2013年01月30日 (水)
こんにちは。
リーベさんから、糖質制限食の研究論文についてコメント・質問をいただきました。
【13/01/30 りーべ
求められる研究の実験設定
こんにちは。
いつも拝見しております。
こうしたコメントに関して反論をするためには、糖質制限食(炭水化物12%)を実施している人々を被験者とした大規模研究が欲しいところですが、 もし、そうした研究を行うとした場合には、どうした実験設定が考えられるか、ご意見を伺いたいのですが。
たとえば、2型糖尿病の人を被験者として、 毎日の糖質摂取量(+摂取熱量)を記録してもらい 定期的な検査指標(HA1cなど)の経過を記録 それによって糖質制限食の有効性を評価することが出来るのではないかと考えるのですが、その場合で足りない部分や注意点などとしてどういったものが考えられるでしょう。
思考実験に近いのですが、 公平に評価できるだろう、という実験系をお教え頂けないでしょうか。
よろしくお願いします。】
リーベさん。
現在の医学界では、EBMが重視されます。
evidence based medhicine(根拠に基づいた医学)→略してEBM
EBMにおいて最も信頼度が高いとされているのが、RCT研究(無作為割り付け臨床試験)論文です。
朝日新聞に載ったコホート研究よりは信頼度は高いです。
EBMの視点からは、糖質制限食が、中性脂肪・HDLコレステロール・肥満改善効果があるとする信頼度の高いRCT研究論文が、少なくとも3つあります。
ちなみに、この件に関して、カロリー制限食に有利な信頼度の高いRCT研究論文は皆無です。
1)ニューイングランドジャーナル(DIRECTという論文)
•イスラエルの322人(男性86%)
•(1)低脂肪食(カロリー制限あり)
•(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)
•(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
•3グループの食事法を2年間比較検討
糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。2年間の研究。
低脂肪・カロリー制限食に比し、糖質制限食が中性脂肪も低下させた。
LDLコレステロールは3者で優位差が出なかった。
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241
2)米国医師会雑誌、JAMA(AtoZ studyという論文)
•アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。
•311人の女性を上記4グループに分けて追跡。
これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなもの。
•アトキンスは低炭水化物食、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させ、中性脂肪を改善させた。1年間の研究。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
3)「低炭水化物食」と「低脂質・低カロリー食」を比較したRCT論文のメタアナリシス
•体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTを解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
ニューイングランド・ジャーナルとJAMAは、インパクト・ファクターが最も高い医学雑誌です。
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)のインパクトファクターも高いです。
すなわち、信頼度が大変高い医学雑誌に掲載されたRCT研究論文において、糖質制限食が、低脂肪・カロリー制限食などに比べて優位差を持って、中性脂肪・HDLコレステロール・肥満改善効果があることが証明されました。
江部康二
リーベさんから、糖質制限食の研究論文についてコメント・質問をいただきました。
【13/01/30 りーべ
求められる研究の実験設定
こんにちは。
いつも拝見しております。
こうしたコメントに関して反論をするためには、糖質制限食(炭水化物12%)を実施している人々を被験者とした大規模研究が欲しいところですが、 もし、そうした研究を行うとした場合には、どうした実験設定が考えられるか、ご意見を伺いたいのですが。
たとえば、2型糖尿病の人を被験者として、 毎日の糖質摂取量(+摂取熱量)を記録してもらい 定期的な検査指標(HA1cなど)の経過を記録 それによって糖質制限食の有効性を評価することが出来るのではないかと考えるのですが、その場合で足りない部分や注意点などとしてどういったものが考えられるでしょう。
思考実験に近いのですが、 公平に評価できるだろう、という実験系をお教え頂けないでしょうか。
よろしくお願いします。】
リーベさん。
現在の医学界では、EBMが重視されます。
evidence based medhicine(根拠に基づいた医学)→略してEBM
EBMにおいて最も信頼度が高いとされているのが、RCT研究(無作為割り付け臨床試験)論文です。
朝日新聞に載ったコホート研究よりは信頼度は高いです。
EBMの視点からは、糖質制限食が、中性脂肪・HDLコレステロール・肥満改善効果があるとする信頼度の高いRCT研究論文が、少なくとも3つあります。
