2012年02月29日 (水)
こんにちは。
2012年2月27日(月)から、三大栄養素(タンパク質・脂質・糖質)の消化・吸収・代謝と血糖の関係について記事にしてきました。
今日は脂質について考えてみます。
食物中の脂質(ほとんどが中性脂肪)は、
グリセロールと脂肪酸に分解されて
脂肪酸とモノグリセリドに分解されて
小腸柔毛に吸収され
そのなかで中性脂肪に再合成され集合します。
この集合体は、キロミクロンと呼ばれ、リンパ液に瞬時に入り、リンパ管に拡散します。
キロミクロン(中性脂肪が積み荷)は、胸管を上行し鎖骨下静脈内に移行します。
鎖骨下静脈に入ったキロミクロンのほとんどは、肝臓、あるいは脂肪組織・筋肉組織などの毛細血管を通る間に、
毛細血管壁にあるリポ蛋白リパーゼにより、その積み荷の中性脂肪は、脂肪酸とグリセロールに分解されます。その分、中性脂肪は血液中から取り除かれます。
脂肪酸は、筋肉細胞などでエネルギー源として利用されます。
脂肪細胞の脂肪酸は、血中に入り循環し筋肉細胞などで利用されます。
血中に残った脂肪酸は、肝臓と脂肪組織の中に拡散します。
そして、筋肉でエネルギー源として利用されずに肝臓や脂肪組織に取り込まれた脂肪酸は、再び中性脂肪に合成され脂肪細胞内に蓄えられます。
中性脂肪は、1つのグリセロール(グリセリン)に3分子の脂肪酸が結合して構成されています。
このように、食事で脂肪を摂取した場合、血中に入った中性脂肪は、脂肪組織・筋肉組織などの毛細血管のリポ蛋白リパーゼにより分解されて、脂肪酸とグリセロールになりますが、血糖には変わりません。
また、脂肪酸はケトン体と共に心臓が優先的に使用するエネルギー源であり、長時間の運動の際には骨格筋の重要なエネルギー源ともなります。
空腹時には、身体のエネルギー源の大半が脂質代謝から供給されています。
脂質をエネルギー源として利用するには、中性脂肪を異化し遊離脂肪酸やグリセロールにする必要があります。
遊離脂肪酸は、肝臓および筋肉など末梢組織において、β酸化により代謝されアセチルCoAとなり、細胞のエネルギー源となります。
グリセロールは、肝臓において中性脂肪合成または糖新生に利用されます。
結論です。
上述の如く、脂肪を摂取して、それが直接血糖に変わるということはあり得ません。
一方、脂肪の分解物のグリセロールは、糖新生に利用されます。
江部康二
2012年2月27日(月)から、三大栄養素(タンパク質・脂質・糖質)の消化・吸収・代謝と血糖の関係について記事にしてきました。
今日は脂質について考えてみます。
食物中の脂質(ほとんどが中性脂肪)は、
脂肪酸とモノグリセリドに分解されて
小腸柔毛に吸収され
そのなかで中性脂肪に再合成され集合します。
この集合体は、キロミクロンと呼ばれ、リンパ液に瞬時に入り、リンパ管に拡散します。
キロミクロン(中性脂肪が積み荷)は、胸管を上行し鎖骨下静脈内に移行します。
鎖骨下静脈に入ったキロミクロンのほとんどは、肝臓、あるいは脂肪組織・筋肉組織などの毛細血管を通る間に、
毛細血管壁にあるリポ蛋白リパーゼにより、その積み荷の中性脂肪は、脂肪酸とグリセロールに分解されます。その分、中性脂肪は血液中から取り除かれます。
脂肪酸は、筋肉細胞などでエネルギー源として利用されます。
脂肪細胞の脂肪酸は、血中に入り循環し筋肉細胞などで利用されます。
血中に残った脂肪酸は、肝臓と脂肪組織の中に拡散します。
そして、筋肉でエネルギー源として利用されずに肝臓や脂肪組織に取り込まれた脂肪酸は、再び中性脂肪に合成され脂肪細胞内に蓄えられます。
中性脂肪は、1つのグリセロール(グリセリン)に3分子の脂肪酸が結合して構成されています。
このように、食事で脂肪を摂取した場合、血中に入った中性脂肪は、脂肪組織・筋肉組織などの毛細血管のリポ蛋白リパーゼにより分解されて、脂肪酸とグリセロールになりますが、血糖には変わりません。
また、脂肪酸はケトン体と共に心臓が優先的に使用するエネルギー源であり、長時間の運動の際には骨格筋の重要なエネルギー源ともなります。
空腹時には、身体のエネルギー源の大半が脂質代謝から供給されています。
脂質をエネルギー源として利用するには、中性脂肪を異化し遊離脂肪酸やグリセロールにする必要があります。
遊離脂肪酸は、肝臓および筋肉など末梢組織において、β酸化により代謝されアセチルCoAとなり、細胞のエネルギー源となります。
グリセロールは、肝臓において中性脂肪合成または糖新生に利用されます。
結論です。
上述の如く、脂肪を摂取して、それが直接血糖に変わるということはあり得ません。
一方、脂肪の分解物のグリセロールは、糖新生に利用されます。
江部康二
