2012年03月19日 (月)
こんばんは。
糖尿人とアルコール、アルコールと肝臓・膵臓、アルコールとガンについて、復習を兼ねて考えてみましょう。
アルコールそのものは、血糖値を全く上昇させませんので、適量の飲酒は糖尿病には影響ないと思います。
しかしWHO(世界保健機関)によれば、アルコールは、口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房においてガンのリスクとなるそうですので、何と言っても適量ということが大切ですね。
日本の従来の糖尿病治療では、飲酒は原則禁止ですが、一定の条件下で許可されることもあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック・改定第4版(2009年)、81ページによれば、その条件は、以下の5項目をクリアしていることです。
1、良好な血糖コントロールが長期にわたって得られている
2、糖尿病の合併症がないか、あっても軽度である
3、脂質代謝異常(特に高中性脂肪血症)がない
4、肝・膵疾患がない
5、決められた上限量を守る患者である
4の肝臓や膵臓の疾患がないことが、条件となっているわけですからアルコールが、肝臓と膵臓に一定の負担をかけることは間違いありませんね。
アルコール性肝障害は大変有名で、皆さんよくご存知と思います。
それから急性膵炎による入院の80%以上を、胆道疾患とアルコール多飲が占めています。
これはアルコール多飲であって、適量なら急性膵炎など起こしません。
また個人差があると思いますが、適量のアルコールなら肝障害にもなりません。
で、5はなかなか耳が痛いですね。(=_=;)
私の場合、1~4は完璧にクリアですので、5だけがハードルが高いです。 (*- -)(*_ _)
それでは、アルコールの適量とはどのくらいなのでしょう?
欧米では、「適量」を守れば糖尿人でも、飲酒OKとしています。
例えば、米国糖尿病協会では、アルコール24g/日を食事と共にとるていどなら適量としています。
30mlの液体のアルコールが、重さとしては24gです。
アルコール24g(30ml)というのは、おおよそ
糖質ゼロ発泡酒350ml缶を2本
辛口ワイン150ml×2杯
ウイスキー30ml(シングル)×3杯
25%の焼酎なら、120mlです。
アルコールそのものは、1gが約7キロカロリーの燃焼エネルギーをもっていますが、摂取時の利用効率は約70%です。
エネルギー源としては、<アルコール→糖質→脂質→タンパク質>の順で利用されます。
またアルコールは、糖質や脂質と違って摂取しても体重増加作用がありませんし、血糖値も上昇させませんし、ビタミンやミネラルにも乏しいので、empty calory と言われています。
なお、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
また、空腹時に飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、充分な注意が必要です。
江部康二
糖尿人とアルコール、アルコールと肝臓・膵臓、アルコールとガンについて、復習を兼ねて考えてみましょう。
アルコールそのものは、血糖値を全く上昇させませんので、適量の飲酒は糖尿病には影響ないと思います。
しかしWHO(世界保健機関)によれば、アルコールは、口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房においてガンのリスクとなるそうですので、何と言っても適量ということが大切ですね。
日本の従来の糖尿病治療では、飲酒は原則禁止ですが、一定の条件下で許可されることもあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック・改定第4版(2009年)、81ページによれば、その条件は、以下の5項目をクリアしていることです。
1、良好な血糖コントロールが長期にわたって得られている
2、糖尿病の合併症がないか、あっても軽度である
3、脂質代謝異常(特に高中性脂肪血症)がない
4、肝・膵疾患がない
5、決められた上限量を守る患者である
4の肝臓や膵臓の疾患がないことが、条件となっているわけですからアルコールが、肝臓と膵臓に一定の負担をかけることは間違いありませんね。
アルコール性肝障害は大変有名で、皆さんよくご存知と思います。
それから急性膵炎による入院の80%以上を、胆道疾患とアルコール多飲が占めています。
これはアルコール多飲であって、適量なら急性膵炎など起こしません。
また個人差があると思いますが、適量のアルコールなら肝障害にもなりません。
で、5はなかなか耳が痛いですね。(=_=;)
私の場合、1~4は完璧にクリアですので、5だけがハードルが高いです。 (*- -)(*_ _)
それでは、アルコールの適量とはどのくらいなのでしょう?
