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コメント・質問・記事などに関するお願い
【本ブログのコメント・質問・記事に関するお願い】

ブログ読者の皆さんには、いつもコメントいただき、ありがとうございます。

糖質制限食に関する質問についてですが、実際に高雄病院や江部診療所に来院されて診察した患者さんに対しては、
医師としての責任・債務がありますので、個別に説明もしっかりさせて頂いていますし、フォローもしております。

一方、ブログ読者の皆さんの質問に関しては、糖質制限食に詳しい医師として、ボランティアで回答させていただいています。

診察もしておりませんしフォローもできませんので、責任もとれません。

私の回答は、あくまでも一般論としての参考意見とお考え頂けば幸いです。

また、ブログ記事や本に関しても同様に、糖質制限食に関する一般論としての参考意見とお考え下さい。

従いまして、読者の皆さんが私の参考意見を読まれて、どのように利用されるかは、
自己責任でよろしくお願い申し上げます。
m(_ _)m

そして読者の皆さんからもご意見いただきましたが、普通のお医者さんに相談可能な個人的な内容の質問は、ご自分の主治医にご相談頂けば助かります。

またネットで簡単に検索可能なことは、ご自分でお調べください。


質問が増えてきましたので、糖質制限食と関わりがないと判断した質問にはお答えできない場合もありますので、
ご了承ください。m(_ _)m

普通のお医者さんでは解答不能の、糖質制限食に関わる質問は、何でもどんどんしていただけば嬉しいです。 (^_^)

掲載OKの質問に関して、読者の皆さんに共有していただきたい情報の場合は、ブログ本文記事にて、
できるだけ順番にお答えしたいと思います。

質問によっては、コメント欄でお早めにお答えする場合もありますのでご了承ください。

一方、質問がかなり増えてきていますので、なかなか即、お答えすることが困難となってきています。

糖質制限食に関わりのある全ての質問に、本文かコメントでお答えするようできるだけ努力はしていますが、
できないときはご容赦願います。m(_ _)m




【糖質制限食を実践される時のご注意】

糖質制限食実践によりリアルタイムに血糖値が改善します。

このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、
減薬しないと低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。


一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、
自力で糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。

内服薬やインスリン注射なしの糖尿人が糖質制限食を実践すると、食後高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。

血糖値が正常範囲である程度下がると、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロール(脂肪の分解物)などから、ブドウ糖を作るからです。

これを糖新生といいます。

診断基準を満たす膵炎がある場合、肝硬変の場合、そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、
糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。

糖質制限食は相対的に高脂肪食になるので、診断基準を満たしている膵炎の患者さんには適応とならないのです。

進行した肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。

長鎖脂肪酸代謝異常症では、肉や魚などに含まれる長鎖脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。

腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」において、eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、
たんぱく質は過剰な摂取をしないという表現となっていて、制限という記載はなしです。

従いまして、糖尿病腎症第3期でも、eGFR60ml/分以上なら、糖質制限食OKです。

また、米国糖尿病学会(ADA)は

Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版

において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。

根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。

今後は、糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、
個別に対応することとなります。


なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、
まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。

また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。

糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。



【糖質制限食とは】

米国糖尿病協会(ADA)の患者教育用のテキストブックLife With Diabetes(2004年版)には、以下の記載があります。

「摂取後直接血糖に影響を与えるのは糖質のみである。
糖質は速やかに吸収され、直接100%血糖に変わり、ほぼ120分以内に吸収は終了する。
蛋白質・脂質は、摂取後、直接血糖に影響を及ぼすことはない。
『炭水化物・タンパク質・脂肪はカロリーを含有している。
炭水化物だけが、血糖値に直接影響を及ぼす。』」


これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。 

1997年版のLife With Diabetes(ADA刊行)では、

「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」

という記載がありましたが、2004年版以降は変更されています。

このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが直接、血糖値を上昇させます。

従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。

脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。

タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。

現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。

食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。

また一日における、食前・食後・空腹時など血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、
酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。

そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。

1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。

炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。

一方、和牛サーロインステーキ(脂身つき)を200g(約1000キロカロリー)食べても、
糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。 

なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。

糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、
できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。

簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。

抜く必要がある主食とは 、米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。

3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、
薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。

一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、
カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。

従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、
一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。

糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。


なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。

日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2014-2015」の

男性1400~2000kcal
女性1200~1800kcal

ほど厳しいカロリー制限は必要ありませんが、

「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

推定エネルギー必要量(一日あたり)
              男性                  女性
15-17才        2500 2850 3150           2050 2300 2550kcal
18-29才        2300 2650  3050          1650  1950   2200
30-49才        2300 2650  3050            1750  2000  2300
50-69才        2100 2450  2800           1650  1900 2200 
70才          1850 2200  2500            1500  1750 2000

身体活動レベル    低い 普通 高い         低い  普通  高い

くらいが目安です。


そして2013年に糖尿病食事療法に関して画期的な変化がありました。

米国糖尿病学会が、
2013年10月発表の『栄養療法に関する声明』において、
全ての糖尿病患者に適した唯一無二の治療食は存在しないと明記したのです。

これはそのまま、1969年の食品交換表第2版以降一貫して、糖尿病治療食として、
唯一無二の「カロリー制限・高糖質食」を推奨し続けている日本糖尿病学会への痛烈な批判となっています。

