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インフルエンザ脳症と解熱剤
こんにちは

京都は0度で、また雪が積もりました。

幸い凍結はなかったので、無事テニスに行ってきました。

さて今日のブログは、インフルエンザ脳症と解熱剤についてです。


<脳炎と脳症の違い>

病理学的には、脳炎( encepahlitis)と は、ウィルスが直接脳に侵入、脳細胞に感染して増殖し炎症を起こすもので、脳神経細胞がウィルスによって直接破壊されます。

脳症( encephalopathy) は、脳の中にウィルスが存在しないのに脳が腫脹します。

インフルエンザウィルス感染により、まれに脳症が生じますが、原因は不明とされています。

インフルエンザウィルス自体による脳細胞の直接障害ではなく、何らかの原因により高サイトカイン血症などが引き起こされて、脳に浮腫などの障害をひき起こします。

すなわち、病理学的にはインフルエンザ脳炎は存在せず、インフルエンザ脳症が存在するということになります。

<インフルエンザウィルスは血中に入れない>

現時点でインフルエンザウィルスはA型もB型も新型も血中に入れません。

従って、インフルエンザウィルスが脳に直接感染することはないのです。

インフルエンザウィルスは、上気道・下気道・肺と消化管以外には感染できません。

マスコミでインフルエンザ脳炎とかインフルエンザ脳症と言っているのは、正確には「インフルエンザ関連脳症」という病名が一番適切です。

<麻疹ウィルスやヘルペスウィルスは血中に入れる>

麻疹ウィルスは血中に入れるので、脳にも感染して、まれではありますが、麻疹脳炎を生じ得ます。

ウイルス感染性脳炎としては単純ヘルペス脳炎が最も多いです。

日本脳炎ウィルスや狂犬病ウィルスも、脳炎を起こします。

<インフルエンザ脳症とサイトカインストーム>

インフルエンザ脳症の鍵となる現象は、サイトカイン・ストームと呼ばれる免疫系の異常反応です。

免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。

サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。

全身の細胞から通常量をはるかに超えるサイトカインが放出され、体内を嵐のように駆け巡ります。

この過剰なサイトカインストームにより、インフルエンザ関連脳症が生じると考えられています。

サイトカインストームが起こる原因は、今のところ不明です。

しかし解熱剤がサイトカインストームに悪影響を与えている可能性が示唆されています。


<解熱剤>

平成21年の厚生労働省のインフルエンザ脳症ガイドラインには、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)の内服は、インフルエンザ脳症の予後不良因子の一つに挙げられています。

これらの解熱剤が、インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させている可能性が示唆されています。

また、これらの解熱剤がサイトカインストームを生じたきっかけになっている可能性も否定できません。

結局、安全性が確立している、解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。

アセトアミノフェンの商品名は、カロナール、コカール、アンヒバ座薬などです。

インフルエンザにかかったときは、アセトアミノフェン以外の他の解熱剤(ロキソニン、インダシン、ブレシン、アスピリン・・・)
も使用してはいけません。

要するにアセトアミノフェンだけです。

なお、風邪などのウィルス感染でも同様の危険性はありえますので、私は、子供は勿論のこと、大人にも解熱剤は、基本的的にアセトアミノフェンしか処方しません。


☆☆☆

http://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html
独立行政法人 科学技術振興機構のサイトから抜粋

免疫系におけるサイトカインの役割

 病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などがあります。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。サイトカインには白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するインターロイキン類、白血球の遊走を誘導するケモカイン類、ウイルスや細胞の増殖を抑制するインターフェロン類など、様々な種類があり、今も発見が続いています。サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。サイトカインは本来の病原体から身を守る役割のほかに、様々な疾患に関与していることが明らかになってきています。

 平野チームは、自ら発見したサイトカインの一種であるIL-6が自己免疫疾患の発症制御において、中心的な役割を担っていることを独自に開発した疾患モデルマウスを用いて明らかにしています。また、免疫細胞の中枢神経系への侵入口を発見したことから、神経系自己免疫疾患の発症仮説を提唱しています。岩倉チームは、炎症性サイトカインであるIL-17ファミリー分子の機能的役割を解析する中で、これらファミリー分子が感染防御と炎症抑制において、役割分担されていることを見出しています。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
こんにちわ
中学2年生です
身長158センチ 体重53キロ。
最近太ってしまい糖質制限ダイエットをしています
もとは42キロだったので
その体重目指して行っています
5日目ですが
全く痩せません
なぜでしょうか?

