2023年05月19日 (金)
【23/05/18 yk
インスリン抵抗性と脂肪摂取
たまに投稿してる健常者です。
ネット記事のなかに、時々出てくるのが、糖尿の治療で脂質を減らしたほうが、
インスリン抵抗性が少なく、
少量のインスリンで血糖値を下げることができる、というのがあります。
また、インスリン分泌がない糖尿患者では、
脂質もタンパク質もある程度血糖値を上げるという報告があります。
また、健常者が炭水化物だけを摂取した場合、
炭水化物と脂質を等量摂取した場合、
炭水化物とタンパク質を等量摂取した場合の、血糖値の比較では、
炭水化物だけの場合は食後血糖値は急上昇後急下降、
炭水化物と脂質の場合は食後血糖は炭水化物だけの半分ぐらいまで上昇後
ゆっくり時間をかけて下降、
炭水化物とタンパク質の場合も脂肪の場合と同じような経過をたどる、
という報告もあります。
直接血糖値を上げるのは炭水化物(糖質)だけです。
上記の内容を総合すると、糖新生の関りが重要ではないかと思います。
血糖値上昇の試験で、脂質、タンパク質が加わると、血糖の上昇は低いが、ゆっくり降下するのは、糖新生が脂質、タンパク質の摂取で高まり、インスリン分泌が増えてるのではないかと思います。
なので、脂質を減らしたほうがインスリン抵抗性は少ないというのも一理あり、糖尿の重症化防止に一定の効果があるかもしれませんが、長期で見た場合は、血糖値の乱高下とインスリン過分泌は続くので、重症化のリスクはなくならないと思います。
炭水化物と脂質の割合が等量でなく、スーパー糖質制限の場合は、インスリンの過分泌は大幅に少なくなるので、糖新生が高まったとしても、インスリンの分泌は少なくなってるので、糖尿発症はないものと思います。】
こんにちは。
インスリン抵抗性と脂肪摂取について、yk さんから、コメント・質問を頂きました。
【インスリン分泌がない糖尿患者では、
脂質もタンパク質もある程度血糖値を上げるという報告があります。】
①糖質は唯一、直接血糖値を上昇させます。
②蛋白質は、直接血糖値を上昇させることはありません。
蛋白質はグルカゴンを分泌させて、、糖新生により間接的に血糖値を上昇させますが、
通常は同時にインスリンも分泌されるので、効果が相殺されて、
血糖値は上昇しません。
1型糖尿病で、インスリン分泌能力がない場合は、
蛋白質摂取でグルカゴンのみ分泌されるので、
糖新生により間接的に血糖値が上昇します。
2型糖尿病でも、インスリン分泌能力が極めて低下している場合は
蛋白質摂取で糖新生により、間接的血糖値が上昇します。
③脂質は、直接的にも間接的にも血糖値を上昇させませんし、インスリンもグルカゴンも 分泌させません。
【健常者が炭水化物だけを摂取した場合、
炭水化物と脂質を等量摂取した場合、
炭水化物とタンパク質を等量摂取した場合の、血糖値の比較では、
炭水化物だけの場合は食後血糖値は急上昇後急下降、
炭水化物と脂質の場合は食後血糖は炭水化物だけの半分ぐらいまで上昇後
ゆっくり時間をかけて下降、
炭水化物とタンパク質の場合も脂肪の場合と同じような経過をたどる、
という報告もあります。】
これは、その通りと思います。
【糖新生の関りが重要ではないかと思います。
血糖値上昇の試験で、脂質、タンパク質が加わると、血糖の上昇は低いが、ゆっくり降下するのは、糖新生が脂質、タンパク質の摂取で高まり、インスリン分泌が増えてるのではないかと思います。】
ご指摘通り、間接的血糖値上昇には、糖新生が密接に関わっています。
しかし脂質は糖新生は生じず、直接的にも間接的にも血糖値を上昇させません。
脂質は、当然ながら、インスリンも分泌させません。
そして、2023/5/18(木)のブログ記事で述べましたように、
<RCT(ランダム化比較試験)レベル1+>
①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
糖質制限食(高脂肪・低糖質食)が、低脂肪食に比し、
