2016年03月15日 (火)
『16/03/15 オスティナート
カロリー恒常性と肥満
江部先生こんにちは、
今回の投稿、肥満に関連して、ストライヤーの生化学からカロリー恒常性と肥満について、抜粋して投稿します
最後に「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」で低糖質高タンパク質食についての記述がありました。
全1101ページの中のたった12行ですがやっと糖質制限に関する記述を発見しました。
版を重ねるごとに、もっと増やしていってもらいたいものです。
【ストライヤーの生化学第7版 東京化学同人 742p・743p・744p
●レプチンとインスリンはカロリー恒常性の長期的な制御を行う
数時間から数日という尺度でエネルギーの恒常性を調節する重要なシグナル分子が二つある。
脂肪細胞から分泌されるレプチン(leptin)と、膵臓β細胞から分泌されるインスリン(insulin)である。
レプチンはトリアシルグリセロールの貯蔵状況を知らせ、インスリンは血中のグルコース量、すなわち糖質の供給状況を示す。
中略
●レプチンは脂肪細胞が分泌する数種類のホルモンの一つである。
略
●レプチン抵抗性は肥満の要因になる可能性がある
レプチンが体の脂肪量に比例して産生され、食べるのを抑制するのだとすれば、なぜヒトは肥満になるのだろう。
肥満したヒトでもほとんどの場合は、正しく機能するレプチンをもち、その血中濃度も高い。
レプチンの食欲抑制効果に対応できないことを、レプチン抵抗性(leptin resistance)という。
レプチン抵抗性の原因はなんだろう。
中略
よくわかっていないが、最近得られた証拠が示すようにサイトカインシグナル抑制因子(suppressor of cytokin signaring)(SOCS)と呼ばれる一群のタンパク質がかかわっているらしい。
中略
SOCSがレプチンの抵抗性にかかわっている事を裏付ける証拠は、POMC発現ニューロンから、SOCSを選択的に欠損させたマウスの研究で得られた。
中略
◎肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる。
現在我々は肥満の蔓延とそれに関連した病気に直面しており、
どのような食事療法で最も体重を減らせるかが関心の的になっている。
一般に、カロリー摂取を調節しようとして行われる食事療法は大きく分けて二つある。
低糖質食と低脂肪食である。
低糖質食では普通、タンパク質の摂取を奨励する。
食事療法の効果の研究は非常に手間がかかるが、低糖質高タンパク質食が体重減少にもっとも効果的であることを示す証拠が増えている。
詳しい理由は不明だが、二つの説が広く言われている。
第一に、タンパク質は脂肪や糖質よりも満腹感を得やすいらしい。
第二に、タンパク質は脂肪や糖質に比べて消化するのに多くのエネルギーが必要で、エネルギー消費の増加が体重減少につながるという。
たとえば最近の研究で、タンパク質30%の食事は、タンパク質10%の食事よりも消化に必要なエネルギーが約30%多いことが明らかとなった。
タンパク質の多い食事がエネルギー消費を促進するしくみ、満足感を亢進するしくみは、まだわかっていない。
食事の量を減らして、運動量を増やせば、すべてに当てはまる。]
最後の食事誘発性熱産生DITまたは特異動的作用SDAについては
江部康二著「糖質制限パーフェクトガイド88p」が解り易く参考になりました。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-category-106.html
厚生労働省のサイト e-ヘルスネット
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html』
こんばんは。
オスティナートさんから、ストライヤー生化学に記載してある「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」について、貴重な情報をコメントいただきました。ありがとうございます。
オスティナートさん、高価な本をご購入され、肥満に対する糖質制限食の有効性についての記載を発見していただき、重ねてありがとうございます。
ストライヤー生化学 (第7版)は以下の如く、最新の知識が取り入れられていて
2013/02/22が、出版日です。
ストライヤー生化学 (第7版)
J. M. Berg J. L. Tymoczko L. Stryer 著
入村 達郎 岡山 博人 清水 孝雄 監訳
出版社 東京化学同人
本体13,900円+税
内容説明
監訳者のことばから:かつて,生化学の興味の中心は,代謝であり,“ストライヤー生化学”もその過半をこの代謝の記述に当てているが,本書の大きな特徴は,最新の分子生物学,細胞生物学の成果をいち早く取入れ,分子の構造と機能とに視点をおいて各領域の生命現象を論じ,解説している点である.今回の改訂では,代謝の全体像が最新の情報に基づいて見直され,また遺伝子調節の生化学的側面の解明が急速に進んでいることを受けて記述が増えている.新しい実験技術についても,最新の生化学研究における重要性を意識して詳しく述べてある.
