三大栄養素と血糖値。直接影響を与えるのは糖質のみ。タンパク質は?
こんにちは。

三大栄養素と血糖値について、生理学的事実を整理しておきます。

これらの生理学的事実はEBM以前の基本的な事柄です。

手元に、以下の米国糖尿病学会の本(英文の原書)があります。
糖尿病患者さん教育用のテキストブックです。

American Diabetes Association
Life With Diabetes:A Siries of Teaching Outlines 
by the Michigan Diabetes Research and Training Center ,
-4th Edition-,2009


57ページに

「Carbohydrate,protein,and fat contain calories.
Only Carbohydrates directly affect blood glucose levels. 」


という文章が記載してあります。

-3th Edition-2004年版から、継続してこの記載があります。

直訳すると

「炭水化物・タンパク質・脂肪はカロリーを含有して
いる。
炭水化物のみが、血糖値に直接影響を及ぼす。」


炭水化物に関して未精製のもの(茶色)と精製されたもの(白)を区別していません。
<炭水化物=糖質+食物繊維>であり、血糖値を上昇させるのは糖質です。
つまりADAによれば、茶色だろうと白だろうと、血糖値を直接上昇させるのは、
炭水化物のみであり、
タンパク質と脂肪は血糖値に直接影響を及ぼすことはないのです。
これらは、エビデンス以前の生理学的事実です。


直接という言葉が意味深で、
下記2)のようなケースがあっても矛盾しない表現にしたのでしょうね。

ADA(米国糖尿病学会)、流石です。

<三大栄養素と血糖値上昇に関する考察>

さて「血糖に直接影響を与えるのは糖質のみ。」

というADA(米国糖尿病学会)の記載に関連する事柄を、1)~8)まで整理してまとめてみました。

1)「血糖値に直接影響を与えるのは糖質のみである」

2)「1型糖尿病で内因性インスリンが枯渇している場合や2型糖尿病でも内因性インスリンが枯渇に近いときは、グルカゴン分泌を介してタンパク質が間接的に血糖値を上昇させる」「タンパク質に含まれるアミノ酸がグルカゴンを分泌させるが、インスリンは分泌できない病態だからである」

3)「上記の2)を除く大多数の内因性インスリンが残っている糖尿病患者においては、摂取後血糖値を上昇させるのは糖質のみである。」「摂取したタンパク質によりグルカゴンが分泌されるが、同時にインスリンも分泌され効果が相殺されるからである」

4)「1)2)3)より、大多数の内因性インスリンが残っている糖尿病患者においては、糖質制限食が極めて有効である」

5)「脂質は直接的にも間接的にも血糖値を上昇させない」
  「脂質はインスリンもグルカゴンも分泌させない。」

6)「タンパク質はインスリンとグルカゴンを両方分泌させるので2)のケースを除いては効果は相殺されて、血糖値にほとんど影響を与えない。」

7)「2)のようなケースでも、糖質制限食を導入することで、インスリンの量を大幅に減らすことができる。」

8)「2)のようなケースでは糖質制限に加えてタンパク質のカウントもするとコントロールはさらに良くなる。」


<タンパク質と血糖値上昇に関する考察>

①健常人では、タンパク質摂取で臨床上意味のある血糖値上昇はない。
②ほとんどの2型糖尿人においても、タンパク質摂取で臨床上意味のある血糖値上昇はない。
③1型糖尿人で、内因性インスリンがゼロレベルの場合、臨床上意味のある血糖値上昇がみられる。個人差が大きく、1gのタンパク質がグルカゴンを介して間接的に1~4mg/dlくらい血糖値を上昇させる。
④2型糖尿人でも、罹病期間が長くて、一定レベル以上β細胞が傷害されて、インスリン分泌能力が低下していれば、臨床上意味のある血糖値上昇が見られる。勿論こちらもグルカゴンを介しての間接的な血糖値上昇である。個人差があるので、血糖自己測定器で確かめるのがよい。

*③④の場合の血糖上昇は、インスリン分泌能力が非常に低下しているので、グルカゴンの糖新生による間接的血糖値上昇を、内因性インスリンで相殺できないからである。

*タンパク質と血糖値に関して実験する場合は鳥のササミだけを摂取して、含有タンパク量を計算して、
 食前血糖値、30分後血糖値、1時間後血糖値、2時間後血糖値、3時間後血糖値・・・
 と測定すれば、それぞれの個人のデータがわかる。



江部康二
コメント
江部先生おはようございます。以前からGACKTさんの糖質制限の噂は聞いていましたが、今朝の目覚ましテレビで、GACKTさんが4年振りにパンを食べた、米は20年間食べていない、1日1食で炭水化物抜きの生活だと言っていました。まさにスーパー糖質制限ですね!あの若々しさは糖質制限のお陰なのかもしれませんね!
2018/06/14(Thu) 06:50 | URL | きんちゃん | 【編集
糖質制限と筋肉痛について
いつもコメントありがとうございます。