リンパ管に脂肪は取りこまれることは知らない人が多いです。脂肪はリンパ流の主役でリンパ球を多く含みリンパ節でこされながらゆっくりと上行し鎖骨下で静脈にそそぎます。したがって昨夜食べた霜降りのステーキや北海道のバターは今頃極上の免疫になりリンパ管の中にいることでしょう。これで外敵から身を守ってるのですよ。
炭水化物を制限することが癌の治療や予防に役に立つか
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3267662/?tool=pubmed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3267662/?tool=pubmed
2012/03/03(Sat) 15:57 | URL | 精神科医師A | 【編集】
精神科医師A さん。
とても参考になる論文をコメントいただき、ありがとうございます。
現在、アイオワ大学とNIHの共同研究で
「非小細胞肺ガン・ステージⅣ」に対して「ケトン食+化学療法+放射線治療」
の臨床試験が2011年8月から開始されています。
興味深いですね。
とても参考になる論文をコメントいただき、ありがとうございます。
現在、アイオワ大学とNIHの共同研究で
「非小細胞肺ガン・ステージⅣ」に対して「ケトン食+化学療法+放射線治療」
の臨床試験が2011年8月から開始されています。
興味深いですね。
2012/03/04(Sun) 10:07 | URL | ドクター江部 | 【編集】
OGTTで山二つの機能性低血糖のある境界型です。
1年前から先生の本やブログを読み
糖質制限食を実践しています。
糖質制限食開始直後は遊離脂肪酸高値(1.00)
ケトン体(+)でした。
現在の血液検査で遊離脂肪酸が高値(1.15)で
ケトン体は(-)でした。
糖質制限をするとケトン体は増えてもOKだと読みましたが
遊離脂肪酸だけ高値なのは
どんな状態が考えられますでしょうか?
良くない状態でしょうか?
1年前の糖質制限食を実践前、HbA1cは4.9でした。
現在、糖質制限食を実践し
空腹時血糖80~90、食後110~130くらいで
HbA1cは5.0でした。
これは糖質制限食開始前は、
食後高血糖+機能性低血糖を繰り返していたので
平均値は正常値になってしまっていて
現在は安定してて数字的にはHbA1cが
実践前と変わらないということでしょうか。
質問ばかりで申し訳ありません。
よろしくお願い致します。
1年前から先生の本やブログを読み
糖質制限食を実践しています。
糖質制限食開始直後は遊離脂肪酸高値(1.00)
ケトン体(+)でした。
現在の血液検査で遊離脂肪酸が高値(1.15)で
ケトン体は(-)でした。
糖質制限をするとケトン体は増えてもOKだと読みましたが
遊離脂肪酸だけ高値なのは
どんな状態が考えられますでしょうか?
良くない状態でしょうか?
1年前の糖質制限食を実践前、HbA1cは4.9でした。
現在、糖質制限食を実践し
空腹時血糖80~90、食後110~130くらいで
HbA1cは5.0でした。
これは糖質制限食開始前は、
食後高血糖+機能性低血糖を繰り返していたので
平均値は正常値になってしまっていて
現在は安定してて数字的にはHbA1cが
実践前と変わらないということでしょうか。
質問ばかりで申し訳ありません。
よろしくお願い致します。
2012/04/24(Tue) 19:27 | URL | momo | 【編集】
momo さん。
糖質制限食当初は、尿中ケトン体陽性になりますが、3ヶ月くらいで尿中ケトン体陰性になることが多いです。
遊離脂肪酸は糖質制限食で正常上限からやや高値になりますが、とくに問題はないと思います。
「1年前の糖質制限食を実践前、HbA1cは4.9でした。
現在、糖質制限食を実践し
空腹時血糖80~90、食後110~130くらいで
HbA1cは5.0でした。
これは糖質制限食開始前は、
食後高血糖+機能性低血糖を繰り返していたので
平均値は正常値になってしまっていて
現在は安定してて数字的にはHbA1cが
実践前と変わらないということでしょうか。」
その通りだと思います。
糖質制限食当初は、尿中ケトン体陽性になりますが、3ヶ月くらいで尿中ケトン体陰性になることが多いです。
遊離脂肪酸は糖質制限食で正常上限からやや高値になりますが、とくに問題はないと思います。
「1年前の糖質制限食を実践前、HbA1cは4.9でした。
現在、糖質制限食を実践し
空腹時血糖80~90、食後110~130くらいで
HbA1cは5.0でした。
これは糖質制限食開始前は、
食後高血糖+機能性低血糖を繰り返していたので
平均値は正常値になってしまっていて
現在は安定してて数字的にはHbA1cが
実践前と変わらないということでしょうか。」
その通りだと思います。
2012/04/24(Tue) 21:07 | URL | ドクター江部 | 【編集】
| ホーム |