2012年02月06日 (月)
こんばんは。
peavywagner さんから、糖質摂取とインスリン分泌と耐糖能について、コメント・質問をいただきました。
【12/02/04 peavywagner
前から疑問に思ってたんですが、よく聞く説明に、
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。 それを繰り返していると、膵臓のβ細胞が疲弊して、インスリンが分泌能が低下していく」
がありますし、一般的な考え方として普及していると思います。
この考え方に何か根拠はあるのでしょうか?
例えばエビデンスとして認められているような。
逆に考えれば、
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。 それを繰り返していると、膵臓のβ細胞がそれに対応して、 インスリン分泌が増大するよう強化される」
という考え方も出来るような気もするんですが…よろしくお願いします。】
peavywagner さん。
興味深いコメント・質問をありがとうございます。
1)糖質を摂取したあと食後血糖値が上昇しないように、インスリンが食後に大量分泌される。
2)インスリン分泌能が保たれているうちは、食後血糖値は正常に保たれる。
3)上記パターン1)2)を20~40年繰り返しているうちに、β細胞が疲弊してインスリン分泌能が
やや衰えてくるとと食後高血糖を生じる。
食後2時間で140~199mgとなるとIGT(耐糖能障害)という境界型段階に達する。
4)IGT(耐糖能障害)という段階を数年~10年繰り返しているうちに、
早朝空腹時血糖値が110~125mgとなり
IFG(空腹時血糖障害)という境界型になります。
早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上になれば糖尿病型となります。
5)インスリン分泌能がさらに衰えて食後2時間血糖値が200mg/dl以上になれば
糖尿病型です。
日本人の糖尿病発症のパターンは、上記の1)2)3)4)5)の流れが主流とされています。
つまり糖尿病は、
「インスリン分泌不足+インスリン抵抗性」=インスリン作用不足
で発症しますが、日本人の場合はインスリン分泌不足が主体です。
これは、過去の臨床の豊富な症例で多施設で確認されている事実です。
日本人の2型糖尿病発症時の平均BMIは24くらいです。
従いまして
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。 それを繰り返していると、膵臓のβ細胞がそれに対応して、 インスリン分泌が増大するよう強化される」
というようなことは、少なくとも日本人では期待できないということです。
一方、欧米人の場合は、大量のインスリンを長期にわたって分泌し続け、巨大な肥満を呈するパターンが多いです。
インスリンは肥満ホルモンです。
上記1)2)を長年続けて、巨大肥満となりインスリン抵抗性が高まります。
すなわち、インスリンの効きが悪くなり糖尿病を発症します。
欧米人の場合、インスリン抵抗性が主の糖尿病がほとんどです。
2型糖尿病発症時の平均BMIは31くらいで、インスリン分泌能はまだ残っていることが多いのです。
この欧米人と日本人(アジア人)のインスリン分泌能の差は、現時点では遺伝的・先天的なものとされています。
つまりβ細胞が糖質摂取で鍛えられて、分泌能が高まったという風には考えられていません。
江部康二
peavywagner さんから、糖質摂取とインスリン分泌と耐糖能について、コメント・質問をいただきました。
【12/02/04 peavywagner
前から疑問に思ってたんですが、よく聞く説明に、
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。 それを繰り返していると、膵臓のβ細胞が疲弊して、インスリンが分泌能が低下していく」
がありますし、一般的な考え方として普及していると思います。
この考え方に何か根拠はあるのでしょうか?
