fc2ブログ
脂質管理ガイドライン(米国心臓病学会/米国心臓協会、2013年)
【14/12/15 nana

江部先生

はじめまして。nanaと申します。

いつも先生のブログとご著書(すべて持っております)で勉強させていただいております。先生の講演会も何度か参加させていただいております。

私はスタンダード、たまにスーパーで糖質制限をしてもう10年以上になります。

糖尿病ではなく全くの健康体ですが、血糖コントロールと体調維持のために糖質制限を続けています。先生と同様、毎晩アサヒスタイルフリーと黒霧島を楽しんでおります。

私の夫ですが、毎年健康診断でLDLコレステロール値が170~190mg/dlを推移していて、企業医の先生にコレステロールを下げる薬を毎年勧められています。(薬は断っています)

私の勧めで夫も3年前にスーパーで糖質制限をしまして、半年で10キロ近く減量して標準体重になりました。その結果、長年悩まされていた花粉症がかなり軽減し、首に出来ていた小さいブツブツしたいぼ状のものが目立たないくらい小さくなりました。疲れにくくなり、体調も改善したので、それ以来緩めの糖質制限を続けています。

ちなみに今年の診断結果ですが、LDLが175mg/dl、HDLは59mg/dl、中性脂肪113mg/dl、体重63㎏でした。身長は173㎝です。

LDLよりも私が気になったのは、空腹時血糖が100mg/dl、HbA1c(NGSP)が5.6%という今回の数値です。

企業医の先生はかなり怒ってらして、薬を飲まないとどうなっても知らない、と言っているそうです。

今までのLDLの数値だけなら心配しなかったのですが、今回の空腹時血糖とHbA1cの結果を見たら、糖尿病予備軍の範囲なのではないかと心配になりました。

私の考えは、緩めだった糖質制限をスタンダードにして、しばらく様子を見ようかと思ったのですが、企業医の先生の仰るように、薬の服用を検討した方がよろしいのでしょうか。

お忙しいところ大変恐縮ですが、先生のご意見をお伺い出来ましたらありがたく思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。】



こんにちは。

nanaさんから、LDL-コレステロール値に関して、コメント質問をいただきました。

拙著のご購入、講演会へのご参加、ありがとうございます。

アサヒスタイルフリーと黒霧島、美味しく楽しくで、いいですね。

LDL-コレステロール値に関しては、日本動脈硬化学会と日本脂質栄養学会のバトルが記憶に新しい所です。

日本動脈硬化学会は、「LDLを下げるべし」という立場で、日本脂質栄養学会は、「LDLは高値の方がいい」という立場です。

このバトル、未だに決着はついていません。

さて、2013年12月、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)は、

「成人のアテローム性動脈硬化疾患予防のための脂質管理ガイドライン(GL)」

を改訂し、公開しました。

今までのガイドラインはかなり異なる画期的ガイドラインでした。

このガイドラインでは、心臓に健康的な生活習慣の遵守が、アテローム性動脈硬化症予防の基礎であると強調しました。その上で、スタチンを用いた脂質低下療法による利益を得ることができる集団を以下の4つに特定しました。

①アテローム性動脈硬化症の臨床症状
②二次性脂質異常症(甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群などほかの疾患が原因)を除くLDL-C値≥190mg/dL
③糖尿病患者の一次予防(LDL-C値70~189mg/dL、40~75歳)
④アテローム性動脈硬化症発生リスク≥7.5%の非糖尿病患者(LDL-C値70~189mg/dL、40~75歳)


は動脈硬化の臨床症状がすでに存在するグループです。


は、LDL-C値≥190mg/dLのグループです。
つまり他に特に病気がないLDL-コレステロール値だけが高値のグループです。


糖尿病患者(LDL-C値70~189mg/dL、40~75歳)は過去に心筋梗塞や狭心症を起こしていなくても適応となるということです。


アテローム性動脈硬化症のリスクスコアについては、性別、年齢、人種、コレステロール値、HDL-C値、血圧値、降圧薬による治療の有無、糖尿病の既往、喫煙歴などを入力すると、10年間のアテローム性動脈硬化症の発生リスクが分かります。
リスク計算ツールは、http://my.americanheart.org/professional/StatementsGuidelines/PreventionGuidelines/Prevention-Guidelines_UCM_457698_SubHomePage.jspから、ダウンロードできます。