糖質制限で筋肉痛になるのはカロリー不足と何かで読んだのですが、私の場合、糖質40g/日でふくらはぎや腰回りが軽い筋肉痛になります。100g/日ではなりません。体重は減少していないのでカロリー不足ではないと思いますが、他に原因はあるのでしょうか。
特にふくらはぎは明け方につったりします。骨格筋に何らかの影響が出ているのであれば、心筋への影響も気になります。元々水分摂取は少ない方ですが体組織計で56〜60%の水分量です。
2018/06/14(Thu) 10:29 | URL | 西村典彦 | 【編集
【アドバイスをいただければ幸いです】今後の受診のタイミングについて
いつもブログを楽しく拝見しております。
江部先生にご意見賜りたくコメントさせて頂きます。
今後の内科受診の是非とタイミングについてです。
私は第二子妊娠後期に負荷試験にて妊娠糖尿病と診断されました。糖尿病内科紹介となり、自己血糖測定をしながらの食事管理の指示受けました。私は産業医として勤務しており、普段が人に保健指導をする立場なので、意地でも血糖コントロールして個人院で産もうと決意し、スーパー糖質制限にて食前血糖100以下食後2時間血糖120以下を安定的にクリアし、おかげさまで無事母子ともに健康な状態で個人院で出産することが出来ました。(忙しい中での食事管理は容易ではありませんでしたが、先生のブログを拝見し励まされておりました、ありがとうございました)
体型は身長147センチ非妊娠時体重45キロ妊娠時最大49キロです。(ただし非妊娠時で20歳からは10キロ以上の体重増加有)
産後1週間も血糖測定を持続しましたが、特に食後2時間で140を超える様な高血糖は見られず、概ね高い時でも120程度でしたので、主治医からの指示があった通り、そこで測定を止めていました。
(主治医からは産後は血糖管理の基準は妊娠していない人と同等として、産後1週間測定し基準を超えれば受診して下さい、超えなければ測定を止めて良いです、次は半年後くらいに負荷試験をしましょうと指示を受けていました。今思えば産後の入院食は量が多くていつも何割かは残しており、主食は最後に食べる様にしていたので糖質摂取量が少な目だったのかもしれません)
現在産後1ヶ月半です。
糖質量の多い食事を摂ると乳腺が詰まりやすいという話を聞いたことがあり、第一子の産後についても思うところがあったので、産後もずっとスタンダード糖質制限プラス機会があれば間食(いただいた洋菓子等)という食生活を送っていたのですが、
昨日ふと思い付いて、糖質量30グラムという記載のある「糖質オフパスタ」を食べて食後2時間値を測ったところ、140で驚きました。
その後主食を摂った食事の食後2時間値を測定すると145と境界型の数値でした。
妊娠糖尿病は糖尿病に移行するリスクが高いことは承知しておりましたが、30代前半で境界型の可能性大か...とショックを受けております。
前置きが長くなりましたが、標記のご相談です。
今後どの様なタイミングで内科受診をしたら良いでしょうか?
今すぐ内科受診して糖尿病、もしくは糖尿病境界型と診断されても最初は食事管理となると思うので(ただ専門医で指導された食事管理はカロリー制限だったので自己流の糖質制限を継続するだけになりますが)、産後半年後の検査までスタンダード糖質制限からスーパー糖質制限に切り替えて、たまに血糖測定をして確認しておけば良いか(幸いなことにあと30回分くらい測定キットが残っています)、と自身では考えているのですが、今後の合併症のリスク低減のためには早めに受診をするべきでしょうか?
不躾な質問で恐縮ですが、ご意見いただけましたら幸いです、よろしくお願いいたします。
2018/06/14(Thu) 11:58 | URL | Mamama | 【編集
Re: タイトルなし
きんちゃん

これは、とても嬉しい情報をコメント頂き、ありがとうございます。
GACKTさん、かっこいいですね。
2018/06/14(Thu) 18:43 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
きんちゃん

めざましテレビのサイトを見てみましたが
GACKTさんの話題が、見つかりませんでした。

どこかで、見ることが出来るでしょうか?

2018/06/14(Thu) 18:51 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖質制限と筋肉痛について
西村典彦 さん

こむら返りは、心筋とは無関係と思います。

糖質40g/日のときに、結果として、何らかのミネラルが不足している可能性があります。
マルチミネラルを摂って、水分もしっかり摂取しましょう。

2018/06/14(Thu) 18:56 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生お返事頂きありがとうございます。私も調べたのですが、これしか分かりませんでした。http://jcc.jp/news/13587587/
暑くなって来ましたので、どうぞご自愛下さい。
2018/06/14(Thu) 19:29 | URL | きんちゃん | 【編集
Re: 【アドバイスをいただければ幸いです】今後の受診のタイミングについて
Mamama さん

産業医さんですね。
「第二子妊娠後期に妊娠糖尿病・・・糖質制限食で無事出産」
良かったです。

ともあれ、妊娠糖尿病になったということは、正常妊婦に対して、体質的にあるていど
耐糖能が低下しているということとなります。
出産後境界型ですが、食後2時間値が145mgですから、ほとんど正常に近い境界型です。