さらに、米国糖尿病学会は『栄養療法に関する声明2013』において地中海食、ベジタリアン食、DASH食、低脂質食などと共に
「糖質制限食」も正式に受容しました。

このことは糖質制限食を推進する私達にとって、大変大きな追い風となりました。

さらに
2016年7月1日号の東洋経済オンラインhttp://toyokeizai.net/articles/-/125237
において、
門脇孝日本糖尿病学会理事長が、個人的立場としたうえで、
「糖質の量を4割程度(1日150g以下)に抑える緩やかな糖質制限食は推奨できる。」とし、
「東大病院でも2015年4月から糖質40%というメニューを提供している」と述べられ、
ご自身も糖質制限食を実践中とのことでした。
まさに今昔の感ありで、嬉しい意味での衝撃でした。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
BMIは尺度と出来ますか?
江部先生

ご無沙汰致しております。
3年前に京都洛北に お伺いし診察戴き
大変有難う御座いました。
引き続き断糖食を継続しております。
お忙しいところ誠に恐縮で御座いますが、ご教示戴けましたら幸いに存じます。
①私 出来れば
BMI 22~24
を維持したいのですが、
目標BMIを維持する、この考えは間違いでしょうか?
②断糖食を続けて自然と落ち着く処はBMI
幾ら位になるのでしょうか?個人差が有るのでしょうか?
③私は現在、BMI 20程度が、この三年間 続いています。顔は、頬が少し痩けて見えます。もう少し断糖食事量を増やし頬の感じを改善したいのですが、良いのでしょうか?食事量を増やすとしたら、何のバロメーターを目安とすれば良いのでしょうか? BMI値をバロメーターとして見て、食事量を加減して良いのでしょうか?そもそも、食事量を加減する事でBMIをコントロールする事は可能なのでしょうか?

以上、できますれば
ご教示戴きたくお願い申し上げる次第で御座います。

なお、これまでの経過は、20歳頃の体重は48㎏、身長158cm で
痩せていました。数年前 糖尿病発症、直前は54㎏、急激に痩せてきまして、3か月で頬が痩け、腹廻りも落ち50㎏、HbA1c 8.4になりました。江部先生の教えを知り、断糖食に直ちに変え、直ぐにHbA1cは6.0以下に。その後 維持しています。体重は現在50〜51㎏です。

メールで誠に失礼で御座いますが、
ご教示戴きたく宜しくお願い申し上げます。

2016/07/11(Mon) 11:01 | URL | 塩田光重 | 【編集
ケトン体が血管を傷つける
江部先生

先日、NHKの番組ためしてガッテンで糖質制限について放送していましたが、その中でケトン体が血管を傷つけるという発言がありましたが、そのような論文や研究があるのでしょうか?私は血管を傷つけるのは糖質だと思っていたので少し驚きました。
2016/07/11(Mon) 23:18 | URL | 沙門 | 【編集
Re: ケトン体が血管を傷つける
沙門 さん

ケトン体に限らず、結論が異なる論文・研究はいつの時代にもあります。

最近の研究では
ケトン体は危険どころか、生体の最も重要なエネルギー源の一つです。
また生体に有用な作用を持っています。

「βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する」

という大変興味深いScience の論文もあります。


また神経内科分野からケトン体のアルツハイマー病への認知機能改善効果の報告が増えています。
動物実験でも認知機能の改善効果があるようです(Neurol.Aging 2012 Feb:33(2) 425 e19-425e27、Adv.Exp.Med.Biol 662:71-75. 2010、Biomaterials.34(30) 7552-7562.2013)。


2013年02月12日 (火)の本ブログ記事
ケトン体が酸化ストレスの抑制に寄与する
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2416.html
もご参照いただけば幸いです。


2016/07/12(Tue) 08:43 | URL | ドクター江部 | 【編集
頸動脈エコーからわかること
江部先生
毎日、拝読しています。
1型歴43年、合併症は単純性網膜症のみです。
ゆるやかな糖質制限食を心掛け、注射するインスリン量を減らして、日々の血糖値上下変動幅を抑える努力をしています。
さて先日、2年ぶりに頸動脈エコーをしましたら、1.6ミリだった膨らみが2.8ミリとなっていて、主治医からはスタチン服用を勧められました。
私はスタチンは飲むつもりはないのですが、かといって動脈が細くなってくるのも心配です。
そもそも、動脈内の生じるこの膨らみの正体は何なのでしょうか?
お時間あるときに、ご回答いただけると嬉しい限りです。
2016/07/28(Thu) 10:12 | URL | タケ | 【編集
Re: 頸動脈エコーからわかること
タケ さん

動脈の内膜に傷がつき、そこからLDLコレステロールが侵入して、
コレステロールや脂肪が、お粥のような柔らかい沈着物となってたまっていき、内膜はどんどん厚くなります。
このようにしてできた血管のコブをプラーク(粥腫)といいます。

詳しくは以下のサイトをご参照下さい。

アステラス製薬のサイト

http://www.astellas.com/jp/health/healthcare/sp/Atheros/02.html

色付きの文字
2016/07/28(Thu) 19:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
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