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糖尿病早期発見のために 。糖尿病の診断。境界型の分類。
こんばんは。
今回はブログ読者の皆さんに、
糖尿病を早期発見するための方法をお知らせしたいと思います。

糖尿病発見は、早ければ早いほどいいです。
境界型の段階で見つかれば、さらにいいです。
今回は、早期発見のノウハウを説明したいと思います。


<糖代謝異常の判定基準(日本糖尿病学会)>
A) 糖尿病型
①早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上
②75gOGTTで120分後血糖値が200mg/dl以上
③随時血糖値200mg/dl以上
④HbA1c≧6.5%
①~④のいずれかが確認された場合は「糖尿病型」と判定する。

B) 正常型
⑤早朝空腹時血糖値が110mg/dl未満
⑥75gOGTTで120分後血糖値が140mg/dl未満
⑤および⑥の血糖値が確認された場合は「正常型」と判定する。

C) 境界型
正常型にも糖尿病型にも属さない場合は「境界型」と判定する。


<75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)>

*朝まで、10時間以上の絶食のあと検査を実施する。
*検査終了までは、運動・喫煙は控える。
*負荷試験の前3日間は、150g/日以上の糖質摂取を、日本糖尿病学会は推奨。
*糖尿病と診断がついている場合は、原則として実施しない。


<糖尿病の診断>
1)  異なる日に①②③を、再確認できたら糖尿病と診断。

2) 「①+④」「②+④」「③+④」が同時に確認できたらは糖尿病と診断。

3)  ④単独の場合、再検査で血糖値が糖尿病型なら、糖尿病と診断。

4)  血糖値が糖尿病型で糖尿病の典型的症状があるか糖尿病網膜症があれば糖尿病と診断。

* 糖尿病の診断には血糖検査は必須であり、HbA1cだけでは診断できない。


< 境界型の分類>

境界型にはWHO分類のIGT、IFG、IFG/IGTがある。

・IFG(Impaired fasting glycaemia): 空腹時血糖異常
・IGT(Impaired Glucose Tolerance): 耐糖能異常

a) 2時間値が140-199mg/dlとなる耐糖能異常であるIGT (Impaired Glucose Tolerance)
IGT単独なら早朝空腹時血糖値は110mg/dl未満で正常である。

b) 空腹時血糖値が110-125mg/dlとなるIFG (Impaired fasting glycaemia)
IFG単独なら75gOGTTにて2時間値は140mg/dl未満で正常である。

c) 両者の合併であるIFG/IGTの3つのパターンがある。


< 糖尿病発症に到る流れ>
Ⅰ) IGT→糖尿病(食後血糖値200mg/dl以上または75gOGTT2時間値200mg/dl以上) 
このパターンの場合、既に糖尿病を発症している段階でも
早朝空腹時血糖値は正常で健診で見逃されるので、注意が必要。

Ⅱ) IGT→IFG/IGT→糖尿病(上記200mg/dl以上または空腹時血糖値126mg/dl以上)

このパターンは、IFG/IGTの段階で、通常の健診でもチェックできる。 

Ⅲ) IFG→IFG/IGT→糖尿病  

通常の健診でもチェックできる。パターンとしては少ない。


日本人では、IGTや200mg/dl以上の食後高血糖が、数年から10年続いて、
初めて早朝空腹時血糖値が110mg/dlを超えることが、最も多いとされています。

つまりⅠ)Ⅱ)のパターンが多くて、Ⅲ)のパターンは少ないのですね。

従いまして、一般的な健康診断の早朝空腹時血糖値で、
糖尿病の早期診断をするのは、おおいに無理があります。
そもそも日本人ではIFG単独の例は、かなり少ないと考えられます。

Ⅰ)Ⅱ)Ⅲ)どのパターンでも、

最終的には、IGTを経て糖尿病型になると考えられます。
IFGからいきなり糖尿病型になるというのは、少ないと思います。

従って、なんとかIGTの段階(糖尿病発症前)でチェックできれば、
治療的には大変役立ちます。

<早期発見には>
そのためには、75g経口ブドウ糖負荷試験が一番確実です。

しかし、かなり面倒で手間暇も費用もかかりますから、
デンプン(糖質)一人前を食べ始めて1時間後の血糖値、
あるいは尿糖を調べれば簡便です。
尿糖が陽性ということは、180mg/dlを超える血糖値があった可能性が高いです。