ここ、5日間糖質を一切食べていないのですが
全く痩せず、逆に太ったりシます

どうしてでしょうか(泣)

あと鳥羽屋の味付けポンずを購入しました
あれならどんなに使ってもいいのでしょうか?

あと「糖質制限ドットコム」と「痩せる食べ方ドットコム」はどう違うのですか?

たくさんの質問すいません
2015/02/02(Mon) 00:02 | URL | はな | 【編集
インスリン注射と肥満について
こんにちは。いつもブログを拝見させていただいております。

実は兄弟に糖尿病のものがおりまして、20年前に糖尿病と診断されたのに、本人は食べ物の誘惑に弱く、病院嫌いだったので病院にもいかず、3年前に感染症が悪化しあやうく死にかけました。その後インスリンを打つ生活になったのですが、今思うとそれからも糖質が多い食事だったために高血糖は続いて、昨年神経麻痺を発病するに至り、ここでやっと江部先生のブログを見つけ、糖質制限食を始めました。現在HbA1cは5%代らしく、血液検査はとりあえず安定してます。糖質制限食のおかげです。主食無しのスーパー糖質制限をしておりますが、果物などは食べてますので、厳密に言えば少しゆるめだと思います。主治医は糖質制限をしていることは一応知っているらしいです。

今回投稿したのは、聞きたいことがあったからです。インスリンは以前より単位は減ってるものの、打ち続けるように主治医に指導されてるそうで、毎食前に打っているのですが、おそらくそのせいで体重がほとんど減らないそうです。むしろ肥えてきていて、顔がむくんでいるように見えます。(※腎症の疑いもありますが、今のところ定期検査で特に指摘されていないみたいです。)もともと肥満体形なので、痩せるようにと医者に言われているのですが、現状の糖質制限だけでは痩せないので困っているらしくて。インスリンを辞めるべきか、運動を多めにすべきか、どっちがいいんでしょう。本人は主治医には逆らいたくないので、インスリンを勝手には辞められないみたいですが。今のところ低血糖は起こったことはないみたいなので、血糖値バランスは取れているのかもしれませんが、肥満が加速しているように家族から見ても思えます。ちなみに一緒に糖質制限食を食べてる他の家族は、10キロ近く全員ダイエットできたのですけど…。
今後のアドバイスいただけたら幸いです。


2015/02/02(Mon) 00:31 | URL | ゆいちー | 【編集
おはようございます
勉強になります。
インフルエンザウイルスが血中には侵入できないとは・・
知らないとは恐ろしい・・
そういったことをきちんと理解できるのはありがたいブログ講義です。
さて、ブドウ糖によるエネルギーが必要なのは赤血球というのは耳たこですが、もしかしてその赤血球に必要な糖がなければ、赤血球が薄くなったりするのでしょうか?
献血でいつもヘモグロビン濃度が13.0という数字の境界にいるもので、ヒヤヒヤします。
個体差なのでしょうか。
2015/02/02(Mon) 09:43 | URL | クワトロ | 【編集
Re: タイトルなし
はな さん

158cm 53kg ならBMIは、21.2で、正常やや痩せ型です。・・・今で充分と思います。
158cm 42kg ならBMIは、16.8で、痩せすぎです。

糖質制限食で肥満している場合は痩せますが、
痩せすぎの場合は少し体重が増加して健康になることもあります。
BMI16.8だと、生理が不順になったり、風邪をひきやすくなったり、いろいろ問題が生じます。

