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大西睦子氏の日経トレンディ3/7掲載の記事。JAMAの論文解釈。
【14/03/29 abi_bu

同じ大西氏の記事について

いつもブログ、著書を拝見させていただいております。(かみさん用に、レシピ本、我ら~、~健康になるを預けてますが、読んでもらえないのが泣き所。糖質制限していることに理解は得られていますが。)

大西氏の記事で他に気になるところがあり、よろしければご教示いただければと存じます。

同じ日経トレンディ3/7掲載の記事で

2012年にボストンの研究者らが、低脂肪ダイエット、低GIダイエット(同じ炭水化物でも、GI値の低い食品を選ぶもの)、そして超低炭水化物ダイエットの3種類の食事制限のうち、長期にわたって体重減少を維持するのにどれが有効かを比較検討しました。

その結果、超低炭水化物ダイエットは、エネルギー消費やメタボリック症候群に対しては最も良い影響を与えましたが、心血管疾患の合併や慢性の炎症を増加するリスクがありました。
■参考文献
JAMA「Effects of Dietary Composition on Energy Expenditure During Weight-Loss Maintenance」
というものがありました。

自分でもこの論文に対する先生のコメントを検索したのですが参照できませんでした。

このデータの前提条件がスーパー糖質制限レベルで比較されたものではないような予想はしていますが、コメントもしくは既にコメントされたブログの記事をお教えいただければ幸いです。】


こんにちは。

abi_bu さんから、大西睦子氏の日経トレンディ3/7掲載の記事について、コメント・質問をいただきました。

結論から言いますと、この論文をもって「糖質制限食実践で心血管疾患の合併や慢性の炎症を増加するリスクがある」
とは到底言えませんのでご安心ください。


JAMAEffects of Dietary Composition on Energy Expenditure During Weight-Loss Maintenance

は、21人の肥満者を対象に、元体重の10%の減量をさせ(←これは全員普通のカロリー制限食12週間)、その後の維持期(4週間)、ののち、さらに2回目の維持期(4週間)」のモニタリングを行った研究です。

安静時基礎代謝量resting energy expenditure (REE)、および総エネルギー消費量 total energy expenditure (TEE)を、低脂肪食、低GI食、糖質制限食(カロリーは同じ、運動量もおなじ) で比較しています。

食事が3群に振られている期間は、2回目の維持期(4週間)の期間のみです。

低脂肪食(炭水化物60%、脂肪20%、タンパク質20%)
低GI食(炭水化物40%、脂肪40%、タンパク質20%)
糖質制限食(炭水化物10%、脂肪60%、タンパク質から30%)

の3群です。

この研究の主たる目的は、体重減少後の維持期において、適切な食事はいかなるものか?

低脂肪食、低GI食、糖質制限食で比較検討 といったところです。

結果、安静時基礎代謝量と総エネルギー消費量において、低脂肪食が一番大きく低下、糖質制限食は一番小さい低下、低GI食はその中間でした。

つまり、糖質制限食が、一旦減らした体重を維持するうえで、安静時基礎代謝量と総エネルギー消費量において一番優位であったということです。

さらにメタボリックシンドロームの指標改善においても糖質制限食が一番優位でした。

ただ糖質制限食群では、コルチゾール排出量とCRPが増加していました。

24時間尿中のコルチゾールを測定していて、
低脂肪食群:50 μg/日
低GI食群:60 μg/日
糖質制限食群:71 μg/日
です。

ほんの少しの差ですね。

米国の会社の24時間尿中コルチゾールの基準値は、10 - 100 μg/日でした。

ということはいずれも基準値内のほんの少しの差でしかありません。

著者らが、

「より高いコルチゾールレベルは、肥満、インスリン抵抗性、および心血管疾患を促進する可能性がある」

と述べているのですが、それは、あくまでも長期間コルチゾールレベルが高いことが続いた場合です。

本研究はそもそも基準値内の変化で、しかも僅か4週間のことですから、とてもそんなことは言えないと思います。

CRPの測定は
低脂肪食群:0.78mg/L
低GI食群:0.76 mg/L
糖質制限食群:0.87mg/L

米国の会社のCRPの基準値をネットで調べたら
CRP : < 3 mg/L
とか
CRP : < 1 mg/L
でした。

ということは、CRPの変化も基準値内の僅かな変動に過ぎません。

結局、「コルチゾール排出量とCRPが増加」といっても、いずれも基準値内のわずかな変化に過ぎないので、そもそも問題にすること自体が不思議です。

なおスーパー糖質制限食を実践している人は、私自身や直接診察している患者さんだけでも軽く100人は超えています。

勿論全員、CRPは正常ですし、肥満もいません。


☆☆☆
本日の
JAMA「Effects of Dietary Composition on Energy Expenditure During Weight-Loss Maintenance」の解釈に関しては
私の尊敬する友人
京都府立医科大学大学 総合医療・医学教育学教室
京都府立医科大学大学大学院 総合医療・医学教育学教室
助教 森 浩子 先生に、助けていただきました。
謝謝。m(_ _)mVV 


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
お忙しいところ、森先生含めて、お手間をおかけしましてありがとうございました。
大西氏の「結局はバランスの良い食事と運動がベストとなります」という決めつけた言い方に納得がいかずおたずねしてしまいました。
「心血管疾患の合併や慢性の炎症を増加するリスクがありました。」という、これも決めつけの言い方をしていますが、原典も「可能性がある」と言っているうえに、基準値内の変動を捉えて言い切るとは「?」という印象をぬぐえません。記事の守備範囲が広いようですので、原典の精査に限界があるのでしょうか。いずれにしろその分を差し引いて読む必要がありそうですね。個人的にはもう読むことはないと思いますが。
逆に「糖尿病治療のための! 糖質制限食パーフェクトガイド」をしっかり読みたくなりました。
ありがとうございました。
2014/04/30(Wed) 20:49 | URL | abi_bu | 【編集
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