2022年12月12日 (月)
こんばんは。
忘年会、クリスマス、新年会と飲酒の機会が多くなるのが年末年始です。
2020年、2021年と、
新型コロナウイルス感染症のため、忘年会は皆無の状況でした。
2022年も忘年会シーズンを迎えましたが、NHKニュースによると、
全国の飲食店の予約件数がコロナ禍前のおよそ7割まで回復しているそうです。
飲食店の大手予約サイトを通じて11月23日時点で全国の登録店を対象に、
情報サービス大手のリクルートが行った集計でわかりました。
2022年12月の予約件数は、コロナ禍前の2019年の同じ月と比べて、
69%まで回復していました。
ブログ読者の皆さんも、本年度は忘年会復活のケースもあると思います。
今回は、糖尿人と飲酒、飲酒と肝臓・膵臓、飲酒とガンについて考えてみましょう。
アルコールそのものは、血糖値を全く上昇させませんし、体重増加作用もないので、
適量の飲酒は糖尿病には影響ないと思います。
しかしWHO(世界保健機関)の2007年の報告では、
飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房の癌の原因となるとされています。
そして、特に2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱くて、
少量の飲酒で赤くなるタイプでは、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道癌の原因となるとしています。
日本の従来の糖尿病治療では、飲酒は原則禁止ですが、
一定の条件下で許可されることもあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック・改定第7版(2017年)、194ページによれば、
その条件は、以下の5項目をクリアしていることです。
1)、良好な血糖コントロールが長期にわたって得られている
2)、糖尿病の合併症がないか、あっても軽度である
3)、脂質代謝異常がない
4)、肝・膵疾患がない
5)、自制心があり、定められた上限量を守れる
4)の肝臓や膵臓の疾患がないことが、条件となっているのは、
アルコールが、肝臓と膵臓に一定の負担をかけることが明らかだからです。
アルコール性肝障害は大変有名で、皆さんよくご存知と思います。
それから急性膵炎による入院の80%以上を、胆道疾患とアルコール多飲が占めています。
これはアルコール多飲であって、適量なら急性膵炎など起こしません。
また個人差があると思いますが、適量のアルコールなら肝障害にもなりません。
で、5)はなかなか耳が痛いですね。(=_=;)
私の場合、1)~4)は完璧にクリアなのですが、5)だけはハードルが高いです。 (*- -)(*_ _)
なお、アルコールには強い催奇形性があるので、妊婦は禁酒です。
それでは、アルコールの適量とはどのくらいなのでしょう?
欧米では、「適量」を守れば糖尿人でも、飲酒OKとしています。
例えば、米国糖尿病学会では、アルコール24g/日を食事と共にとるていどなら適量としています。
30mlの液体のアルコールが、重さとしては24gです。
アルコール24g(30ml)というのは、
おおよそ
糖質ゼロ発泡酒350ml缶を2本
辛口ワイン150ml×2杯
ウイスキー30ml(シングル)×3杯
25%の焼酎なら、120ml
です。
アルコールそのものは、1gが約7キロカロリーの燃焼エネルギーをもっていますが、摂取時の利用効率は約70%です。
エネルギー源としては、<アルコール→糖質→脂質→タンパク質>の順で利用されます。
またアルコールは、糖質や脂質と違って摂取しても体重増加作用がありませんし、
血糖値も上昇させませんし、ビタミンやミネラルにも乏しいので、empty calory と言われています。
なお、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、
その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、
翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
しかしながら、血糖値を下げる目的で、大量の飲酒をするようなことは、
発がん、肝炎、膵炎のリスクとなるので、勿論NGですね。
また、空腹時に飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、
インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、充分な注意が必要です。
江部康二
忘年会、クリスマス、新年会と飲酒の機会が多くなるのが年末年始です。
2020年、2021年と、
新型コロナウイルス感染症のため、忘年会は皆無の状況でした。
2022年も忘年会シーズンを迎えましたが、NHKニュースによると、
全国の飲食店の予約件数がコロナ禍前のおよそ7割まで回復しているそうです。
飲食店の大手予約サイトを通じて11月23日時点で全国の登録店を対象に、
情報サービス大手のリクルートが行った集計でわかりました。
2022年12月の予約件数は、コロナ禍前の2019年の同じ月と比べて、
69%まで回復していました。
ブログ読者の皆さんも、本年度は忘年会復活のケースもあると思います。
今回は、糖尿人と飲酒、飲酒と肝臓・膵臓、飲酒とガンについて考えてみましょう。
アルコールそのものは、血糖値を全く上昇させませんし、体重増加作用もないので、
