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インスリン作用が働いている時の生理的ケトン体上昇は安全
こんばんは。

ケトン体が現在の基準値より高値でも、インスリン作用が保たれていれば、生理的な現象であり、安全なものです。

例えば、断食中とかスーパー糖質制限食やケトン食実践中のケトン値が基準値より高値なのは、この生理的なものです。

日常的に糖質を摂取している場合の血中総ケトン体の現行基準値は、施設により差はありますが、『26~122μM/L 』くらいです。

日常的に糖質を摂取している人でも、これくらいの血中ケトン体は常に存在していて、特に空腹時には、心筋や骨格筋など多くの体細胞の主たるエネルギー源となっているのです。

つまり、ケトン体は人体のごく普通のエネルギー源であり、当然安全性は高いのです。

絶食療法中やケトン食実践中には、血中ケトン体は、3000~4000μM/Lくらいに上昇し、現行基準値の30~40倍の高値になりますが、それ自体は、各細胞において全く安全なものです。

例えば、生後4日目の新生児312名において、

一般食、糖質制限食にかかわらず、βヒドロキシ酪酸値の平均値は240.4μmol/L
同様に生後1ヶ月の新生児40名において、βヒドロキシ酪酸値の平均値は400μmol/L

です。

βヒドロキシ酪酸はケトン体の一種で、基準値は76mol/L以下です。

さらに、胎児58検体のの胎盤のβヒドロキシ酪酸は平均1730mol/Lで、基準値の20倍以上です。

つまり、胎児、新生児においては、ケトン体はごく普通に生理的に現行の基準値より高値なのです。

胎児や新生児においては、こちらが本当の基準値と言えるでしょう。

このように、ケトン体は、危険どころか、胎児や新生児においては極めて重要なエネルギー源となっているのです。

胎児や新生児において重要なエネルギー源となっているケトン体が、大人には危険という論理は成り立ちません。

ケトン体は成人においても重要なエネルギー源であり、安全なものなのです。

どれくらい安全かを、もう一つのエネルギー源であるブドウ糖と比べてみると、わかりやすいですね。

血糖値が、ケトン体と同様に、基準値の30倍で3000mg/dlになったらなんて、想像もできませんね。

ブドウ糖は手っ取り早くて、便利なエネルギー源ではあるのです。

しかし空腹時血糖値は110mg/dl未満、食後血糖値180mg/dl未満といった極めて狭い範囲に管理しておかないと酸化ストレスリスクなどを生じる危険なエネルギー源なのです。


江部康二



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
インスリンの作用にご注意
インスリンが働いている時は、ケトン体は高値となりません。
2014/02/04(Tue) 21:24 | URL | KA | 【編集
糖新生とケトン代謝
初歩的なことかもしれないのですが、
教えていただきたいことがあります。

タンパク質を大量に摂って
アミノ酸からの糖新生が行われている時に、
同時にケトン代謝は起きるものなのでしょうか?

それともタンパク質をたくさん取り過ぎていたら、糖新生によってブドウ糖は十分に足りているので、ケトン代謝にはならないのでしょうか?

お返事いただけたら幸いです。
2014/02/04(Tue) 22:40 | URL | すい | 【編集
主食をやめると健康になる
今、先生の著書
主食をやめると健康になるを読み終えました。
そして、先生のブログを拝見したくなり
検索して、さっそくコメントを寄せたくなりました。

先生の本日の話題に即していないことです。
すみません。

夏井睦先生が先日、たけしのTVタックルに出演され、夏井先生の、「炭水化物が人類を滅ぼす」を読みたくて、購入。その時に関連図書として出てきた江部先生のこの本もあわせて購入して読みました。

私は53歳女性。身長、155.5cm現在体重は55kg前後で推移しています。毎年人間ドックにかかっております。血圧は低血圧傾向です。検査で唯一ひっかかってくるのが、悪玉コレステロール値です。食べ物で気を使っているつもりでも、これだけは年々すこしづつ増加し、50歳で閉経後は正常値を超しています。

体重は51歳春に62kgあり、食事の脂肪を減らす、DVDを見ながら毎日20分体を動かす、たまにエステに通うなどして、10kgの減量に成功しました。
しかし、1年以上体操をやめた所、現在は55kg。微妙に増え続ける体重が気になっております。

飲酒やたばこはもともといたしません。食事は、白飯が苦手でおかず食い。麺類や、味の付いたご飯もの(丼、カレー、寿司、炊き込みご飯など)は好みます。
悪玉コレステロール対策に魚の食事を増やそうと最近はこころがけていましたが、肉好きですので、肉を制限するのもつらいのです。

先生の本に触れ、白飯嫌いのおかず食いのままでいってみようと、ここ1週間ほど、ごはんを2食まったく食べず、野菜、肉、魚、大豆製品をおなかいっぱい食べる食事スタイルにしてみています。(2年程前から、朝食はあまりほしくなくて抜いております。)