例えばエビデンスとして認められているような。
逆に考えれば、
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。 それを繰り返していると、膵臓のβ細胞がそれに対応して、 インスリン分泌が増大するよう強化される」
という考え方も出来るような気もするんですが…よろしくお願いします。】
peavywagner さん。
興味深いコメント・質問をありがとうございます。
1)糖質を摂取したあと食後血糖値が上昇しないように、インスリンが食後に大量分泌される。
2)インスリン分泌能が保たれているうちは、食後血糖値は正常に保たれる。
3)上記パターン1)2)を20~40年繰り返しているうちに、β細胞が疲弊してインスリン分泌能が
やや衰えてくるとと食後高血糖を生じる。
食後2時間で140~199mgとなるとIGT(耐糖能障害)という境界型段階に達する。
4)IGT(耐糖能障害)という段階を数年~10年繰り返しているうちに、
早朝空腹時血糖値が110~125mgとなり
IFG(空腹時血糖障害)という境界型になります。
早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上になれば糖尿病型となります。
5)インスリン分泌能がさらに衰えて食後2時間血糖値が200mg/dl以上になれば
糖尿病型です。
日本人の糖尿病発症のパターンは、上記の1)2)3)4)5)の流れが主流とされています。
つまり糖尿病は、
「インスリン分泌不足+インスリン抵抗性」=インスリン作用不足
で発症しますが、日本人の場合はインスリン分泌不足が主体です。
これは、過去の臨床の豊富な症例で多施設で確認されている事実です。
日本人の2型糖尿病発症時の平均BMIは24くらいです。
従いまして
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。 それを繰り返していると、膵臓のβ細胞がそれに対応して、 インスリン分泌が増大するよう強化される」
というようなことは、少なくとも日本人では期待できないということです。
一方、欧米人の場合は、大量のインスリンを長期にわたって分泌し続け、巨大な肥満を呈するパターンが多いです。
インスリンは肥満ホルモンです。
上記1)2)を長年続けて、巨大肥満となりインスリン抵抗性が高まります。
すなわち、インスリンの効きが悪くなり糖尿病を発症します。
欧米人の場合、インスリン抵抗性が主の糖尿病がほとんどです。
2型糖尿病発症時の平均BMIは31くらいで、インスリン分泌能はまだ残っていることが多いのです。
この欧米人と日本人(アジア人)のインスリン分泌能の差は、現時点では遺伝的・先天的なものとされています。
つまりβ細胞が糖質摂取で鍛えられて、分泌能が高まったという風には考えられていません。
江部康二
今日の昼食は外食だったのですが、ケンタッキー・フライド・チキンの前で足が止まりました。「チキン・フィレサンド・ダブル」のポスターに目が釘付けとなり、気がついたら列に並んでいました。
パンでなくフィレ肉を挟んだバーガーです。謳い文句は「超肉食系」ですが、糖尿人の我々には、「超健康食」ですね。成分表示はありませんが、チーズとベーコンをチキンのフィレ肉で挟んであるので糖質は少ないはずです。期間限定なのでお早めに!
パンでなくフィレ肉を挟んだバーガーです。謳い文句は「超肉食系」ですが、糖尿人の我々には、「超健康食」ですね。成分表示はありませんが、チーズとベーコンをチキンのフィレ肉で挟んであるので糖質は少ないはずです。期間限定なのでお早めに!
2012/02/06(Mon) 22:58 | URL | 糖尿僧 | 【編集】
ありがとうございました。
2012/02/07(Tue) 00:28 | URL | peavywagner | 【編集】
糖尿僧さん、はじめまして
私はチキン・フィレサンド・ダブルが『超健康食』とはとても思えません。
KFCの栄養成分表はKFCのホームページで見られます。
炭水化物21.2g塩分5.1gで『超健康食』といえるのでしょうか・・・
あの衣がいけないと常に思っています。
半分ぐらいにしておいたほうがいいのでは・・・と思いました。
私はチキン・フィレサンド・ダブルが『超健康食』とはとても思えません。
KFCの栄養成分表はKFCのホームページで見られます。
炭水化物21.2g塩分5.1gで『超健康食』といえるのでしょうか・・・
あの衣がいけないと常に思っています。
半分ぐらいにしておいたほうがいいのでは・・・と思いました。
2012/02/07(Tue) 09:07 | URL | もも | 【編集】
peavywagner さんの質問に少し付け加えます。膵臓のβ細胞が疲弊してインスリンの分泌量が減少していくことは理解しました。しかし、その疲弊という表現は、具体的にどういった変化が身体に起こっているのかが良くわかりません。
私の認識としては、普段のβ細胞はアポトーシスと細胞分裂のバランスが保たれていますが、高血糖によるインスリンの大量分泌によりアポトーシスが促進され、細胞分裂が追いつかなくなることによってβ細胞が減少していく、これを疲弊と呼ぶと考えていますが・・・このような認識で大丈夫でしょうか?
