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糖質制限食と肥満改善
こんばんは。

2014年1月6日(月)夜、7時54分から約2時間
テレビ東京の「主治医が見つかる診療所」という番組があり、
『糖質制限・カロリー制限 徹底比較SP』に出演(録画)します。
出番は、前半の糖質制限食のパートです。

「カロリー制限」 VS 「糖質制限」

ということで、それぞれ、医師が解説して映像が流れます。

テレビ局なりにわかりやすくアレンジしていますが、私の出番はせいぜい数分間と思いますので、 言いたいことが短縮されてつぎはぎになっている可能性もあります。

以下復習を兼ねて、糖質制限食で何故肥満が改善するのかを考えて見ます。


◆<摂取エネルギーと消費エネルギー>

摂取エネルギーと消費エネルギー、
基礎代謝量、身体活動量、食事誘発熱産生

1)摂取エネルギー > 消費エネルギー   →  体重増加
 摂取エネルギー = 消費エネルギー   →  体重不変
 摂取エネルギー < 消費エネルギー   →  体重減少

2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
 「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発熱産生(DIT)」

3)糖質制限食なら、高糖質食の時には無い
 「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」 → 基礎代謝の増加
 「高蛋白食摂取」 → 食事誘発熱産生(DIT)の増加 」
 が認められる。

1)は生理学的事実です。

2)3)を比較すると、少なくとも同一カロリーなら糖質制限食の方が高糖質食に比し、体重が減少しやすいことは明白です。


しかし、いくらスーパー糖質制限食実践でも、3000kcal/日を摂取して、消費したカロリーが2500kcal/日なら、差し引き500kcal分は余るので、その分は体脂肪として蓄積され、太ります。すなわち、大食漢の場合は、スーパー糖質制限食でもやせません。

スーパー糖質制限食実践のメリットとしては、基礎代謝が増加し、DIT(☆)が亢進します。

そして食事中にも脂肪は燃えていて、肥満ホルモン(インスリン)の分泌はごく少量ですみます。

従って、糖質を摂取したときに比べると、とても体重が減少しやすいのです。


スーパー糖質制限食の場合は、糖尿病学会推奨のように

男性:1400~1800kcal/日
女性:1200~1600kcal/日

といった、厳しいカロリー制限は必要ありません。


一方、国立健康・栄養研究所の「日本人の食事摂取基準」(2010年)への解説 
推定エネルギー必要量は18才以上の成人で、年齢により差がありますが、

身体活動レベルが低い人は
 男性:1850~2250キロカロリー/日  
 女性:1450~1700キロカロリー/日

身体活動レベルが普通なら
 男性:2200~2650キロカロリー/日  
 女性:1700~1950キロカロリー/日

身体活動レベルが高い場合
 男性:2500~3050キロカロリー/日
 女性:2000~2300キロカロリー/日

です。

スーパー糖質制限食実践と「日本人の食事摂取基準」の標準的な摂取エネルギーなら、適正体重になると思います。


なおスーパー糖質制限食による体重減少効果ですが、4つの利点があります。

◆<スーパー糖質制限食による体重減少効果>

①インスリン(肥満ホルモン)が基礎分泌以外ほとんど出ない。
②食事中も含めて常に体脂肪が燃えている。
③食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ、それにかなりのエネルギーを消費する。
④高タンパク食により特異動的作用(DIT)が亢進する。

高蛋白食は、摂食時の特異動的作用(DIT)が通常食に比べて増加します。

DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、糖質では6%、脂質では4%、タンパク質で30%です。

特異動的作用(DIT)を、もっと簡単に説明すると、食事において

100キロカロリーの糖質だけを摂取した時は、6キロカロリー
100キロカロリーの脂質だけを摂取した時は、4キロカロリー
100キロカロリーのタンパク質だけを摂取した時は、30キロカロリー

が熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされるということです。


◆<糖質を摂取した場合>

A)血糖値が上昇してインスリン(肥満ホルモン)(☆☆)がたっぷり分泌される。
B)体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C)肝臓の糖新生はストップする。
D)高タンパク食よる特異動的作用(DIT)の亢進はなくなる。


①②③④とA)B)C)D)
両者を比べてみれば、高糖質食より糖質制限食の方が、体重減少効果が高いことが一目でわかると思います。

たとえ低脂質食でカロリー制限していても、糖質を摂れば体重減少への利点がすべて消えてしまうわけです。

これは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質であり、あくまで糖質を摂るかどうかがカギとなります。



江部康二



(☆)食事誘発性熱産生(DIT)

厚生労働省のe-ヘルスネットから転載
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html
食事誘発性熱産生(しょくじゆうはつせいねつさんせい)
Diet Induced Thermogenesis DIT
特異動的作用 Specific Dynamic Action SDA

食事をした後、安静にしていても代謝量が増大すること。

食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます。このため、食事をした後は安静にしていても代謝量が増えます。この代謝の増加を食事誘発性熱産生または特異動的作用といいます。

