熱産生(DIT)はなくなる。
①②③④とA)B)C)D)両者を比べてみれば、高糖質食より糖質制限食の方が、
体重減少効果が高いことが一目でわかると思います。
たとえ低脂質食でカロリー制限していても、
糖質を摂れば体重減少への利点がすべて消えてしまうわけです。
これは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質であり、
あくまで糖質を摂るかどうかがカギとなります。
<摂取エネルギーと消費エネルギー>
1)摂取エネルギー > 消費エネルギー → 体重増加
摂取エネルギー = 消費エネルギー → 体重不変
摂取エネルギー < 消費エネルギー → 体重減少
2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発熱産生(DIT)」
3)糖質制限食なら、高糖質食の時には無い
「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の増加
「高蛋白食摂取」→食事誘発熱産生(DIT)の増加
が認められる。
1)は生理学的事実です。
2)3)を比較すると糖質制限食の方が高糖質食に比し、
体重が減少しやすいことは明白です。
<推定エネルギー必要量と糖質制限食>
減量を目指す時に、日本糖尿病学会推奨のように
男性:1600~2000kcal/日
女性:1400~1800kcal/日
といった、厳しいカロリー制限は必要ありません。
「日本人の食事摂取基準」(2020年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量/日
男性 女性
15-17才 2500 2850 3150 2050 2300 2550kcal
18-29才 2300 2650 3050 1650 1950 2200
30-49才 2300 2650 3050 1750 2000 2300
50-69才 2100 2450 2800 1650 1900 2200
70才 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
くらいが目安です。
このように、冷静に理論的に考えると、
糖質制限食以外で減量することは極めて困難であることがわかると思います。
上記の推奨通りに糖質制限食を実践しているのに、体重が減少しない場合は
以下のように、「基礎代謝が低い」とか「大食漢」とかがあります。
<基礎礎代謝が低い場合は?>
基礎代謝が低いタイプの人は
「糖質制限+カロリー制限」が必要です。
基礎代謝が低い人は、「推定エネルギー必要量」
が、通常より少なくなるということです。
女性に時にあり、数%くらいの比率です。
<大食漢タイプの場合は?>
大食いの方々が時におられます。やはり数%の比率です。自分は大食いなのに、それに気がついてないことがあります。例えば家族が皆大食いなのでそんなものと思っている場合です。他人と自分の食事摂取量を比較することも必要です。このタイプは「糖質制限食+人並みの摂取カロリー」が必要です。
人並みの摂取カロリーとは、すなわち「推定エネルギー必要量」です。
<減量できないときは?>
1)
いつのまにか、糖質制限が緩くなった可能性があります。
2)
何らかの理由で、基礎代謝が低下した可能性があります。
3)
大食いタイプ、或いは知らぬ間に、摂取カロリーが多くなった可能性があります。
4)
すでに、BMI20以上~25未満で適正体重になっていることがあります。
江部康二