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日本の糖尿病食・糖質制限食の歴史。
<プロローグ>
こんにちは。
2017/8/30(水)は、くら寿司の糖質オフメニューに関して記事にしました。
現在ではファミリーレストランのガストやリンガーハットでも糖質オフメニューがあります。
ローソンやファミリーマートでも、糖質制限なパンが販売されています。

2016/7/20(水)、NHKクローズアップ現代で糖質制限食が特集されました。
NHKによれば、糖質制限食が空前のブームだそうで、関連の市場は¥3184億円とのことでした。

今や2017年で、糖質制限市場はさらに加速して拡大しています。
私は、糖質制限食はブームではなく、科学的な真理そのものと考えています。
従ってブームのように消え去ることはなく、今後もどんどん繁栄していくと思います。

今回は、その糖質制限食と糖尿病食の歴史を考察してみました。

<夏目漱石と糖尿病と厳重食>
文豪夏目漱石(1867~1916年)は、糖尿病でした。
大正5年(1916)正月、右の上膊(上腕)神経に強い痛みと右上膊(上腕)の不全麻痺。
薬、マッサージは無効。4月、糖尿病と診断。
教え子の医師真鍋嘉一郎により、5月から、当時の最先端治療の「厳重食」を開始。尿糖は消失。
7月終わりには、右の上膊神経に強い痛みと右上膊の不全麻痺が改善。
神経衰弱の症状も減退。糖尿病も改善。11月、胃潰瘍が再発。
12月9日、胃潰瘍による出血で死亡。
厳重食で、糖尿病と糖尿病神経障害は著明改善ですが、残念ながら胃潰瘍のために死去しています。

<厳重食=スーパー糖質制限食>
昭和13年、18年の女子栄養大学の以下の「厳重食」の解説をみると、まさに、「厳重食=スーパー糖質制限食」です。

『肉類(牛、豚、鶏、魚肉、内臓、心臓、肝臓、舌、膈、腎臓、骨髄)、貝類、卵類(鶏卵、鳥卵、魚卵)、脂肪類(バター類、豚脂、ヘッド、肝油、オリーブ油、ごま油、)、豆類(豆腐、油揚げなど)、
味噌は少量、野菜(含水炭素5%以下)小松菜、京菜、白菜、筍、レタス、蕗、大根、アスパラ、果実(含水炭素の少ないもの)びわ、すもも、苺、いちじく、メロン、パイナップル、パパイヤ、りんご、蜜柑、夏みかん・・・
*梨、ブドウ、柿、バナナはやや糖質が多いので警戒を要する。』


夏目漱石と厳重食1)2)については、
精神科医師Aこと中嶋一雄医師に資料を提供して頂きました。ありがとうございました。

<日本における糖尿病食事療法の変遷>
日本でも、昭和18年(1943年) 頃は、まだ厳重食のほうが、幅を利かせていたようです。

そして日本糖尿病学会のバイブルのような食品交換表初版が1965年に発行されました。
この時、適正なカロリーということが強調されました、。
解説には、食事療法の原則として
「①適正なカロリー②糖質量の制限③糖質、たんぱく質、脂質のバランス④ビタミンおよびミネラルの適正な補給」
と記載されています。
なんと、2番目には驚くべきことに「糖質量の制限」と明記してあります。
これが、1969年の第2版になると
「①適正なカロリー(カロリーの制限)②糖質、たんぱく質、脂質のバランス③ビタミンおよびミネラルの適正な補給」
と変更されて、
「糖質量の制限」という文言が削除されています。
糖尿病食事療法の原則から、「糖質制限」が消えて、「カロリーの制限」が登場したのが2版です。

これ以降の食品交換表は、2013年、11年ぶりに改訂された第7版にいたるまで、「カロリー制限」一辺倒でした。

2013年10月の米国糖尿病学会の「栄養療法に関する声明」では、全ての糖尿病患者に適した“one-size-fits-all(唯一無二の)”食事パターンは存在しないとの見解を表明しました。
これに対して、日本糖尿病学会は、唯一無二の糖尿病食事療法として「カロリー制限・高糖質食」を、
1969年以来、現在まで推奨し続けています。

<日本における糖質制限食の歴史>
 戦前までは、厳重食があったのですが、1969年以降はすっかり消えてしまいました。
その後の糖質制限食の臨床実践は、1999年から釜池医師が宇和島で開始し、
同時に高雄病院でも筆者の兄江部洋一郎医師が開始し有効例を重ねました。

その経験を踏まえ医学文献では、2004年に筆者が本邦初の糖質制限食有効例の報告を行いました3)。
2005年には筆者が本邦初の一般向けの本を出版しました4)。

2006年荒木医師が「断糖宣言」、2007年釜池医師が「糖質ゼロの食事術」を刊行しました。
坂東医師、中村医師は約1000人を肥満外来で治療し糖質制限食の有効性を2008年に報告しました5)。
2009年、2010年、医学雑誌に筆者が小論文を発表しました6)7)。

