2020年08月23日 (日)
毎日新聞医療プレミア
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20200817/med/00m/100/001000c
実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-新型コロナ
第2波で重症や死亡が少ないわけ谷口恭・太融寺町谷口医院院長
こんにちは。
毎日新聞医療プレミアで
2020年8月18日、上記記事が掲載されました。
以下の青字部分は記事の内容の要約です。
【端的に言うと、第一波では、死亡率が感染者の5.3%を占めていたのに、
第二波では、死亡率がわずか0.5%なのです。
第一波は、緊急事態宣言解除後5月末には、
感染者は累積で1万6851人、死者は891人で、感染者の約5.3%を占めました。
一方、第二波は、6月以降、
感染者数は3万9000人近く増えて8月17日には計5万5667人、
死者は208人増えて1099人になりました。
6月以降の死者は、208人で、感染者は約39000人で、死亡率は0.5%です。
何故、第二波で死亡率が、第一波の1/10に激減したのかに関して
以下の3つの仮説があります。
#1 ウイルスが変異して弱毒化した。
#2 第1波のときに多くの日本人がウイルスに感染し(あるいはウイルスにさらされ)、すでに多くの日本人には“免疫”がある。
#3 重症化しやすい高齢者や持病のある人たちは自発的に自粛をしており、そうした感染者の人数は増えていない。
第2波で感染者が増えたのは、軽症で、第1波のときなら検査の対象とされず見逃されていたような人たちが、
今回は検査を受けているからに過ぎない。変異はあるが弱毒化の証拠はない】
#1ですが、
新型コロナウィルスが変異しているのは間違いない事実です。
例えば武漢型とか欧州型というくらいですから、
ウィルスが変異して異なっているわけです。
また、日本の6月以降の第二波は、さらに変異した新型コロナウィルスです。
しかしながら、弱毒化したという確固たる根拠はありません。
#2は、2つあります。
一つは京都大学大学院医学研究科特定教授の上久保靖彦氏の説です。
「日本では既に”集団免疫が達成”されている。」
「本当は抗体がある人でも、既存の抗体検査では陰性という結果が出る。」
との主張です。全てデータに基づいており、かなりの説得力です。
上久保教授の説に関しては、以下の本ブログ記事をご参照頂ければ幸いです。
京都大学大学院研究科特定教授・上久保靖彦氏。集団免疫説。
2020年08月17日 (月)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5342.html
二つ目は、国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授の説で
「新型コロナは毒性が低く、そもそも抗体は不要であり自然免疫で十分だ」
というものです。
高橋氏は、新型コロナに感染した人は、自然免疫レベルで追い払い、
獲得免疫の出番がなかったので、血中抗体ができなかったとしています。
高橋氏の説は、
「BCGワクチンによる自然免疫の向上」という私のお気に入りの説とも
重なっています。
しかしながら、#2の二つの説は、新型コロナ感染症に関して、
日本人が、欧米に比べて死亡率が非常に低いことを説明しますが、
日本国内での、第一波と第二波の死亡率の極端な差を、説明できません。
#3は、
重症化しやすい高齢者や持病のある人たちは自発的に自粛しているので
死亡率が減少したという説です。
確かに、第二波の感染者は、
ホストやホステスのいる夜のお店での感染が多く、若者が目立っています。
厚生労働省によれば、6月以降は「高齢の感染者」が減少しています。
60歳以上の感染者数は、5月27日までで約5200人、
それ以降8月12日まででは約4400人と減少しています。
一方、全体の感染者数は5月27日までが約1万6500人、
それ以降8月12日までがが3万3000人と倍増しています。
第2波では感染者が倍増しているのに、高齢の感染者は減っています。
高齢者が街に出なくなったことが、関与していると思われます。
高齢者の感染減少が、死亡率減少に関与していることは間違いないと思います。
高齢者が集まるカラオケ喫茶やサロンは営業を大幅に縮小し、
高齢者が集まる診療所やクリニックの多くは、
少しでも発熱がある患者の受診を断っています。
高雄病院と江部診療所でも、発熱や咽頭痛などの患者は
電話診察としています。
<結論>
日本国内の新型コロナウィルス感染症において、
5月27日までの第一波に対して
それ以降8月12日までの第二波の死亡率が、1/10以下に減少したのは
#3の高齢者の外出自粛がもっとも大きな要因と考えられます。
江部康二
第1波、第2波とも年齢及びリスク要因別にクラスタリングし、陽性判定者に対する死亡者数の比率を出し、両者に有意な差が見られなければ、コロナウィルスが弱まったとは言えない、という事になりますね。厚生労働省からはこの種の統計解析に必要な情報は出されているのでしょうか。
国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターの情報によれば、日本の1~2月は中国の武漢由来のウイルス株、3月から4月は欧州株、7月から8月は欧州株の6塩基変異型が突然顕在化したことが確認されたとのことです。
*出典: 国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センターの情報
新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査2 (2020/7/16現在)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/basic-science/467-genome/9787-genome-2020-2.html
https://www.niid.go.jp/niid/images/research_info/genome-2020_SARS-CoV-MolecularEpidemiology_2.pdf
(図はpdfの最後の方にあります)
*出典: 国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センターの情報
新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査2 (2020/7/16現在)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/basic-science/467-genome/9787-genome-2020-2.html
https://www.niid.go.jp/niid/images/research_info/genome-2020_SARS-CoV-MolecularEpidemiology_2.pdf
(図はpdfの最後の方にあります)
2020/08/24(Mon) 06:46 | URL | 広島人 | 【編集】
第1波と第2波とではPCR検査の数も対象者も大幅に変わっており、そのままの数値では比較のしようがありません。
現在の検査結果データを第1波の時と同じ基準にしたものは見たことがないですが、なぜそのようなデータは公表されないのでしょうか。
少なくとも第1波の時は対象外だった無症状感染者数を除外するとか、方法は色々考えられるはずなのですが、それをせずに第2波は重症化率や死亡率が低いというのは情報操作のように見えて仕方がないのですが。
感染者数という言葉とPCR陽性者数が同意で使用されることにも疑問があります。陽性者とは唾液や鼻の粘膜からウィルスが検出されたと言うことであり、無症状者については実際には免疫力によって細胞内での増殖(=感染)がないかもしれないと思いますがいかがでしょうか?
