2023年04月02日 (日)
こんばんは。
今回は、人類の大好きな甘みについて考察してみました。
最近は糖質制限食OKのスイ-ツ(エリスリトールなど使用)が普通に販売されていて、
糖質セイゲニストにとってとても幸せな時代となっていて、私としてもうれしい限りです。
食品メーカーさんがビジネスチャンスとしてとらえてはりきってくれていて、ありがたいことです。
糖尿病の患者さんでも、メタボリックシンドロームの患者さんでも、
そしてアトピー性皮膚炎の患者さんでも、老若男女を問わず、
甘党はかなりの割合でおられるでしょう。
かく言う私も、決して甘党ではないつもりで、日ごろ家人に「甘いものなんか要らないもんね」などと言ってはいるのですが、
酔っぱらって帰宅した翌朝には、テーブルの上のチョコレートがきれいさっぱり無くなっていたりしますので(記憶にはないのですが……)、大きなことは言えません。
最近は血糖を上げないエリスリトールやステビアを使用したチョコレートもあるので大丈夫なのです。
一方で「糖類ゼロ」というキャッチコピーの場合は
ほぼマルチトールという血糖を砂糖の半分くらい上げる甘味料がたっぷり含まれているので見極めが重要です。
そういうわけで、今回はさまざまな甘みのもとについて検討してみます。
人類史上初の甘味料 蜂蜜
紀元前6000年頃に描かれた、スペイン・アラーニャ洞窟の壁画には、蜂蜜を採集する人の姿が残っています。
この絵が示すように、人類が初めて口にした甘味は、天然の蜂蜜と言われています。
ちなみに蜂蜜に含まれる糖質は、果糖(約40%)、ブドウ糖(約35%)、ショ糖(スクロース、数%)です。
蜂が集めてきた花の蜜は主にショ糖なのですが、
働き蜂の唾液腺から分泌される転化酵素の働きによってブドウ糖及び果糖へと変化し、
同時に水分が約20%にまで濃縮されます。
果糖は血糖値をほとんど上げない糖質なのですが、
中性脂肪に変わりやすい性質があるため、蜂蜜は太りやすい甘味料です。
一方で、ビタミンやミネラルの含有量が多く、
その中には18種を超える有機酸が含まれていてpH値は3.2~4.9、つまり酸性を示します。
しかし蜂蜜はカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムなどの体内に吸収されるとアルカリ性を示すミネラルが豊富なので、
アルカリ性食品に分類されます。
ちなみに酸性を示すミネラルは、塩素、リン、硫黄などです。
インドから世界に広がった砂糖
蜂蜜以外の甘味料として、サトウキビ(甘藷<カンショ>)の搾り汁を煮詰めて精製した結晶、
いわゆる「白砂糖」を作り出すのに成功したのは、紀元前のインド人です。
インドの砂糖は、アレクサンダー大王(紀元前356年~同323年)の東征により、
西方、現在の中東から欧州へと伝わりましたが、庶民には高嶺の花、かなりの貴重品でした。
ですから長らく西洋でも日常の甘味料としては蜂蜜が唯一のものでした。
中国では玄奘(三蔵法師)のインド行きがきっかけで、製糖法が伝わり、
7世紀以降に砂糖生産が始まったとされています。
砂糖が日本に伝わったのは、奈良時代後期に鑑真が唐から渡来した折と言われています。
欧州、中国、日本いずれでも砂糖はずっと貴重品で、たしなむことができるのは貴族だけでした。
奴隷制と切り離せない砂糖大量生産の歴史
17世紀後半以降、砂糖は多量にかつ安価に生産できるようになります。
同時に、庶民にも解禁され、英国では紅茶にたっぷりの砂糖を入れることが一般的となりました。
世界に広がったその風習が、砂糖の過剰摂取につながり、
英国のみならず世界中の肥満や糖尿病の元凶であると問題になっています。
余談になりますが、砂糖の大量生産の歴史は、
カリブ海の西インド諸島に築かれた欧州各国の植民地で行われたサトウキビ栽培に端を発します。
欧州の白人が、西インド諸島に住んでいた人たちを奴隷として過酷な労働を強いた結果、現地の人口が激減します。
するとアフリカから黒人を奴隷として連れてきて働かせる、ということを行いました。
サトウキビ栽培の歴史は、奴隷制度の歴史そのものと言っても過言ではないようです。
時がたち、徐々に奴隷制度廃止へと歴史が動きますが、
この辺の話題は「砂糖の歴史」(エリザベス・アボット著、樋口幸子訳、河出書房新社)という本に詳しく書かれていますので、
興味のある人にはお薦めです。
マニアックな大著ですので読むのに骨がおれますが……。
砂糖だけではないショ糖を含む食品
そういう悲惨な歴史を経て、庶民の口にも入るようになった砂糖ですが、
その主成分はショ糖で、ブドウ糖と果糖が結合したものです。