その後、2012年に山田悟医師、白澤医師、2013年に夏井医師、2014年に渡辺信幸医師、
2015年に宗田医師が一般向け糖質制限食の本を出版しました8)9)10)11)12)。
糖質制限食の広がり、いよいよ加速がついてきました13)14)15)。


1)香川綾: 女子栄養大学「栄養と料理」 第4巻第4号 p46
  糖尿病の手当と食餌療法、昭和13年(1938年)
2)香川昇三:女子栄養大学「栄養と料理」 第9巻第5号 p27 
  糖尿病患者の厳重食、 昭和18年(1943年)
3)江部康二他:糖尿病食事療法として糖質制限食を実施した3症例,
      京都医学会雑誌51(1):125-130、2004
4)江部康二:主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ、
  2005年(東洋経済新報社)
5)坂東浩,中村巧:カーボカウントと糖質制限食, 治療,90(12):3105-3111,2008
6)江部康二:主食を抜けば(糖質を制限すれば)糖尿病は良くなる!,
  治療,91(4):682-683,2009
7)江部康二:低糖質食(糖質制限食carbohydrate restriction)の意義,
  内科,105(1):100-103,2010
8)山田悟:糖質制限食のススメ、2012年(東洋経済新報社)
9)白澤卓二:<白澤式>ケトン食事法、2012年(かんき出版)
10)夏井睦:「炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学」、光文社新書、2013年
11)渡辺信幸:日本人だからこそ「ご飯」を食べるな 肉・卵・チーズが健康長寿をつくる 、2014年(講談社)
12)宗田哲男:「ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか」、光文社新書、2015年
13)江部康二:「人類最強の『糖質制限』論 ケトン体を味方にして痩せる、健康になる」、SB新書、2016年
14)江部康二:外食でやせる! 「糖質オフ」で食べても飲んでも太らない体を手に入れる、2017年(毎日新聞出版)
15)江部康二:江部康二の糖質制限革命」2017年(東洋経済新報社)
コメント
感謝!感謝!報告!!
都内河北 鈴木です。

本日は、半年毎のMRI検査日でした。

1年前より「脳梗塞頚動脈プラ~ク減少改善」ありました。

その半年後、「脳内全体の血流が改善している!!」

本日は、
「1年前より他の箇所に改善が見られます。」とN院長より説明ありました!!

脳神経外科N院長は、以前江部先生に報告して説明あったように、
「薬の効果ではない。」との説明に「同感だと」の返答でした!!

私の質問に「頚動脈プラ~ク減少改善などはありますか?」
N院長「無い」でした。
江部先生ブログヘコメントすることも快諾していただけました!!

私としては、改善して行くことがこんなに院長クラスの人物に実感していただいている事に、
「改善への隠蔽重視の「日本糖尿病学会信者医療者」への怒りも失せます!!」

しかし「隠蔽重視の組織図の為に、被害回避の為に、「糖質制限理論」による「改善以上、生還覚醒」事実はコメントします!!」

雑談ですが、脳神経外科N院長にも「眼底改善変化図」も渡しておきました。
院長も脳内血管改善の事もあり、納得していました!!

ネットグロ~バル時代に、1患者の質問に「返答不可」の
「糖尿病学会信者医療者」の説明講義には呆れます!!

私の場合2005年転院時より、
「名のある権威肩書きを信じたばかりだと」言うことも伝えたいです!!

江部先生「糖質制限理論」を知り得た事に感謝!感謝!です。

いつか再度、直接御礼方々申したいです!!
何しろ、ありがとうございました!!
敬具


2017/09/01(Fri) 12:39 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
糖質制限という炎
ご無沙汰しております。

江部先生のお兄さまが、再び灯し、江部先生が大成された「江部式糖質制限」という炎を二度と消してはならないと思いました。

今夜、くら寿司を食してみたいと思います(嬉)これも江部先生方の啓蒙が世間に浸透した結果だと思います(感謝)

広島の講習会、まだ間に合いますかね?(汗)
2017/09/01(Fri) 13:19 | URL | 岸和田のセイゲニスト | 【編集
Re: 感謝!感謝!報告!!
都内河北 鈴木 さん


『本日は、半年毎のMRI検査日でした。

1年前より「脳梗塞頚動脈プラ~ク減少改善」ありました。

その半年後、「脳内全体の血流が改善している!!」

本日は、
「1年前より他の箇所に改善が見られます。」』


これは素晴らしいです。
良かったです。
2017/09/01(Fri) 15:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖質制限という炎
岸和田のセイゲニスト さん