食事誘発性熱産生でどれくらいエネルギーを消費するかは栄養素の種類によって異なります。たんぱく質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%で、通常の食事はこれらの混合なので約10%程度になります。食事をした後、身体が暖かくなるのはこの食事誘発性熱産生によるものです。

加齢や運動不足で筋肉が衰えると、基礎代謝が低下するだけでなく食事誘発性熱産生も低下します。逆にトレーニングで筋肉を増やすと食事誘発性熱産生は高くなるとされています。



(☆☆)インスリンは三重の肥満ホルモン
◇インスリンは脂肪細胞内の中性脂肪分解を抑制する。
◇インスリンは血中の中性脂肪を分解し脂肪細胞内に蓄える。
◇インスリンは筋肉細胞に血糖を取り込ませるが、
 余剰の血糖は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄える。
◇インスリンを大量に分泌させるのは、糖質のみ。
以上は生理学的事実です。

◇肥満のメカニズムはインスリンによる脂肪蓄積。 → 仮説
◇ハーバード大学医学部元教授、ジョージ・ケーヒル
「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」 → 名言
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
主治医が見つかる診療所の放送
江部先生こんばんわ。

今夜の放映見ました。先生の熱演もありおおむね正確に糖質制限の利点は伝えられたように思いました。
ただ、糖質制限肯定側の姫野先生が、「赤血球はブドウ糖しか利用できないので、最低100g/日の糖質は必要である。厚生省も認めている。」とコメントされました。
しかし、ス-パ-糖質制限食やそれ以下の糖質摂取量でも全く問題はありません。私も3年間、30~50g/日の糖質量ですが全く問題はありません。
姫野先生の誤解を修正するコメントを、本ブログで出していただければ幸いです。

名古屋・h
2014/01/06(Mon) 23:33 | URL | 名古屋・h | 【編集
放送見ました。
外出時の糖質制限がいまひとつ不安だったので、江部先生の食事方法がとても参考になりました。
スーパー糖質制限を始めて2か月になりますが、体重は5キロ減少、血糖値も血液検査のその他の数値も改善に向かっているのですが、摂取カロリーが足りていません。今日の放送で、どのくらい食べればいいのか(食べていいのか)が視覚的にわかってよかったです。
2014/01/07(Tue) 00:28 | URL | 月夜野うさぎ | 【編集
Re: 主治医が見つかる診療所の放送
名古屋・h さん。

テレビ東京の「主治医が見つかる診療所」
糖質制限食の説明は、細部に少し言いたいことはあるのですが、ほぼOKでした。

姫野先生の100g/日、糖質摂取が必要発言は、誤解ですね。
人類は飢餓との戦いで、700万年を過ごしてきました。

水だけで、数日から数週間過ごすこともよくあったと思います。
赤血球に必要なブドウ糖を、外部の食料に頼っていたのでは、飢餓のときには赤血球は死んでしまいます。
赤血球へのブドウ糖供給は、肝臓の糖新生が担っていたのであり、外部の食料には依存していませんね。

この件は記事にしようと思います。
2014/01/07(Tue) 08:27 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 放送見ました。
月夜野うさぎ さん

脂質・蛋白質はしっかり摂取しても、よほどの大食漢でない限り、
ほとんどの人においては、
厚生労働省のいう、標準必要摂取エネルギー内におさまります。
満足・満腹まで食べて大丈夫です。

あと普通のソースは砂糖が多いので止めた方がいいですが、醤油は少量なら大丈夫です。
2014/01/07(Tue) 08:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
放送を見られなかった方へ。
2014/01/07(Tue) 08:53 | URL | 北九州 三島 | 【編集
Re: 主治医が見つかる診療所の放送
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4h.pdf

 厚生労働省が制定した日本人の食事摂取基準(2010)の炭水化物の記載にはこうあります

P109
 …ぶどう糖の必要量は少なくとも100g/日と推定され、すなわち、消化性炭水化物の最低必要量はおよそ100g/日と推定される。しかし、これは真に必要な最低量を意味するものではない。
 肝臓は必要に応じて、筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生を行い、血中にぶどう糖を供給するからである。

  ◇

 つまり、肝臓は蛋白質や脂肪を原料として、ブドウ糖を合成(糖新生)できるからです。肝硬変のように、肝機能が廃絶していれば、糖新生は不能となり、ブドウ糖摂取が必要となります。