『今回の投稿、肥満に関連して、ストライヤーの生化学からカロリー恒常性と肥満について、抜粋して投稿します。
最後に「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」で低糖質高タンパク質食についての記述がありました。
全1101ページの中のたった12行ですがやっと糖質制限に関する記述を発見しました。
版を重ねるごとに、もっと増やしていってもらいたいものです。』
オスティナートさん。
同感です。
代謝の全体像が最新の情報に基づいて見直されたということで糖質制限食に有利な記載につながったのですね。
『低糖質食では普通、タンパク質の摂取を奨励する。
食事療法の効果の研究は非常に手間がかかるが、低糖質高タンパク質食が体重減少にもっとも効果的であることを示す証拠が増えている。
詳しい理由は不明だが、二つの説が広く言われている。
第一に、タンパク質は脂肪や糖質よりも満腹感を得やすいらしい。
第二に、タンパク質は脂肪や糖質に比べて消化するのに多くのエネルギーが必要で、エネルギー消費の増加が体重減少につながるという。
たとえば最近の研究で、タンパク質30%の食事は、タンパク質10%の食事よりも消化に必要なエネルギーが約30%多いことが明らかとなった。』
低糖質高タンパク食が体重減少に効果的であることを示す証拠が増えているとは嬉しいですね。
タンパク質が、満腹感を得やすいとのことですが、確かに、本ブログでもよく取り上げている有名な「DIRECT」というニューイングランド・ジャーナルに掲載されたイスラエルの研究があります。
Iris Shai et al. :NENGLJ MED , VOL359.NO.3 :229-241,2008
322人を
1)脂肪制限食(カロリー制限あり)
2)地中海食(カロリー制限あり)
3)糖質制限食(カロリー制限なし)
の3群に分けて2年間経過をみたものです。
その結果、糖質制限食は、カロリー無制限だったのに
自然に、脂肪制限食、地中海食と同じだけカロリー摂取が減って
結局3群とも同カロリーとなったのです。
そして結果は、糖質制限食が一番体重が減って、HDLコレステロールも一番増えたのです。
カロリー無制限なのに、自然に摂取カロリーが減ったのは、糖質制限食群では満腹感が得られやすかったからと思われます。
糖質制限食群では他の2群に比し、タンパク質の摂取比率は一番増えていました。
同様に、ストライヤー生化学で述べているように高タンパク食だと、食事誘発性熱産生DITまたは特異動的作用SDAが増加して消費エネルギーが増えることとなり、体重減少に有益です。
江部康二
カロリー恒常性と肥満
江部先生こんにちは、
今回の投稿、肥満に関連して、ストライヤーの生化学からカロリー恒常性と肥満について、抜粋して投稿します
最後に「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」で低糖質高タンパク質食についての記述がありました。
全1101ページの中のたった12行ですがやっと糖質制限に関する記述を発見しました。
版を重ねるごとに、もっと増やしていってもらいたいものです。
【ストライヤーの生化学第7版 東京化学同人 742p・743p・744p
●レプチンとインスリンはカロリー恒常性の長期的な制御を行う
数時間から数日という尺度でエネルギーの恒常性を調節する重要なシグナル分子が二つある。
脂肪細胞から分泌されるレプチン(leptin)と、膵臓β細胞から分泌されるインスリン(insulin)である。
レプチンはトリアシルグリセロールの貯蔵状況を知らせ、インスリンは血中のグルコース量、すなわち糖質の供給状況を示す。
中略
●レプチンは脂肪細胞が分泌する数種類のホルモンの一つである。
略
●レプチン抵抗性は肥満の要因になる可能性がある
レプチンが体の脂肪量に比例して産生され、食べるのを抑制するのだとすれば、なぜヒトは肥満になるのだろう。
肥満したヒトでもほとんどの場合は、正しく機能するレプチンをもち、その血中濃度も高い。
レプチンの食欲抑制効果に対応できないことを、レプチン抵抗性(leptin resistance)という。
レプチン抵抗性の原因はなんだろう。
中略
よくわかっていないが、最近得られた証拠が示すようにサイトカインシグナル抑制因子(suppressor of cytokin signaring)(SOCS)と呼ばれる一群のタンパク質がかかわっているらしい。
中略
SOCSがレプチンの抵抗性にかかわっている事を裏付ける証拠は、POMC発現ニューロンから、SOCSを選択的に欠損させたマウスの研究で得られた。
