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妊娠糖尿病女性への糖質制限食について。批判と反論。
以下、谷川氏が引用している宗田先生の抄録です。

精神科医師Aさんからコメント頂きました。
ありがとうございます。

『日本糖尿病・妊娠学会(2013)抄録
<演題名>糖質制限食による妊婦、胎児、新生児の高ケトン血症の検討
<所属>宗田マタニティクリニック1)、永井クリニック2)
<筆頭演者>宗田哲男 czf06641@nifty.com
<共同演者>河口江里1)、松本桃代2)、永井泰2)
<抄録>

【目的】糖質制限食で管理すると血液中のケトン体(主としてβ-オキザロ酪酸)が上昇する。日本糖尿病学会は、極端な糖質制限食は高ケトン血症を招くために危険という声明を出している。我々は、一般的な食生活の妊婦と糖質制限食を実施した妊娠糖尿病をはじめとした妊婦について、それぞれ、妊娠中、および分娩時、新生児のケトン体値をしらべ、生体に与える影響を検討した。

【方法】妊娠中の血中ケトン体値の測定、分娩時の児、および母親のケトン体値、出生後のケトン体値推移。

【結果】妊娠中の母体は、重症悪阻ではケトン体が上昇する。糖質制限食を行うと程度によってケトン体が上昇し、最高5000μmol/L以上にもなる。たとえ1000μmol/L以上であってもアシドーシスを起こす例はない。また、分娩時に臍帯血を調べると一般食、糖質制限食にかかわらず、児の70%は高ケトン血症である。そして生後もこの傾向は続き、1か月検診でも高ケトン血症である新生児が多い。糖質制限食ではない妊娠の胎児の血液、絨毛組織からも常に700μmol/L以上のケトン体が測定された。

【考察】胎児、新生児はケトン体をエネルギー代謝の中心にしていることが示唆される。悪阻や飢餓で起こる高ケトン血症は脂肪、筋肉組織の動員でおこるが、糖質を制限し脂質、タンパク質を中心に摂取する場合は、体内組織は使われず、食事に起因するもの。高ケトン血症で、いわゆる正常値の50倍の高値でも日常生活は快適におくれて、何ら危険なものではなかった。

【結論】胎児、新生児は高ケトン血症であり、糖質制限食の下ではさらに顕著であるが、それは生体の基本的な代謝の反映であり、人類史では、穀物のない時代の方がはるかに長く、現代の糖質過多食こそ特殊な時代であり、ヒトは本来ケトン代謝によるエネルギーを基本としていたと推察される。糖質制限食は妊娠糖尿病管理に有効であり、それによっておこるケトン体の上昇は生理的なもので、胎児期からあり、危険なものではないと考える。
利益相反:無

学会当日の光景はこのHP参照
http://www.wound-treatment.jp/new_2014-04.htm#0417-06:00-6




【糖尿病学会誌2
次いで谷川論文です。これはケトーシスととケトアシドーシスの区別もついていない。
ケトン体は胎児奇形を起こすというが、悪阻の妊婦ではケトン体は3000μmol/L にもなる。
胎児も新生児もケトン体は極めて高い。
それはどう説明できるというのか?
従来より糖尿病妊婦の児では精神遅滞,行動の異常が指摘されてきたというが、それこそ従来の治療法の結果であって、そこには反省も責任もないのでしょうか?
江部先生、極端な糖質制限食は、低カロリー食になり、飢餓になるのでしょうか?
批判するからには、もう少し勉強してほしいですね。


編集者への手紙Letters to the Editor
妊娠糖尿病女性への糖質制限食について
谷川敬一郎
〔糖尿病57(7):528,2014〕
妊娠時の糖・脂質代謝の特徴は脂肪の分解,ケトン体産生,血糖の低下などの状態<accelerated starvation>とインスリン抵抗性の亢進,高インスリン血症,高血糖など<facilitated anabolism>が共存する事である1).

食べることによるアナボリックな変化と,絶食時のカタボリックな変化が最初は緩徐なサイクルであったのが,妊娠の進行とともに急峻なサイクルへと形を変えてゆくことは良く知られている.

最近糖尿病の食事療法に極端な糖質制限食を導入する考えがある.

宗田らは妊娠糖尿病の治療に糖質制限食を導入し ており,妊婦の血中ケトン体は5000 μ mol l 以上(正常値の50 倍以上)
になったと述べている2).

妊娠時はインスリン分泌が亢進しているためにケトーシスやケトアシドーシスにはならなかったようだが,母児にとって好ましくない可能性がある治療法である.