サトウキビのほか、サトウダイコン(甜菜<テンサイ>)からも作られます。
砂糖の中でもショ糖の純度の高いものがグラニュー糖(99.95%)や氷砂糖(99.98%)です。
家庭で最もポピュラーな上白糖は、独特のしっとりした感じを持たせるために、
ショ糖の結晶に濃厚な転化糖液(ビスコ)を少量ふりかけたもので、純度は97.8%です。
「転化糖」とは、ショ糖を加水分解してできたブドウ糖と果糖の混合物で、ショ糖より甘みが強いものです。
意外かもしれませんが、ショ糖は大豆、大根、白菜、ネギ、ホウレンソウなどの野菜や、
アーモンド、ピーナツなどのナッツ類にも少量含まれています。
植物が持つ天然のエネルギー源として、存在しているのでしょう。
料理をする人の間では、「ショ糖含有率が高い大豆がおいしい」と言われており、
その一例が夏に枝豆として食べられる品種です。
中にはショ糖を100gあたり4.3gも含む品種もあります。
この時点で糖質量としては本醸造の清酒と同じくらいです。
もちろんかなり甘くておいしいと思いますが、
ショ糖に加えて、でんぷんや麦芽糖も含まれているので糖質制限をしている人には要注意の食材です。
糖質はみな同じ砂糖だけが悪者ではない、
米国では著述家、ウイリアム・ダフティが1975年「Sugar Blues(シュガー・ブルース)」(邦訳は「砂糖病(シュガー・ブルース)甘い麻薬の正体」)を著して、砂糖の毒性、危険性を説きました。
以来、砂糖はことあるごとに悪者扱いされて、
糖尿病はもちろんさまざまな病気の元凶と言われてきましたが、
私はあくまでもトータルの糖質摂取量が問題だと考えています。
結局、糖質であればもとが米でも麦でも砂糖でも、
血糖値を上昇させ、血糖変動幅を増大させ、代謝が乱れ、心理的にも不安定になるのです。
さまざまなミネラルを含み、栄養価が高い蜂蜜でも、
ほぼ純粋なショ糖であるグラニュー糖でも、その事実には差はありません。
繰り返し強調しますが、砂糖だけが悪者ではなくて、砂糖を含めて糖質の頻回・過剰摂取が、
様々なさ生活習慣病の元凶であると、私は考えています。
江部康二
今回は、人類の大好きな甘みについて考察してみました。
最近は糖質制限食OKのスイ-ツ(エリスリトールなど使用)が普通に販売されていて、
糖質セイゲニストにとってとても幸せな時代となっていて、私としてもうれしい限りです。
食品メーカーさんがビジネスチャンスとしてとらえてはりきってくれていて、ありがたいことです。
糖尿病の患者さんでも、メタボリックシンドロームの患者さんでも、
そしてアトピー性皮膚炎の患者さんでも、老若男女を問わず、
甘党はかなりの割合でおられるでしょう。
かく言う私も、決して甘党ではないつもりで、日ごろ家人に「甘いものなんか要らないもんね」などと言ってはいるのですが、
酔っぱらって帰宅した翌朝には、テーブルの上のチョコレートがきれいさっぱり無くなっていたりしますので(記憶にはないのですが……)、大きなことは言えません。
最近は血糖を上げないエリスリトールやステビアを使用したチョコレートもあるので大丈夫なのです。
一方で「糖類ゼロ」というキャッチコピーの場合は
ほぼマルチトールという血糖を砂糖の半分くらい上げる甘味料がたっぷり含まれているので見極めが重要です。
そういうわけで、今回はさまざまな甘みのもとについて検討してみます。
人類史上初の甘味料 蜂蜜
紀元前6000年頃に描かれた、スペイン・アラーニャ洞窟の壁画には、蜂蜜を採集する人の姿が残っています。
この絵が示すように、人類が初めて口にした甘味は、天然の蜂蜜と言われています。
ちなみに蜂蜜に含まれる糖質は、果糖(約40%)、ブドウ糖(約35%)、ショ糖(スクロース、数%)です。
蜂が集めてきた花の蜜は主にショ糖なのですが、
働き蜂の唾液腺から分泌される転化酵素の働きによってブドウ糖及び果糖へと変化し、
同時に水分が約20%にまで濃縮されます。
果糖は血糖値をほとんど上げない糖質なのですが、
中性脂肪に変わりやすい性質があるため、蜂蜜は太りやすい甘味料です。
一方で、ビタミンやミネラルの含有量が多く、
その中には18種を超える有機酸が含まれていてpH値は3.2~4.9、つまり酸性を示します。
しかし蜂蜜はカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムなどの体内に吸収されるとアルカリ性を示すミネラルが豊富なので、
アルカリ性食品に分類されます。
ちなみに酸性を示すミネラルは、塩素、リン、硫黄などです。
インドから世界に広がった砂糖