中略
◎肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる。
現在我々は肥満の蔓延とそれに関連した病気に直面しており、
どのような食事療法で最も体重を減らせるかが関心の的になっている。
一般に、カロリー摂取を調節しようとして行われる食事療法は大きく分けて二つある。
低糖質食と低脂肪食である。
低糖質食では普通、タンパク質の摂取を奨励する。
食事療法の効果の研究は非常に手間がかかるが、低糖質高タンパク質食が体重減少にもっとも効果的であることを示す証拠が増えている。
詳しい理由は不明だが、二つの説が広く言われている。
第一に、タンパク質は脂肪や糖質よりも満腹感を得やすいらしい。
第二に、タンパク質は脂肪や糖質に比べて消化するのに多くのエネルギーが必要で、エネルギー消費の増加が体重減少につながるという。
たとえば最近の研究で、タンパク質30%の食事は、タンパク質10%の食事よりも消化に必要なエネルギーが約30%多いことが明らかとなった。
タンパク質の多い食事がエネルギー消費を促進するしくみ、満足感を亢進するしくみは、まだわかっていない。
食事の量を減らして、運動量を増やせば、すべてに当てはまる。]
最後の食事誘発性熱産生DITまたは特異動的作用SDAについては
江部康二著「糖質制限パーフェクトガイド88p」が解り易く参考になりました。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-category-106.html
厚生労働省のサイト e-ヘルスネット
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html』
こんばんは。
オスティナートさんから、ストライヤー生化学に記載してある「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」について、貴重な情報をコメントいただきました。ありがとうございます。
オスティナートさん、高価な本をご購入され、肥満に対する糖質制限食の有効性についての記載を発見していただき、重ねてありがとうございます。
ストライヤー生化学 (第7版)は以下の如く、最新の知識が取り入れられていて
2013/02/22が、出版日です。
ストライヤー生化学 (第7版)
J. M. Berg J. L. Tymoczko L. Stryer 著
入村 達郎 岡山 博人 清水 孝雄 監訳
出版社 東京化学同人
本体13,900円+税
内容説明
監訳者のことばから:かつて,生化学の興味の中心は,代謝であり,“ストライヤー生化学”もその過半をこの代謝の記述に当てているが,本書の大きな特徴は,最新の分子生物学,細胞生物学の成果をいち早く取入れ,分子の構造と機能とに視点をおいて各領域の生命現象を論じ,解説している点である.今回の改訂では,代謝の全体像が最新の情報に基づいて見直され,また遺伝子調節の生化学的側面の解明が急速に進んでいることを受けて記述が増えている.新しい実験技術についても,最新の生化学研究における重要性を意識して詳しく述べてある.
『今回の投稿、肥満に関連して、ストライヤーの生化学からカロリー恒常性と肥満について、抜粋して投稿します。
最後に「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」で低糖質高タンパク質食についての記述がありました。
全1101ページの中のたった12行ですがやっと糖質制限に関する記述を発見しました。
版を重ねるごとに、もっと増やしていってもらいたいものです。』
オスティナートさん。
同感です。
代謝の全体像が最新の情報に基づいて見直されたということで糖質制限食に有利な記載につながったのですね。
『低糖質食では普通、タンパク質の摂取を奨励する。
食事療法の効果の研究は非常に手間がかかるが、低糖質高タンパク質食が体重減少にもっとも効果的であることを示す証拠が増えている。
詳しい理由は不明だが、二つの説が広く言われている。
第一に、タンパク質は脂肪や糖質よりも満腹感を得やすいらしい。
第二に、タンパク質は脂肪や糖質に比べて消化するのに多くのエネルギーが必要で、エネルギー消費の増加が体重減少につながるという。
たとえば最近の研究で、タンパク質30%の食事は、タンパク質10%の食事よりも消化に必要なエネルギーが約30%多いことが明らかとなった。』
