2015年07月19日 (日)
こんにちは。
グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味ですが、実際の症例で検討してみました。
1)60代女性 時々糖質摂取あるがHbA1cは良好
HbA1c:6.4%(NGSP) JDS:6.0%
グリコアルブミン:20.0%
GA/HbA1c=3.33
2)50代男性 昼に麺類を食べるがHbA1cは良好
HbA1c:5.8%(NGSP) JDS:5.4%
グリコアルブミン:18.0%
GA/HbA1c=3.33
3)50代男性 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c:5.8%(NGSP) JDS:5.4%
グリコアルブミン:14.3%
GA/HbA1c=2.65
4)50代女性 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c:6.4%(NGSP) JDS:6.0%
グリコアルブミン:14.8%
GA/HbA1c=2.47
5)江部康二 65才 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
GA/HbA1c=2.48
1)と4)とを比べると、HbA1cは6.4%(NGSP)、6.0%(JDS)と同じですが、GA/HbA1cは、3.33と2.47と大きな差があります。
1)の女性は、同じ値のHbA1cでも、食後高血糖を生じていた質の良くないHbA1cということで、
4)の女性は、食後高血糖のない良質のHbA1cということがわかります。
同様に、2)3)5)の男性は、HbA1cは、5.8%(NGSP)、5.4%(JDS)と同じです。
しかし、GA/HbA1cは、3.33と2.47、2.48と大きな差があります。
2)の男性は同じ値のHbA1cでも食後高血糖を生じていた質の良くないHbA1cであり、
3)5)の男性は、食後高血糖のない良質のHbA1cということがわかります。
やはり、HbA1cだけでは食後高血糖を見逃してしまうので、グリコアルブミン(GA)も時々調べるのが正解と思われます。
グリコアルブミン(%)
17.0未満:優
17.0~20.0未満:良
20.0~21.0未満:不十分
21.0~24.0:不良
24.0以上:不可
HbA1c
6.0未満:血糖正常化を目指す際の目標
7.0未満:合併症予防のための目標
8.0未満:治療が困難なときの目標
江部康二
☆☆☆
以下は、2015年7月7日の、本ブログ記事の再掲です。
グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味
こんにちは。
今日は、グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味を考えてみます。
<グリコアルブミン(GA)とHbA1cの値の乖離>
2014年9月の採血で
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
というデータでした。
まあ日本糖尿病学会の目標値では、「合併症予防が7.0%未満」、「血糖正常化を目指す際は6.0%未満」ですから、HbA1cのコントロールは優秀です。
しかし基準値の上限の近くであり、メタボ健診の特定保健指導は5.6%以上なので、これには引っ掛ってしまいます。
一方、GAのデータは、もっともっと優秀で、基準値の下限に近いくらいです。
この時は、浅学にして、HbA1cとGAの値がなぜこれだけ乖離するのかよくわかりませんでした。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
一般的知識では、
「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」
の平均血糖値を反映します。
しかし、この知識では、HbA1cTとGAの乖離の説明がつきません。
それで少し、ネットで調べてみました。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の評価>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードの9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖にも、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データだと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.48:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
同じように
HbA1c5.8%(NGSP)
HbA1c5.4%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。
私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。
グリコアルブミン検査は今後、普及していくと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味ですが、実際の症例で検討してみました。
1)60代女性 時々糖質摂取あるがHbA1cは良好
HbA1c:6.4%(NGSP) JDS:6.0%
グリコアルブミン:20.0%
GA/HbA1c=3.33
2)50代男性 昼に麺類を食べるがHbA1cは良好
HbA1c:5.8%(NGSP) JDS:5.4%
グリコアルブミン:18.0%
GA/HbA1c=3.33
3)50代男性 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c:5.8%(NGSP) JDS:5.4%
グリコアルブミン:14.3%
GA/HbA1c=2.65
4)50代女性 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c:6.4%(NGSP) JDS:6.0%
グリコアルブミン:14.8%
GA/HbA1c=2.47
5)江部康二 65才 きっちりスーパー糖質制限食
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
GA/HbA1c=2.48
1)と4)とを比べると、HbA1cは6.4%(NGSP)、6.0%(JDS)と同じですが、GA/HbA1cは、3.33と2.47と大きな差があります。