欧米では、「適量」を守れば糖尿人でも、飲酒OKとしています。
例えば、米国糖尿病協会では、アルコール24g/日を食事と共にとるていどなら適量としています。
30mlの液体のアルコールが、重さとしては24gです。
アルコール24g(30ml)というのは、おおよそ
糖質ゼロ発泡酒350ml缶を2本
辛口ワイン150ml×2杯
ウイスキー30ml(シングル)×3杯
25%の焼酎なら、120mlです。
アルコールそのものは、1gが約7キロカロリーの燃焼エネルギーをもっていますが、摂取時の利用効率は約70%です。
エネルギー源としては、<アルコール→糖質→脂質→タンパク質>の順で利用されます。
またアルコールは、糖質や脂質と違って摂取しても体重増加作用がありませんし、血糖値も上昇させませんし、ビタミンやミネラルにも乏しいので、empty calory と言われています。
なお、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
また、空腹時に飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、充分な注意が必要です。
江部康二
江部先生
ご無沙汰しております。
もうご存知かもしれませんが、白いご飯の食べ過ぎが糖尿病発症を増やすという論文がでましたね。これを機にますます糖質制限が広がることを期待します。
詳しくは下記をご高閲いただければ幸甚です。
http://news.ameba.jp/20120318-905/
http://www.bmj.com/content/344/bmj.e1454
内科大学院生
ご無沙汰しております。
もうご存知かもしれませんが、白いご飯の食べ過ぎが糖尿病発症を増やすという論文がでましたね。これを機にますます糖質制限が広がることを期待します。
詳しくは下記をご高閲いただければ幸甚です。
http://news.ameba.jp/20120318-905/
http://www.bmj.com/content/344/bmj.e1454
内科大学院生
2012/03/19(Mon) 20:50 | URL | 内科大学院生 | 【編集】
今までのコメントは膨大な量ですから、今回のような復習があると勉強になります。飲酒量は考えさせられます。あ、許容範囲内です。
2012/03/20(Tue) 11:15 | URL | たこやき頭:高雄病院の患者 | 【編集】
たこやき頭:高雄病院の患者 さん。
そうですね。
自分で自分のブログ内を検索するのも結構、一仕事です。
時々、「復習+α」の記事を書くこととします。
そうですね。
自分で自分のブログ内を検索するのも結構、一仕事です。
時々、「復習+α」の記事を書くこととします。
2012/03/20(Tue) 13:12 | URL | ドクター江部 | 【編集】
内科大学院生 さん。
お久しぶりです。
3月18日のブログ記事にさせて貰いました。
お久しぶりです。
3月18日のブログ記事にさせて貰いました。
2012/03/20(Tue) 15:01 | URL | ドクター江部 | 【編集】
アルコール摂取により糖新生がブロックされるのなら、アルコールを代謝している間は脂肪は燃えにくくなると言うことですよね。となると、アルコールはエンプティカロリーでも酒飲みはやせにくいと言うことになりませんか?
