2017年11月20日 (月)
こんばんは。
メディカル・トリビューン 2017/11/16 Vol.50 No.32
に「ウオーキングで高齢者の死亡を予防」という記事が載りました。
米国で、高齢者14万人を対象とした大規模前向きコホート研究で
運動を死亡の関係について検討したものです。
その結果、推奨度以下のわずかなウオーキングでも
死亡リスクが低下することがわかりました。
Amj Prev Med(2017/10/19 online)で報告されました。
米国スポーツ医学界/米国心臓協会の身体活動ガイドラインでは、
心血管疾患などを予防するため、週に中等度の運動で150分以上、
或いは激しい運動で75分以上を行うことを推奨です。
しかしこれを満たす高齢者は
65~74歳で42%、75歳以上では28%に過ぎません。
男性の5.8%、女性の6.6%は中等度または激しい運動はなしです(不活発群)。
それ以外の参加者(活発群)のうち男性では96.2%、女性では95.4%が何らかのかたちでウオーキングを行っていて、
男性の46.9%、女性の49.3%はウオーキングのみを行っていました。
ウオーキングのみのグループも活発群ですから、中等度の運動(速歩)に相当するウオーキングも実施していたと思われます。
今回の大規模コホート研究(Cancer Prevention Study Ⅱ の栄養コホート)
は、2時間/週未満のウオーキングを対照群として、
全死亡のハザード比(HR)を他の各運動群と比較したものです。
その結果、
①不活発群のハザード比は1.26と上昇していました。
②これに対して、ウオーキングのみを2~6時間/週実施していた群のHRは0.8でした。
③そしていずれかの運動で推奨レベルの1~2倍の身体活動群のHRは0.77でした。
従って、激しい運動はなしのウオーキングのみ(中等度運動はあり)でも
前者と同様の全死亡リスクの低下が得られることが判明しました。
これは、かなりの朗報ですね。
日本においても東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利氏によると、
男性で8000歩/日、そのうち20分間の速歩(中等度の活動)。
女性で7000歩/日、そのうち15分間の速歩(中等度の活動)。
くらいの、ぼちぼちの運動と短時間の速歩で、筋力を保ち、体力低下を抑えることができるそうです。
そして、うつ病、認知症、心疾患、脳卒中、がん、動脈硬化、骨粗鬆症、
高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームの予防効果が期待できるとのことです。
年齢不相応の激しい運動は、活性酸素も多く発生するので、逆効果ということです。
この結論は、群馬県中之条町で65歳以上の住民5000人を対象に行った「中之条研究」に
基づいています。
私は、1回/1~2週、テニスをしていますが、
日常的に運動するのは時間的に無理なので、病院内でよく歩いています。
電話は自分から院内でかけることはなくて、用事があれば理事長室から
給食(地下)や病棟(2階、3階)までいったりきたり歩きます。
高雄病院の理事長室は、ちょっとした丘の上にあります。
取材にこられた記者さんなど、正面玄関から理事長室までたどり着いた時には、
ほとんどの方が息切れしてます。( ̄_ ̄|||)
高雄病院京都駅前診療所はビルの4階ですが、
階段を駆け上がるようにしています。
講演などの時も駅の階段を歩きます。
ビルも7階くらいまでは階段を歩きます。
コンビニも自宅から歩いて往復です。
なんやかんやで「8000歩/日、20分間の速歩」はクリアする日が多いです。
ブログ読者の皆さんも、ちょっとした日常生活の工夫で
「男性で8000歩/日、20分間の速歩」
「女性で7000歩/日、15分間の速歩」
という目標はクリアできると思いますので、
是非、試してみましょう。
(*)なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?青柳幸利著、あさ出版、2014年
江部康二
メディカル・トリビューン 2017/11/16 Vol.50 No.32
に「ウオーキングで高齢者の死亡を予防」という記事が載りました。
米国で、高齢者14万人を対象とした大規模前向きコホート研究で
運動を死亡の関係について検討したものです。
その結果、推奨度以下のわずかなウオーキングでも
死亡リスクが低下することがわかりました。
Amj Prev Med(2017/10/19 online)で報告されました。
米国スポーツ医学界/米国心臓協会の身体活動ガイドラインでは、
心血管疾患などを予防するため、週に中等度の運動で150分以上、
或いは激しい運動で75分以上を行うことを推奨です。
しかしこれを満たす高齢者は
65~74歳で42%、75歳以上では28%に過ぎません。
男性の5.8%、女性の6.6%は中等度または激しい運動はなしです(不活発群)。