ちなみに、この件に関して、カロリー制限食に有利な信頼度の高いRCT研究論文は皆無です。
1)ニューイングランドジャーナル(DIRECTという論文)
•イスラエルの322人(男性86%)
•(1)低脂肪食(カロリー制限あり)
•(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)
•(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
•3グループの食事法を2年間比較検討
糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。2年間の研究。
低脂肪・カロリー制限食に比し、糖質制限食が中性脂肪も低下させた。
LDLコレステロールは3者で優位差が出なかった。
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241
2)米国医師会雑誌、JAMA(AtoZ studyという論文)
•アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。
•311人の女性を上記4グループに分けて追跡。
これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなもの。
•アトキンスは低炭水化物食、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させ、中性脂肪を改善させた。1年間の研究。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
3)「低炭水化物食」と「低脂質・低カロリー食」を比較したRCT論文のメタアナリシス
•体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTを解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
ニューイングランド・ジャーナルとJAMAは、インパクト・ファクターが最も高い医学雑誌です。
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)のインパクトファクターも高いです。
すなわち、信頼度が大変高い医学雑誌に掲載されたRCT研究論文において、糖質制限食が、低脂肪・カロリー制限食などに比べて優位差を持って、中性脂肪・HDLコレステロール・肥満改善効果があることが証明されました。
江部康二
ご紹介ありがとうございました。
さっそく調べて、内容を拝見したいとおもいます。
さっそく調べて、内容を拝見したいとおもいます。
2013/01/30(Wed) 17:09 | URL | りーべ | 【編集】
昨日は、お返事いただきありがとうございました。
私は糖質制限をすると身体もだるさが無くなるので、これからも続けたいと思います。
そこでもう一つだけ疑問なのですが、私はマクロビオティックをやっていたことがあり、その時は肉の恐ろしさ(キレやすくなる・暴力的になる)を教えられました。
あと疑問で、先生はイヌイットは狩猟民族で肉を食べていて、虫歯や病気が少ないと説明されてますが、私はずっと穀物や糖質を摂取している家系から生まれているので、大昔の狩猟民族とは直接関係ないような気がして、肉を食べる事に抵抗があります。
将来なる病気はわかりませんが気になってしまいました。
大豆だけではレパートリーが少なく、スッキリした気持ちで糖質制限に打ち込みたいので、回答お願い致します。
私は糖質制限をすると身体もだるさが無くなるので、これからも続けたいと思います。
そこでもう一つだけ疑問なのですが、私はマクロビオティックをやっていたことがあり、その時は肉の恐ろしさ(キレやすくなる・暴力的になる)を教えられました。
あと疑問で、先生はイヌイットは狩猟民族で肉を食べていて、虫歯や病気が少ないと説明されてますが、私はずっと穀物や糖質を摂取している家系から生まれているので、大昔の狩猟民族とは直接関係ないような気がして、肉を食べる事に抵抗があります。
将来なる病気はわかりませんが気になってしまいました。
大豆だけではレパートリーが少なく、スッキリした気持ちで糖質制限に打ち込みたいので、回答お願い致します。
2013/01/30(Wed) 23:26 | URL | さとこ | 【編集】
さとこ さん
日本人は
旧石器時代:9万年前から狩猟・・・マンモス、ナウマンゾウ、エゾシカ・・・
縄文時代:1.6万年前から・・・狩猟・採集・漁労
弥生時代:3000年前から・・・稲作・農耕開始
87000年の狩猟・採集時代を経て、3000年間の農耕です。
私は34歳から、玄米魚菜食を十数年続けて、メタボ・糖尿病となりました。
52才からは、肉・魚・・・スーパー糖質制限食で健康です。
精神状態もとても良好です。
日本人は
旧石器時代:9万年前から狩猟・・・マンモス、ナウマンゾウ、エゾシカ・・・
縄文時代:1.6万年前から・・・狩猟・採集・漁労
弥生時代:3000年前から・・・稲作・農耕開始
87000年の狩猟・採集時代を経て、3000年間の農耕です。
私は34歳から、玄米魚菜食を十数年続けて、メタボ・糖尿病となりました。
52才からは、肉・魚・・・スーパー糖質制限食で健康です。
精神状態もとても良好です。
2013/01/31(Thu) 14:03 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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