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加に有効で
体重,脂質,血糖,血圧を改善させることが、
上記の最高レベルのエビデンスにより証明されています。
<体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加>
となれば、当然、インスリン抵抗性は改善します。
すなわち、高脂肪・低糖質食により、インスリン抵抗性は改善します。
江部康二
インスリン抵抗性と脂肪摂取
たまに投稿してる健常者です。
ネット記事のなかに、時々出てくるのが、糖尿の治療で脂質を減らしたほうが、
インスリン抵抗性が少なく、
少量のインスリンで血糖値を下げることができる、というのがあります。
また、インスリン分泌がない糖尿患者では、
脂質もタンパク質もある程度血糖値を上げるという報告があります。
また、健常者が炭水化物だけを摂取した場合、
炭水化物と脂質を等量摂取した場合、
炭水化物とタンパク質を等量摂取した場合の、血糖値の比較では、
炭水化物だけの場合は食後血糖値は急上昇後急下降、
炭水化物と脂質の場合は食後血糖は炭水化物だけの半分ぐらいまで上昇後
ゆっくり時間をかけて下降、
炭水化物とタンパク質の場合も脂肪の場合と同じような経過をたどる、
という報告もあります。
直接血糖値を上げるのは炭水化物(糖質)だけです。
上記の内容を総合すると、糖新生の関りが重要ではないかと思います。
血糖値上昇の試験で、脂質、タンパク質が加わると、血糖の上昇は低いが、ゆっくり降下するのは、糖新生が脂質、タンパク質の摂取で高まり、インスリン分泌が増えてるのではないかと思います。
なので、脂質を減らしたほうがインスリン抵抗性は少ないというのも一理あり、糖尿の重症化防止に一定の効果があるかもしれませんが、長期で見た場合は、血糖値の乱高下とインスリン過分泌は続くので、重症化のリスクはなくならないと思います。
炭水化物と脂質の割合が等量でなく、スーパー糖質制限の場合は、インスリンの過分泌は大幅に少なくなるので、糖新生が高まったとしても、インスリンの分泌は少なくなってるので、糖尿発症はないものと思います。】
こんにちは。
インスリン抵抗性と脂肪摂取について、yk さんから、コメント・質問を頂きました。
【インスリン分泌がない糖尿患者では、
脂質もタンパク質もある程度血糖値を上げるという報告があります。】
①糖質は唯一、直接血糖値を上昇させます。
②蛋白質は、直接血糖値を上昇させることはありません。
蛋白質はグルカゴンを分泌させて、、糖新生により間接的に血糖値を上昇させますが、
通常は同時にインスリンも分泌されるので、効果が相殺されて、
血糖値は上昇しません。
1型糖尿病で、インスリン分泌能力がない場合は、
蛋白質摂取でグルカゴンのみ分泌されるので、
糖新生により間接的に血糖値が上昇します。
2型糖尿病でも、インスリン分泌能力が極めて低下している場合は
蛋白質摂取で糖新生により、間接的血糖値が上昇します。
③脂質は、直接的にも間接的にも血糖値を上昇させませんし、インスリンもグルカゴンも 分泌させません。
【健常者が炭水化物だけを摂取した場合、
炭水化物と脂質を等量摂取した場合、
炭水化物とタンパク質を等量摂取した場合の、血糖値の比較では、
炭水化物だけの場合は食後血糖値は急上昇後急下降、
炭水化物と脂質の場合は食後血糖は炭水化物だけの半分ぐらいまで上昇後
ゆっくり時間をかけて下降、
炭水化物とタンパク質の場合も脂肪の場合と同じような経過をたどる、
という報告もあります。】
これは、その通りと思います。
【糖新生の関りが重要ではないかと思います。
血糖値上昇の試験で、脂質、タンパク質が加わると、血糖の上昇は低いが、ゆっくり降下するのは、糖新生が脂質、タンパク質の摂取で高まり、インスリン分泌が増えてるのではないかと思います。】
ご指摘通り、間接的血糖値上昇には、糖新生が密接に関わっています。
しかし脂質は糖新生は生じず、直接的にも間接的にも血糖値を上昇させません。