それ以外の参加者(活発群)のうち男性では96.2%、女性では95.4%が何らかのかたちでウオーキングを行っていて、
男性の46.9%、女性の49.3%はウオーキングのみを行っていました。
ウオーキングのみのグループも活発群ですから、中等度の運動(速歩)に相当するウオーキングも実施していたと思われます。
今回の大規模コホート研究(Cancer Prevention Study Ⅱ の栄養コホート)
は、2時間/週未満のウオーキングを対照群として、
全死亡のハザード比(HR)を他の各運動群と比較したものです。
その結果、
①不活発群のハザード比は1.26と上昇していました。
②これに対して、ウオーキングのみを2~6時間/週実施していた群のHRは0.8でした。
③そしていずれかの運動で推奨レベルの1~2倍の身体活動群のHRは0.77でした。
従って、激しい運動はなしのウオーキングのみ(中等度運動はあり)でも
前者と同様の全死亡リスクの低下が得られることが判明しました。
これは、かなりの朗報ですね。
日本においても東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利氏によると、
男性で8000歩/日、そのうち20分間の速歩(中等度の活動)。
女性で7000歩/日、そのうち15分間の速歩(中等度の活動)。
くらいの、ぼちぼちの運動と短時間の速歩で、筋力を保ち、体力低下を抑えることができるそうです。
そして、うつ病、認知症、心疾患、脳卒中、がん、動脈硬化、骨粗鬆症、
高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームの予防効果が期待できるとのことです。
年齢不相応の激しい運動は、活性酸素も多く発生するので、逆効果ということです。
この結論は、群馬県中之条町で65歳以上の住民5000人を対象に行った「中之条研究」に
基づいています。
私は、1回/1~2週、テニスをしていますが、
日常的に運動するのは時間的に無理なので、病院内でよく歩いています。
電話は自分から院内でかけることはなくて、用事があれば理事長室から
給食(地下)や病棟(2階、3階)までいったりきたり歩きます。
高雄病院の理事長室は、ちょっとした丘の上にあります。
取材にこられた記者さんなど、正面玄関から理事長室までたどり着いた時には、
ほとんどの方が息切れしてます。( ̄_ ̄|||)
高雄病院京都駅前診療所はビルの4階ですが、
階段を駆け上がるようにしています。
講演などの時も駅の階段を歩きます。
ビルも7階くらいまでは階段を歩きます。
コンビニも自宅から歩いて往復です。
なんやかんやで「8000歩/日、20分間の速歩」はクリアする日が多いです。
ブログ読者の皆さんも、ちょっとした日常生活の工夫で
「男性で8000歩/日、20分間の速歩」
「女性で7000歩/日、15分間の速歩」
という目標はクリアできると思いますので、
是非、試してみましょう。
(*)なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?青柳幸利著、あさ出版、2014年
江部康二
江部先生、いつも記事拝見させていただき学ばさせていただいております。都内でトレーナーとして活動しております。ケトン体状態での加圧や無酸素運動による乳酸と成長ホルモンについて質問がございます。ケトン体状態で糖が適量の場合に加圧トレーニングなどでグリコーゲンから乳酸を発生させる場合と糖質食で加圧トレーニングで乳酸を発生させる場合とでは、その後成長ホルモンの発生度合いは違ってきますでしょうか。ケトン体の方が血糖値上昇によるインスリン分泌が少ないため成長ホルモンが発生しやすく脂肪分解につながると考えております。あっていますでしょうか。また、トレーニング後は成長ホルモンが出てインスリン分泌を抑え血糖値を上げようと体はしようとするはずですが、この運動後に糖質を摂ることはインスリン制限と相まって血糖急上昇の危ない状況になるのではと考えております。いかがでしょうか?数時間後に時間差でインスリン発生で低血糖状態をアシストしないでしょうか? もう一つ質問がございます。寝る前に食べるのは太るとよくメディアで言われておりますが、これは糖質に対しての話で、ケトン体の場合は無関係もしくは夜しっかりの方が骨格筋に多くの血液を送らなくていい就寝中の方が消化吸収はいいのではないかと考えております。これはいかがでしょうか。乱文ですみません。お忙しいと存じますが正しい知識を発信していきたいので、ご教授のほどよろしくお願いいたします。木村
木村さん
「ケトン体状態での加圧や無酸素運動による乳酸と成長ホルモンについて質問がございます。ケトン体状態で糖が適量の場合に加圧トレーニングなどでグリコーゲンから乳酸を発生させる場合と糖質食で加圧トレーニングで乳酸を発生させる場合とでは、その後成長ホルモンの発生度合いは違ってきますでしょうか」
加圧や無酸素運動に関しては、私には経験がないのでよくわかりません。