低糖質高タンパク食が体重減少に効果的であることを示す証拠が増えているとは嬉しいですね。
タンパク質が、満腹感を得やすいとのことですが、確かに、本ブログでもよく取り上げている有名な「DIRECT」というニューイングランド・ジャーナルに掲載されたイスラエルの研究があります。
Iris Shai et al. :NENGLJ MED , VOL359.NO.3 :229-241,2008
322人を
1)脂肪制限食(カロリー制限あり)
2)地中海食(カロリー制限あり)
3)糖質制限食(カロリー制限なし)
の3群に分けて2年間経過をみたものです。
その結果、糖質制限食は、カロリー無制限だったのに
自然に、脂肪制限食、地中海食と同じだけカロリー摂取が減って
結局3群とも同カロリーとなったのです。
そして結果は、糖質制限食が一番体重が減って、HDLコレステロールも一番増えたのです。
カロリー無制限なのに、自然に摂取カロリーが減ったのは、糖質制限食群では満腹感が得られやすかったからと思われます。
糖質制限食群では他の2群に比し、タンパク質の摂取比率は一番増えていました。
同様に、ストライヤー生化学で述べているように高タンパク食だと、食事誘発性熱産生DITまたは特異動的作用SDAが増加して消費エネルギーが増えることとなり、体重減少に有益です。
江部康二
内分泌・糖尿病・代謝内科 第42巻第2号(2016年2月発行)
http://www.kahyo.com/item/B201602-422
日本人2型糖尿病患者における130g/日糖質制限食の有効性と安全性
順天堂大学・代謝内分泌内科 佐藤淳子
http://www.kahyo.com/item/B201602-422
日本人2型糖尿病患者における130g/日糖質制限食の有効性と安全性
順天堂大学・代謝内分泌内科 佐藤淳子
2016/03/15(Tue) 21:39 | URL | 精神科医師A | 【編集】
精神科医師A さん
情報をありがとうございます。
情報をありがとうございます。
2016/03/16(Wed) 07:29 | URL | ドクター江部 | 【編集】
こんにちは。
江部先生にお伺いしたいのですが。
ストレスによって血糖値が上がると聞きましたがどれくらいあがるのでしょうか?
かなりのストレスを感じているときに病院で血液検査したところ空腹時血糖値が115hba1cが5.3でした。
2週間後再検査すると空腹時血糖値が75hba1cが5.2でした。
一度目の検査で脂肪肝がわかり3キロ減量してからの再検査でした。
担当医に糖尿の心配など聞いたのですが気にしなくていいと言われました。
ストレスで空腹時血糖値が境界型まで上がる可能性はあるのでしょうか?
尿糖はいつ試験紙で調べても陰性です。
BUNとクレアチニンは正常値でした。
江部先生にお伺いしたいのですが。
ストレスによって血糖値が上がると聞きましたがどれくらいあがるのでしょうか?
かなりのストレスを感じているときに病院で血液検査したところ空腹時血糖値が115hba1cが5.3でした。
2週間後再検査すると空腹時血糖値が75hba1cが5.2でした。
一度目の検査で脂肪肝がわかり3キロ減量してからの再検査でした。
担当医に糖尿の心配など聞いたのですが気にしなくていいと言われました。
ストレスで空腹時血糖値が境界型まで上がる可能性はあるのでしょうか?
尿糖はいつ試験紙で調べても陰性です。
BUNとクレアチニンは正常値でした。
食事のことですが、肉、魚、ミックスナッツ(少量)、コーヒー、日本茶、紅茶は糖質制限をしていく上で良いと思うのですが、野菜のことで悩んでおります。野菜は冷蔵庫保存しても日持ちしにくく、しょっちゅうスーパーに配達してもらってます。そこで総合ビタミン剤で代替できないかと思ってます。いかがでしょうか?
2016/03/16(Wed) 08:32 | URL | コバタケ | 【編集】
ひろし さん
アドレナリンや副腎皮質ホルモンが分泌されるレベルのストレスがあれば
血糖値は上昇します。
75mg/dl が 115mg/dl
になっても不思議ではありません。
どのていど上昇するかは、個人差、ストレスの程度などいろいろあると思います。
アドレナリンや副腎皮質ホルモンが分泌されるレベルのストレスがあれば
血糖値は上昇します。
75mg/dl が 115mg/dl
になっても不思議ではありません。
どのていど上昇するかは、個人差、ストレスの程度などいろいろあると思います。
2016/03/16(Wed) 11:32 | URL | ドクター江部 | 【編集】
| ホーム |