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糖質制限食とこむら返りについて。
こんばんは。
糖質制限食とこむら返りについて考えて見ようと思います。
腓(こむら)というのは「ふくらはぎ」のことです。
こむら返りというのはふくらはぎに生じる筋肉の痙攣(けいれん)のことで、
かなりの痛みを伴います。
頻度が多いのがふくらはぎの筋肉の痙攣なのですが、
基本的にはどこの筋肉にも起こりえます。

こむら返りの発生メカニズムについては、いろんな仮説がありますが、
明確にはわかっていないようです。
判っていることとしては、大ざっぱに言えば、
筋肉の収縮においてはカルシウムが重要な役割を果たしていて、
マグネシウムは筋肉を弛緩させる役割であるということです。

カルシウムやマグネシウム、ナトリウムやカリウムなどが、
ほどよく協力して、筋肉の収縮の調整をしてくれているのだと思います。
そして、冷えや運動や脱水があって、
相対的に血流が不足するとこむら返りを起こしやすいことも判っています。

私自身は糖質制限食開始後、全くこむら返りを起こしませんでした。
また当初、糖質制限食実践中の患者さんにおいても、
こむら返りの訴えはあまりなかったので気にしていませんでした。
しかし、その後、糖質制限食実践中に、こむら返りが生じる人がたまにおられることが、
ブログのコメントなどで判明しました。
また、高雄病院や江部診療所の糖質制限食実践中の患者さんでも、
その後まれではありますが、糖質制限後こむら返りを生じる方がおられました。

確かに野菜・海藻も摂らない極端な糖質制限食だと、カルシウムなどミネラル不足などで、
こむらがえりを起こすことがあるようですね。
一般にカルシウムやマグネシウムが不足すると、
こむら返りを起こしやすいとされています。

これらミネラルの補給ですが、カルシウムは、乳製品・小魚・大豆製品・海藻・緑黄色野菜などに多く含まれています。
マグネシウムは、大豆製品・魚介類・海藻・ナッツ類に多く含まれています。
従って、通常は糖質制限食OK食品に多く含まれているので、
こむら返りも起こらないのだと思います。

一方、糖質制限食に関係なく、
スポーツの最中や後にこむら返りを起こすことはよくありますよね。
実際、私の所属するテニスクラブのメンバーでも、
よくこむら返りを起こすタイプがおられます。

幸い私は、スポーツ中やその後も起こしたことがありません。
激しいスポーツをして汗をかくと、
汗とともに多量のミネラルが体の外に排出されてしまいます。
ですから、カルシウム・マグネシウムなどミネラルをちゃんと補給してやらないと、
筋肉が痙攣したり足が攣ったりします。

糖質制限食の場合、相対的に高脂質・タンパク食となります。
また、葉野菜や海藻や茸を摂取するので食物繊維も豊富です。
自ら1型糖尿人でスーパー糖質制限食実践中のバーンスタイン医師によれば、
野菜に多い食物繊維は、食事中のカルシウムと結合してカルシウム吸収をさまたげ、
タンパク質中のリン化合物もカルシウムとわずかに結合するそうです。

バーンスタイン医師は、
「糖質制限食実践中で、チーズ・ヨーグルト・クリームを摂らない人たち、
特に閉経後の女性」
には、カルシウム補充を奨めています。

つまり、糖質制限食実践中のほとんどの人でサプリは必要ないと思いますが、
上記のバーンスタイン医師の条件に当てはまる人やこむら返りをよく起こす人、
また結構スポーツをする人は、安価なカルシウム・マグネシウム剤、
或いは安価なマルチビタミン剤を補充して、こむら返りを予防するのもよいと思います。

スポーツを全くしない人でも糖質制限食実践中にこむら返りを起こすことがあります。
この場合もカルシウム・マグネシウム剤、マルチビタミン剤でほとんど良くなります。
なお、漢方薬の芍薬甘草湯(68番)もこむら返りに有効です。
2週間以上、芍薬甘草湯を内服すると、時に血中カリウムが低下することがあるので、
連用している人は注意してくださいね。

今回の記事は、
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-348.html
たがしゅうブログ こむら返り熟考を参考にしました。
たがしゅう先生ありがとうございます。

なお、カルニチンという物質が不足するとこむら返りを生じることがあります。
カルニチンは、生体において脂質の代謝に関与するビタミン様物質です。
食材におけるL-カルニチンは肉類と乳製品に多く含まれています。
カルニチン不足に対して、エルカルチンFFという内服薬もあり保健収載ですが、
高価です。

芍薬甘草湯が効かないこむら返りにも、エルカルチンFFはよく効きます。
エルカルチンFF錠250mgを6錠、分×3食後/日が、常用量ですが、
高価なので、数日間6錠を内服して、あとは、
寝る前に2錠を一回くらいでコントロールできることが多いです。