1)の女性は、同じ値のHbA1cでも、食後高血糖を生じていた質の良くないHbA1cということで、
4)の女性は、食後高血糖のない良質のHbA1cということがわかります。
同様に、2)3)5)の男性は、HbA1cは、5.8%(NGSP)、5.4%(JDS)と同じです。
しかし、GA/HbA1cは、3.33と2.47、2.48と大きな差があります。
2)の男性は同じ値のHbA1cでも食後高血糖を生じていた質の良くないHbA1cであり、
3)5)の男性は、食後高血糖のない良質のHbA1cということがわかります。
やはり、HbA1cだけでは食後高血糖を見逃してしまうので、グリコアルブミン(GA)も時々調べるのが正解と思われます。
グリコアルブミン(%)
17.0未満:優
17.0~20.0未満:良
20.0~21.0未満:不十分
21.0~24.0:不良
24.0以上:不可
HbA1c
6.0未満:血糖正常化を目指す際の目標
7.0未満:合併症予防のための目標
8.0未満:治療が困難なときの目標
江部康二
☆☆☆
以下は、2015年7月7日の、本ブログ記事の再掲です。
グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味
こんにちは。
今日は、グリコアルブミン(GA)とHbA1cを比較することの意味を考えてみます。
<グリコアルブミン(GA)とHbA1cの値の乖離>
2014年9月の採血で
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
というデータでした。
まあ日本糖尿病学会の目標値では、「合併症予防が7.0%未満」、「血糖正常化を目指す際は6.0%未満」ですから、HbA1cのコントロールは優秀です。
しかし基準値の上限の近くであり、メタボ健診の特定保健指導は5.6%以上なので、これには引っ掛ってしまいます。
一方、GAのデータは、もっともっと優秀で、基準値の下限に近いくらいです。
この時は、浅学にして、HbA1cとGAの値がなぜこれだけ乖離するのかよくわかりませんでした。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
一般的知識では、
「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」
の平均血糖値を反映します。
しかし、この知識では、HbA1cTとGAの乖離の説明がつきません。
それで少し、ネットで調べてみました。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の評価>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードの9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖にも、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.4%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データだと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.48:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
同じように
HbA1c5.8%(NGSP)
HbA1c5.4%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。
私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。
グリコアルブミン検査は今後、普及していくと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
初めて投稿させて頂きます。
HbA1c13.3のところ、(1)ゆるい糖質制限73日間(2)スーパー糖質制限15日間で、初発から88日目のGA値が18.5となりました。
HbA1cが正常化したのは142日目の検査まで待たなくてはならかったので(6.0%になりました)、今思えばあの時点でGA値を知った事は、糖質制限を続けるうえでの強い動機づけとなりました。
患者の性格によっては、GA値の検査を主とするほうが励みになって治療態度が良くなるように思います。
末筆ですが、自分の人生を変えてくれた糖質制限治療に感謝しています。ありがとうございます。
HbA1c13.3のところ、(1)ゆるい糖質制限73日間(2)スーパー糖質制限15日間で、初発から88日目のGA値が18.5となりました。
HbA1cが正常化したのは142日目の検査まで待たなくてはならかったので(6.0%になりました)、今思えばあの時点でGA値を知った事は、糖質制限を続けるうえでの強い動機づけとなりました。
患者の性格によっては、GA値の検査を主とするほうが励みになって治療態度が良くなるように思います。
末筆ですが、自分の人生を変えてくれた糖質制限治療に感謝しています。ありがとうございます。
はじめまして、いつもブログを拝見させていただいております。
江部先生に質問があります。
6年前に胆石で胆のうを摘出をしました。
砂糖を抜いたら多汗症が緩和されたので
江部先生の糖質制限の本を見て、体調をよくするために糖質制限をはじめました。
スーパー糖質制限を初めて1週間くらいですが、
今の所体調はよいです。ただ胆のうを摘出したものが
脂をたくさんとったり玉子をたべたりとして大丈夫か心配になりました。
お手すきの際にお返事頂けたら嬉しいです。
宜しくお願い致します。
江部先生に質問があります。
6年前に胆石で胆のうを摘出をしました。
砂糖を抜いたら多汗症が緩和されたので
江部先生の糖質制限の本を見て、体調をよくするために糖質制限をはじめました。
スーパー糖質制限を初めて1週間くらいですが、
今の所体調はよいです。ただ胆のうを摘出したものが
脂をたくさんとったり玉子をたべたりとして大丈夫か心配になりました。
お手すきの際にお返事頂けたら嬉しいです。
宜しくお願い致します。
2015/07/20(Mon) 11:49 | URL | ai | 【編集】
ai さん
胆のうは、肝臓が作った胆汁を貯めている「倉庫」の役目なので
切り取ってしまっても、ほとんど問題ないのです。
勿論、糖質制限食OKです。
胆のうは、肝臓が作った胆汁を貯めている「倉庫」の役目なので
切り取ってしまっても、ほとんど問題ないのです。
勿論、糖質制限食OKです。
2015/07/20(Mon) 13:58 | URL | ドクター江部 | 【編集】
| ホーム |