すると、体重55.6→54.8→54.1と減少傾向が表れ、そのことだけでも嬉しくコメントさせていただきました。

しばらく続けていくことで、次の人間ドックでは、もしかしたら血液検査の悪玉コレストテール値の改善が見られるかもしれないとひそかに期待もしています。

脂肪を減らす、お肉を減らす食事は、我慢が多くとても苦痛ですが、糖質制限食では脂肪やお肉を食べる楽しみが損なわれません。もともと白飯嫌いの人間には続けやすいように思います。
主人も同年齢で、体のトラブルが出やすくなっていますので、家族の健康のため、しばらく実践してみようと思います。

またなんらかの結果がでてきましたら、ご報告でコメントさせていただきたく思います。
突然のコメント失礼いたします。
2014/02/05(Wed) 06:38 | URL | おから | 【編集
Re: インスリンの作用にご注意
KA さん

スーパー糖質制限食、絶食、ケトン食実践中は、インスリン作用は、働いています。
そして、ケトン体は現行の基準値(26~122)を大きく超えて、1000~4000とかになります。
これはインスリン作用があるときの生理的ケトン体高値です。

勿論新生児もインスリン作用は働いていて、βヒドロキシ酪酸は、現行基準値より高値ですね。
2014/02/05(Wed) 08:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
生体反応の基本
生体反応の基本なのですが、糖質摂取により、インスリンが分泌され、その作用でケトン体合成は抑制されます。ケトン食の時は、内因性インスリンは作用していないと考えるべきで、その結果としてケトン体合成が促進されます。誤解を生む表現をされていると思います。
2014/02/05(Wed) 12:05 | URL | KA | 【編集
Re: 糖新生とケトン代謝
すい さん

ステーキを食べている最中にも、体脂肪は分解されて、「脂肪酸-ケトン体」エネルギーシステムは
稼働しています。

糖質を普通に食べている人においても、空腹時や睡眠中は
「脂肪酸-ケトン体」エネルギーシステムが、心筋・骨格筋や体細胞の主たるエネルギー源です。
2014/02/05(Wed) 12:51 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 主食をやめると健康になる
おから さん

拙著のご購入、ありがとうございます。

身長、155.5cm現在体重は55kg前後

BMI:22.7で丁度いいですね。
LDLコレステロールですが、悪玉と言われていますが、それは濡れ衣です。
LDLコレステロールは肝臓から、コレステロールを末梢組織に運搬しています。
そこでコレステロールは細胞膜などの原料となります。
末梢組織で余ったコレステロールを、肝臓まで回収するのがHDLコレステロールです。

中性脂肪とHDLコレステロールが正常なら、LDLコレステロール値が少々高値でも
良いLDLなので、心配ないです。

中性脂肪が高値で、HDLコレステロールが低値の場合は、
小粒子LDLや酸化LDLといった、悪玉が多いので問題なのです。

扉ページの「コレステロール」の項もご参照ください。
2014/02/05(Wed) 13:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 生体反応の基本
KA さん

糖質摂取により、大量のインスリンが追加分泌されます。
蛋白質摂取でもインスリンが少量分泌されますが、血糖値に関してはグルカゴン分泌で相殺されます。
脂肪摂取ではインスリンの追加分泌は生じません。

一方、基礎分泌のインスリンは24時間ずっと出続けています。
基礎分泌インスリンが、ないとヒトは生きていけません。

ケトン食実践でも断食中でも、内因性の基礎分泌インスリンは必ず出ています。
内因性インスリン作用が働いている時のケトン体値が、現行の基準値よりもはるかに高値でも
それは生理的で安全なものです。→ケトン食実践や断食中など

インスリン作用が欠落した場合が、「糖尿病ケトアシドーシス」で極めて危険な病態です。
2014/02/05(Wed) 13:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
初めて書き込みさせて頂きます
当方過日の健康診断で「脂肪肝」とエコーで診断された40歳女性です。
(今迄血液検査のみで、今回初めて腹部エコーで診断されました(泣))
学生時代は運動(バスケット)に明け暮れておりましたので、
体重の変化がない事に慢心があったと思います。
(実際は筋肉が落ちて脂肪に代わっていたのですね…)

最初は「脂肪肝」をキーワードに調べ、高たんぱく、低脂質、低炭水化物の
食生活を実践していましたが、ちょうどそれらをスタートした頃に
某TV番組で夏井先生のコメントに大衝撃を受け、今先生のブログに辿りついております。

脂肪肝(肝臓)にいいと言われる食材が、糖質の面からみると不向きで、
そういった場合の摂り方について現在大変悩んでおります。
脂肪肝と糖尿病は無関係ではないと(素人なりに)思いますので、
以下の??について是非ご教授頂けたら幸いですm(__)m

?-1
脂肪肝ではNGである、高脂質のお肉やアルコールは、
糖質制限ではOKとなっています。
現在お肉はささみのみ、お酒は一切口にしていないのですが…?