また妊娠中の極端な糖質制限食はさらなるstarvation の促進を生じ,妊婦のみならず当然胎児も高ケトン血症になっている.

動物実験ではケトン体は催奇形性物質であることが報告されており3),高血糖と高ケトン血症の状態では胎仔の形成異常がさらに促進される.したがって児の器官形成期には糖質制限食を避けることが望ましいと考えられる.

従来より糖尿病妊婦の児では精神遅滞,行動の異常が指摘されてきた4).

Rizzo らは妊娠後期にβ ―ヒドロキシ酪酸が高値であった母体が出産した児のIQ が低いことを明らかにした5).

ケトン体が胎児の脳の発育や神経細胞の成熟に及ぼす影響については全く知られていない.

今後の課題として,糖質制限食で妊娠を継続して出産した児のフォローアップを行い,児や将来のさらなる予後を検討することも重要であろう.

また極端な糖質制限食では低カロリー食となって,児の飢餓がGluckman ら6)が提唱するDOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)をひきおこす可能性もある.

成人になって糖尿病や冠動脈疾患を発症する危険性がある.

このような児は小児科医,内科医による長期的な予後の観察が必要である.


2014/08/08(Fri) 23:24 | URL | 産婦人科医 宗田 | 】


宗田先生。
コメントありがとうございます。

谷川敬一郎氏のレターは、宗田先生が、ご指摘のごとく、勉強不足の一言ですね。

「妊娠時はインスリン分泌が亢進しているためにケトーシスやケトアシドーシスにはならなかったようだが」

糖質制限食妊婦の血中ケトン体5000 μ mol l 以上(正常値の50 倍以上)は立派なケトーシスですが、インスリン作用が確保されているの生理的で安全ですし、勿論アシドーシスにはなりません。

インスリン作用が欠落していることが前提の糖尿病ケトアシドーシスは、病理的で危険な病態であり、生理的ケトーシスとは全くことなるものです。

谷川氏はこの両者の区別がつかず、一緒くたにしてしまっていて、困ったものです。

「妊娠中の極端な糖質制限食はさらなるstarvation の促進を生じ」

そもそも、糖質制限食はカロリー制限食ではないので、starvation(飢餓)が促進することはありません。

糖質制限食は、摂取カロリーは妊婦が必要充分なだけの量を摂取します。

「妊婦のみならず当然胎児も高ケトン血症になっている」

宗田先生の抄録を引用しているのだから、当然しっかり読んで理解しているのかと思いきや、これは唖然とするしかないですね。

抄録には「胎児、新生児は高ケトン血症」としっかり書いてあります。

谷川氏、宗田先生の抄録をまともに読んでないですね。

また、2014年1月の病態栄養学会の評議員なのに、宗田先生のご発表を無視しています。

宗田先生病態栄養学会ご発表(2014/1/12)の要が、胎児の胎盤のβヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)が、基準値よりはるかに高値であったということです。

すなわち中絶胎児58検体の絨毛の組織間液のβヒドロキシ酪酸値の測定で、平均1730μmol/Lと高値です。

成人の基準値は76μmol/L以下なので、20~30倍です。

すなわち胎児の胎盤のβヒドロキシ酪酸の基準値は、そもそも成人の基準値の20倍~30倍であり、それが普通で正常であるということです。

「動物実験ではケトン体は催奇形性物質であることが報告されており」

B-OHB(βヒドロキシ酪酸)の濃度が、 32 mM/Lなどの実験です。

つまり、32000μM/Lというとんでもない濃度をマウスの胎芽に与えた実験です。

通常の基準値76μM/L以下の421倍以上ですね。

ブドウ糖が基準100mg/dlくらいとして、100倍の濃度なら、10000mg/dlですね。

これだけの濃度のブドウ糖をマウスの胎芽に与えたら奇形どころか即死ではないでしょうか?