放送内容はここをご覧ください
http://www.tv-tokyo.co.jp/shujii/backnumber/140106/index.html
2014/01/07(Tue) 09:05 | URL | 精神科医師A | 【編集
おつかれさまでした
拝見しました。
皆さん、薄氷を踏むように慎重ですね。
体脂肪率8%の整形外科医・・。
今、名前が出てきませんが、とても今の私には真似できないですね。
もう少しだけ緩くしております。
普通の人で、非糖尿人ならば3食ご飯・炭水化物抜きから始めて、その効果が見え出したならスーパー、スタンダードに切り替えれば、それだけでも血管の負担は減るのでは?
もっとも、野菜はたっぷり食べますけど・・・。
何はともあれ、おつかれさまでした。
2014/01/07(Tue) 09:41 | URL | クワトロ | 【編集
糖新生
女医さんのコメントにはガッカリしました。
遭難時に身動きがとれず、沢の水だけで1週間から10日間飢えをしのぎ、その後発見され生還する人もいます。
赤血球が食餌由来の糖質しか利用できないと言われるならば、どう説明(理論的に)されるのでしょうか。
あと、食材に含まれる糖質量を角砂糖換算して視覚的に表現していただくと糖質制限初心者でも判りやすいと思います。


2014/01/07(Tue) 09:41 | URL | tama | 【編集
テレビ、拝見しました。
先日はお返事、ありがとうございました!

昨夜、始めて動く&話す江部先生を拝見いたしました。
ところどころ関西弁?京都弁?で話す江部先生、ダンディーな声でとてもわかりやすかったですし、自分の糖質制限が間違っていないと再確認できた番組でした。

さて、番組の内容について疑問が。。。
糖質量が多い食品から順番に紹介していくコーナーがありましたが、最初にスパゲティが出てきました。
江部先生の著書は精白米が一番高くなっています。
また、うどんと蕎麦では蕎麦の方が高いことになっていました。
ゲストの方が「蕎麦のが高いんだー」って言ってましたし。

これは姫野先生の測定結果でしょうか?
私たちセイゲニスト以外がこの順位を鵜呑みにすれば、スパゲティは絶対やめて、ごはんは食べようって思う方もいるはずです。

食べていけない物に変わりはないですが、せっかくの番組なのできちんとした情報を流していただきたいと思いました。
2014/01/07(Tue) 11:59 | URL | かなかなぶん | 【編集
糖質制限食の効率よい取り方
放送拝見いたしました。  最近、糖質制限食を ゆるやかに始めましたが、下記A/Bのどちらが効率の良い取り入れ方なのか教えてください。
A.一食を完全糖質制限食にする(プチ)。
B.三食の食事を まったく糖質ゼロではないが、制限する。
(すでにどこかに記載がありましたら すみません。 みつけられませんでした)  
2014/01/07(Tue) 12:06 | URL | エフ | 【編集
観ました
江部先生
今年もよろしくお願いします

家族みんなで観ました
糖質制限をしている私を
家族にも更に理解してもらえる良い機会でした

しかし中村Drは厳格過ぎて
家族から非難を浴びていました

実際は
間違ってはいないのですが…

最近
自分に甘い自分がします
この機会にまた引き締めて
糖質制限します

DM発覚して5年目ですが
発覚時より先生に出会えたお陰で
未だに 予防の為に頓服でセイブルを飲む程度で済んでます

これからも
よろしくお願いします
2014/01/07(Tue) 13:07 | URL | kokoro | 【編集
Re: テレビ、拝見しました。
かなかなぶん さん

あの番組のスパゲッティは、乾燥したままものでしたので、100g中に69.5gの糖質でした。
他のうどんや蕎麦は茹でたものでしたので、比較するのは変で、何かの勘違いと思います。

拙著
「食品別糖質量ハンドブック」洋泉社
が一番わかりやすいと思います。

2014/01/07(Tue) 16:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 放送を見られなかった方へ。
北九州 三島 さん

ありがとうございます。
2014/01/07(Tue) 16:01 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: Re: 主治医が見つかる診療所の放送
精神科医師A さん

ありがとうございます。
記事にしたいと思います。
2014/01/07(Tue) 16:01 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: おつかれさまでした
クワトロ さん

整形外科の中村巧先生です。
彼は、一流スポーツアスリートなので、一般人とは違います。

皆さん、それぞれの嗜好や個性や病状に応じて、糖質制限食を適宜アレンジしていいと思います。
2014/01/07(Tue) 16:04 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖新生
tama さん

同感です。

姫野先生、全体には良かったのですが、糖質100g/日必要というのは、誤解ですね。
2014/01/07(Tue) 16:06 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖質制限食の効率よい取り方
エフ さん

糖尿人でなければ
AでもBでも、三食普通に糖質を摂取するよりは、ましです。
個人の好みで、続けやすいほうでいいと思います。

糖尿人なら、何と言ってもスーパーです。
2014/01/07(Tue) 16:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 観ました
kokoro さん

開けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

中村巧先生は、トレーニングもビシバシの運動選手ですので、別格に考えておいたほうがいいですね。

血糖コントロール良好、良かったです。
これからも美味しく楽しく糖質制限食、お続け下さいね。
2014/01/07(Tue) 16:12 | URL | ドクター江部 | 【編集
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