江部康二
コメント
スーパー糖質制限による改善のご報告
江部康二先生

こんにちは、一ヶ月ほど前にコメント投稿させていただいた、マンモス私立大学教員です。

一ヶ月スーパー糖質制限をし、大きな改善がありましたので、心からのお礼とご報告を申し上げます。

昨年、職場の健康診断で、 

空腹時血糖値83、hba1c6.4

となり、すぐに糖質制限を取り入れ、

朝はMCTオイル入りコーヒー、昼は茹で卵とサラダ、夜は好きなものを食べる、というゆるい制限を行い、

体重 85.8 → 72.6

と数ヶ月かけて緩やかに減っていったものの、

「もう大丈夫だろ」と、昼にラーメンとご飯という、どか食いをまた始めてしまい、体重は増えず安心し切っていたところに、

今年の健康診断で、

hba1c6.7、空腹時血糖値85

となってしまいました。江部先生には食後高血糖(隠れ糖尿)をこちらのコメント欄でご指摘いただきました。

自分を省みて、スーパー糖質制限を徹底しました。5日目の夜に、吐き気と空腹感、手足の冷えで目覚め、翌日からはカロリーをしっかり摂ることを意識しました。

ジェイソン・ファン博士が提唱する、間欠的ファスティング(十六時間から二十四時間の短い断食)も行っても、体調が良いまま変わらなくなり、

再検査のために伺った、「日本糖質制限医療推進協会」の提携医のもと、

尿からは、ケトン2+
hba1cは、5.5
空腹時血糖値は、80

となり、主治医からは「短期間でこれだけの改善があるので、寛解ではなく完治と言ってもよいかもしれません」とお褒めいただきました。

BMIがまだ25.2(体重は69.55)、脂肪肝特有の肝機能数値もあるので、このままスーパー糖質制限を続け、適正体重に戻ってからスタンダードにしてみようと相談いただいています。

早い段階で徹底したこと、また、食事療法のタイミングがよかったのかもしれませんね、などたくさんの激励のお言葉もいただきました。

ジェイソン・ファン博士は、『世界最高の糖尿病対策』という著書で、

インスリン抵抗生により、血液が高インスリン状態になることが、高血糖以上に恐ろしいことなどを指摘されており、ベータ細胞の回復の可能性や、糖質制限の有効性を主張されていて、江部先生のメソッドとセオリーがさらに補強されている印象を受けました。

最近出版された、水野雅登医師の『糖尿病の真実』にも、二型糖尿病へのインスリン治療の弊害が強く指摘されており、伝統的な糖尿病治療、そして考え方がどんどん変わってきているように思います。

今後も、糖質制限を継続し、健康維持に努めて参ります。江部先生、本当にありがとうございます!心より感謝申し上げます。

ちなみに、もうラーメンやパン、菓子類を食べたいとは全く思わなくなりました。TVで映っても、毒物に見えるようになったから不思議です。お米だけは懐かしくなりますが…笑
2021/12/19(Sun) 11:17 | URL | マンモス私立大学教員 | 【編集
Re: スーパー糖質制限による改善のご報告
マンモス私立大学教員 さん

体重改善、HbA1c改善、
良かったです。
また、主治医も糖質制限賛成派で、幸いでしたね。

ご指摘通り、過剰のインスリンは「百害あって一利なし」です。
一方、スーパー糖質制限食でも、最小限のインスリン分泌は必要です。



2021/12/19(Sun) 18:11 | URL | ドクター江部 | 【編集
こむらがえり対策
就寝時のこむらがえり対策について、簡単な方法です。
靴下の先(指の部分)をちょん切ったものを着用して寝ます。指部分を切るのは、足の放熱のため。切っておかないと寝ているうちに脱いでしまいます。
糖質制限歴6年。もともとこむらかえりがあったのですが、年とともに増えていいました。芍薬甘草湯、マグネシウムサプリ、水分補給、いろいろ試しましたが著効なかったのです。2か月前に友人にこの方法を教えてもらい試したところ、この2か月、こむらがえりは起きていません。以前は1週間に1・2回はこむらがえりで目覚めていました。「くるぶしが冷えるのが良くない」そうです。
江部先生の言われる、
冷えや運動や脱水があって、相対的に血流が不足するとこむら返りを起こしやすい
というタイプだったのだと思います。自分では冷え性でもないし、こんなことで、と思います。靴下は、緩いものやきついもの、分厚いものを試していますがそれほど変わりません。
お困りの方は、ぜひ一度お試しください。
2021/12/20(Mon) 06:46 | URL | ミーハー | 【編集
Re: こむらがえり対策
ミーハー さん

貴重な情報をありがとうございます。
私は、靴下作戦は、全く知りませんでいた。
とても参考になります。
2021/12/20(Mon) 17:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
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