「極端な糖質制限食では低カロリー食となって」

これはもう妄想の域に達していますね。

カロリー制限食(高糖質食)を批判して、その対極にあるのが糖質制限食ですので低カロリー食ということはありえません。

いい加減にして欲しいですね。


<高血糖による母体、胎児への合併症>
【胎児への影響】
・流産、奇形、巨大児、未熟児、低血糖児、心臓病、胎児死亡 など
【母体への影響】
・糖尿病腎症の悪化、糖尿病網膜症の悪化
・早産、
・尿路感染症
・妊娠高血圧症候群、羊水過多
・赤ちゃんが巨大児になることにより、難産になったり、帝王切開になるリスクの増加


高血糖により、これだけのリスクが母体と胎児に生じます。

そして、日本糖尿病学会推奨のカロリー制限食(高糖質食)で食後高血糖を防ぐことは、至難の業です。

日本糖尿病・妊娠学会では、1日6回の食事を推奨して1回の食事の糖質量を減らして、食後高血糖を防ごうとあがいておられます。

しかしそんな面倒くさい努力をするより、糖質制限食を導入すればいいのです。


糖質制限食なら、食後高血糖が改善するので、薬なしでこれらのリスクが防げます。

実際、宗田マタニティークリニックでは、帝王切開率が糖質制限食導入以前の1/3以下になっています。

このように、母児にとって、高血糖は極めて危険ですが、ケトン体は、とても安全性が高いものなのです。


江部康二



☆☆☆

新刊のご案内です。
おかげさまで、早くも第2版となりました。



『炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません』
生活習慣病を予防&改善する糖質制限食31のポイント
江部康二著 東洋経済新報社
2014年8月1日(金)から発売中


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
イメージ
「糖質制限」を、現状の食事から、お米や、カップ麺、パン、うどんを「除外」するだけの食事と思いこむと、極端な糖質制限食は低カロリーとなってしまうと思いこみます。しかし、実際に食事指導をしていくと、金銭的な面から「タンパク質」を増やせない家庭も多くあります。油の活用を進めていたところタイムリー(8月7日)な出版助かります。一つ懸念は「自家中毒」があります。血中ケトン上昇が原因とされている、「嘔吐」又は「嘔吐感」です。自分も経験あり、要は食べなければ良いのですが体の「異常」と捉えるか、正常な反応と捉えるかで、油を増やす際の対応が異なるので、「自家中毒」の存在と、対応について記事にしてもらえると嬉しです。
2014/08/10(Sun) 10:32 | URL | ナリ | 【編集
私は境界型糖尿病と判断すべきでしょうか?
はじめまして。
著書、ブログも全てではありませんが、江部先生の主張されていることを一番支持させて頂いております。
以前からダイエットに興味があり、運動なども定期的に行っていて、
30代前半、170cm60kgで体脂肪率10%程度という、一般からすると痩せ型で、筋肉もないわけではないという体型をしているのですが、
将来の自分の健康なども考えて、玄米などの低GIや、オメガ3脂肪酸、タンパク質なども積極的に摂るようにしています。
一般的な健康の話だとその辺で体型が維持できれば何も問題ないとスルーしてしまいそうなのですが、
知識を深めていくうちに糖毒のことが気になりはじめ、江部先生の本やブログにいきつきました。

糖尿病の診断は、食後2時間で200mg/dl以上で、境界型は140mg/dlとのことでした。

そこで私も自分の食後血糖値のことが気になり、ネットで海外から検査器を購入して測ってみたのですが、空腹時は90前後で、食後2時間だと120を切る程度で大したことがないのです。

ただ、ブログでもよく食後1時間が話題になっていたので、食後からもっと細かく測定してみると、食後30分〜1時間の間の血糖値が160を大きく越えることがあることがわかってきました。(玄米を中心とした普通の魚定食などです)

1時間半もすれば下がり、どれだけ測っても180以上まで上がることはないのですが、正常人はどんなに糖質を摂っても140を越えることはないとのことだったので、自分の血糖値のピークが高くなり始めていることに心配をしています。

糖質制限は徐々に始めていたところなので(夕食では糖質を摂りません)特に身体的な無理はないとは思うのですが、やはり友人との付き合いや外食などで苦労をしそうな心配があるのと、
今後糖質制限を続けていけば、膵臓が回復して少しは糖質を摂取できるようになる可能性もあるということになりますでしょうか?

人生で一度も太ったことがなく、食べても太らない体質で、年齢が上がっても太りやすくなったとも感じていなかったのですが、このようになかなか自分で調べないとわからないようなことを目の当たりにして、身近なお医者様より江部先生のブログで相談をさせて頂きました。

どちらにせよ糖質制限に理解のあるお医者様に一度ちゃんと診てもらったほうがよいとは思いますが、私のようなパターンもあるのか?という問いと、今後食後のインスリン感受性が回復する可能性はあるかということだけお伺いしたいです。



