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緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について
【日付名前
23/05/27yamamoto    
緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について
はじめまして、
先生のブログを拝見し、
緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について、
アドバイスいただきたく連絡いたしました。
男性(59歳 )です。 身長 168cm 体重 59kg
毎年受けている健康診断でA1Cの値が5.7~5.9とやや高く、
今年3月に糖尿の専門医院に受診したところ、
抗AGD抗体陽性で緩徐進行性1型糖尿病と診断されました。
早期発見でインスリンが分泌されている状態なので
今のところインスリンの必要は無く経過観察といわれています。

過去の健康診断の結果を見ると、
6~7年前からA1Cや空腹時血糖が高くなり始めているので、
6~7年前に1型糖尿病に罹患したのではないかと思っています。
糖質制限を始める前は、玄米や野菜中心の食生活をしていました。
お酒は飲みません、タバコもすいません。

緩徐進行性1型糖尿病と診断せれてから、
掛かり付けの医師に相談しながら
私なりに膵臓に負担をかけない、
血糖値の上下の変動が少ない食生活が良いと思い
糖質制限を始めようと思いました。

糖質制限は、今年、1月中旬から
1日120g以下(週一回は甘いお菓子などを食べていました)をはじめ、
1型糖尿病と診断されたため3月20日からスーパー糖質制限を始めました。

今後、できれば糖質制限など食生活や生活習慣の改善で
インスリンを使わず生活していきたいと思っています。
(掛かり付けの医師は糖質制限には否定派ですが、
私が糖質制限を行っていることについては受け入れて頂いています。)

その上で、先生に幾つか質問があります。

○ ブログには1型糖尿病でインスリンフリーを続けている患者さんの話が
 載っていますが、緩徐進行1型糖尿病での糖質制限の効果、
 インスリンフリーの可能性などをお聞かせください。
○ 緩徐進行1型糖尿病で糖質制限行っていくうえで注意点をお聞かせください。
○ 尿素窒素の値が高くなってきてますが大丈夫ですか?
○ 中性脂肪、低い HDLとLDLが高いが大丈夫ですか?
○ スーパー糖質制限を始めて約1ヵ月後に検査を受けましたが 
  A1Cの値に変化は見られませんでした、なぜでしょうか?
  A1C 6.0%(3/9)→6.1%(4/20)
〇今後、A1Cが下がる可能性はありますか?
○ ケトン体について、時々血液(リブレで測定)でケトン体を測定しています。
  200~300ぐらいです。
  ケトン体の数値があまり上がりませんが、  
  ケトン回路に切り替わっていないと言う事ですか?

よろしくお願いします。

年齢 59歳 身長 168cm 体重 59kg

検査結果
              2023/3/9          2023/4/20
抗GAD抗体         36.6              -
インスリン空腹        2.7               -
c-ペプチド          1.2               -

A1C             6.0               6.1
血糖(BS)前       110                 113

総ケトン体        269                164
アセト酢酸        63                  39  
3ヒドロキシラク酸    206                 125

尿素窒素         22.6                32.0
中性脂肪         42                 42
HDL          70                 87
LDL           140                188】



こんにちは。緩徐進行1型糖尿病のyamamoto さんから、
コメント・質問を頂きました。

2023/3/9         
抗GAD抗体        36.6(5未満)          
空腹時インスリン値     2.7(2.7~10.4)

   
血中インスリン値:2.7~10.4μU/mL(国立がん研究センター)
空腹時インスリン基準値は、検査機関により少し異なることがありますが、
yamamoto さんの場合、正常の下限くらいの分泌量が残っているようです。
抗GAD抗体 は明らかに陽性ですので、
緩徐進行1型糖尿病という診断で間違いないと思います。


【毎年受けている健康診断でA1Cの値が5.7~5.9とやや高く、
今年3月に糖尿の専門医院に受診したところ、
抗AGD抗体陽性で緩徐進行性1型糖尿病と診断されました。
早期発見でインスリンが分泌されている状態なので
今のところインスリンの必要は無く経過観察といわれています。】


HbA1cの正常値は、日本糖尿病学会は6.0未満としています。
HbA1cが5.7~5.9%なので、ぎりぎり正常値内に収まっています。
従って、現時点ではインスリン治療の必要はありません。


【糖質制限を始める前は、玄米や野菜中心の食生活をしていました。
お酒は飲みません、タバコもすいません。】


玄米を食べていた頃は、「食後高血糖」「血糖変動幅増大」
という酸化ストレスリスク、合併症リスクがあったと考えられます。


【緩徐進行性1型糖尿病と診断せれてから、
掛かり付けの医師に相談しながら
私なりに膵臓に負担をかけない、
血糖値の上下の変動が少ない食生活が良いと思い
糖質制限を始めようと思いました。】


ご自分で考えて、<血糖値の上下の変動が少ない食生活⇒糖質制限>
に辿り着かれたのは、素晴らしいことです。


【糖質制限は、今年、1月中旬から
1日120g以下(週一回は甘いお菓子などを食べていました)を始め、
1型糖尿病と診断されたため3月20日からスーパー糖質制限を始めました。】