スーパー糖質制限食なら、血糖コントロールは全く問題ありません。

ご自分で、SMBGを購入されて、今後も継続的に血糖チェックされたら
内科受診は今後も必要ないと思います。
2018/06/14(Thu) 19:36 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
きんちゃん

了解です。
ありがとうございます。
2018/06/14(Thu) 19:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
GACKTさん
こんばんは。深夜遅く、すみません。GACKTさんの記事を見つけました。

Instagramでは、パンを召し上がっている動画がみられますが、他の芸能ニュースを見ましたところ、このような記事が見つかりました。

URLを載せるのが下手ですみません。

https://search.yahoo.co.jp/amp/s/www.daily.co.jp/gossip/2018/06/13/0011349442.shtml%3Fpg%3Damp%26usqp%3Dmq331AQECAEoAQ%253D%253D

こちらで、パンを食べたあとどうなったか書かれています。

2018/06/15(Fri) 02:11 | URL | かんたん | 【編集
ご教示誠にありがとうございました
江部先生

ご多忙な中ご教示誠にありがとうございました。
たいへん心強いお言葉に感謝の気持ちでいっぱいです。
先生のアドバイス通りにスーパー糖質制限食を継続していこうと思います。
尚、医師の処方なしでは血糖測定機器のセンサーチップを購入出来ないと勘違いしていた為、説明に冗長な部分があり、申し訳ありませんでした。早速薬局に問い合わせ、消耗品の補充をしました。

産業医として保健指導をする際に、糖質制限に対する誤解があることを実感します。
これまでも自身でうまく説明出来ず、社員に先生の著者を薦めることがありましたが、
それに加えて、自身の経験も活かし指導出来る様になれば社員の行動変容に繋がるかと育休復帰が楽しみになっております。

また、余談ですが、社員の中に様々な健康関連情報に振り回される方が多数いらっしゃいます。
糖質制限に否定的な情報も多く出回っておりますが、先生の主張はいつもエビデンスに基づいており、信頼出来ます。
大学院時代に疫学で因果推論について学びましたが、エビデンスについてきちんと学ぶ機会を持つことが、
健康関連に関わらず情報リテラシーを高める良い手段になると感じます。
(医学部教育でEBMについては耳にタコが出来るくらい聞かされていますが、ある程度のご年齢の医師の著書を読むと【エビデンス】ではなく【経験(や慣例)】に基づく医療を当然の様に語っていて違和感を感じます)
先生は著書でエビデンスレベルの説明もして下さっているので、
先生の著書をきっかけに、根拠のない健康情報に振り回される方が減るのでは、といつも頼もしく感じております。

大きく脱線してしまい、たいへん失礼いたしました。
この度はご指導誠にありがとうございました。
これからも貴ブログで勉強させて頂きます。
改めまして、ありがとうございました。
2018/06/15(Fri) 15:00 | URL | Mamama | 【編集
Re: ご教示誠にありがとうございました
> 江部先生
>
> ご多忙な中ご教示誠にありがとうございました。
> たいへん心強いお言葉に感謝の気持ちでいっぱいです。
> 先生のアドバイス通りにスーパー糖質制限食を継続していこうと思います。
> 尚、医師の処方なしでは血糖測定機器のセンサーチップを購入出来ないと勘違いしていた為、説明に冗長な部分があり、申し訳ありませんでした。早速薬局に問い合わせ、消耗品の補充をしました。
>
> 産業医として保健指導をする際に、糖質制限に対する誤解があることを実感します。
> これまでも自身でうまく説明出来ず、社員に先生の著者を薦めることがありましたが、
> それに加えて、自身の経験も活かし指導出来る様になれば社員の行動変容に繋がるかと育休復帰が楽しみになっております。
>
> また、余談ですが、社員の中に様々な健康関連情報に振り回される方が多数いらっしゃいます。
> 糖質制限に否定的な情報も多く出回っておりますが、先生の主張はいつもエビデンスに基づいており、信頼出来ます。
> 大学院時代に疫学で因果推論について学びましたが、エビデンスについてきちんと学ぶ機会を持つことが、
> 健康関連に関わらず情報リテラシーを高める良い手段になると感じます。
> (医学部教育でEBMについては耳にタコが出来るくらい聞かされていますが、ある程度のご年齢の医師の著書を読むと【エビデンス】ではなく【経験(や慣例)】に基づく医療を当然の様に語っていて違和感を感じます)
> 先生は著書でエビデンスレベルの説明もして下さっているので、
> 先生の著書をきっかけに、根拠のない健康情報に振り回される方が減るのでは、といつも頼もしく感じております。
>
> 大きく脱線してしまい、たいへん失礼いたしました。
> この度はご指導誠にありがとうございました。
> これからも貴ブログで勉強させて頂きます。
> 改めまして、ありがとうございました。
2018/06/15(Fri) 18:38 | URL | ドクター江部 | 【編集
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