脂質は、当然ながら、インスリンも分泌させません。
そして、2023/5/18(木)のブログ記事で述べましたように、
<RCT(ランダム化比較試験)レベル1+>
①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
糖質制限食(高脂肪・低糖質食)が、低脂肪食に比し、
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加に有効で
体重,脂質,血糖,血圧を改善させることが、
上記の最高レベルのエビデンスにより証明されています。
<体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加>
となれば、当然、インスリン抵抗性は改善します。
すなわち、高脂肪・低糖質食により、インスリン抵抗性は改善します。
江部康二
Re.インスリン抵抗性と脂肪摂取
江部先生、ご指摘ありがとうございます。
たいへん勉強になります。
脂肪が起因となる糖新生はないということですね。
また、脂肪が起因となるインスリン抵抗性の悪化は無いということですね。
最高レベルの論文で、高脂肪低糖質食はインスリン抵抗性を改善することを示しているということですね。
ありがとうございます。
私はスーパー糖質制限で、摂取カロリーの70%を脂質で摂ってます。タンパク質の摂取量は130gです。総カロリーは2200kcalです。73歳、170cm、55kgです。糖質制限以前より血圧が下がり、頻発していた口内炎も全くなくなり、若くなったといわれたり、禿がなくなったり、いいことづくめです。高脂肪食が健康に悪いとは、どう考えても言いがかりにしか聞こえないのです。
江部先生、ご指摘ありがとうございます。
たいへん勉強になります。
脂肪が起因となる糖新生はないということですね。
また、脂肪が起因となるインスリン抵抗性の悪化は無いということですね。
最高レベルの論文で、高脂肪低糖質食はインスリン抵抗性を改善することを示しているということですね。
ありがとうございます。
私はスーパー糖質制限で、摂取カロリーの70%を脂質で摂ってます。タンパク質の摂取量は130gです。総カロリーは2200kcalです。73歳、170cm、55kgです。糖質制限以前より血圧が下がり、頻発していた口内炎も全くなくなり、若くなったといわれたり、禿がなくなったり、いいことづくめです。高脂肪食が健康に悪いとは、どう考えても言いがかりにしか聞こえないのです。
yk さん
仰る通りです。
そもそも、日本人が日本列島に居住し始めたのは
38000年前の旧石器時代からです。
当時は非常に寒かったので、食べ物は、
マンモス、ナウマンゾウ、鹿、猪・・・
などの動物製食品がほとんどでした。
寒さのため植物は針葉樹であり、植物性の食品で食べることが出来たのは
「自然薯」「コケモモ」くらいしかありませんでした。
旧石器時代は、約22000年間続き、
この間、日本人の身体・内臓・内分泌・神経・生理・代謝などが完成されていきました。
すなわち、私たちの身体は、肉食に特化して適合していると言えます。
仰る通りです。
そもそも、日本人が日本列島に居住し始めたのは
38000年前の旧石器時代からです。
当時は非常に寒かったので、食べ物は、
マンモス、ナウマンゾウ、鹿、猪・・・
などの動物製食品がほとんどでした。
寒さのため植物は針葉樹であり、植物性の食品で食べることが出来たのは
「自然薯」「コケモモ」くらいしかありませんでした。
旧石器時代は、約22000年間続き、
この間、日本人の身体・内臓・内分泌・神経・生理・代謝などが完成されていきました。
すなわち、私たちの身体は、肉食に特化して適合していると言えます。
2023/05/21(Sun) 08:24 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、こんにちは。
10年前に先生の御著書を拝読し糖質制限をして以来、お陰様で体調は非常に良いです。