そうですね、1型糖尿病と確定診断ですから、
食後高血糖から自分のβ細胞を守るためには
スーパー糖質制限食という選択がベストです。
180mg/dlを超える血糖値は、β細胞に障害を与えます。
揺るやかな糖質制限食で、
1回に40gの糖質だと、2型でも食後血糖値は120mg/dl上昇して、
180mg/dlを超えます。
まして1型なら食後血糖値は180mg/dlを軽く超えてしまうと思います。


【今後、できれば糖質制限など食生活や生活習慣の改善で
インスリンを使わず生活していきたいと思っています。
(掛かり付けの医師は糖質制限には否定派ですが、
私が糖質制限を行っていることについては受け入れて頂いています。)】


主治医のドクターは、「糖質制限をするな」と言わないのは、素晴らしいです。



【○ ブログには1型糖尿病でインスリンフリーを続けている患者さんの話が
 載っていますが、緩徐進行1型糖尿病での糖質制限の効果、
 インスリンフリーの可能性などをお聞かせください。】


 自己免疫的にβ細胞が壊れるのが1型糖尿病ですが、その速度は遅いと思います。
現実には高血糖がβ細胞を障害する速度の方が遥かに早いので、
スーパー糖質制限食で、血糖コントロール良好を保つことが、極めて重要です。

【○ 緩徐進行1型糖尿病で糖質制限行っていくうえで注意点をお聞かせください。】
スーパー糖質制限食で、血糖コントロール良好を保つのみです。

【○ 尿素窒素の値が高くなってきてますが大丈夫ですか?】
 スーパー糖質制限食は相対的に高蛋白食となるので、BUN が上昇することがあります。
しかし、クレアチニン値やシスタチンC値が正常なら、腎機能は大丈夫です。
一度、最も信頼度が高い腎機能検査である<シスタチンC>を検査しましょう。

【○ 中性脂肪、低い HDLとLDLが高いが大丈夫ですか?】
 中性脂肪値が60mg/dl以下でHDL-Cが60mg/dl以上あれば
LDL-Cも全て標準の大きさの善玉ですので心配ありません。

【○ スーパー糖質制限を始めて約1ヵ月後に検査を受けましたが 
  A1Cの値に変化は見られませんでした、なぜでしょうか?
  A1C 6.0%(3/9)→6.1%(4/20)】

3/9のHbA1c値は、血糖変動幅増大のある<質の悪いHbA1c>です。
一方、4/20のHbA1cは、血糖変動幅増大がほとんどない<質の良いHbA1c> です。

【〇今後、A1Cが下がる可能性はありますか?】

 5.8%とか5.9%になる可能性はあると思います。

【○ ケトン体について、時々血液(リブレで測定)でケトン体を測定しています。
  200~300ぐらいです。
  ケトン体の数値があまり上がりませんが、  
  ケトン回路に切り替わっていないと言う事ですか?】

3月20日からスーパー糖質制限を始めておられて、
1ヶ月後の4月20日の総ケトン体が 164 です。
スーパー糖質制限を続ければ今後さらに上昇してくると思います。
ただ、ケトン体の上昇には個人差があります。
スーパー糖質制限食で総ケトン体が2000とか3000の人もおられます。
スーパー糖質制限歴21年間の江部康二の総ケトン体値は
300~600~900~1200くらいです。

基準値
総ケトン体 26~122μmoL/L
アセト酢酸 13~ 69μmoL/L
3-ヒドロキシ酪酸 0~ 76μmoL/L



江部康二
コメント
江部先生はじめまして。
先生のブログを、ブログ内検索を使って、辞書みたいな感じで利用させていただいてます。
糖尿病に関する様々な情報が得られるのでありがたいです。

そして質問なんですが、糖質を摂取すると、2型は血糖値が3倍、1型は血糖値が5倍というのは、多くの糖尿人に当てはまるのでしょうか?
YouTubeで2型の人の血糖値の検証動画を沢山見てきたのですが、丼物を食べても3倍も上がってなかったりします。
やはり食べ方もかなり影響してくるのでしょうか?
血糖値が500超えても元気な人もいると聞きます。
江部先生のご見解をお聞かせください。
2023/05/28(Sun) 23:42 | URL | ショウ | 【編集
Re: タイトルなし
ショウ さん


1gの糖質を摂取すると、体重が64kgの2型糖尿病の人だと、血糖値が3mg上昇します。
体重が32kgの2型糖尿病の人だと6mg上昇させます。


1gの糖質を摂取すると、体重が64kgの1型糖尿病の人だと、血糖値が5mg上昇します。
体重が32kgの1型糖尿病の人だと10mg上昇させます。

勿論、個人差がありますので、およその数字です。
2023/05/29(Mon) 06:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
返信ありがとうございます。
体重の軽い人の方が、血糖値が上がりやすいのは初めて知りました。
痩せたら内臓脂肪が落ちて、インスリン抵抗性が弱くなって、糖尿病が治るとか言ってる人もいますが間違ってるのでしょうか?