「ケトン体の方が血糖値上昇によるインスリン分泌が少ないため成長ホルモンが発生しやすく脂肪分解につながると考えております」
理論的には、そのように思います。
「トレーニング後は成長ホルモンが出てインスリン分泌を抑え血糖値を上げようと体はしようとするはずですが、この運動後に糖質を摂ることはインスリン制限と相まって血糖急上昇の危ない状況になるのではと考えております」
運動後は、筋肉中のグリコーゲンが消費されるので、筋肉細胞は良く血糖を取り込みますし、
筋肉収縮が一定以上の時間続くと、筋肉細胞内の「GLUT4」が細胞表面に上がってきて、血糖を取り込みやすくなっています。
従って運動後は、インスリン非依存的に、筋肉細胞は血糖を取り込むと思います。
「寝る前に食べるのは太るとよくメディアで言われておりますが、これは糖質に対しての話」
そう思います。
寝る前に糖質を摂取して血糖値が上昇すると、骨格筋も脳もブドウ糖を消費しないので、余った血糖は
みな脂肪に変わり脂肪細胞に蓄積されます。
たんぱく質と脂質なら血糖値の上昇はないので、寝る前に食べても脂肪には変わりにくく、
夜中に脂肪酸とケトン体が体細胞のエネルギー源となりやすいので太りにくいと思います。
「ケトン体状態での加圧や無酸素運動による乳酸と成長ホルモンについて質問がございます。ケトン体状態で糖が適量の場合に加圧トレーニングなどでグリコーゲンから乳酸を発生させる場合と糖質食で加圧トレーニングで乳酸を発生させる場合とでは、その後成長ホルモンの発生度合いは違ってきますでしょうか」
加圧や無酸素運動に関しては、私には経験がないのでよくわかりません。
「ケトン体の方が血糖値上昇によるインスリン分泌が少ないため成長ホルモンが発生しやすく脂肪分解につながると考えております」
理論的には、そのように思います。
「トレーニング後は成長ホルモンが出てインスリン分泌を抑え血糖値を上げようと体はしようとするはずですが、この運動後に糖質を摂ることはインスリン制限と相まって血糖急上昇の危ない状況になるのではと考えております」
運動後は、筋肉中のグリコーゲンが消費されるので、筋肉細胞は良く血糖を取り込みますし、
筋肉収縮が一定以上の時間続くと、筋肉細胞内の「GLUT4」が細胞表面に上がってきて、血糖を取り込みやすくなっています。
従って運動後は、インスリン非依存的に、筋肉細胞は血糖を取り込むと思います。
「寝る前に食べるのは太るとよくメディアで言われておりますが、これは糖質に対しての話」
そう思います。
寝る前に糖質を摂取して血糖値が上昇すると、骨格筋も脳もブドウ糖を消費しないので、余った血糖は
みな脂肪に変わり脂肪細胞に蓄積されます。
たんぱく質と脂質なら血糖値の上昇はないので、寝る前に食べても脂肪には変わりにくく、
夜中に脂肪酸とケトン体が体細胞のエネルギー源となりやすいので太りにくいと思います。
2017/11/21(Tue) 18:37 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、木村さんこんばんは
木村さんのご質問、
わからないことだらけでしたが、
予備知識としてこちらのサイトが参考になりました。
加圧トレーニングと成長ホルモンについて
e-ヘルスネット > 情報提供 > 身体活動・運動 > 運動の考え方と進め方 > 加圧トレーニング
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-008.html
乳酸について
e-ヘルスネット > 情報提供 > 健康用語辞典 > 身体活動・運動 > 乳酸
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-045.html
今日も勉強になりました。
有難うございます。
木村さんのご質問、
わからないことだらけでしたが、
予備知識としてこちらのサイトが参考になりました。
加圧トレーニングと成長ホルモンについて
e-ヘルスネット > 情報提供 > 身体活動・運動 > 運動の考え方と進め方 > 加圧トレーニング
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-008.html
乳酸について
e-ヘルスネット > 情報提供 > 健康用語辞典 > 身体活動・運動 > 乳酸
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-045.html
今日も勉強になりました。
有難うございます。
2017/11/21(Tue) 22:38 | URL | オスティナート | 【編集】
江部先生
早速のお返事誠にありがとうございます。
GLUT4によって運動後インスリン非依存的に血糖を取り組むこと頭から抜けておりました。ありがとうございます。
寝る前にどうしても甘いものが欲しいという方がいれば、糖アルコールのエリスリトールを勧めるぶんには血糖値が上がらないので構わないのでしょうか?