現在の検査結果データを第1波の時と同じ基準にしたものは見たことがないですが、なぜそのようなデータは公表されないのでしょうか。
少なくとも第1波の時は対象外だった無症状感染者数を除外するとか、方法は色々考えられるはずなのですが、それをせずに第2波は重症化率や死亡率が低いというのは情報操作のように見えて仕方がないのですが。
感染者数という言葉とPCR陽性者数が同意で使用されることにも疑問があります。陽性者とは唾液や鼻の粘膜からウィルスが検出されたと言うことであり、無症状者については実際には免疫力によって細胞内での増殖(=感染)がないかもしれないと思いますがいかがでしょうか?
2020/08/24(Mon) 08:12 | URL | 西村 典彦 | 【編集】
Masa さん
そこまで詳しいデータは、厚生労働省は出していないと思います。
PCR検査を増やせば、陽性者数は増えますが、これは感染者数とは異なります。
無症状コロナ保有者で、検査しない人も結構多いと思いますので、
感染者数はもっと多いはずです。
ただ死亡者数は、第一波に比べて第二波で少ないのは事実であり、
重症者も少ないと思われます。
そこまで詳しいデータは、厚生労働省は出していないと思います。
PCR検査を増やせば、陽性者数は増えますが、これは感染者数とは異なります。
無症状コロナ保有者で、検査しない人も結構多いと思いますので、
感染者数はもっと多いはずです。
ただ死亡者数は、第一波に比べて第二波で少ないのは事実であり、
重症者も少ないと思われます。
2020/08/24(Mon) 11:29 | URL | ドクター江部 | 【編集】
西村 典彦 さん
仰る通りと思います。
PCR検査を増やせば、陽性者数は増えますが、これは感染者数とは異なります。
無症状コロナ保有者で、検査しない人も結構多いと思いますので、
感染者数はもっと多いはずです。
ただ第一波に比べて、第二波で死亡者数が少ないのは事実と思います。
真の無症状感染者は、他人にうつす可能性は低いと思います。
また体内に侵入されなくても、唾液などにウィルスがいて、PCR陽性になる人もいると思います。
しかし、若いホストやホステスの皆さんが、仕事場でクラスターのもととなっていることから、
症状がないか軽くても感染力はあるのでしょう。
また米国の報告で、PCR陽性無症状感染者に、後日再び問診して確認すると、
そういえば、少ししんどかったかななど、真の無症状ではない人が結構いたようです。
仰る通りと思います。
PCR検査を増やせば、陽性者数は増えますが、これは感染者数とは異なります。
無症状コロナ保有者で、検査しない人も結構多いと思いますので、
感染者数はもっと多いはずです。
ただ第一波に比べて、第二波で死亡者数が少ないのは事実と思います。
真の無症状感染者は、他人にうつす可能性は低いと思います。
また体内に侵入されなくても、唾液などにウィルスがいて、PCR陽性になる人もいると思います。
しかし、若いホストやホステスの皆さんが、仕事場でクラスターのもととなっていることから、
症状がないか軽くても感染力はあるのでしょう。
また米国の報告で、PCR陽性無症状感染者に、後日再び問診して確認すると、
そういえば、少ししんどかったかななど、真の無症状ではない人が結構いたようです。
2020/08/24(Mon) 11:41 | URL | ドクター江部 | 【編集】
広島人 さん
興味深い情報をコメント頂きありがとうございます。
興味深い情報をコメント頂きありがとうございます。
2020/08/24(Mon) 13:27 | URL | ドクター江部 | 【編集】
BCGワクチン接種義務の制度化が新型コロナウイルスの拡散率を低下させる可能性を示唆
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2020/200731_4.html
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2020/200731_4.html
2020/08/28(Fri) 12:40 | URL | 中嶋一雄 | 【編集】
中嶋一雄 先生
嬉しい情報をありがとうございます。
これは、適宜、記事にしたいと思います。
京大が、BCG ワクチンの新型コロナ感染予防効果を、正式に証明してくれたのですから、素晴らしいですね。
嬉しい情報をありがとうございます。
これは、適宜、記事にしたいと思います。
京大が、BCG ワクチンの新型コロナ感染予防効果を、正式に証明してくれたのですから、素晴らしいですね。
2020/08/28(Fri) 19:26 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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