また、インスリンの大量分泌によりアポトーシスが促進するとしたら、なぜそのような変化が起きるのでしょうか。
私の認識としては、普段のβ細胞はアポトーシスと細胞分裂のバランスが保たれていますが、高血糖によるインスリンの大量分泌によりアポトーシスが促進され、細胞分裂が追いつかなくなることによってβ細胞が減少していく、これを疲弊と呼ぶと考えていますが・・・このような認識で大丈夫でしょうか?
また、インスリンの大量分泌によりアポトーシスが促進するとしたら、なぜそのような変化が起きるのでしょうか。
2012/02/07(Tue) 12:06 | URL | たか | 【編集】
るる さん。
ゆるやかな糖質制限食で、調度折り合いがついているので、それでいいと思いますよ。
診察は大丈夫です。
ゆるやかな糖質制限食で、調度折り合いがついているので、それでいいと思いますよ。
診察は大丈夫です。
2012/02/07(Tue) 13:11 | URL | ドクター江部 | 【編集】
たか さん。
高血糖そのものが、β細胞のアポトーシス(死)を起こす最大の要因です。
疲弊はまだ死滅していない段階のβ細胞で、休養で回復すると思います。
インスリンの頻回・過剰分泌は、β細胞を疲弊させ、分泌能力を低下させます。
そうなると食後高血糖の段階になります
食後高血糖が続けば、β細胞がアポトーシス(死)を起こします。
2010年04月23日 (金)のブログ記事「糖質制限食と膵臓のβ細胞」
もご参照ください。
高血糖そのものが、β細胞のアポトーシス(死)を起こす最大の要因です。
疲弊はまだ死滅していない段階のβ細胞で、休養で回復すると思います。
インスリンの頻回・過剰分泌は、β細胞を疲弊させ、分泌能力を低下させます。
そうなると食後高血糖の段階になります
食後高血糖が続けば、β細胞がアポトーシス(死)を起こします。
2010年04月23日 (金)のブログ記事「糖質制限食と膵臓のβ細胞」
もご参照ください。
2012/02/07(Tue) 13:24 | URL | ドクター江部 | 【編集】
以前の記事を確認しました。
高血糖そのものが、β細胞のアポトーシス(死)を起こす最大の要因で、疲弊状態までなら回復が可能なのですね。
丁寧なご返信ありがとうございました。
高血糖そのものが、β細胞のアポトーシス(死)を起こす最大の要因で、疲弊状態までなら回復が可能なのですね。
丁寧なご返信ありがとうございました。
2012/02/07(Tue) 15:24 | URL | たか | 【編集】
炭水化物21.2gから灰分6.9gと食物繊維0.7gを引けば13.6g 糖質的には個人差もあるでしょうが私的には許容範囲だと思います。早速今日買ってきました。糖尿僧さん情報ありがとう。
2012/02/07(Tue) 18:14 | URL | 佐藤 | 【編集】
佐藤 さん。
炭水化物21.2gからひけるのは食物繊維0.7gだけですので、
20.5gの糖質ですね。
炭水化物21.2gからひけるのは食物繊維0.7gだけですので、
20.5gの糖質ですね。
2012/02/08(Wed) 12:48 | URL | ドクター江部 | 【編集】
私が昼食を取ろうとした場所は、東京・新橋でした。
さすがサラリーマンの聖地、周りにあるのは丼物か、定食だらけでケンタッキーには救われた気分で思わず書き込みしてしまいました。
さすがサラリーマンの聖地、周りにあるのは丼物か、定食だらけでケンタッキーには救われた気分で思わず書き込みしてしまいました。
2012/02/08(Wed) 14:13 | URL | 糖尿僧 | 【編集】
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