ケトン体によって成長ホルモンを発生させやすいとすれば、速筋を使って乳酸を意図的に発生させるウエイトトレーニングは糖質制限と相性がいいと考えられるので、この組み合わせでのアプローチを続けてみたいと思います。
早速のお返事誠にありがとうございます。
GLUT4によって運動後インスリン非依存的に血糖を取り組むこと頭から抜けておりました。ありがとうございます。
寝る前にどうしても甘いものが欲しいという方がいれば、糖アルコールのエリスリトールを勧めるぶんには血糖値が上がらないので構わないのでしょうか?
ケトン体によって成長ホルモンを発生させやすいとすれば、速筋を使って乳酸を意図的に発生させるウエイトトレーニングは糖質制限と相性がいいと考えられるので、この組み合わせでのアプローチを続けてみたいと思います。
オスティナート さん
コメント・情報をありがとうございます。
e-ヘルスネットを覗いてみます。
コメント・情報をありがとうございます。
e-ヘルスネットを覗いてみます。
2017/11/22(Wed) 07:58 | URL | ドクター江部 | 【編集】
木村 さん
糖アルコールのエリスリトールなら、寝る前でも大丈夫です。
エリスリトールは血糖値上昇もなく、カロりーもほぼなしで、
安全性も、FAO及び世界保健機関(WHO)、JECFAにより保証されています。
2017/11/22(Wed) 08:17 | URL | ドクター江部 | 【編集】
e-ヘルスネットの「乳酸」についての記事を読んで、気が付いたことがありましたので投稿いたします。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-045.html
筋肉を収縮させるエネルギーを得るために、筋肉に蓄えられたグリコーゲンをピルビン酸から分解して作られる乳酸ですが、
筋肉を収縮させるエネルギーが、グリコーゲン分解からケトン体にシフトしている場合には、乳酸は作られないと思います。
乳酸が作られないということは、現在疲労の一因とされている乳酸が作られる過程で発生する水素イオンなどの作用で、筋肉のpHバランスが酸性に傾くことが少なくなると思われます。
よって、スポーツ選手や肉体労働者などの筋肉を収縮させるエネルギーとして、ケトン体は無駄のない効率的なエネルギーだと思います。。
これらのことから、激しい運動をした後の疲労の蓄積が少なくなるのだと思われますがいかがでしょうか。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-045.html
筋肉を収縮させるエネルギーを得るために、筋肉に蓄えられたグリコーゲンをピルビン酸から分解して作られる乳酸ですが、
筋肉を収縮させるエネルギーが、グリコーゲン分解からケトン体にシフトしている場合には、乳酸は作られないと思います。
乳酸が作られないということは、現在疲労の一因とされている乳酸が作られる過程で発生する水素イオンなどの作用で、筋肉のpHバランスが酸性に傾くことが少なくなると思われます。
よって、スポーツ選手や肉体労働者などの筋肉を収縮させるエネルギーとして、ケトン体は無駄のない効率的なエネルギーだと思います。。
これらのことから、激しい運動をした後の疲労の蓄積が少なくなるのだと思われますがいかがでしょうか。
2017/12/03(Sun) 21:31 | URL | オスティナート | 【編集】
オスティナート さん
乳酸は、ブドウ糖などの糖質が解糖系(嫌気的代謝、酸素なし)で代謝・分解されてできる生成物です。
糖質を食べている人でも、
酸素があるときの、ミトコンドリア内での「クエン酸回路」で生成されるエネルギーの時は、乳酸は作られないと思います。
ともあれ、ケトン体には臓器保護作用があるので、一番よいエネルギー源と思います。
乳酸は、ブドウ糖などの糖質が解糖系(嫌気的代謝、酸素なし)で代謝・分解されてできる生成物です。
糖質を食べている人でも、
酸素があるときの、ミトコンドリア内での「クエン酸回路」で生成されるエネルギーの時は、乳酸は作られないと思います。
ともあれ、ケトン体には臓器保護作用があるので、一番よいエネルギー源と思います。
2017/12/04(Mon) 20:44 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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