くら寿司の、ご報告、よろしくお願い申し上げます。

広島は現在、100名です。
あと数名OKです。
2017/09/01(Fri) 15:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
脂質代謝異常について
耐糖能異常(Max HbA1c5.9%)と体調不良にて、スーパー糖質制限を始めて4ヶ月目、30代女性です。健康診断の結果について、質問させて下さい。

一年前と比較し、FBSは94mg/dl→86mg/dl、HbA1cは5.7%→5.4%へ改善していました。ただ、脂質系が、総コレステロール189→244、中性脂肪57→26、HDL67→77、LDL112→156となっていました。元々コレステロールは高めなので(体質でしょうか?)、糖質制限でそれが全体的に上がりましたが、もう少し様子を見ようと思っています。ただ、中性脂肪が低すぎるのが気になりました。ネットで調べると、29以下は病気の可能性があるとかで。ちなみに、身長150cm、体重は元々痩せで、37.7→38.4kg(BMI 17.0)と少し増えました(しっかりカロリーは摂っていますので)。
低中性脂肪だと甲状腺機能亢進の可能性があると見ましたが、5月(糖質制限開始前の体調不良時)に総診で受けた採血では、甲状腺機能は正常でした。

スーパー糖質制限食でやっと血糖値は正常なので、このまま続けたいと思っているのですが、何か気をつけることはあるでしょうか。ちなみに、痩せ型なのでカロリーをしっかり摂ろうと、わりと脂質(豚バラ肉、鶏モモ肉、オリーブオイル、アボカド、ナッツなど)は意識的に摂っています。大豆製品は朝食時の厚揚げと納豆くらいなので、増やした方がいいでしょうか。
2017/09/01(Fri) 16:30 | URL | みぃ | 【編集
上の質問の追記です。
ちなみに、肝機能は糖質制限に関わらず、
AST17、ALT12程度で毎回低めです。γ-GTPは今回は11でした。あまり低いのも良くないようで、関係あるのかな?と思ったりしました。このくらいなら問題ないでしょうか。
2017/09/01(Fri) 17:30 | URL | みぃ | 【編集
Re: 脂質代謝異常について
みぃ さん

スーパー糖質制限食なら、コレステロールが高めなのも中性脂肪が低めなのも生理的範囲であり、問題ないです。

糖質ありの普通の食事で、中性脂肪26mg/dlなら、低栄養や甲状腺機能亢進症疑いということになります。

コレステロール値は、1年~数年で基準値となることが多いです。

魚介類と肉類をしっかり食べて、脂質・タンパク質を充分量摂取で、体重をもう少し増やしましょう。
2017/09/01(Fri) 18:04 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 上の質問の追記です。
みぃ さん

肝機能も、問題ないと思います。
2017/09/01(Fri) 18:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖質制限の歴史文献
昭和13年、18年の「栄養と料理」の糖尿病食の解説はこれをご覧ください

http://eiyotoryoris.jp/DVD/keyword/t/key_t050.html


【日本糖尿病学会食品交換表 1965年初版】
5頁「糖質量は制限しますが、1日100g以上は必要です」

http://www.wound-treatment.jp/new_2016-12.htm#1209-7
2017/09/01(Fri) 18:54 | URL | 中嶋一雄 | 【編集
Re: 糖質制限の歴史文献
中嶋一雄 先生

情報提供、ありがとうございます。
2017/09/01(Fri) 20:38 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます
迅速なご回答ありがとうございます。
やはり、糖質制限中は一般的な指標が当てはまらないことが多いのですね。安心できました。これからもスーパー糖質制限食を続けて、とりあえず一年後の健康診断の結果を待ちたいと思います(*^^*)
2017/09/01(Fri) 21:01 | URL | みぃ | 【編集
コレステロール上昇
はじめまして。
いつもブログで勉強させていただいてます。
今日は先生に相談がありコメントさせてもらいました。

30代 女性
糖質制限と運動で120㎏から60㎏ぐらいまで減量
BMIも22ぐらいです。

健康診断でLDLが400以上と指摘されました。半年前は200程度です
ちなみにHDL78 TG86です

糖質制限が原因と言われました。

でも元の食生活に戻すのは怖いし
体重は維持しうです。
なるべく薬は飲みたくないですし、何か対策があれば是非助けてください(´••)
2017/09/01(Fri) 22:32 | URL | 中山まみこ | 【編集
Re: コレステロール上昇
中山まみこ さん

「HDL78 TG86」

ならば、LDLコレステロールも標準の大きさの、善玉のLDLコレステロールです。
悪玉の小粒子LDLコレステロールや酸化LDLコレステロールは少ないと思います。
2017/09/02(Sat) 07:36 | URL | ドクター江部 | 【編集
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