米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインは、質の高いRCT研究論文とメタ解析のみを参考としていますので、一定の信頼度があります。

一番の特徴は、過去の様々なガイドラインとは異なり、LDL-コレステロールの管理目標値をエビデンスがないとして排除したことです。

さて、nanaさんのお連れ合いですが、
<空腹時血糖が100mg/dl、HbA1c(NGSP)が5.6%>
なので、糖尿病ではないので、まず③ではないです。

<LDLが175mg/dl、HDLは59mg/dl、中性脂肪113mg/dl、体重63㎏。身長173㎝>
で、10kg減量成功で花粉症が軽減し、疲れにくくなり、体調良好であれば、①と④もまず大丈夫と思います。

あと②ですが、
<毎年健康診断でLDLコレステロール値が170~190mg/dlを推移>
なら190mg/dl以上ではないので、②も大丈夫です。


いろんなガイドラインがありますが、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の最新のガイドラインに従えば、nanaさんのお連れ合いは、スタチンの適応ではないので、薬は要らないこととなります。

ここまでは、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインに基づくエビデンスレベルの話です。

ここからは、③に関しての私見ですが、私のように2型糖尿病の診断基準は一旦満たしたけれど、スーパー糖質制限食実践で血糖コントロールが、食前も食後も基準値内の場合は範疇に入らないと考えられます。

逆に言えば糖尿病で糖質を食べている方々は、「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクを毎食生じているので、③の要件を満たすことになるのだと思います。

米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインは、普通に糖質を摂取している2型糖尿病患者におけるエビデンスに基づいています。

私の場合2002年の糖尿病発覚以降ずっとスーパー糖質制限食を続けていて、スタチンを含め、定期的な薬は一切飲んでいませんが、現時点で心身共に健康です。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ご婦人
スーパーで買い物中の出来事です。 カネハツ食品の「サラダに!まめ&ひじき」(糖質10.1g/1袋=125g)を手にしていたら、70歳台くらいのご婦人が声を掛けてきました。 その煮豆、美味しいですか? 私もひじきが好きで・・・と。 そこで、私は、大豆煮の中で、比較的糖分が少ないんで選んでいるんです答え、裏側の表示を見せました。 そうしたら、息子さんが2型糖尿病でインスリンを打っていて、何度か低血糖になったと話されました。 それから、ショウケースの前で色々立ち話をして、帰り際に、日曜日の選挙投票済証明書の裏に「江部 康二(えべ こうじ)をネットで調べて下さい」と書いて渡して別れました。今晩あたり、ご本人が江部先生のブログを見て、参考にしてくれたらと思います。
2014/12/16(Tue) 16:53 | URL | デュピュイ取る | 【編集
上手にやせるための炭水化物のとり方
江部先生
2014/12/16(Tue) 17:59 | URL | 福助 | 【編集
上手にやせるための炭水化物のとり方
江部先生

糖質制限について、肯定しているようで否定的な何ともすっきりしない記事ですが、見つけましたのでリンクを掲載します。

------------------------------------------------------------------
上手にやせるための炭水化物のとり方
いい炭水化物、悪い炭水化物って?

http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20141003/191986/?rt=nocnt

------------------------------------------------------------------
2014/12/16(Tue) 18:03 | URL | 福助 | 【編集
上手にやせるための炭水化物のとり方
何故か禁止ワードがあるようですので、2回に分けさせていただきましたm(__)m

ですが、やはり元の文章(といいましても私の拙い考察でありますが)では受け付けてもらえないようです。。。

1点だけ、「糖質を摂らないと血液中のステムセル(造血幹細胞)が減ってしまう」というのが少し気になりました。
グレーなことは推測調で書かれてますので、これも確かな根拠は無いのかもしれませんが。。。
2014/12/16(Tue) 18:18 | URL | 福助 | 【編集
お礼。
江部先生

