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糖質制限食とマラソン。
【18/06/21 登山好きのランナー
いつもお世話になっております。
こんにちは。
いつも楽しく拝見しております。
過去に何度か糖質制限をしたことがありいつもある程度の成果を得ております。
今回も昨年、怪我とストレスで体重が増加してしまったので糖質制限を実施して4週間が経過しました。
46才男性事務職です。
毎朝5-10kmのランニングをしております。
今回は朝食抜き(もともとあまり食べることはない食生活)、昼はサラダ(海藻、きのこ類入)と鶏胸肉もしくは豚肉、夜は茶碗少なめ1杯の雑穀米や麺類少々を食べる時もある程度で主にストレスのない程度に家族とおかず中心の食事に低糖質の発泡酒等を350ml缶4-5本という感じで2食は主食抜きで間食やジュース類なし(もともとほとんど口にしない)の生活です。
3年ほど心拍計付の活動量計を腕に装着して記録しています。
今回、体重は平均して2.5kgマイナス、体脂肪率もマイナス2%とBMIは23台から22台へと順調に減量できているのですがひとつ問題が。
お酒に極端に弱くなりました。いつもの量を飲んでいるのにそのまま居間で眠ってしまうことが増え翌日も軽い二日酔い状態ということが増えました。
他サイトで水分量が減るので水分摂取を心がけるようにとあったので飲んでいる最中に炭酸水や烏龍茶を飲むようにしてこれは改善しました。
もうひとつは2週間経過したころから時折頭痛が出るようになりました。
思い当たるのはもともと軽度高血圧症なので測ってみると下が100前後で上が150近い数値でした。もともと似たような感じですが1年前に毎日計測していた時人比較すると若干高くなっています。
前述の活動量計の記録を確認すると安静時心拍数は糖質制限をはじめる前は52-54程度だったのが57-60と明確に上昇しております。糖質制限を開始した翌日から数値が上昇しています。
安静時心拍数の上昇、血圧の上昇(元々軽度高血圧症ではあるにしろ)は糖質制限となにか関係はありますでしょうか?またずばり間接的にでも頭痛を誘発することは考えられますでしょうか?よろしくお願いします。

PS 運動時の心拍数は糖質制限前後で特に上がりやすくなったとは感じていません。】




18/06/22 ドクター江部
Re: いつもお世話になっております。
登山好きのランナー さん

「安静時心拍数の上昇、血圧の上昇」

は糖質制限とは無関係と思います。
糖質制限をすると、血圧は下がることが多いです。
糖質制限と心拍数の変動は聞いたことがありません。

原因としては、運動量のわりに、摂取エネルギーが少ない可能性があります。


【18/06/22 登山好きのランナー
お返事ありがとうございます。
糖質制限による影響がないということがわかって安心しました。
が、心拍数に関しては聞いたことがないということですが糖質制限を開始したのとタイミングが同じでどこかに因果関係があるのでは?と素人ながら考えてしまいますね。
ありがとうございます。
目標体重まで減量できたら徐々にゆるやかな糖質制限食に戻そうと考えておりますのでその時に安静時心拍数がどう変化するのか確認してまたご報告させていただきます。
もうひとつ、以前の記事で登山でのシャリバテのことを書かれており実際自分もほとんど食べることなく登山をするのですがフルマラソン大会ではどうしても心配で栄養ゼリー等を補給します。糖質制限をしている時も糖質の補給は不要という記事も読みましたが市販の携行食やゼリーは糖質を多く含んだものばかりですがそういうものは逆に摂取すると悪影響でしょうか?携行するならこういうものが良いというものがあれば教えていただけますでしょうか?それとも結論的には水分補給のみで何も摂る必要はないと考えて良いのでしょうか?】



登山好きのランナーさん

マラソンのエネルギー源ですが、グリコーゲンは肝臓に約100g、
筋肉中に約300gしか蓄えがありません。
従って、<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムでは
400g×4= 1600kcalしか賄えませんので、
フルマラソンに必要なエネルギー量(体重60kgの男性で約2600kcal)には到底足りません。

その点、脂肪は、体重60kgで体脂肪率15%なら、9kg、81000kcalであり
必要充分な備蓄量と言えます。
つまり、理論的には42.195kmの走行課程のほとんどを、
有酸素運動の<脂肪酸-ケトン体>エネルギーシステムで走り、
ラストスパートだけ、
無酸素運動の<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムで
全力疾走というのが、理想的な配分と言えます。


結論からいうと、マラソン前も最中もスーパー糖質制限食でOKです。
水分も水で大丈夫で、塩は必要量を適宜補充です。

米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。
『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』
という内容です。

普段から
(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人
いずれの群もエリートランナーです。

研究施設に2泊3日で滞在、最大酸素摂取量、体組成、筋生検など実施、
その後トレッドミルで走った後、直後と2時間後に筋生検を実施です。

(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、
運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。