もう一つ質問なんですが、健康な人は血糖値が140以上にはならない説があったりしますが、youtubeには糖尿病に該当しない人でも、食後血糖値140オーバーの人が沢山います。
いまいち糖尿病の定義が分かりません。
江部先生の見解をお聞かせください。
2023/05/29(Mon) 16:33 | URL | ショウ | 【編集
Re: タイトルなし
ショウ さん


①糖尿病の診断については、以下の本ブログ記事をご参照頂ければ幸いです。

http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-6130.html
糖尿病早期発見のために 。糖尿病の診断。境界型の分類。
2022年11月11日 (金)


②体重の軽い人の方が、血糖値は上昇しやすいという生理学的事実があります。

③肥満している糖尿病の人でインスリン抵抗性がある場合は
 肥満が改善すれば、インスリン抵抗性も改善していきます。
 インスリン抵抗性が改善すれば、血糖値も改善していきます。
 

④20歳くらいまでの正常型の人は
 糖質を一人前摂取しても、食後血糖値が140mg/dlを超えることはありません。

⑤糖尿病家系の場合は、20歳くらいでも、
 糖質を一人前摂取したら、食後血糖値が140mg/dlを超えることがあります。

⑥30代、40代以上になってくると、正常型の人でも
 糖質を一人前摂取したら、食後1時間血糖値が180mg/dlを超えることがあります。
2023/05/29(Mon) 17:24 | URL | ドクター江部 | 【編集
緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について②
江部先生

ご返答ありがとうございます。
緩徐進行性1型糖尿病と診断されて以降、糖質制限を始めて検査の数値(尿素窒素やLDLなど)にも変化が出てきて糖質制限がベストだと思いながらも、いろいろな部分に不安を感じていました。
細かくご回答また、アドバイス頂き大変助かりました。

糖質制限を続けていくうえで、食事時間と空腹時間について、伺いたいことがあります。

今まで1日2食で、仕事の関係で夜遅く食事をしていました。
11:00 昼食
22:00 夕食 
睡眠時間 24:00~6:30
でしたが、3食にした方が血糖値の変動が少ないと聞き下記の時間に1ヶ月ぐらい前から仕事中に夕食をとるように切り替えました。
9:00(無調整豆乳、プロティン、MTCオイル10cc)糖質 約5g
11:00 昼食 糖質 約20g
17:00 夕食 糖質 約20g
(間食にナッツ、プロセツチーズ、無調整豆乳)
睡眠時間 24:00~6:30

糖質制限を続けてから、空腹感を感じる事が少なくなり、居間の食生活に大きなストレスを感じておりません。夜も空腹感などあまり気にせず寝る事ができます。

現在の食事時間などで改善する事などあればアドバイスお願いします。
糖質制限を行っていく上で、2食か3食が良いか?
空腹時間を長く取る事は、胃腸などを休めるために有効と聞いたことがあります。空腹時間の長さと血糖値の変動などどの様に考えて食事をしていけば良いですか?

よろしくお願いします。
2023/05/29(Mon) 18:11 | URL | yamamoto | 【編集
Re: 緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について②
yamamoto さん


食事の回数は、1日に、2回でも3回でもよいです。
自分のライフスタイルに都合が良いパターンにすればよいと思います。


私自身は、2型糖尿病ですが、
 朝食は、<コーヒー+生クリーム10ml>
 昼食は、高雄病院の糖質制限給食
 夕食は、高雄病院の糖質制限給食や、外食、あるいは自宅で<刺身とステーキとサラダ>などで、スーパー糖質制限食
 です。
 1日ニ食と言えます。


夕食を夜6~7時にすませれば、翌日の昼食まで、約17時間あります。
17時間あると、小断食(ファースティング)となり、ケトン体が上昇しやすくなります。
ケトン体には、心・腎・脳保護作用があります。
私自身は、時々、1日1食としますが、この場合は24時間断食ですね。


欧米でも、近年、<ファースティングとケトン体>が、ポジティブに注目されています。

2023/05/29(Mon) 18:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
ご丁寧な返信ありがとうございます!
リンク先も拝読させていただきました。
10代の頃に授業中に寝てた人達は、糖尿病家系の人が多そうですね。
そして30代40代以上になると変わってくる人も多いんですね。。。

江部先生は毎食スーパー糖質制限食なんですか?
たまに糖質を摂りすぎたりすることはないのでしょうか?
ここまでストイックな人は中々いないですよね。
食費も気になります。リスペクトです。
2023/05/29(Mon) 18:31 | URL | ショウ | 【編集
Re: タイトルなし
ショウ さん

<糖質制限食>開始直後は、酔っ払って帰ってきたら、テーブルの上のケーキとか食べたりしてました。

慣れたらそういうことはなくなりました。
カロリー制限ではないので、
肉、魚をしっかり充分量食べて、糖質ゼロビール、焼酎、辛口ワインが飲めるので
まったく辛くありません。
我慢しているわけではないので、本人は、ストイックというイメージはありません。

<脂肪・蛋白無制限食>と言いかえれば、ほとんどストイックではないですね。
2023/05/30(Tue) 14:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
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