2022年08月19日 (金)
膵炎と糖質制限食2。慢性膵炎。
今回は、慢性膵炎と糖質制限食のお話です。
2)「慢性膵炎」
■慢性膵炎の臨床診断基準(膵臓24: 645-708,2009)
慢性膵炎の診断項目
① 特徴的な画像所見
② 特徴的な組織所見
③ 反復する上腹部痛発作
④ 血中または尿中膵酵素値の異常
⑤ 膵外分泌障害
⑥ 1日80g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴
慢性膵炎確診: a、bのいずれかが認められる。
a. ①または②の確診所見。
b. ①または②の準確診所見と, ③④⑤のうち2項目以上。
慢性膵炎準確診:①または②の準確診所見が認められる。
早期慢性膵炎:③~⑥のいずれか2項目以上と早期慢性膵炎の画像所見が認められる。
難病情報センターのサイトから抜粋
定義
膵臓の内部に不規則な線維化、細胞浸潤、実質の脱落、肉芽組織などの慢性変化が生じ、進行すると膵外分泌・内分泌機能の低下を伴う病態である。
膵内部の病理組織学的変化は、基本的には膵臓全体に存在するが、病変の程度は不均一で、分布や進行性も様々である。
これらの変化は、持続的な炎症やその遺残により生じ、多くは非可逆性である。
慢性膵炎では、腹痛や腹部圧痛などの臨床症状、膵外分泌・内分泌機能不全による臨床症候を伴うものが典型的である。
臨床観察期間内では、無痛性あるいは無症候性症例も存在し、このような症例では、臨床診断基準をより厳密に適用するべきである。
慢性膵炎を、成因によってアルコール性と非アルコール性に分類する。
自己免疫性膵炎と閉塞性膵炎は、治療により病態や病理所見が改善する事があり、可逆性である点より、現時点では膵の慢性炎症として別個に扱う。
分類
・アルコール性慢性膵炎
・非アルコール性慢性膵炎(特発性、遺伝性、家族性など)
注 1. 自己免疫性膵炎および閉塞性膵炎は、現時点では膵の慢性炎症として別個に扱う。
慢性膵炎に関して詳しくは
難病情報センターのサイト
http://www.nanbyou.or.jp/entry/193
をご参照いただけば幸いです。
厚生労働省難治性疾患克服研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班の全国調査によると、2011年1年間に医療機関を受診した慢性膵炎患者さんの数は約67,000人、人口10万人あたりの数は52.4人と推定されています。
2011年の1年間に新たに慢性膵炎を発病した患者さんは約18,000人でした。
慢性膵炎は、再燃と改善(間欠期)を繰り返しながら、徐々に膵臓が慢性炎症のために壊れて膵機能不全に進行していく病気です。
確定診断には画像診断或いは組織診断が必須です。
慢性膵炎の再燃期は、腹痛があり、アミラーゼ・リパーゼなどが高値となります。
慢性膵炎の再燃期は、急性膵炎に準じる治療が必要なので、絶飲食や、脂肪制限が必要であり、糖質制限食は無理です。
絶飲食の期間を過ぎても、腹痛を有する時期は、禁酒と脂肪制限が必要です。
食事中脂肪は1回摂取量10g以下、1日摂取量30g(0.5g/kg/日)が目安となります。
再燃を予防するには、アルコールを控えることと禁煙が最も重要です。
間欠期で腹痛がない時期も、確定診断がついている慢性膵炎では、高脂肪食は好ましくないので、糖質制限食はNGと思われます。
しかし、本格的に診断基準を満たしている慢性膵炎とアミラーゼが軽度高値だけで腹痛もないというレベルの状態とは違うと思います。
現在、アミラーゼやリパーゼが少し高いだけで、他の検査が正常で、腹痛もなければ糖質制限食はOKと思います。
しかしアルコールとタバコは、膵臓には大変良くないので注意が必要です。
江部康二
今回は、慢性膵炎と糖質制限食のお話です。
2)「慢性膵炎」
■慢性膵炎の臨床診断基準(膵臓24: 645-708,2009)
慢性膵炎の診断項目
① 特徴的な画像所見
② 特徴的な組織所見
③ 反復する上腹部痛発作
④ 血中または尿中膵酵素値の異常
⑤ 膵外分泌障害
⑥ 1日80g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴
慢性膵炎確診: a、bのいずれかが認められる。
a. ①または②の確診所見。
b. ①または②の準確診所見と, ③④⑤のうち2項目以上。
慢性膵炎準確診:①または②の準確診所見が認められる。
早期慢性膵炎:③~⑥のいずれか2項目以上と早期慢性膵炎の画像所見が認められる。
難病情報センターのサイトから抜粋
定義
膵臓の内部に不規則な線維化、細胞浸潤、実質の脱落、肉芽組織などの慢性変化が生じ、進行すると膵外分泌・内分泌機能の低下を伴う病態である。
膵内部の病理組織学的変化は、基本的には膵臓全体に存在するが、病変の程度は不均一で、分布や進行性も様々である。
これらの変化は、持続的な炎症やその遺残により生じ、多くは非可逆性である。
慢性膵炎では、腹痛や腹部圧痛などの臨床症状、膵外分泌・内分泌機能不全による臨床症候を伴うものが典型的である。
臨床観察期間内では、無痛性あるいは無症候性症例も存在し、このような症例では、臨床診断基準をより厳密に適用するべきである。
慢性膵炎を、成因によってアルコール性と非アルコール性に分類する。
自己免疫性膵炎と閉塞性膵炎は、治療により病態や病理所見が改善する事があり、可逆性である点より、現時点では膵の慢性炎症として別個に扱う。
分類
・アルコール性慢性膵炎
・非アルコール性慢性膵炎(特発性、遺伝性、家族性など)
注 1. 自己免疫性膵炎および閉塞性膵炎は、現時点では膵の慢性炎症として別個に扱う。
慢性膵炎に関して詳しくは
難病情報センターのサイト