一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。

つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、
ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、
筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、
糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという研究報告です。


江部康二


ケトン適合したウルトラ持久力ランナーの代謝特性について

要約
背景


多くの成功したウルトラ持久力アスリートが、高炭水化物から低炭水化物食に切り替えた、しかし彼らは代謝適合の度合いを決定するために前もって研究はされてはいない。

方法

20人のエリートウルトラマラソンランナーとアイアンマン距離のトライアスリートが、代謝反応を決定するために最大強度の運動テストと180分間の64% VO2maxのサブ最大強度のトレッドミル運動を実行した。
1グループは従来の常に高炭水化物食(HC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25),
もう1つのグループは、低炭水化物食(LC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70),
で、平均20ヶ月(9~36ヶ月の範囲)実践した。

結果

ピークの脂肪酸化はLCグループ((1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000))が2~3倍高く、VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000)もより高かった。
サブ最高強度の運動中で平均脂肪酸化は、LCグループ(1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000)で、脂肪のが大きな貢献(88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000)に対応して59%高かった。
燃料使用量における、LCとHCの著明な相違にも関わらず、休息中の筋肉中のグリコーゲンと180分間ランニング (−64% from pre-exercise) 後のグリコーゲンレベルの低下と120分の回復(−36% from pre-exercise)において有意差はなかった。.

結論
HC(高糖質)食を実践している高度に訓練されたウルトラ持久力アスリートと比較して、長期のケトン適合食は著明に脂肪酸化の比率が高かった。
一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満パターンは運動中も3時間のランニング後も同様であった。



METABOLISM CLINICAL AND EXPERIMENTAL 65 (2016) 100 – 110
Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners


ABSTRACT
Background.

Many successful ultra-endurance athletes have switched from a highcarbohydrate
to a low-carbohydrate diet, but they have not previously been studied to
determine the extent of metabolic adaptations.

Methods.
Twenty elite ultra-marathoners and ironman distance triathletes performed a
maximal graded exercise test and a 180 min submaximal run at 64% VO2max on a treadmill
to determine metabolic responses.
One group habitually consumed a traditional highcarbohydrate
(HC: n = 10, %carbohydrate:protein:fat = 59:14:25) diet, and the other a lowcarbohydrate
(LC; n = 10, 10:19:70) diet for an average of 20 months (range 9 to 36 months).

Results.
Peak fat oxidation was 2.3-fold higher in the LC group (1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000) and it occurred at a higher percentage of VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000).
Mean fat oxidation during submaximal exercise was 59% higher in the LC
group (1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000) corresponding to a greater relative
contribution of fat (88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000). Despite these marked differences in fuel
use between LC and HC athletes, there were no significant differences in resting muscle
glycogen and the level of depletion after 180 min of running (−64% from pre-exercise) and
120 min of recovery (−36% from pre-exercise).

Conclusion.

Compared to highly trained ultra-endurance athletes consuming an HC diet,
long-term keto-adaptation results in extraordinarily high rates of fat oxidation, whereas
muscle glycogen utilization and repletion patterns during and after a 3 hour run are similar


コメント
厳密な食事管理はできず、単純に主食抜きの食事をしている者です。
最近は色々あり、糖質食べ過ぎていましたが…
本日テレビで、『太るのは糖質だけ。カロリーと肥満は関係ない』などと言っていました。
糖質制限しながらもカロリーも気にしていましたが、カロリーは気にしなくてもいいんでしょうか?
2018/06/22(Fri) 21:38 | URL | 通りすがり | 【編集
箱根登山電車(あじさい号)
こんばんは。
6月22日(ラッキー)
久しぶりに晴天に恵まれ箱根湯本駅から強羅駅まで、登山電車に乗りました。
今線路の両側に咲く紫陽花が満開で、とても綺麗です。
お花畑に触れながらゆっくりと走る電車に乗っていると、まるで別世界にいるようで癒されました。
お近くへお住まいの方へ
ストレス解消に是非おススメです。
2018/06/23(Sat) 03:07 | URL | あじさい | 【編集
Re: タイトルなし
通りすがり さん

糖質制限食で肥満の人は減量しやすいのですが、
やはりカロリーも関係あると思います。
2018/06/23(Sat) 08:16 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
通りすがり さん

糖質制限食による体重減少効果について。
2018年06月19日 (火)


6/19の本ブログ記事をご参照頂けば幸いです。
2018/06/23(Sat) 08:19 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 箱根登山電車(あじさい号)