適量の飲酒は糖尿病には影響ないと思います。
しかしWHO(世界保健機関)の2007年の報告では、
飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房の癌の原因となるとされています。
そして、特に2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱くて、
少量の飲酒で赤くなるタイプでは、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道癌の原因となるとしています。
日本の従来の糖尿病治療では、飲酒は原則禁止ですが、
一定の条件下で許可されることもあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック・改定第7版(2017年)、194ページによれば、
その条件は、以下の5項目をクリアしていることです。
1)、良好な血糖コントロールが長期にわたって得られている
2)、糖尿病の合併症がないか、あっても軽度である
3)、脂質代謝異常がない
4)、肝・膵疾患がない
5)、自制心があり、定められた上限量を守れる
4)の肝臓や膵臓の疾患がないことが、条件となっているのは、
アルコールが、肝臓と膵臓に一定の負担をかけることが明らかだからです。
アルコール性肝障害は大変有名で、皆さんよくご存知と思います。
それから急性膵炎による入院の80%以上を、胆道疾患とアルコール多飲が占めています。
これはアルコール多飲であって、適量なら急性膵炎など起こしません。
また個人差があると思いますが、適量のアルコールなら肝障害にもなりません。
で、5)はなかなか耳が痛いですね。(=_=;)
私の場合、1)~4)は完璧にクリアなのですが、5)だけはハードルが高いです。 (*- -)(*_ _)
なお、アルコールには強い催奇形性があるので、妊婦は禁酒です。
それでは、アルコールの適量とはどのくらいなのでしょう?
欧米では、「適量」を守れば糖尿人でも、飲酒OKとしています。
例えば、米国糖尿病学会では、アルコール24g/日を食事と共にとるていどなら適量としています。
30mlの液体のアルコールが、重さとしては24gです。
アルコール24g(30ml)というのは、
おおよそ
糖質ゼロ発泡酒350ml缶を2本
辛口ワイン150ml×2杯
ウイスキー30ml(シングル)×3杯
25%の焼酎なら、120ml
です。
アルコールそのものは、1gが約7キロカロリーの燃焼エネルギーをもっていますが、摂取時の利用効率は約70%です。
エネルギー源としては、<アルコール→糖質→脂質→タンパク質>の順で利用されます。
またアルコールは、糖質や脂質と違って摂取しても体重増加作用がありませんし、
血糖値も上昇させませんし、ビタミンやミネラルにも乏しいので、empty calory と言われています。
なお、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、
その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、
翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
しかしながら、血糖値を下げる目的で、大量の飲酒をするようなことは、
発がん、肝炎、膵炎のリスクとなるので、勿論NGですね。
また、空腹時に飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、
インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、充分な注意が必要です。
江部康二
江部先生
お世話になります
僕はもともと お酒はほとんど飲めませんでした
45歳前後糖質制限始めてから多少のめるようになり 焼酎1合か2合は飲めます
45歳までは1か月1回かそれ前後でしたが
最近はよく飲みますでも1合くらいかな
何かかかんけいあるのでしょうか
炭水化物を食べて飲むととても気分が悪く
なります。僕と同じような人いるんでしょうか?
お世話になります
僕はもともと お酒はほとんど飲めませんでした
45歳前後糖質制限始めてから多少のめるようになり 焼酎1合か2合は飲めます
45歳までは1か月1回かそれ前後でしたが
最近はよく飲みますでも1合くらいかな
何かかかんけいあるのでしょうか
炭水化物を食べて飲むととても気分が悪く
なります。僕と同じような人いるんでしょうか?
糖尿人 さん
お酒は、慣れで、あるていど飲めるようになります。
「炭水化物を食べて飲むととても気分が悪く
なります。僕と同じような人いるんでしょうか?」
<炭水秋物+お酒>でどうもない人もいます。
個人差と思います。
ただ日頃糖質制限している人が、久しぶりに炭水化物を摂取すると<血糖値の乱高下>で気分が悪くなることはありえます。
お酒は、慣れで、あるていど飲めるようになります。
「炭水化物を食べて飲むととても気分が悪く
なります。僕と同じような人いるんでしょうか?」
<炭水秋物+お酒>でどうもない人もいます。
個人差と思います。
ただ日頃糖質制限している人が、久しぶりに炭水化物を摂取すると<血糖値の乱高下>で気分が悪くなることはありえます。
2022/12/14(Wed) 11:20 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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