http://www.nanbyou.or.jp/entry/193
をご参照いただけば幸いです。
厚生労働省難治性疾患克服研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班の全国調査によると、2011年1年間に医療機関を受診した慢性膵炎患者さんの数は約67,000人、人口10万人あたりの数は52.4人と推定されています。
2011年の1年間に新たに慢性膵炎を発病した患者さんは約18,000人でした。
慢性膵炎は、再燃と改善(間欠期)を繰り返しながら、徐々に膵臓が慢性炎症のために壊れて膵機能不全に進行していく病気です。
確定診断には画像診断或いは組織診断が必須です。
慢性膵炎の再燃期は、腹痛があり、アミラーゼ・リパーゼなどが高値となります。
慢性膵炎の再燃期は、急性膵炎に準じる治療が必要なので、絶飲食や、脂肪制限が必要であり、糖質制限食は無理です。
絶飲食の期間を過ぎても、腹痛を有する時期は、禁酒と脂肪制限が必要です。
食事中脂肪は1回摂取量10g以下、1日摂取量30g(0.5g/kg/日)が目安となります。
再燃を予防するには、アルコールを控えることと禁煙が最も重要です。
間欠期で腹痛がない時期も、確定診断がついている慢性膵炎では、高脂肪食は好ましくないので、糖質制限食はNGと思われます。
しかし、本格的に診断基準を満たしている慢性膵炎とアミラーゼが軽度高値だけで腹痛もないというレベルの状態とは違うと思います。
現在、アミラーゼやリパーゼが少し高いだけで、他の検査が正常で、腹痛もなければ糖質制限食はOKと思います。
しかしアルコールとタバコは、膵臓には大変良くないので注意が必要です。
江部康二
確認させてください。
>現在、アミラーゼやリパーゼが少し高いだけで、他の検査が正常で、腹痛もなければ糖質制限食はOKと思います。
腹痛はなくても食事を始めると膨満感が出たり、食後の血糖値が非常に上がる場合は糖質制限食はNGでしょうか?
なお確定診断は免れております。
>現在、アミラーゼやリパーゼが少し高いだけで、他の検査が正常で、腹痛もなければ糖質制限食はOKと思います。
腹痛はなくても食事を始めると膨満感が出たり、食後の血糖値が非常に上がる場合は糖質制限食はNGでしょうか?
なお確定診断は免れております。
2023/03/24(Fri) 20:28 | URL | ハーブティー | 【編集】
血糖値が上がりすぎるというのは
通常食後100→130のところ100→160になってしまっているのです。
通常食後100→130のところ100→160になってしまっているのです。
2023/03/24(Fri) 20:31 | URL | ハーブティー | 【編集】
ハーブティー さん
現在、アミラーゼやリパーゼが少し高いだけで、他の検査が正常で、腹痛もなければ糖質制限食はOKと思います。
そして、糖質制限食実践で体調が良いのなら、糖質制限食を継続すれば良いし、
糖質制限食実践で、膨満感がでるようなら、合わないので止めればいいです。
なお、糖質制限食実践で、食後血糖値が非常に上昇することはあり得ません。
糖質あり食に比べれば、糖質制限食実践で、100%食後血糖値は下がります。
現在、アミラーゼやリパーゼが少し高いだけで、他の検査が正常で、腹痛もなければ糖質制限食はOKと思います。
そして、糖質制限食実践で体調が良いのなら、糖質制限食を継続すれば良いし、
糖質制限食実践で、膨満感がでるようなら、合わないので止めればいいです。
なお、糖質制限食実践で、食後血糖値が非常に上昇することはあり得ません。
糖質あり食に比べれば、糖質制限食実践で、100%食後血糖値は下がります。
2023/03/25(Sat) 07:09 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ハーブティーさん
『血糖値が上がりすぎるというのは
通常食後100→130のところ100→160になってしまっているのです。』
1型糖尿病で、自分自身のインスリンがほとんど分泌されていない場合は、
タンパク質摂取で糖新生により血糖値が上昇します。
インスリン分泌能力が一定以上残っている人なら
タンパク質摂取で、糖新生により血糖値が上昇しても、インスリンも分泌されるので、相殺されて、血糖値は上昇しません。
血糖値を直接上昇させるのは、糖質だけです。
タンパク質と脂質は血糖値を直接上昇させることはありません。
なお、2型糖尿病でも、インスリン分泌能力がかなり落ちている場合は
1型糖尿病に準じるパターンで、タンパク質で糖新生により血糖値が上昇することがあります。
『血糖値が上がりすぎるというのは
通常食後100→130のところ100→160になってしまっているのです。』
1型糖尿病で、自分自身のインスリンがほとんど分泌されていない場合は、
タンパク質摂取で糖新生により血糖値が上昇します。
インスリン分泌能力が一定以上残っている人なら
タンパク質摂取で、糖新生により血糖値が上昇しても、インスリンも分泌されるので、相殺されて、血糖値は上昇しません。
血糖値を直接上昇させるのは、糖質だけです。
タンパク質と脂質は血糖値を直接上昇させることはありません。
なお、2型糖尿病でも、インスリン分泌能力がかなり落ちている場合は
1型糖尿病に準じるパターンで、タンパク質で糖新生により血糖値が上昇することがあります。
2023/03/25(Sat) 07:26 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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