1時間値が180mg/dlを超えていると、2時間値が140mg/dl未満で正常でも、
将来糖尿病になりやすいので注意が必要なのです。

糖尿病は、インスリン作用不足(インスリン分泌不足+インスリン抵抗性)がベースにあり、発症します。

日本人では、インスリン分泌不足が主で、インスリン抵抗性が従と言われています。
IGTの段階で、まずインスリン追加分泌が不足、あるいは遷延しています。

それが数年以上続いて、インスリン基礎分泌も不足してきたら、IFGも合併してきます。

一方、欧米人では、インスリン抵抗性が主で、インスリン分泌不足が従とされています。

この場合、インスリン分泌能力はまだあるけれど、
効きが悪い(インスリン抵抗性)ため高血糖となります。

そうすると、インスリン抵抗性のため、
基礎分泌のインスリンの量では早朝空腹時血糖値がやや高いけど、
追加分泌は大量に出せるので食後高血糖は防いでいるというIFGの人が、
日本より高率に存在する可能性があります。

日本人でも肥満が目立つ人は、
インスリン抵抗性が主の欧米パターンの糖尿病発症もありえます。

この場合、早期に発見できれば、インスリン分泌能力は残っているので、
肥満が改善してインスリン抵抗性が改善すれば、
糖尿病がほぼ治ったごとくになることもあり得ます。

ともあれ、IGT、IFG、IFG/IGTの段階で発見できればおおきなアドバンテージです。
この段階でなら、緩やかな糖質制限食でも、糖尿病発症は防げると思いますよ。ヾ(^▽^)

勿論、すでに糖尿病と診断された人は、スーパー糖質制限食が最適です。


江部康二
コメント
オルリスタットについて
江部先生のblog記事にコメントするのは初めてです。
この記事を読んだ上でのコメントです。

いつか一般的な記事として、今日ニュースで話題になっている「3月に国内での製造・販売が承認される、オルリスタット」と、糖尿人・糖質セイゲニスト・内臓脂肪型肥満との関係性について考えをお聞かせ頂けませんか?
3月以降の話ですし、今すぐお聞かせ頂きたいわけでもありません。
また、このコメントそのものへのご返信も結構です。

私見として
・摂取する脂質と体脂肪との関係性が近年言われているとおり「脂質は糖質と同時に摂取することで初めて、体脂肪として蓄積される」ものであるならば、糖質制限をしている場合にこの薬を飲んでも効果は薄いのでは(さらに言えばこの薬は、炭水化物-インスリンモデルではなくエネルギーバランスモデルにおける脂質摂取のことしか考えていないのでは)
・脂質の吸収を抑えるならば、脂溶性の栄養素の摂取効率を落としてしまってもったいないのでは
との疑問を持っています。

先生が発信される情報は既に痩せた糖尿人のみなさんだけでなく、皮下脂肪型肥満の方、内臓脂肪型肥満の方(病的なものとして自覚しているのではなく、単に痩せたいとだけ思っている方も含め)、不健康でもより痩せたい(慢性的な栄養不足の)方にも、多かれ少なかれ見られていると思います。
そんな方にとって、この薬の是非を判断する一助になるような記事になるといいな、と思っています。

尚、私は医療とは無縁の一般人です。
内臓脂肪・糖尿病・動脈硬化・コレステロール・糖質・インスリンについて学びながら糖質制限とファスティングをしている、最近までメタボだったものの今はただの内臓脂肪型肥満に収まっている(3月にはさらに痩せているはずの)者です。
2022/11/29(Tue) 11:23 | URL | 匿名希望 | 【編集
Re: オルリスタットについて

以下は、読売新聞記事の要約です。

【「抗肥満薬」オルリスタット、処方箋なしに薬局で購入可能に…ネット販売は不可
2022/11/28 20:59
 厚生労働省の専門家部会は28日、大正製薬が販売する抗肥満薬「アライ(一般名・オルリスタット)」を、医師の処方箋なしで薬局で買える薬として承認することを了承した。来年3月にも正式に承認される見込みだ。厚労省によると、日本人を対象にした臨床試験で、内臓脂肪や腹囲の減少効果が確認された市販薬となる。

厚生労働省
 アライは、脂肪の吸収を抑制する薬で、対象は、高血圧や脂質異常症などの健康障害を伴わない肥満(男性は腹囲85センチ以上、女性は同90センチ以上)の18歳以上。食事や運動など生活習慣改善の取り組みと併せて補助的な位置付けで使う。1日3回、食事中か食後1時間以内に1カプセル服用する。】



【厚生労働省
アライは、脂肪の吸収を抑制する薬で、・・・ 】


脂肪の吸収を抑制するというのが薬効なら、
あまり効果は期待できないと思います。

何故なら、肥満のメカニズムは以下の如くだからです。
<糖質摂取⇒血糖値上昇⇒インスリンの大量分泌⇒筋肉でブドウ糖を利用⇒
あまった血糖は、中性脂肪に変わり脂肪細胞に蓄えられる>

つまり、肥満の元凶は、脂肪では無く糖質ということなのです。
2022/11/29(Tue) 14:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
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