?-2
肝臓におすすめの玉ねぎや人参、かぼちゃは糖質高めとなっています。
私は玉ねぎ氷(玉ねぎを蒸して水を加えミキサーで粉砕、製氷器で冷凍。
それを薄味の味噌汁や野菜スープなどに1つ加えています)を愛用しているのですが、
控えた方がいいのでしょうか…。

?-3
食事の後、肝臓の為には安静がいいといわれていますが、血糖の面からは
軽い運動(例えば私の場合はすぐ家事をする)などをした方がいいのでしょうか…?

?-4
糖質を意識する前は、朝>昼>晩というボリュームで脳の目覚まし的意味でも
朝に重きを置いていたのですが、過去の記事を拝見すると朝の糖質が
一番少なくなっていました。…という事は、糖質と比例して朝を一番優しい食事
にするという理解でよいのでしょうか?
(例えば今1週間に1~2回朝のみ少なめのお米を食べていたのですが、
どうせ食べるならお昼の方がよいのでしょうか?)

?-5
1と関連しますが、
健診の為にただ夕食のみ主食抜きで全体量を少なめにしたのが三週間前。
脂肪肝と診断され、主食は朝のみ、三食共に時々のささみ以外はお肉無し、
納豆や豆腐、魚、藻類、野菜(根菜含む)のみ、通勤は一区前で電車を降り徒歩、
勤務先ビル(6階)も階段、等々にしたのが約二週間前なのですが…
ここ数日、帰りの歩きや階段の疲労度が少し異常な気がしてきました。
心臓のバクバクがかなり早く、6階に着いた時には手を膝について少し休憩
しないと呼吸が荒いままです。
最初は肝臓の機能が弱っているからかなと思っていたのですが、
もしや脂肪肝=脂質NGという事で全くに等しくお肉を食べていないせいなのでしょうか?
ちなみに、要再検査とはならないのですが、ここ3~4年、ずっと腎機能で
クレアチニンが基準値よりもギリギリ低めです。
よって脂質不足と筋肉量不足なのかと自己分析したのですが…。
体育系の性で、疲労を感じた時こそ鍛えるべきとムチを打ちがちなのですが、
先生のブログを拝見して、もしや危険な状態かと思いお伺いしました。
階段がつらいのは思い返せば数年前からなのですが、勝手に加齢のせい
(プラス脂肪肝)だと思い込んでいました。
ですが昨日に至っては夕食を作る際にどうにも倦怠感というか疲れが襲い、
暫く横になってしまいました。
(暫くすればある程度元気になります)

もし脂質不足という事であれば、大体1日どの位の量が必要なのでしょうか?
もしくは脂肪肝なので現状のままでよいのでしょうか?

長々と申し訳ありません。
あらてつ様のブログでも一部重複した質問をさせて頂いており、
失礼がありましたら何卒お許し下さいませm(__)m

脂肪肝と診断されたり、時を同じくしてTVタッ○ルをたまたま目にしたりと、
偶然が重なった事に神様の思し召し的な使命感(?)を感じております。

ご多忙とは存じますがよろしくお願い致します。





2014/02/05(Wed) 14:14 | URL | ピーコ | 【編集
お返事ありがとうございます。

基礎分泌量が保たれていない場合というのは、1型糖尿病未治療例に限られるという理解でよろしいでしょうか。

厳しい糖質制限中に、体内インスリン濃度が、基礎分泌量をある程度上回っていると、ケトン体が合成されず、脳にとってはきわめて危険な状態と成るという理解でよろしいのでしょうか?
2014/02/05(Wed) 14:21 | URL | KA | 【編集
ケトン体問題の確認
お返事ありがとうございます。

基礎分泌のインスリンが欠乏している未治療1型糖尿病患者以外では、ケトン体上昇は安全

『インスリン作用が働いている』=基礎分泌のインスリンが保たれている
という意味なのですね。

厳格な糖質制限を行っている時に、基礎分泌のインスリンよりインスリン量が多い場合(糖尿病治療薬を飲んでいる場合の多くの場合)には、ケトン体利用に抑制がかかるので、脳にとっては危険な状態となる。

ということでよろしいでしょうか?
2014/02/05(Wed) 15:03 | URL | KA | 【編集
Re: ケトン体問題の確認
KA さん

スーパー糖質制限食でも、野菜分の12%の糖質が入りますので、基礎分泌の約2倍くらいの
インスリン追加分泌があります。
スーパー糖質制限食実践中の私の場合で総ケトン体が、400~1200μMくらいです。
スーパー糖質制限食なら、内服薬は要らないことが多いです。
併用するとしたら、αGI剤、DPP-4阻害剤、メトグルコなど、低血糖になりにくい薬剤です。

スーパー糖質制限食中に、SU剤などを飲むと、低血糖の恐れがあります。

脳はブドウ糖とケトン体を利用します。

私が本断食中の血糖値は35mgでしたので、この時私の脳はケトン体をエネルギー源としていたと
考えられます。
2014/02/05(Wed) 15:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
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