お忙しい中、私の質問にお返事下さるだけでなく、記事に取り上げご丁寧に解説していただきまして、本当にありがとうございます。

企業医の先生にご理解いただくのは難しいかもしれませんが、夫も先生のご意見を伺い安心出来たので、やはり薬の服用は断るとのことです。

私も先生のご意見を伺うことが出来て本当に嬉しく、ありがたく思っております。

私は現在鍼灸マッサージの専門学校生で、医療のことを勉強中の身です。

以前からずっと栄養学も勉強しており、そこから糖質に疑問を持つようになりまして、糖質制限についても勉強するようになりました。

健康体の私が糖質制限を10年以上続けている中で、アトピーが改善し、益々体調が良くなったと実感しております。糖質を取らない方が明らかに体調が良いのです。HDLコレステロール値も110mg/dl位を維持しています。

これからも糖質制限の度合いを色々変えながら、自分の体で人体実験をしていこうと思っております。
夫も、予防の為にもスタンダードで糖質制限を続けるそうです。

江部先生、お忙しい中、本当にありがとうございました。


                           
2014/12/16(Tue) 22:26 | URL | nana | 【編集
Re: ご婦人
デュピュイ取る さん

このような形で、徐々に糖質制限が広がればいいですね。
ただ食前のインスリンを打っている場合は、糖質制限をするときに単位を1/3以下に減らさないと
低血糖になるので、医師との相談が必要です。
2014/12/17(Wed) 07:59 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 上手にやせるための炭水化物のとり方
福助 さん

情報をありがとうございます。
コメントいただいたサイトは、ご指摘通りイマイチですね。

「糖質を摂らないと血液中のステムセル(造血幹細胞)が減ってしまう」

というのは全く無根拠であり、間違っています。

造血幹細胞は血球系細胞に分化可能な幹細胞でヒトでは主に骨髄に存在し、
白血球、赤血球、血小板、肥満細胞、樹状細胞を生み出します。

糖質制限食で造血幹細胞が減少するなら、糖質セイゲニストは皆、
貧血で、白血球や血小板減少症になるはずですが、そんなことはないですね。
2014/12/17(Wed) 08:11 | URL | ドクター江部 | 【編集
食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国
江部先生

米農務省と米保健福祉省も、コレステロールを多く含む食品の摂取制限を、政府ガイドラインの草案から削除するとのことです。

-------------------------------------------------------------------------
『食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国』

          AFP=時事 2月20日(金)10時40分配信

米農務省(US Department of Agriculture、USDA)と米保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services、HHS)は19日、コレステロールを多く含む食品の摂取制限に関する文言が、米国人の栄養に関する新たな政府ガイドラインの草案から削除されることを明らかにした。

 現行のガイドライン「Dietary guidelines for Americans(米国人のための食生活指針)」では、1日あたりのコレスレテロール推奨摂取量上限は300ミリグラムとされている。これは棒状のバター1本、または小さい卵2個、ステーキ300グラムに含まれる量にあたる。

 これまでは、コレステロールの過剰摂取によってプラークが動脈に蓄積し、心臓発作や脳卒中リスクが高まると考えられていた。ただ、2015年版ガイドラインでは、食事から摂取のコレステロールと血清コレステロールの間に明確な関連を示す証拠がないとして、コレステロール摂取の上限値が撤廃される可能性が出てきた。

「health.gov/dietaryguidelines」で閲覧できる草案には「コレステロールは過剰消費が問題となる栄養素ではない」とある。栄養、医療、公衆衛生の米専門家ら14人がこの新たな草案をまとめた。

 新たなガイドラインをめぐっては、45日間の意見聴取期間が設けられた後、3月24日にメリーランド(Maryland)州ベセスダ(Bethesda)で開催される公開会合で討議にかけられる予定。

 一方、コレステロールとセットで語られることの多い飽和脂肪については、より厳しい摂取量の制限が求められた。

 2010年の指針では、飽和脂肪からのカロリーを一日当たりの全カロリー摂取量の10%とするとしていたが、草案では同8%とされた。

 ニューヨーク(New York)にあるマウントサイナイ医科大学ベス・イスラエル病院(Mount Sinai Beth Israel hospital)のレベッカ・ソロモン(Rebecca Solomon)氏(臨床栄養学)は、「長い間、(体内の)コレステロールレベルについては、食事性のコレステロールではなく、遺伝や飽和脂肪の過剰摂取が主要な原因であることは分かっていた」と述べ、このような形で認識されて嬉しいと続けた。【翻訳編集】 AFPBB News
-------------------------------------------------------------------------

2015/02/20(Fri) 12:54 | URL | 福助 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可