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糖質制限食とテーラーメード・ダイエット① 2023年1月
こんばんは
世界人口は2022年11月15日に80億人に達した見込みです。

人類の進化の歴史から考えて、
農耕が始まる前の狩猟・採集時代は、穀物が主食ということはありえません。

人類がチンパンジーと分かれて700万年の歴史です。
その後、アウストラロピテクス属、パラントロプス属、ヒト属など様々な人類が栄枯盛衰を繰り返し、
結局、約30万年前に東アフリカで誕生したホモ・サピエンス(現世人類)だけが現存しているわけです。

ここで大切なこと、そして本質的なことは、過去の人類は、
全て狩猟・採集が生業だったということです。
つまり、農耕が始まる前の約700万年間は、人類皆糖質制限食であり、
ヒトは進化に要した時間の大部分で、狩猟・採集生活をしていたということです。

従って、現世人類の行動や生理・代謝を決める遺伝子セット(DNA)は、
突然変異を繰り返しながら、
狩猟・採集の生活条件に適応するようにプログラムされていると考えるのが自然です。
必然的に人類の食生活は本来、糖質制限食であったと考えられます。

大雑把ですが、人類の歴史が約700万年とすれば、農耕が始まって1万年であり、
穀物が主食である期間はわずか1/700となります。
すなわち、人類の歴史において、99%以上の期間は、食生活は、糖質制限食でした。

繰り返しますが、700万年の人類の進化の過程では、
<狩猟・採集期間>:<農耕期間>=700対1で、
圧倒的に狩猟・採集期間のほうが長いのです。

このように人体においては、糖質制限食のほうが本来の食事であり、
穀物に総摂取カロリーの60%も依存するような食事を摂取するようになったのは、
ごく短期間に過ぎないのです。

即ち、人体は、本来穀物に依存して生きるような遺伝的システムは、持っていないということになります。
しかし、人口増加を支えるため、やむを得ず穀物摂取が主食となっていったものと考えられます。

例えば、

<ヒューマン・ニュートリション 基礎・食事・臨床 第10版 2004年
JS Garrow  WPT james  A Ralph 編 日本語版監修 細谷憲政(医歯薬出版)>

という英国の栄養学の大著の75ページに

【『現代の食事では、・・・・・デンプンや遊離糖に由来する「利用されやすいグルコース」を大量に摂取するようになっている。このような食事内容は血漿グルコースおよびインスリン値の定期的な上昇をもたらし、糖尿病、冠状動脈疾患、がん、老化等、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。

農業の発明以来、ヒトは穀物をベースとした食物を摂取するようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、ヒトの消化管はまだ穀物ベースの食物に適応していない。ましてや高度に加工された現代の食物に対して、到底適応しきれてないのである。』】


と記載されています。

日本で糖質制限食を推進する立場の私達にとって、
英国にも同様の視点・考え方の栄養学者がおられることは、誠に心強い限りです。
私が警鐘を鳴らしている「グルコースミニスパイク」に関しても、また然りであり、
ヒューマン・ニュートリションでも同様の指摘があります。

さて農耕が始まって一番大きな変化は、単位面積あたり約60倍の人口を養えるようになったことです。
従って、人類の本来の食生活が糖質制限食であり、
健康に最も適した食事だとしても、現時点で人類皆糖質制限食というわけにはいきません。
人類が皆糖質制限食に切り替えれば、現時点では、
70億人以上の人類が飢え死にしかねませんので・・・。

そこでテーラーメード・ダイエットの考え方が必要となってきます。
穀物を食べることができる人とそうでない人を、はっきりわけようという提案です。

まず穀物を食べるということに関して、明治・大正・戦前の昭和の日本人は、
総摂取カロリーの70~80%が米を中心とした糖質でした。
しかし、糖尿病や肥満の人は、極めて少なかったことは明らかです。
この頃のような日常生活での運動量があれば、
穀物をしっかり食べても、少なくとも糖尿病・肥満に関しては問題はなかったのです。

しかしながら
現代人が、明治・大正・戦前の昭和の日本人レベルの日常生活での運動量を確保するのは
ほぼ不可能と言えます。
従って、現代人が糖質摂取比率60%という今の普通の食生活を続ける限りは
糖尿病や肥満の蔓延は不可避と言えます。


江部康二
コメント
糖質制限の将来を考えると、先生のご指摘の危惧があります。一般的に広く糖質制限が普及すると、食材が高騰して、低所得者には手が届かなくなり、糖質制限は高所得者の食事になってしまいます。私が、主食にしてるオーストラリア産牛肉も、昨年は100g100円でしたが、いまでは170円で、四苦八苦してます。糖質制限が現在まだマイナーであることは残念でなりませんが、その状況が、私の糖質制限を経済的に可能にしてると考えると複雑です。
2023/01/14(Sat) 09:38 | URL | yk | 【編集
Re: タイトルなし
yk さん

世の中に穀物や芋が存在する限り、今後もずっと、糖質制限食はマイナーのままだと思います。
言い換えれば、どんなに理論的に糖質制限食が優れていても、
自分の頭で考えて、理性で理論的に行動する人は少ないです。

「デンプンを捨てて⇒糖質制限に踏みきる」人はマイナーで
デンプン依存の現状を変えない人がメジャーという構造は、この世に穀物がある限り、変わらないと思います。
2023/01/14(Sat) 16:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
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