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糖質制限食に肯定的な信頼度の高いエビデンス。レベル1+、レベル1。
おはようございます。

相変わらず、根拠の乏しい糖質制限食批判が、
インターネットやユーチューブ(YouTube)で散見されます。

今回は、糖質制限食に肯定的なエビデンスとなる信頼度の高い論文を
取り上げてみました。
まずは、エビデンスレベルのもっとも高い
「エビデンスレベル1+」と「エビデンスレベル1」
の論文で、糖質制限食の有効性を示すものを列挙してみました。

集めてみると、こんなにたくさんあるのですね。

一方、糖質制限食に否定的な、
「エビデンスレベル1+」と「エビデンスレベル1」の論文は皆無
です。

そして米国糖尿病学会は
2019年4月の<コンセンサスレポート>において
『糖質制限食は、2型糖尿病で最も研究されてきたパターンである。』
『低炭水化物食、特に非常に低い低炭水化物食パターンは、HbA1cを下げて、
糖尿病薬を減らすことを示してきた。』
と明言しています。
2020年、2021年、2022年の<ガイドライン>においても、
同様の見解です。


この時点で、「糖質制限食是非論争」に
エビデンスレベルで、明白な決着がついたと言えます。




RCT(ランダム化比較試験)レベル1+

①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
 Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
 Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009

②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
Obes Rev 2012; 13: 1048-1066Systematic review and meta-analysis of clinical trialsof the effects of low carbohydrate diets oncardiovascular risk factorsobr_1021

③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
Effect of Low-Fat Diet Interventions Versus Other Diet Interventions on Long-Term Weight Change in Adults:
  A Systematic Review and Meta-Analysis Lancet Diabetes Endocrinol 2015 Dec 01;3(12)968-979,
 DK Tobias, M Chen, JE Manson, DS Ludwig, W Willett, FB Hu



RCT(ランダム化比較試験)レベル1

①低糖質食 vs. 低脂質食。低糖質食の圧勝
低糖質食 vs. 低脂質食、減量や脂質データなどCVD(心血管疾患)リスク低減で、
低糖質食の圧勝。148人の肥満者を、1年間研究。
低糖質食は40g/日未満。
Effects of low-carbohydrate and low-fat diets: a randomized trial.
Bazzano LA et all
Ann Intern Med. 2014 Sep 2;161(5):309-18

②DIRECT低炭水化物食で一番体重減少・ HDL-C増加 
脂肪制限食(カロリー制限)、                           
地中海食(カロリー制限)、                            
低炭水化物食(カロリー無制限)の3群
低炭水化物群のみカロリー無制限のハンディがあったが、結局3群全て同じだけのカロリーが減少。満足度と満腹度。
当初糖質20g/日以下。3ヶ月後から120g/日以下を目指すも、結局女性150g/日、男性180g/日で40%の糖質。
糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)
DIRECT(Dietary Intervention Randomized Controlled Trial)         
322人を3群に分けて、2年間の研究。
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359.NO.3 229-241

③DIRECTのフォローアップ研究。合計6年間。
地中海食、低炭水化物食の2群は、6年後も 体重減少に有意差あり。
Four-Year Follow-up after Two-Year Dietary Interventions
 N Engl J Med 2012; 367:1373-1374October 4, 2012

④低糖質地中海食(LCMD)。HbA1cレベルの大きな減少。
低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT研究論文。
糖質50%未満のLCMD群(108人)と低脂肪群(107人)の比較。女性は1500kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.

⑤低炭水化物食が、肥満・HDL-C・TGを改善。   
       
JAMA  2007年3月  A TO Z 体重減少研究
アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。311人の女性を上記4グループに分けて追跡。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものである。
アトキンスは低炭水化物食(スーパー糖質制限食)、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
低炭水化物食が体重を最も減少させて、HDL-CとTGを改善。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
 The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977



エビデンスレベル 「糖尿病診療ガイドライン2016」

レベル1 + 質の高いランダム化比較試験(RCT)および
     それらのメタアナリシス(MA)/システマティック・ レビュー(SR)
レベル1  それ以外のRCTおよびそれらのMA/SR
レベル2   前向きコホート研究およびそれらのMA/SR
         (事前に定めた)RCTサブ解析
レベル3  非ランダム化比較試験 前後比較試験
         後ろ向きコホート研究
         ケースコントロール研究およびそれらのMA/SR
         RCT後付けサブ解析
レベル4  横断研究 
      症例集積

*質の高いRCTとは①多数例②二重盲検、独立判定③高追跡率④ランダム割り付け法が明確などをさす。




江部康二
コメント
糖質制限は基本肯定ですが
博士課程で基礎研究に従事した内科医が書いたゲノムや遺伝子の本を読んでいますが、
同じ日本人でも、体質はかなり違うとのことでした。
私は基本的に糖質制限は肯定的に捉えていますが、
人によって(体質によって)、糖質制限が必要なかったり、受け付けなかったりすることもあるんじゃないかと思います。
ある医師の方のブログを見ますと、なんでもかんでも病いを糖質のせいにしたり、
すべての人が糖質制限をすべきだという論調をされてるのを見ると、
さすがに違和感を感じます。
また、糖質を制限することで、他の栄養素を摂り過ぎた場合のデメリットも気になります。
最終的には自己責任ですが、一般人はともかく、医師や博士、研究者の方の発言には重みがあります。
ネット社会であふれる情報には注意が必要ですね。
2022/11/06(Sun) 13:39 | URL | 柳瀬次郎 | 【編集
Re: 糖質制限は基本肯定ですが
柳瀬次郎 さん

コメントをありがとうございます。
仰る通りと思います。
個人差があると思います。

【糖質制限食を実践される時のご注意】
の記載でも
・・・
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。
糖質制限食もその一つですので、
合わないとご自分で判断されたら中止して頂ければ幸いです。


と述べています。

一方、西村典彦さんのコメントへの回答で述べましたように、

旧石器時代の22000年間で、
日本人の、消化・吸収・栄養・代謝システムや五臓六腑も完成されていったので、
日本人の身体は、スーパー糖質制限食に最も適合していると言えます。
2022/11/06(Sun) 13:53 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖質制限は基本肯定ですが
柳瀬次郎 さん

以下の注意書きも拙著の全てに記載されています。
またブログでも時々、注意喚起しています。


【本ブログのコメント・質問・記事に関するお願い】

糖質制限食を実践される時のご注意

診断基準を満たす膵炎は対象とならない。→糖質制限食は高脂質食。
肝硬変も適応とならない。→糖新生ができない。
長鎖脂肪酸代謝異常症も適応外。→脂肪の利用が上手くいかない。
尿素サイクル異常症も適応外。→蛋白質の利用が上手くいかない。
慢性腎臓病も適応とならない。→糖質制限食が無効と思われる。
糖尿病の経口薬を内服している人やインスリン注射をうっている人は、  
低血糖発作予防のため糖質制限食開始前に必ず医師と相談すること。

腎機能eGFR60ml/分までは、日本腎臓病学会CKDガイド2013に従いOK。
糖尿病腎症は、米国糖尿病学会2013年の声明を考慮し個別対応。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂質食。
糖尿病・肥満・メタボ・生活習慣病などが対象。
1型、2型を問わず、インスリンの減量が可能。
2022/11/06(Sun) 14:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
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