蜂蜜以外の甘味料として、サトウキビ(甘藷<カンショ>)の搾り汁を煮詰めて精製した結晶、
いわゆる「白砂糖」を作り出すのに成功したのは、紀元前のインド人です。
インドの砂糖は、アレクサンダー大王(紀元前356年~同323年)の東征により、
西方、現在の中東から欧州へと伝わりましたが、庶民には高嶺の花、かなりの貴重品でした。
ですから長らく西洋でも日常の甘味料としては蜂蜜が唯一のものでした。
中国では玄奘(三蔵法師)のインド行きがきっかけで、製糖法が伝わり、
7世紀以降に砂糖生産が始まったとされています。
砂糖が日本に伝わったのは、奈良時代後期に鑑真が唐から渡来した折と言われています。
欧州、中国、日本いずれでも砂糖はずっと貴重品で、たしなむことができるのは貴族だけでした。
奴隷制と切り離せない砂糖大量生産の歴史
17世紀後半以降、砂糖は多量にかつ安価に生産できるようになります。
同時に、庶民にも解禁され、英国では紅茶にたっぷりの砂糖を入れることが一般的となりました。
世界に広がったその風習が、砂糖の過剰摂取につながり、
英国のみならず世界中の肥満や糖尿病の元凶であると問題になっています。
余談になりますが、砂糖の大量生産の歴史は、
カリブ海の西インド諸島に築かれた欧州各国の植民地で行われたサトウキビ栽培に端を発します。
欧州の白人が、西インド諸島に住んでいた人たちを奴隷として過酷な労働を強いた結果、現地の人口が激減します。
するとアフリカから黒人を奴隷として連れてきて働かせる、ということを行いました。
サトウキビ栽培の歴史は、奴隷制度の歴史そのものと言っても過言ではないようです。
時がたち、徐々に奴隷制度廃止へと歴史が動きますが、
この辺の話題は「砂糖の歴史」(エリザベス・アボット著、樋口幸子訳、河出書房新社)という本に詳しく書かれていますので、
興味のある人にはお薦めです。
マニアックな大著ですので読むのに骨がおれますが……。
砂糖だけではないショ糖を含む食品
そういう悲惨な歴史を経て、庶民の口にも入るようになった砂糖ですが、
その主成分はショ糖で、ブドウ糖と果糖が結合したものです。
サトウキビのほか、サトウダイコン(甜菜<テンサイ>)からも作られます。
砂糖の中でもショ糖の純度の高いものがグラニュー糖(99.95%)や氷砂糖(99.98%)です。
家庭で最もポピュラーな上白糖は、独特のしっとりした感じを持たせるために、
ショ糖の結晶に濃厚な転化糖液(ビスコ)を少量ふりかけたもので、純度は97.8%です。
「転化糖」とは、ショ糖を加水分解してできたブドウ糖と果糖の混合物で、ショ糖より甘みが強いものです。
意外かもしれませんが、ショ糖は大豆、大根、白菜、ネギ、ホウレンソウなどの野菜や、
アーモンド、ピーナツなどのナッツ類にも少量含まれています。
植物が持つ天然のエネルギー源として、存在しているのでしょう。
料理をする人の間では、「ショ糖含有率が高い大豆がおいしい」と言われており、
その一例が夏に枝豆として食べられる品種です。
中にはショ糖を100gあたり4.3gも含む品種もあります。
この時点で糖質量としては本醸造の清酒と同じくらいです。
もちろんかなり甘くておいしいと思いますが、
ショ糖に加えて、でんぷんや麦芽糖も含まれているので糖質制限をしている人には要注意の食材です。
糖質はみな同じ砂糖だけが悪者ではない、
米国では著述家、ウイリアム・ダフティが1975年「Sugar Blues(シュガー・ブルース)」(邦訳は「砂糖病(シュガー・ブルース)甘い麻薬の正体」)を著して、砂糖の毒性、危険性を説きました。
以来、砂糖はことあるごとに悪者扱いされて、
糖尿病はもちろんさまざまな病気の元凶と言われてきましたが、
私はあくまでもトータルの糖質摂取量が問題だと考えています。
結局、糖質であればもとが米でも麦でも砂糖でも、
血糖値を上昇させ、血糖変動幅を増大させ、代謝が乱れ、心理的にも不安定になるのです。
さまざまなミネラルを含み、栄養価が高い蜂蜜でも、
ほぼ純粋なショ糖であるグラニュー糖でも、その事実には差はありません。
繰り返し強調しますが、砂糖だけが悪者ではなくて、砂糖を含めて糖質の頻回・過剰摂取が、
様々なさ生活習慣病の元凶であると、私は考えています。
江部康二
おはようございます。
ブログの発信ありがとうございます。拝読し、勉強させていただいいております。
さて、ショ糖について教えてください。
枝豆の仲間である青大豆を茹でて毎日食べております。
1日あたり100gくらいを5回くらいに分けて食べています。
そうすると、4.3÷5=0.8g/回くらいなので、許容範囲かと思っているのですが、如何でしょうか?