158cm 54.9kgなら、最も標準とされるBKI22です。

アジア人は、BMI20以上~25未満が、推奨です。

鳥羽屋のポン酢は、100cc中に5gの糖質です。
スーパー糖質制限食は1回の食事の総糖質量(食材+調味料)を20g以下とします。
その範囲ならOKです。

「糖質制限ドットコム」は、どちらかというと、糖尿病の人が対象です。
「痩せる食べ方ドットコム」は、どちらかというと、ダイエット目的の人が対象です。
もちろん、重なる部分もあります。
2015/02/02(Mon) 16:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: インスリン注射と肥満について
ゆいちー さん

ご兄弟、HbA1cコントロール良好となって良かったです。
ただ、20年来の糖尿病で、コントロール不良の期間が長かったので
一定の動脈硬化が存在し、「高血糖の記憶」として消えない借金として残ります。
眼底検査や心臓検査、頸動脈エコーなどしっかりチェックしておきましょう。

インスリンは肥満ホルモンですので、インスリンの単位をもう少し減らさないと痩せにくいと思います。
スーパー糖質制限食なら、通常の糖尿病食に比べて、食前のインスリンの量は1/3以下になります。

医師とよく相談されて、インスリンを減らすことを考慮されては如何でしょう。

2015/02/02(Mon) 16:40 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: おはようございます
クワトロ さん

糖質制限食と貧血は関係ないと思います。
個体差と考えられます。

また糖質制限食で食後高血糖は改善しますが、血糖値が正常範囲で下がってくれば
肝臓の糖新生によりブドウ糖をつくるので低血糖にはなりません。

肝臓の糖新生は、第一義的には赤血球のためですね。
2015/02/02(Mon) 18:38 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました
糖新生は、なるほど、第一義的にはブドウ糖しかエネルギー源にできない細胞のためなんですね。
ホッとしました。
2015/02/02(Mon) 22:09 | URL | クワトロ | 【編集
初めてコメントいたします。いつもブログ拝見しております。長文ですがお願いします。
自分の母親(67歳)なんですが、つい最近までa1cが6.4あり、なかなか下がらず悩んでいたところ、江部先生の事を知り糖質制限の本を購入し実践させたところ、約2ケ月で、6.4→5.8まで下がり、かかりつけ医もびっくりして、どうやってここまで下げたんですか!などど言われたそうです。母親も、初めは半信半疑で、糖質を取らない(米や麺類、お菓子等)だけで?という感じでしたが結果を見てびっくりしてます。ありがとうございました。今後も続けるそうです。
そこで、本題なんですが、自分はアルコール大好きで、普段の食事は大盛りがあたりまえだったんですが、30代後半になり血糖値が気になっていたところ、江部先生の言う食後高血糖というのが気になり思い切って簡易血糖測定器を購入し遊び半分、本気半分で丼物半分位食べて1時間後(糖質50位と思いますが)測定したところなんと180、2時間後150で、いくら簡易測定器が高値傾向にあるとはいえ立派な、「境界型」ですよね。(現在、空腹時は80、A1Cは5.8)その日のうちにスーパーを始めて3ケ月程たちますので近いうち検査に行くつもりですが、気になることがあります。糖質制限をはじめてから、大豆製品(豆腐やがんもどき)、チーズなどを結構多めにとるようになったんですが、大豆アレルギーや乳製品アレルギーになる危険はどうなのでしょうか。豆腐は1日一丁~2丁くらい、6Pチーズは1日2~4個くらいなのですが食べ過ぎでしょうか。また、脂質を結構取りますが膵炎などのリスクはどなのでしょうか。
江部先生の糖質制限理論はアルコール大好きな自分としてもこれまでにない納得のいく理論であり、この先も美味しく楽しく糖質制限を続けたいと思っております、回答いただけたらありがたいです。お願いいします。長文ですいません。
2015/02/03(Tue) 21:44 | URL | まこちん | 【編集
Re: タイトルなし
まこちん さん

糖質制限食で、大豆製品(豆腐やがんもどき)、チーズの摂取が増えますが、
それで大豆アレルギーや乳製品アレルギーになったケースは聞いたことがないです。

「豆腐は1日一丁~2丁くらい、6Pチーズは1日2~4個くらい」

心配ないと思います。
2015/02/04(Wed) 07:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
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