あじさい さん

とても綺麗で嬉しい情報をコメント頂き、ありがとうございます。
私は、ちょっと遠いですね。

2018/06/23(Sat) 08:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
漢方薬について
お世話になります。
5/20魚の骨を無理して飲み込んだために食道炎を起こし胃カメラ後炎症が酷いとため、絶食点滴治療と言われ、先生に糖質制限に理解のある近隣の病院を紹介していただいたものです。
受診後胃弱を改善した方が良いとのことで、小建中湯一日3回6包2週間処方されました。10日ほど服用したのですが、成分に麦芽糖が入っていることを知り服用を中止しました。なぜ糖尿人にこの処方と思いました。

6/14胃弱を改善したほうが良いと思い漢方薬の専門医に煎じるタイプの漢方薬を処方してもらいました。半夏、黄ごん、チクセツニンジン、乾姜 甘草、黄連、牡蠣、陳皮、芍薬、白朮茯苓柴胡、生姜。10日ほど服用しておりますが、糖質制限後感じたことのない空腹感を感じるのですが、処方された生薬の中で血糖を上げる可能性のある生薬があれば教えていただけませんでしょうか。
漢方薬とは関係ありませんが、アルロイドG内用液に糖質含まれますか。5/20採血時に5.3だったクレアチニンが、6/14採血で9.7にまで上がりました。
3年ほど前から糖質制限をして顕著な改善をしたのが、クレアチニンの数値だったので内服で血糖が上がったからと考えているのですが。
2018/06/23(Sat) 09:52 | URL | かおり | 【編集
江部先生はいつもカロリーが体重に関係あるとおしゃってますがそれはもう古い考えではないのではないでしょうか?
昨日テレビで糖尿病専門医牧田善治先生が出てて「医者が教える食事術最強の教科書」著者でもありますが最新の研究などにより肉や魚や油で太ることはない、肥満とカロリーは関係ないと言い切っていました。
ご自身の患者20万人を診てきた経験からも糖質だけ制限すればあとはいくら肉や油を食べてもほとんどの人が痩せたそうです。
また油や肉で心臓病や脳梗塞になることもないそうです。昔言われてきたこととは真逆のことが分かったそうです。
2018/06/23(Sat) 14:21 | URL | マロン | 【編集
Re: 漢方薬について
かおり さん

煎じ薬には、とくに血糖を上げる生薬は、ないと思います。
アルロイドGも血糖を上げる成分はないと思います。

クレアチニンは腎機能の指標です。
血清クレアチニンの基準値は、男性が「0.5~1.1㎎/dL」、女性が「0.4~0.8mg/dL」くらいです。
2018/06/23(Sat) 18:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
マロン さん

糖質制限食に関しては、1999年から、日本で初めて、高雄病院で開始しています。
そのデータをもとに
日本初の糖質制限食の本
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」江部康二著(東洋経済新報社)を2005年に刊行しました。

牧田善治氏の仰っていることは、全て高雄病院では、十数年前から常識であり、
私は、日本の糖質制限食の先駆者として長年、情報を発信してきました。

そして糖質制限食が一番体重減少に有利であることは、間違いありません。
しかしながら、カロリー無制限ということではないのです。

2018/06/23(Sat) 18:28 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます。
記事として取り扱っていただき恐縮です。
本当にありがとうございます。
エネルギー不足については早速、朝のランニング後にプロテインとトマトジュース、マヨネーズたっぷりのゆで卵を摂るようにして少し改善してきてるような気がしますが頭痛や心拍数、血圧はまだ改善しないです。即効性があるものでもないと思いますので続けていきます。
マラソンについても先生を信じてしばらくは糖質制限を続けて秋のシーズンで糖質無補給でフルマラソン挑戦してみます。
ひとつ前の質問でものせてたのですがレース中に逆に糖質含有量の多い栄養ゼリー類を摂取するのは糖質制限実施している時に悪影響がありますでしょうか?それとも一気に摂取せずにちびちび補給することは大丈夫ですか?
2018/06/26(Tue) 10:42 | URL | 登山好きのランナー | 【編集
Re: ありがとうございます。
登山好きのランナー さん

糖質制限中は、少々心拍数が上がるていどの運動でも筋肉は
『脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム(有酸素運動)』を利用していると考えられスタミナはたっぷりです。

そして、最後のラストスパートのときだけ
『ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステム(無酸素運動)』を利用すると考えられます。

マラソンの途中で、糖質含有量の多い栄養ゼリー類を摂取すると
『ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステム』に切り替わる恐れがあります。
そうなると筋肉中のグリコーゲンは250~300gしかないのでスタミナ切れの恐れがあります。

マラソンと糖質制限に関しては、
ブログ
ドクターシミズのひとりごと
http://promea2014.com/blog/

がとても参考になります。

清水泰行先生のご著書
『運動するときスポーツドリンクを飲んではいけない』(廣済堂健康人新書)
も参考になります。
2018/06/26(Tue) 13:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます。
さっそく教えていただいた清水先生のブログ読んでみます。
2018/06/26(Tue) 16:04 | URL | 登山好きのランナー | 【編集
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