2012/03/20(Tue) 18:04 | URL | 精神科医B | 【編集】
精神科医B さん。
糖質制限食実践中は、ビーフステーキを食べている最中も脂肪が燃えています。
アルコール摂取中も脂肪は一定燃えていると思います。
すなわち糖質制限食のときは、空腹時も食事中も常に脂肪が燃えています。
それゆえに、血中ケトン体(脂肪酸由来のアセチルCoAから肝細胞で産生)が常に高値です。
脂質代謝とは、別にアミノ酸やグリセロールや乳酸から、肝臓や腎臓でブドウ糖を新生します。
この糖新生は、アルコール摂取で、一定邪魔されます。
大雑把には「アルコール→糖質→脂質→蛋白質」という順番でエネルギー源として使われます。
従いまして、アルコールをエネルギーとして利用している間は糖質・脂質は利用されにくいので
やせにくいという可能性はあります。
一方、焼酎で太る人はあまりいませんがビールは非常に太りやすいです。
俗にビール腹といいますが、焼酎腹とはいいませんね。
太る理由はやはり元凶は糖質と思います。
糖質制限食実践中は、ビーフステーキを食べている最中も脂肪が燃えています。
アルコール摂取中も脂肪は一定燃えていると思います。
すなわち糖質制限食のときは、空腹時も食事中も常に脂肪が燃えています。
それゆえに、血中ケトン体(脂肪酸由来のアセチルCoAから肝細胞で産生)が常に高値です。
脂質代謝とは、別にアミノ酸やグリセロールや乳酸から、肝臓や腎臓でブドウ糖を新生します。
この糖新生は、アルコール摂取で、一定邪魔されます。
大雑把には「アルコール→糖質→脂質→蛋白質」という順番でエネルギー源として使われます。
従いまして、アルコールをエネルギーとして利用している間は糖質・脂質は利用されにくいので
やせにくいという可能性はあります。
一方、焼酎で太る人はあまりいませんがビールは非常に太りやすいです。
俗にビール腹といいますが、焼酎腹とはいいませんね。
太る理由はやはり元凶は糖質と思います。
2012/03/20(Tue) 19:15 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、はじめまして。
先月、糖尿病と診断され、低糖質食関連の本を8冊ぐらい(もちろん先生の御著書が中心です)読み、さっそくはじめています。
さて、酒飲みの間では「アルコールを分解するには水と炭水化物が必要」ということが昔から言われており、飲んだ後の〆にラーメンやお茶漬けを食べたくなる理由とされている(甘いものでないところも興味深いです)のですが、糖質制限を行っていると炭水化物がなく、さらに肝臓もアルコール分解を優先して糖新生を行わないということになると、アルコールは分解できないのでしょうか?
実際わたしもかなり酒に弱くなった気がします。
代わりに二日酔いはなくなりました。
素人の考えで恐縮ですが、時間があるときにでもご意見いただけると幸いです。
先月、糖尿病と診断され、低糖質食関連の本を8冊ぐらい(もちろん先生の御著書が中心です)読み、さっそくはじめています。
さて、酒飲みの間では「アルコールを分解するには水と炭水化物が必要」ということが昔から言われており、飲んだ後の〆にラーメンやお茶漬けを食べたくなる理由とされている(甘いものでないところも興味深いです)のですが、糖質制限を行っていると炭水化物がなく、さらに肝臓もアルコール分解を優先して糖新生を行わないということになると、アルコールは分解できないのでしょうか?
実際わたしもかなり酒に弱くなった気がします。
代わりに二日酔いはなくなりました。
素人の考えで恐縮ですが、時間があるときにでもご意見いただけると幸いです。
2012/03/21(Wed) 12:12 | URL | 酒飲み患者 | 【編集】
酒飲み患者 さん。
拙著のご購入ありがとうございます。
アルコールの分解に炭水化物は関係しません。
アルコールは、まず肝臓で酵素により分解され酢酸になります。
酢酸は血液に乗って肝臓を離れ、筋肉や心臓に移動してさらに分解され、
最終的には炭酸ガスと水になります。
厚生労働省・e-ヘルスネット
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-002.html
アルコールの吸収と分解
をご参照ください。
拙著のご購入ありがとうございます。
アルコールの分解に炭水化物は関係しません。
アルコールは、まず肝臓で酵素により分解され酢酸になります。
酢酸は血液に乗って肝臓を離れ、筋肉や心臓に移動してさらに分解され、
最終的には炭酸ガスと水になります。
厚生労働省・e-ヘルスネット
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-002.html
アルコールの吸収と分解
をご参照ください。
2012/03/21(Wed) 13:49 | URL | ドクター江部 | 【編集】
さっそくの解説、ありがとうございました。
正直、いままでの酒飲み人生の常識が覆されて、え~!?とびっくりです。
低糖質食もそうですが、古い常識にとらわれていてはだめですね(*^。^*)
今後とも、ご活躍をお祈りしています。
正直、いままでの酒飲み人生の常識が覆されて、え~!?とびっくりです。
低糖質食もそうですが、古い常識にとらわれていてはだめですね(*^。^*)
今後とも、ご活躍をお祈りしています。
2012/03/27(Tue) 14:14 | URL | 酒飲み患者 | 【編集】
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