また、アーモンド、ピーナッツ、クルミも食べています。
こちらも、一回の糖質量が1g程度に収まるようにして食べています。
本文中の例以外の 野菜 豆 ナッツに含まれる糖質も、ショ糖であると認識しておりますが、それで宜しいでしょうか?
でんぷんや麦芽糖も含まれていますか?
お忙しいところ、お手数おかけしまして申し訳ございません。
お教えくださると助かります。
宜しくお願いいたします。
ブログの発信ありがとうございます。拝読し、勉強させていただいいております。
さて、ショ糖について教えてください。
枝豆の仲間である青大豆を茹でて毎日食べております。
1日あたり100gくらいを5回くらいに分けて食べています。
そうすると、4.3÷5=0.8g/回くらいなので、許容範囲かと思っているのですが、如何でしょうか?
また、アーモンド、ピーナッツ、クルミも食べています。
こちらも、一回の糖質量が1g程度に収まるようにして食べています。
本文中の例以外の 野菜 豆 ナッツに含まれる糖質も、ショ糖であると認識しておりますが、それで宜しいでしょうか?
でんぷんや麦芽糖も含まれていますか?
お忙しいところ、お手数おかけしまして申し訳ございません。
お教えくださると助かります。
宜しくお願いいたします。
apple 様、
文科省のHPに「炭水化物成分表編 本表」があります。
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365527.htm
脂肪酸組成が知りたい場合は
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365516.htm
更にアミノ酸組成が知りたい時は
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365473.htm
文科省のHPに「炭水化物成分表編 本表」があります。
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365527.htm
脂肪酸組成が知りたい場合は
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365516.htm
更にアミノ酸組成が知りたい時は
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365473.htm
2023/04/03(Mon) 10:44 | URL | 通りすがり | 【編集】
都内河北 鈴木です。
本日ブログ内容は、私の江部先生『糖質制限理論』実践で、
『糖尿病・生還、眼科・2度の再覚醒、脳梗塞・6度の再覚醒、』している事が
証明の解明された<<『糖質害毒』>>だと認識します!!!
江部先生には、本日も貴重な説明を感謝いたします!!
ありがとうございます。
敬具
本日ブログ内容は、私の江部先生『糖質制限理論』実践で、
『糖尿病・生還、眼科・2度の再覚醒、脳梗塞・6度の再覚醒、』している事が
証明の解明された<<『糖質害毒』>>だと認識します!!!
江部先生には、本日も貴重な説明を感謝いたします!!
ありがとうございます。
敬具
2023/04/03(Mon) 11:01 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集】
通りすがり さん
適切な情報をコメント頂き、ありがとうございます。
適切な情報をコメント頂き、ありがとうございます。
2023/04/03(Mon) 15:58 | URL | ドクター江部 | 【編集】
通りすがり 様
キーワードがまずかったのか、自力では たどり着けませんでした。的確なアドバイス、ありがとうございます。
じっくり、読み込んで勉強します。
キーワードがまずかったのか、自力では たどり着けませんでした。的確なアドバイス、ありがとうございます。
じっくり、読み込んで勉強します。
えべ
江部先生いつもありがとうございます。
初歩的な話ですが、仮に砂糖が口に入るとどのくらいの時間で血管にブドウ糖が入っていくのでしょうか。またその経路についても改めて教えていただければありがたいです。よろしくお願いいたします。
江部先生いつもありがとうございます。
初歩的な話ですが、仮に砂糖が口に入るとどのくらいの時間で血管にブドウ糖が入っていくのでしょうか。またその経路についても改めて教えていただければありがたいです。よろしくお願いいたします。
moki さん
各栄養素の消化・吸収時間について。
近日中に記事にしようと思います。
各栄養素の消化・吸収時間について。
近日中に記事にしようと思います。
2023/04/04(Tue) 14:30 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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