少し前の脂肪悪玉説の肥満の話で申し訳ないのですがRAP食を提案している真島康雄先生が糖質制限での脂質の取り過ぎは血管にプラークが溜まって動脈硬化の原因になって危険だと言う内容の本を出されております。
因みにRAP食とは良質な油含めて全ての脂質を制限して白米と野菜のごった煮中心の食事をする事です。私個人はは糖質制限をして脂質の方ははあまり気にしていなくても数値も健康状態も良好ですので現状維持なんですが循環器系のお医者
様に脂質の取り過ぎは動脈硬化の原因になると断言されるとちょっと怖いです。
この辺の江部先生のご見解を一度お聞きしたく投稿させて頂きました、お忙しい中、不躾な質問で申し訳ございません。
10年前に先生の御著書を拝読し糖質制限をして以来、お陰様で体調は非常に良いです。
少し前の脂肪悪玉説の肥満の話で申し訳ないのですがRAP食を提案している真島康雄先生が糖質制限での脂質の取り過ぎは血管にプラークが溜まって動脈硬化の原因になって危険だと言う内容の本を出されております。
因みにRAP食とは良質な油含めて全ての脂質を制限して白米と野菜のごった煮中心の食事をする事です。私個人はは糖質制限をして脂質の方ははあまり気にしていなくても数値も健康状態も良好ですので現状維持なんですが循環器系のお医者
様に脂質の取り過ぎは動脈硬化の原因になると断言されるとちょっと怖いです。
この辺の江部先生のご見解を一度お聞きしたく投稿させて頂きました、お忙しい中、不躾な質問で申し訳ございません。
2023/05/21(Sun) 10:52 | URL | ふるたか | 【編集】
タンパク質摂取による糖新生は、どの程度の糖をどの程度の時間で産生するのでしょうか?
私はインスリン初期分泌が遅く、糖質摂取では血糖値が急上昇しますが、タンパク質摂取ではほとんど変動はありません。要するにタンパク質摂取時に産生される糖の量とスピードであればインスリンの自己分泌で対応できていると考えられます。また、宴会などで2時間ほどかけてゆっくりと食事をした最後に締めのご飯などを少し食べた場合も血糖値は正常範囲の変動です。
これらの事から私の血糖値がジェットコースターにならないためには、時間をかけて食事をする事でインスリンの分泌が間に合うようにすれば良い事はわかりますが、タンパク質摂取時には血糖変動がない事からその時の糖新生の量とスピードが目安になるのではないかと考えています。
私はインスリン初期分泌が遅く、糖質摂取では血糖値が急上昇しますが、タンパク質摂取ではほとんど変動はありません。要するにタンパク質摂取時に産生される糖の量とスピードであればインスリンの自己分泌で対応できていると考えられます。また、宴会などで2時間ほどかけてゆっくりと食事をした最後に締めのご飯などを少し食べた場合も血糖値は正常範囲の変動です。
これらの事から私の血糖値がジェットコースターにならないためには、時間をかけて食事をする事でインスリンの分泌が間に合うようにすれば良い事はわかりますが、タンパク質摂取時には血糖変動がない事からその時の糖新生の量とスピードが目安になるのではないかと考えています。
2023/05/22(Mon) 08:52 | URL | 西村典彦 | 【編集】
ふるたか さん
2023年5月18日の本ブログ記事
脂肪悪玉説は間違いで、脂肪は善玉である。マウスと動物実験について。
をご参照頂ければ幸いです。
2023年5月18日の本ブログ記事
脂肪悪玉説は間違いで、脂肪は善玉である。マウスと動物実験について。
をご参照頂ければ幸いです。
2023/05/22(Mon) 16:49 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、ご返信ありがとうございます。
2023/05/23(Tue) 15:01 | URL | ふるたか | 【編集】
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