2014/08/10(Sun) 14:17 | URL | 痩せ型 | 【編集
Re: イメージ
ナリ さん

そうですね。
「自家中毒」
一度記事にしましょうか。

周期性嘔吐症が正式名称ですが、
じつは、この病気は片頭痛の子ども版と言われていて、
大人で片頭痛の持病がある人の幼少期の症状だという見方もあります。

私の考えは、ケトン体は原因ではなくて、体調不良で食事ができなくて飢餓状態になって
その結果として高値となるというものです。

ケトン体そのものは、インスリン作用があるかぎり、胎児や新生児においても安全なものです。


2014/08/10(Sun) 19:24 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 私は境界型糖尿病と判断すべきでしょうか?
痩せ型 さん

食後1時間血糖値が180mg/dlを超えるタイプは、将来糖尿病になりやすいです。
やせ型さんは、大丈夫です。正常型です。

20歳くらいで、家系に糖尿病が全く無い人は、食後1時間でも140mg/dlを超えることはまずありません。
ただ30代、40代になると、140mg/dlを超えてくる人も多いです。

やせ型さんの場合は、緩やかな糖質制限食で充分と思います。
すなわち糖尿人である江部康二は、1回の食事の糖質量は、10~20g以下としています。
やせ型さんは、1回の糖質量を30~40gくらいとってもいいと思います。
それで充分、将来の糖尿病発症は防げると思います。
2014/08/10(Sun) 19:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
悪阻
江部先生

こんにちは。
以前も何度か質問をさせて頂いたスペイン在住の者です。
先月、妊娠していることが発覚し、現在10週になります。6週位から悪阻が始まり、今まで食事の中心だった動物性タンパク質に抵抗を感じるようになってきました。無理に食べずに食べられる自家製無糖質ゼリーを食べてみたり、一度冷凍させた生ハムを食べたり、ヨーグルトを食べたりとしてみたんですが、一週間で歩くのもやっとというくらい体力が落ち、これはいかんと思って無理やりまたお肉を食べ始めました。
先週までは無理に食べれていたのですが、今週から見るのも嫌になってしまい、代わりにスモークサーモンばかり食べていました。が、まず値段も高いのと、調べてみると妊娠中は食べてはいけないそうで、壁にぶち当たっています。
糖質制限食の中で、ポーチドエッグにマヨネーズをかけたもの、豆乳ヨーグルトぐらいは食べられますが、それだけでは身体にも頭にも力が入りません。
せっかく糖質制限によって様々なことが改善されたので続けて行きたかったんですが、日々、悪阻が治まるまで糖質制限はお休みしようかという気持ちも強くなって行っています。因みに素直に食べたいと思う物は全て糖質です。

先生からもし何かアドバイスを頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。
2014/08/12(Tue) 05:18 | URL | España | 【編集
Re: 悪阻
España さん

妊娠中であるので、優先順位の一番は、摂取エネルギーの確保です。
飢餓では、胎児にも母体にもよくありません。

糖質制限は、一時お休みしてもいいので、
食べることができるものを食べて、兎に角摂取エネルギーを確保しましょう。
2014/08/12(Tue) 10:26 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます。
そう仰っていただけて、とても気が楽になりました。
また何でも食べられるようになったら再開したいと思います。
ありがとうございました。
2014/08/12(Tue) 15:05 | URL | España | 【編集
Re悪阻
Españaさん
つわりで大変ですね。まったく食べられないで点滴をしてしのぐ方も何人もいます。この時期に何を食べたらいいのか、悩む方が多いです。
不思議なのはお米の炊き上がりのにおいは嫌がられて、コメを食べられなくなる方は多いです。この点では糖質を嫌う様には見えます。ただたいていは、動物性たんぱく質も取れなくなることも多いので、江部先生のおっしゃるように、まずは食べられるものを食べて飢餓にはならないようにすることです。もともとBMIが高い方なら、水分と塩分を補給していれば大丈夫です。経口摂取が難しいなら点滴をします。この時にはリンゲル液、生理的食塩水などを中心にします。どこでも可能な輸液です。食べられるものを食べるようにしますと、冷たいものや酸味があるものが取りやすいようです。妊娠20週くらいまでトマトばかり食べていた方もいました。糖質制限は理想的ですが、今は食べられるものが糖質であるならそれでもいいと思います。もっとも卵が食べられるなら、すぐに治ると思いますよ。サーモンもかまわないと思います。いろいろ食べていますとまた糖質制限に落ち着くと思います。
2014/08/14(Thu) 02:17 | URL | 産婦人科医 宗田 | 【編集
Re: Re悪阻
宗田先生

貴重なご意見をありがとうございます。
2014/08/14(Thu) 18:28 | URL | ドクター江部 | 【編集
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